VIRGIN BMW | 第3回 ロシア上陸 ユーラシア大陸横断

第3回 ロシア上陸

  • 掲載日/2006年11月05日【ユーラシア大陸横断】
  • コラムニスト/Erik Andreas Jorn

BMWで走る海外ツーリングの画像

船内で出会った8名の旅人
この旅初めての出会いでした

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こんにちは。エリックです。
さて、今回からいよいよ出発です。私を乗せたルーシー号は、ついにウラジオストックへと航海をはじめました。船内には日本の中古車が山と積み込まれていますが、旅人には快適な船だと前回に書きましたね。不満は特にないのですが、船内をブラブラしているとプールにまで車が積まれているのを見つけ、つい笑ってしまいました。プールの幅ピッタリに車が詰まっています。ロシア人の商魂はたくましいですね。客船というより貨物船に近いこのルーシー号にも、もちろん旅行者も乗船しています。旅客は全員で9名。イスラエル人のカップル、ツアーガイドをしているドイツ人、広島の英語教師、オランダ人の学生、3人の日本人学生と私です。

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国籍がバラバラなメンバーですが、40時間もの船旅を一緒に過ごす貴重な仲間。お互いのことを話し、仲良くなるまでそれほど時間はかかりませんでした。ビールを飲みながら会話すると、お互いの心の距離が縮まるというのはここでも証明されました。お酒のパワーは世界共通です(笑)。ルーシー号に乗るまでの私は、皆から見送られる立場でした。しかし、ここにいる全員は同じ旅人。これからどんな旅をするのか、それぞれの話を聞いていると「ああ、もう旅の途上なんだな」という実感が湧いてきます。旅をするときに一番楽しみなのは人との出会いです。これまで見たことがない景色を見て、うまいモノを食べ、聞いたことのない言葉を耳にする、そんな楽しみも当然あります。しかし、私の旅がハッピーになるか、アンハッピーになるのか、これから会うはずの人たちとの交流に負うところが大きいはず。このフェリーで出会った8人はフレンドリーな人ばかりで、この先の出会いがいいものになりそうな…予感がしていました。

現地バイカーと出会い
ロシアのイロハを教わります

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そんなハッピーな予感でしたが、ロシアに着いていきなり小さなトラブルに襲われてしまいました。R1200GSを船から降ろす手続きはよかったのですが、入国審査でトラブル。必要な書類はすべて揃っていて、日本だったら30分もかからずに入国できたはずです。しかし、現地の職員はまったくフレンドリーではなく、仕事を進めてくれません。朝9時に手続きに出向き、たった1つのスタンプを押してもらうためにかかった時間はなんと7時間! デスクのすぐ横に押して欲しいスタンプがあり、手をちょっと動かせば済むことなのに…。「早いランチに行ってくるわ」と出かけて2時間も帰ってこなかったり、他の職員と話をしたり、歯がゆい思いをしました。他のスタッフも同じような調子で、入国手続きだけで驚くほど時間がかかってしまいました。でも、ロシアの一般の人は皆フレンドリーですから、そこは勘違いしないでくださいね。ウラジオストックで数人のバイカーに出会いましたが、ロシアのことをよくわからない私に皆、親切にしてくれました。

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最初に出会ったのはOlgaとSashaというカップル。彼らは西ロシアのサンプトペテルブルグから1ヶ月かけて、ウラジオストックまでバイクで走ってきたそうです。彼らから「○○の辺りは道が悪い」などの情報や「○○へ行くなら、この人にお世話になるといい」とロシア各地のバイカーの名前と電話番号を教えてもらいました。次に出会ったのがSinusという「ホンダ製マグナ」に乗る現地のバイカーです。「ウラジオストックを訪れるバイカーはみんな『Welcomeだよ』」と彼は言い、初対面の私を自宅まで招待してくれました。おいしいロシア料理を振舞ってもらい、彼からこの国のバイク事情について教えてもらいながら、楽しい時間を過ごすことができました。同じバイクを愛するもの同士、言葉やカルチャーの差は気にならないんだな、とこの街で彼らとの出会いに感謝しています。

ヘルメットが盗難され
知らない街を彷徨うはめに

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現地バイカーとの出会いから、ロシアに対する私のイメージはよくなってきていました。しかし、入国手続きにつづき2つ目の事件が起こりました。私のヘルメットが、誰かに盗まれてしまったのです。使い古しのどうでもいいヘルメットではありません。わざわざこの旅のために新しく新調したBMW純正の「システムヘルメット」だったのに…。「じゃあ新しいものを買えばいい」なんて、そんな簡単な問題ではありません。私は通常より頭のサイズが大きいのですが、ロシア人は頭が小さい人が多い、そのため私に合うヘルメットを入手するのが非常に難しいのです。しかも、ウラジオストックは65,000人も人口がいるのに、バイクショップはたった1軒しかありません。不安を胸にバイクショップを訪れると店内に4つあったヘルメットはすべてSサイズ! 新しいヘルメットがないとロシアを走ることができませんから、とにかく新しいヘルメットを探すしかありません。3日間かけてヘルメットを探し回り、やっと中国製のヘルメットが見つかりました。品質には大いに不安がありますが、今の私には選択枝は残されていません。日本を出てしまった今、カザフスタンのアルマティという街まで行かなければBMWディーラーはありません。カザフスタンのディーラーにヘルメットがあることを祈りつつ、ロシアの荒野を走ることにしましょう。

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トラブル続きの旅の始まりですが、旅が始まって間もないこの時期にいい教訓を教えてもらった気がします。日本ではBMWの盗難被害に遭い、ロシアではヘルメットを盗まれる…私の注意が足りなかったのかもしれません。安全と言われる日本でさえ、あんなことが起こるのですから、他の国に入ればもっと注意深くならないといけないのでしょう。

散々な始まり方をしたような書き方になってしまいましたが、私の旅は概ねGOODです。ほとんどの方はフレンドリーですし、街の景観は素晴らしいですから。入国やヘルメットを探していたので、ウラジオストックには結局1週間も滞在してしまいましたが、すべてのトラブルは解決しました。次なる目的地ハバロフスクに向かうことにしましょう。ハバロフスクまでは約800kmあります。道中は日本のような綺麗な舗装路ばかりではないようです。道が悪くなればスピードを落とし安全に走ることにしますので、到着まできっと2、3日はかかるでしょう。BMWを信じていざ、ロシアを走りはじめます!

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プロフィール
Erik Andreas Jorn

35歳。スウェーデン国籍。15歳のときに渡米し、アメリカで医学を学ぶ。大学卒業後に1年間海外を放浪し、その後来日。8年間を日本で過ごした後にR1200GSでのユーラシア大陸横断を企画し、現在は旅の途中。

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