

|
車体が不安定なときの姿勢制御
ライダーがふらつきを抑えて車体を安定させたいときには、車体に掛かっている自分の体重を少しでも低い位置に掛け(ステップへの荷重)、少しでも重心を低い位置にしようとします。ところがノーマルシートは、高い位置・低い位置どちらにセットしてもどっかり座らされてしまうシート形状なので、ステップに素早く荷重を掛けられないのです。これは日本標準装備のローシートの弊害なのではないか? そう思いました。ステップ位置に対し、シートの座面の高さを低くしていくと、膝の位置が高くなってしまいます。膝の位置が足の付け根に対し高くなっていくと、即座に動作へ移れなくなります。低いソファーと、カウンターにあるような高い椅子から立ち上がることを想像してみてください。ローシートは低いソファーだと考えていただくと分かりやすいかもしれません。 ライダーが車体を制御できる
まずは、座面の高さを決めてから全体の形状を決めていきます。ステップに立ち上がりシートの座面にお尻が付いた状態から、どっかりと座ったときに何センチ沈み込んでいるか、ヘルメットを基準にして何度も後ろにいる妻に確認してもらいました。ノーマルシートのスポンジは、必要以上に柔らかく、今まで自分が作ってきたシートに比べても沈み込み量が多いため、お尻へ伝わる路面からの情報が乏しく感じます。操作するという意味でもレスポンスの悪さが気になります。柔らかさは乗り心地を左右する重要な要素ですが、柔らかすぎると「うっ血」による痛みを感じたり、ポジション変更がしにくかったりと、いろいろな不具合が出てきます。もちろん硬すぎてもお尻が痛くなりやすくなります。沈み込み量を測れば、日本仕様や本国仕様でのシートの乗車位置がどの辺りになるのかも分かってきますし、これから作るシートのデータにもなります。当然と言えば当然ですが、本国仕様のシートでの乗車位置が設計時に想定していた乗車位置になるのでしょう。本国仕様の座面の高さにするならカタログデーターを見れば一目瞭然なのですが、スポンジの硬さや沈み込み量などはもちろん、乗車位置まではカタログデーターには記載されていません。体重によっても沈み込み量は変わってきますので、乗車位置も変わってきます。日本人とドイツ人では体格も違いますからね。ということで、自分なりにこのR1200RTというオートバイの理想の乗車位置を踏まえ、日本人の体系に合うシート形状を考える必要があります。 おおよその仕様が確定
高さ調整が出来るようにするのは当然ですが、ノーマルシートのままの取り付け方法だと、車体とシートに一体感が感じられません。具体的にはシートベース自体の強度不足に加え、取り付け方法によるシートのぐらつきがあります。ライダーからの入力がシートと車体の間で途切れてしまい、車体へダイレクトに伝えられないのです。そのため「操作する」というオートバイに乗る一番の楽しさがスポイルされてしまっています。シート作りの話になるまで随分と時間が掛かってしまいましたが(笑)、取り付け方法を含めたシートの原型作りを次回から紹介していきたいと思います。 |
![]() 上山 力 32歳。東京都練馬区のシートの名店「K&H」に勤務。シートの開発を主に担当。自らが長い距離を走り抜き、シートを開発するため、彼の年間走行距離は尋常でないものに。 埼玉県朝霞市上内間木381-2 048-456-3830 |