VIRGIN BMW | 第8回 ウランバートル出発 ユーラシア大陸横断

第8回 ウランバートル出発

  • 掲載日/2007年02月09日【ユーラシア大陸横断】
  • コラムニスト/Erik Andreas Jorn

BMWで走る海外ツーリングの画像

VISAを取得し、病を撃退
ウランバートルを出発します

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「VISAが取れれば出発」と前回お話しましたが、このVISAがなかなか下りません…。日本からロシアに入国するときも苦労しましたが、今回も大変でした。長い長い時間待ちや些細なことで言いがかりをつけられ、ロシア大使館に4回も通う羽目に。何とかVISAは発給してもらいましたが、納得できないことがありました。同じくロシアのVISAを発給してもらった日本人は「VISAは25ドルだった」と言っていたのに、私の場合は140ドル! この価格差は何でしょうか! 職員に尋ねたら「各国との外交協定による違いだ」そうです。5倍以上ですよ? こんなことがあっていいのでしょうか…。気分が悪くなるこんなことがあったせいでしょうか、それとも長旅の疲れがドッと出たせいでしょうか。VISAをもらい「いざ出発!」と意気込んでいたら、高熱と吐き気が襲ってきて、動けなくなってしまいました。たっぷりの水分と睡眠をとって数日休養して調子はよくなりましたが、こんなことでまた旅のスケジュールが押してしまいます…。

グズグズしてもいられませんから、体調も回復とみるやウランバートルを出発することに。出発の日は曇りがちな天候ですが、翌日からは快晴の日が続きます。モンゴル西部のロシアとの国境までの1,800kmの道のりは気持ちのいいものになりそうです。予定では1週間ほどで国境までいくつもり。全工程のほとんどは相変わらず未舗装路です。ただのダートなら慣れてきているのでいいのですが、道路整備がほとんどされていないモンゴルの道路は何度も何度も車が通ることで深いわだちができているところが多く、R1200GSは荷物が満載なのでなかなかバランスが取れません。雨の翌日などは道路が泥のようになっていることもあり、タイヤが取られてしまうこともあります。これまでの行程でR1200GSで来てよかった、と思うことは度々ありましたが、モンゴルではなお更です。ここを読んでいる皆さんがモンゴルを走る機会がもしあったら…オフロード、もしくはデュアルパーパスマシンじゃないと辛いですよ。ロードモデルでモンゴルを走るなんて考えたくもありません。

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道路状況への不安以外にもモンゴルにはもう1つ不安があります。それは「道がわからないこと」です。もちろん地図は持っていますし、私はGPSも持ってきています。それでも何度も今どこにいるのか、がわからなくなるのです。街を少し離れれば似たような景色が広がるので、下手をすればどちらに向いて走っているのかすらわからなくなりそうです。目印になるものが山くらいしかありませんから(笑)。しかも、モンゴルの道路には道路標識がほとんどありません。ウランバートルからロシア国境までの1800kmで道路標識を見たのは数えるほどしかありません。日本の道路なら数十メートルごとに標識がありますが、あれって本当にドライバーに優しいんだな、と旅を始めてしみじみ実感しています。今なら地図無しで日本を旅できるような気がしますね(笑)。道に不安を感じたら、現地の人に道を聞くのは常道ですけれど、そんなときに注意があります。ガソリンスタンドに入ったときに「ロシア国境までは、この道であっているよね?」と質問したときに道は合っているのに「逆方向だ」と答えられたことがあるんです。嘘をつこうとして言ったわけじゃないようです。道を聞いても人によって指す方角がバラバラなことが多いんです。あと「あっちだ」と遠くの山を指差す人も多い(笑)。広々とした大地を持つ国だからでしょうか、道案内も大雑把なことが多いので気をつけてくださいね。

人の匂いが感じられない大自然
そんな中に身をおく貴重な経験

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ウランバートルからの道のりは、予想通り天気に恵まれた快適なライディングになりました。日が出ている間はそれほど寒さを感じず、青空の下気持ちよく駆け抜けることができます。しかし、夜になると気温は一気に下がってきます。ある夜なんて深夜の気温がマイナス10度なんて日もありました。泊まるところなんてない、荒野の道を走っているのでそんな状況でもテントを張るしかありません。日が暮れる前にその日にテントを張る場所を探し、気温が下がり切る前に食事などを済まさないと大変なことになってしまいます(笑)。キャンプでの食事はほとんどがパスタです。すぐに作れて簡単なので、ほとんどこのメニューになってしまうのですが、さすがに飽きてきました。パスタを茹でて、トマトソースと混ぜ、お湯で戻したドライフードを混ぜて完成! そんな晩御飯でも何百キロも走った後にはおいしく感じます。食事を終えたらさっさと片付けをして寝袋に入ります。ポイントなのは何枚も重ね着をしたままで寝袋に入ること。それでも寒さは体の芯に伝わってきます。もしパジャマに着替えて寝るようなことがあれば…朝までに確実に凍ってしまっているでしょう(笑)。寒さからなかなか眠りに着けませんが、毎晩寝る前に楽しみにしていることが1つあります。それはテントの小さなプラスチックの窓から見えるモンゴルの星空です。その美しさをうまく言葉にできないのがもどかしいのですが、時間を忘れて見入ってしまう美しい夜空が広がっています。テントの外から見ると空いっぱいに広がる星空が存分に楽しめますけれど、何日もモンゴルの夜空を見ているうちに、テントの小さな窓から見る星空で充分満足できるようになりました。寝袋の中でぬくぬくとあたたまりながら夜空を眺めていると、知らないうちに深い眠りにつくことができます。

