VIRGIN BMW | 横置きフォアK1300シリーズの全貌 「K1300R」インプレッション編 特集記事&最新情報

横置きフォアK1300シリーズの全貌
このコンテンツは BMW BIKES Vol.46 掲載の記事を再編集したものです。
Photo / Koichi OHTANI Takao ISOBE BMW Motorrad Text / BMW BIKES & VIRGIN BMW.com

外観に惑わされるな!
その違いは乗れば歴然

結論から言ってしまうと、先代の『横K』オーナーにとっては若干悔しいモデルチェンジとなってしまったようだ…。

 

『横K』の登場から5年目となる2009年春。実質ドイツ本国とほぼ同時期の発売となったK1300シリーズの進化ぶりは、前項でだいたいのところを紹介した。気になるのはそのメカニズムやデザインによって、走りにどのような影響が与えられているのか? だろう。

 

1157ccから1293ccへとスケールアップされたエンジンは、トルクとパワーの向上を実現し、材質が変更されたデュオレバーはハンドリングをより軽くし、新型ESAは、イニシャルのみならずスプリングレートまで変更可能になった。さらにトラクション・ショックを軽減するために新開発されたドライブシャフトの採用や、適切なスロットル操作とシフトチェンジをサポートするシフトアシストシステムとスロットルオペレーション。また環境性能にも配慮したエキゾーストフラップなど、外観は先代のK1200と代わり映えしないが、中身はフルチェンジとなっているのだ。また、ウィンカースイッチが一般的なタイプに変わったことは、既存BMWユーザーにとっては単なる機械的な変更という意味以外にも、なにか考えさせる部分があるのではないだろうか?

 

これらの変更によって、K1300がK1200を上回る走行性能を手にしたことは容易に想像がつく。単なる排気量の拡大ではなく、ユーザーの期待を裏切ることのないメーカーの努力は相当なものだ。BMWモデルラインナップのなかでKシリーズに与えられたモンスター級のパフォーマンスは、2代目『横K』により、いっそう磨きがかけられてきたのだ。

 

それらの進化を踏まえたうえで、BMW BIKES編集スタッフによるインプレッションを見ていこう。

「一度、K1300の3兄弟の立ち位置を整理したい。まず3車種とも排気量はアップしたがチューンが異なり、ツアラーのGTは実用トルクを、フルカウル&ネイキッドスポーツのSとRでは全域でのパワーアップを目指した。S&Rのチューンは同一ながら、排気系の違いで少しだけ数値が異なっている。また3台ともサスやアライメントが見直された。ギミックのうち、なんとイニシャルばかりかスプリングレートも変更可能になった2世代目のESAⅡ(サス可変機構)と前後連動ABSはすべてで選べるが、注目のギアシフトアシスト機構とASC(スキッド抑制装置)はGTでは選べない。そのかわり、シートヒーターやクルーズコントロール、キセノンヘッドライトなどはGTだけのオプション設定だ。

 

ツアラー、スポーツ、ネイキッドと、どれもスタイルや方向性がはっきり異なるので迷いは生じないだろう。だが個人的に一番興味が沸き、価格的にもっともリーズナブルだと感じたのは、Rのプレミアムラインだった。これらギミックがついて220万円プラスは、けしてお安くはないけれども、いろいろに使える幅がとてもあると思った。

 

その根拠は、乗りやすさ。もしあなたがはじめてBMWに乗る、というなら、これをまず最初に薦めたくなるぐらい乗りやすい。足回りの洗練が効果大だし、よりマナーの向上したパワフルエンジンを利用してアベレージを思うように乗り手が選択できる。幸い、張り出したタンク下部のおかげで、あとはミニカウルなどを付加すれば防風性でSに近づくこともできる。

 

何より、シューマッハの世界(笑)をバイク&公道で堪能できるオートシフターは、市販の簡便な点火カット型ではなく、コンピュータ制御によって瞬時に燃料カットするものでギクシャク感が本当にない。素早い連続的なシフトアップを、右手を開けたまま可能で、是非おすすめしたい装備だ。また、賢くなったESAⅡも、大事な人を後ろに乗せる場合や、街乗り、山道、サーキットと、走る場所やスタイルで変幻自在だから、そのコストを費やす意味は大きいと思う。それらを含めて、日本製同クラスのほぼ5割増しで手に入るというのは、まあ合点がゆく。

 

パフォーマンスの向上は言うまでもない。さらにこの乗りやすさ、とっつきやすさを増し、バランスの極みに達したことに、やはりBMWのニューカマーへのウェルカムメッセージを強く感じている。そっして乗りやすいということは、その先にあるBMWの奥義を体現する格好のドアであり、毒牙の突先なのだ。その奥義もまた、実は滋味深く、永く傍らに置いて愉しめるものだ。特に、たとえばCB1300SFのような使い勝手のよいバイクに乗っている方などに、しばらく試乗してみることを強くお勧めしてみたい。

 

さらにおせっかいながら、あなたがもしすでにほかのBMWに乗られているのならば、乗りやすさの奥にある、ロングタームで愉しめる今度のRの面白みはきっとすぐにわかると思う。最初に4速あたりまでシフトアップしてみただけで、かなりのショックと感動を得るに違いない。問題はウィンカースイッチの再習熟のみ。BMWには2種類のスイッチを選べるよう提案したいほどだった。」

 

永山 育生 / kuo NAGAYAMA

じつは1983年のK100以来現在までのほとんどの期間、軒下に“縦K”を忍ばせてきたBMW BIKES編集長。長期冷凍中(?)のモビィことK100RS-Mリミテッド(1987)と、ちょっとだけ冬眠中のアオザメことK1200LT(2001)を飼っている。いわば「縦の会会員」なので、最初“横K”が登場したときは当の本人がかなり驚いたらしい。

より筋肉質になったK 1300 Rのデザイン

先代と比較すれば、パワー・ネイキッド・マシンたるRのキャラクターがさらに色濃く、強調されていることがわかる。最高出力173ps (127kW) / 9,250rpm、最大トルク140Nm/8,250rpmを発揮する水冷直列4気筒エンジンをダイレクトに眺める愉しみもRならでは。