VIRGIN BMW | 横置きフォアK1300シリーズの全貌 「K1300GT」インプレッション編 特集記事&最新情報

横置きフォアK1300シリーズの全貌
このコンテンツは BMW BIKES Vol.46 掲載の記事を再編集したものです。
Photo / Koichi OHTANI Takao ISOBE BMW Motorrad Text / BMW BIKES & VIRGIN BMW.com

「今回モデルチェンジしたK1300シリーズ3モデルのうちで、GTは若干地味な存在に思えた。それは変更箇所が他のモデルと比べて少ないからだ。エンジンの排気量アップや新型ドライブシャフトの採用、新設計されたデュオレバーのロア・リーディングアームなど、根本的な部分は他の2モデル同様だが、今回のニューKのウリとも言えるシフトアシストシステムの設定は無いし、エクステリアに関しては、SやRのような6角サイレンサーにはならず、K1200同型のものを使い、内部構造のみ手を加えてきた。フェアリングにしても、サイドパネルが多少変わっただけなので、見た目の印象はまったくと言っていいほど変わらない。カタログ数値での寸法にいたってはまったく同じなのだ! そこまで調べた時点で僕は少々がっかりしていたことも事実である。プレスリリースに目を通しただけの感想ではBMWが考えるGTの進化が少ないと思ったのだ。そんな気持ちでイグニッションをオンに回したK1300GT。以前K1200GTにはじめて乗った時と同じような感動を、果たしてもたらしてくれるのだろうか…。

 

SやRが隣に置いてあるとさほど大きさを感じさせないGTだが、実際にまたがり、車体を起こすと、体中にズッシリと重量感を受ける密度の高さ。まわりのK1300も同様だが、着痩せするタイプである。レリーズピストンの大径化により、すこぶる軽くなったクラッチを握り、ローに入れる。ミートポジションが掴みやすい湿式多板クラッチをつなげると、ブレーキをかけながらでも進むのではないかと思うほど、極低速の低回転域から嫌味のないスタートを切る。巷で物言いが入ったウィンカースイッチだが、今まで触れたことがないタッチフィーリングで非常に押し心地がよく、他メーカーのものとは差別化されているように感じられ、これはこれでいいのだと思う。

 

ギクシャクするわけでもなく、ダルいこともない。どこの回転数からでもアクセルにしっかりとついてくるエンジンマネジメントは秀逸の一言。排気量アップによって太らされたトルクは、スクィーザーで絞るレモンのごとくジワッと溢れ出る。低中回転域のトルク感がK1200GTに比べてさらに上がっていることは、実際に乗ってみると確かに感じることができる。ワインディングでペースを上げて、ややラフなアクセレーションを行っても、新型ドライブシャフトのおかげで、ライダーに伝わる嫌な挙動変化などは起きる気配も無く加減速できる。これはスタビリティが上がったぶん、ハンドリングがしっかりと手に取るように伝わってくることもある。

 

テストのためにタンデムでも走ってみた。高速からワインディング、どこを走っても乱れることが無い。凍結防止剤が散布された、それほど路面状況の良くない条件下でも、足回りは路面に吸い付き、綺麗なリーンアングルを崩さない。それどころかパッセンジャーに対し、会話やハンドサインを送るなどの気遣いができるほど。

 

K1200GTでは、高出力を受け止める器側に多少なりとも心細く感じる部分が残されていた。それは超高速域でハンドルなどを伝い、微妙に感じる挙動であったり、タイヤの接地面の動きをライダーが積極的に制御しなければならない場面などだ。ところがK1300GTはエンジンのパフォーマンスが上がったうえ、シャシーの細部にいたるまで徹底的に見直され、新型ドライブシャフトを有効に使うことで、そういったエンジンパワーとシャシー剛性とのバランスの両立に成功している。実際に使用しているK1200GTオーナーが、一番奥底で感じてしまう大きな違いかもしれない。見た目に関してプレゼンスの高い機構をあえて付加しなかったのは、K1200GTが造られた時点で、すでに完成していたということと、BMWバイクのニューモデル投入が乱れ咲いているここ数年の流れにおいて、既存ユーザーのメインユースであるツーリングバイクとしての一面を考慮し、軸のブレを生じさせないためにあえてこの状態でリリースしたのだろう、と思う。知っている人は知っている、そして知らない人でもわかりやすいBMWの真髄が、ほんの数分乗るだけでも感じ取れるうえ、遠くまで走りに行きたいという欲求に駆られるような、ベースの味付けがしっかりとしたものになっている。手に入れた後の世界は無限大に広がるグランツーリズモ。僕たちの生活の中にこのK1300GTが加わることによって、それはそれは心豊かなビーマーズライフへのトビラが開かれることになるのだ。」

 

小松 男 / Dan KOMATSU

初期型のK100LTを日常で使うBMW BIKES編集スタッフ。

横置きレイアウトエンジンのKに若干苦手意識があったものの、今回のK1300シリーズには、心を打ち抜かれたようだ。

すでに完成度の高いK 1300 GTのスタイリング

車体脇のトリムとカラーリング以外、K1200GTとの外観上の差異は見当たらない。ロングツーリングに最適なスタイリングとパッケージングは、先代の時点ですでに完成されていたと言っても過言ではない。燃料タンク容量は3モデル中もっとも多い24Lで、車輌重量はK1200GT同様288kgという超高速ツアラーだ。