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テント泊の日の朝は遅くなります。日が昇りしばらく経つまで、気温が0℃以上に上がらないからです。寒さで目が覚めるのは早いのですが、寝袋から這い出すまでは何時間もかかってしまいます(笑)。はじめの頃は「それじゃダメだ」など殊勝な思いでしたが、無理をして寒い中走っても仕方ありません。「無理をしないこと」。それも旅を楽しむためのルールです。だいたい朝は10時頃から走りはじめ、周りに広がる素晴らしいが、変わり映えのしない景色を楽しむのが日課です。砂漠と山だけが続く道を毎日走っていると「自分は月の上をツーリングしているのかな」なんて気がしてきました。月に行ったことはありませんが、きっとこんな世界なのじゃないか、そう思える景色です。耳に聞こえてくるのは自分がバイクを走らせる音だけ。それ以外は何の音も聞こえない無音の世界。ほんの数ヶ月前まで世界で最も人が密集している東京で生活をしていたワタシ。東京での生活とここモンゴルは本当に同じ地球上にあるのでしょうか。周囲には人の生活が伺える景色、匂い、音は一切存在していないのです。そこに道があり進めばいつか街につながる、それだけが私と社会を繋げる唯一の存在です。どこまでも続きそうな大地と広い空、そして私…。こんな環境に身をおける機会なんてそうありません。何もない、本当に何もないトコロですけれど、ここでの思い出は生涯忘れられないモノになるでしょう。

危機一髪でペストを逃れたワタシ
でも、翌日からはトラブル続き…

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走行中にまたパンクに見舞われるトラブルがありましたが、パンクの応急処置なんてお手の物です。30分程度で処理をして、次「ツェツェルレグ」という街でちゃんと修理してもらうことにしましょう。 モンゴルは日本の県にあたる「アイマグ」という行政区分が21あり、ツェツェルレグはその県庁所在地になります。パンク修理ができるところもきっとあるでしょう。ツェツェルレグに入りバイク修理をしてもらいながら、街の人と話しているとちょっと怖い話を聞きました。ほんの1週間前まで、この街は病気で封鎖されていたそうなんです。腺ペストという病気が蔓延し、街への出入りが禁止されていたとか…。旅の行程の遅れを嘆いていた私ですが、遅れていてよかったかもしれません。腺ペストはマーモットというネズミのような動物が媒介する病気だそうです。マーモットの丸焼きはモンゴル名物の料理なのですが…マーモットを食べるのは控えようかな…。

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パンク修理も終え、翌日はツェツェルレグの近くの「ホワイトレイク」という湖に向かうことにしました。ホワイトレイクの湖畔には旅行者も泊まることのできるゲルがあるそうなんです。ゲルとは モンゴルの伝統的なテント式住居のことです。日没前にホワイトレイクに到着しましたが、辺りにそれらしい場所は見当たりません。近くにいたロシア製オートバイに乗るモンゴル人に場所を尋ねると「連れて行ってやりたいがバイクのガソリンがない」と言います。「少しわけてやるから」と予備のガソリン携行缶を渡すと入っていたガソリンをすべてタンクにいれてしまいました、厚かましいヤツだ(笑)。彼に連れられゲルのある場所に何とか到着。彼が言うには「15ドル払えば泊まらせてやる」とのこと。聞いていたより少し高いですけれど、モンゴルに来たからには泊まってみたかったゲルです。外も寒くなってきていましたし彼に15ドルを支払い、泊まることにしました。普通のテントと違い、中は暖かく快適でいつも以上に気持ちがいい夜を過ごすことができました。

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翌朝、昨日のモンゴル人とは別の「私がこのゲルのオーナーだ」という人がやってきました。そうです、昨日のモンゴル人はこのゲルとは何の関係もなかったのです。しかも、本当は10ドルでここに泊まれるそうです…。怒り心頭で本当のオーナーに事情を話すとオーナーも困惑気味。「警察に行って被害届を出そうか?」とオーナーは言ってくれましたが、こんなことで足止めを食いたくはありません…。モンゴルはいい国ですが、たまにはこんな嫌な経験もあります。大したことではないので気にしないようにしましょう。この件でしばらく運に見放されたのか、翌日も散々な一日でした。走行中にバッグを落としてしまい、バッグを探しに通った道を戻っていると、モンゴル人ライダーが運転するバイクと接触しそうになり転倒。幸いにも誰も怪我もせずバイクへのダメージも少なかったのですが、何でこんなにトラブルが続くのでしょうか。しかし、こんなトラブルで気落ちなんてしていられません。ホワイトレイクの近くで出会ったイタリア人のファビオ、彼なんてもっとタフな旅をしていましたから。20年落ちのフィアットに乗り、イタリアから中国まで車で旅をし、今はその帰路だそうです。実は彼、車椅子に乗って車を運転しているんです。特別に改造された車を手だけで運転し、ユーラシア大陸を横断している、とてもタフな男です。彼のような人たちに出会うと、自分がやっている旅なんて特別な旅ではありません。少しくらいの嫌なことなど気にせずに、この先も旅を進めましょう。

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プロフィール
Erik Andreas Jorn

35歳。スウェーデン国籍。15歳のときに渡米し、アメリカで医学を学ぶ。大学卒業後に1年間海外を放浪し、その後来日。8年間を日本で過ごした後にR1200GSでのユーラシア大陸横断を企画し、現在は旅の途中。

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