VIRGIN BMW | 門外不出のエアバッグシステムを他社にも供給。ダイネーゼの真意とは? 特集記事&最新情報

門外不出のエアバッグシステムを他社にも供給。ダイネーゼの真意とは?
取材協力・写真/ダイネーゼジャパン  文・写真/土山亮
掲載日/2017年1月30日

世界屈指の安全性を誇るダイネーゼのエアバッグシステムD-Airに新たな展開!なんと他社へのシステム供給が始まるというのだ。果たしてその意図とは?

システムを他社供給する真のメリットとは

危険を察知してわずか0.045秒でエアバッグが作動を完了するダイネーゼのDエア。独自のシステムとアルゴリズムの製品化に成功し、いまでは多くのユーザーがその安全性を認めている。開発費用は膨大で取得した特許も数知れず、普通なら自社製品だけに搭載する門外不出のテクノロジーだ。だがダイネーゼはシステムの他社供給を開始するという。一体なぜ?

実は18年のモトGPから、全クラスのライダーにエアバッグ装着が義務づけられる。とはいえ、いま技術を持たないレーシングスーツブランドがゼロからシステム開発するのは実質的に不可能だ。ダイネーゼが他社供給という英断を下した理由はそこにある。自社の安全技術をもっと多くのライダーへ。きれいごとではなく、安全性へのあくなき追求が数々の革新を生んだブランドだからこそできる判断なのだ。

ダイネーゼがリリースした
これまでのD-Air製品

レーシングスーツからストリート用のジャケットまで、すでに数種類のバリエーションが用意されているDエア。製品数が増えれば量産効果でシステムの単価も下げられ、より多くのライダーに自社技術を提供できる。そんな意図でいまでも搭載製品が増加中である。

EICMA会場で行われたD-Air製品のデモ

ミラノショーに登壇したCEOのクリスティアーノ・シレイ氏は、今後Dエアシステムはさらにその活躍の場を広げていく、と力強く語った。2枚目はDエアを搭載する最新ストリートジャケットでエアバッグを作動させるデモ。ポン!と一瞬で膨らむその様には会場もどよめく。

D-Airの基幹モジュールを丸ごと他社へ供給

“D-Air Armor”による
他社とのコラボがスタート

ダイネーゼほどのブランドなら、エアバッグ市場で寡占状態を作り出すことも可能だったかもしれないが、すべてのライダーが平等に安全性を享受できる枠組みを作るのは、安全にこだわり続けたブランドの良心かもしれない。

ダイネーゼがDエア・アーマーと呼ぶ他社供給用のエアバッグユニット。基幹システムはこれまでのDエア同様だが、ダイネーゼ製品のようにレーシングスーツにシステムを組み込むのではなく、インナースーツにエアバッグユニットをセットアップする方式を採用している。この方式であれば、供給を受けるレーシングスーツブランドは、スーツにユニットを搭載するための形状を思案する必要もなく、エアバッグ作動時の膨張分を考慮したスーツを製作するだけで良い。また、アクシデントに備えて予備スーツが何着も必要なレースの現場でも使い勝手が良い。

GPでシステム供給が決まったのはFuryganとVircosの両社。Furyganがサポートするのは来季MotoGPクラスへ昇格するJ・ザルコとMoto2のS・ロウズ、Vircosはドゥカのテストライダー、M・ピロとMoto2のM・パシーニをサポート。両社はDエアシステムを自社のスーツと組み合わせて使用する。

システム提供の過程では両社のエンジニアが技術的な折衝を行う場面も必要だが、ゼロからシステム開発を行うと考えれば費用面での効果は高く、今後はこうした形でコラボレーションを行うブランドが加速度的に増えていくはずだ。現在、レースレベルで実用的なレベルにあるエアバッグシステムを自社で開発したブランドは、まだ数えるほどしかなく、またそんな状況だからこそDエア・アーマーのような発想が誕生したとも言い換えられるかもしれない。

(1)ダイネーゼ傘下のヘルメットブランド、AGV。GPでも多くの選手が使用する。最近ではカーボンヘルメットも人気が高い。
(2)D-Airシステムが勢ぞろいしたEICMAのブース。レーシングからテキスタイル、ツーリングと搭載モデルが充実してきた。
(3)世界最高峰の国際ヨットレース、アメリカズ・カップではNZ代表チームがD-Airを正式採用。命の危険を伴う海のレースゆえ、チーム員がエアバッグに寄せる期待は大きい。
(4)NASAの有人火星飛行計画への参加を表明しているダイネーゼが製作した宇宙服用のインナースーツ。身体の動きを熟知しているからこそ生み出された製品と言える。

Dainese D-Store Tokyo Setagayaが
東京・世田谷にオープン!

12月17日(土)、東京都世田谷区の環状8号線沿いにD-Store Tokyo Setagayaがオープンする。ダイネーゼ製品をはじめAGVのヘルメットなど、最新アイテムが数多く揃う同店は、東京の新たなヘッドショップの一つとして注目したい。
●東京都世田谷区尾山台2-28-15  駐車場有