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the ニガテ克服!MSPプロデュース「プライベートトレーニング」潜入レポート
取材協力 / Tras , MSP  Photo / VIRGIN BMW.com × BMW BIKES Text / Zensuke TANAKA 掲載日/2009年11月18日

出来ないことは出来る人に教えてもらうのが一番自分たちの都合でレッスンをお願い出来るとしたら?

「狭い駐車場でバイクをうまく動かせない」「交差点やUターンなど極低速走行はとにかく怖い」「ちょっとペースが上がるとコーナーをうまく曲がれない」などなど、ツーリング先で不安に思うコトは結構ありますよね。せっかくのツーリングだから、不安要素は少しでも減らして快適・安全に愉しみたいものです。でも、いまさら「乗り方」や「取り回しの方法」なんて人に聞くのは恥ずかしいし、ましてや1人で練習なんて怖くて出来ません…。誰しも長年乗り続けてきたという自負もあるでしょうし、みんなが自分と同じ不安を抱いているとも限らないので、見知らぬライダーが集まるライディング・スクールや、初めての道を走る走行会に参加するのもちょっと気が引ける…でもどうにかしたい…。

 

そんな気持ちでビッグ&ヘビーなBMWに乗っている人たちが、MSP(Motor Sports Pleasure)の『Private Training』というオリジナルのライディング・スクールを依頼しました。気心知れたバイク乗りが数名集まって、走り慣れた地元の道で、普段のギモン点やニガテ意識を克服するために、いろいろとトレーニングをしてもらおうというわけです。

 

 

「モータースポーツをもっと身近に、もっと愉しく」をモットーに、モータースポーツ全般を通じた様々な可能性を模索・提案するMSP(Motor Sports Pleasure)プロデューサー。イベントの企画からフリーペーパー『MSP通信』(3/6/9/12月)の発行、ライディング・インストラクターなど、精力的な活動を行っている。数々のロードレースに参戦してきた経歴を持ち、2008年もてぎ7時間耐久ロードレースではBMWから参戦、HP2 SPORTで総合優勝を獲得する。2004年にドイツ本国が認めるBMWライダートレーニングの公認インストラクターとなり、普段は初期型R1200GSを文字通り使い倒している。

操作テクニックは基本が出来ていればこそいまさら聞けないこともしっかり教えてもらいます!

まずはギモン点やニガテ意識を確認

参加者たちの意見で一番多かったのが“Uターン克服”についてです。BMWは、低重心とは言っても重いものは重いし、足つき性が良くなっているとは言っても相変わらず地面は遠い。しかもBMWの乾式単板クラッチは操作にコツが必要なもので、油断するとすぐにエンスト、そのまま支えることも出来ずにバタリと倒れてしまいます。ではどうすれば良いのか?

 

齋藤センセイ「バイクを小回りさせる場合は、車体を寝かせた方が回転半径が小さくなって、よりタイトなターンが出来るようになります。ハンドルをフルロック状態にして、直立状態からバンクさせていくと、操舵角が同じでも、実蛇角が増えますよね。白バイ隊員がバイクをペタッと寝かせて、ものすごい小さい回転半径でグルグル回るのはこのためです」

 

地面のフロントタイヤの直線上にテープを貼ってバイクを徐々に寝かせていき、参加者たちは「ほほぅ~」とナットク、確認します。

 

齋藤センセイ「ですが、一般のライダーが同じことをするにはリスクもありますし、路面状況も常に良いわけではないので、バイクを寝かせてのUターン(小回り)は適切とは言えません。ですから、なるべくバイクを起こした状態(直立状態)で回転半径を小さく、しかも安定した状態でターンするのがベターです。その方法としては、まず極低速でバイクを安定させる為に駆動力を与えること、すなわちアクセルを開けることです。ただ、アクセルを開けると当然スピードが出てしまうので、そのスピードをコントロールするためにリアブレーキを併用します。これによってバイクは前に行こうとする力と、地面に抑えつけられる力が働き、モーメントゼロの状況に比べて格段に安定します。この方法はUターンだけではなく、コーナリングでも有効なのでしっかり覚えてください。それからもうひとつ! タイトターンの肝は目線です。真後ろを見るぐらいの感覚で進む先をしっかり見ましょう。バイクは目線の先に向かうものなのです」

 

実際にバイクを使って、極低速走行でも車体を安定させるための理屈を解説してくれるのでとても解り易い。でも実践では…? そのための反復練習です。

 

クローズドスペースでの実技講習。車体をバンクさせるほど回転半径が小さくなりますが…。

クローズドスペースでの実技講習。車体をバンクさせるほど回転半径が小さくなりますが…。

一般道では路面状況が不安定なので、なるべくバイクを起こした状態で回転半径を小さくする方法がベストです。

一部砂利混じりのアスファルトの上で極低速走行の反復練習。常にリアタイヤにトラクションをかけようとしますが、意外と簡単にエンストしてしまいます。

1日のはじまりはその日のテーマを理解してもらうための座学から。これが後につながります。

普段から走りなれた道を移動しますが、座学で聞いた話を思い出しながらいつもと違った感覚で走ります。

ひたすら実践でコツを掴むべし

いつまでも同じ場所でグルグル回っていても面白くありません。ひとしきり練習を行ったら、いよいよ伊豆の快走ルートへ走り出します。しかしただ走っていてはいつもと同じ、走行中は無線機を使ったトレーニングを行います。

 

齋藤センセイ(無線)「目線を意識してますかー? コーナリングラインをしっかりトレース出来るように、意識しながら走ってくださーい」

 

気持ちよく走っていたらつい忘れてしまうところに齋藤センセイから注意が入り、みなさんの背筋が急に伸びるのが後ろから伺えます。Uターンの練習と同様、コーナリングも「目線」が肝。進む方向へ目を向けるということは、走行中も同じなのです。でも、コーナーのどこに目線を置けば…?

 

齋藤センセイ「一般道でのコーナリングラインは、まず左コーナーの場合、アウト側(センターライン側)からイン側(路肩側)、そしてミドル(走行車線の真ん中)へのラインが基本です。左コーナーでは建物や樹木など、道路脇に視界を遮るものが多いので、コーナーの先が見えないままいきなりイン側に寄るのはたいへん危険です。なるべくアウト側をキープしつつ、コーナーの先が見え始めたところでイン側に入り、コーナー出口では走行車線の真ん中につくようにします。そうすれば次へのアクションがより安全に行えます。そしてそのコーナリングラインをトレースするには、目線は側道や側溝、路肩の白ラインを追うようにします。いつまでも先が見えないような回り込んだコーナーでは、自分の頭の中に仮想ラインをイメージする、という方法もあります。逆に右コーナーの場合、目線は常にセンターラインが基本です。注意して欲しいのが、左コーナーとは走行ラインが異なるという点です。アウト側からイン側ではなく、ミドルの位置です。バンクした状態でイン側(センターライン側)に入ってしまうと、身体は対向車線に出てしまい、たいへん危険だからです。右コーナーではイン側へ入らずミドル位置のままコーナーを抜けるようにしてください

 

と、午前中の座学で教わったことを思い出しながら走ります。いきなり「コーナリングラインをトレースしろ」というものではなく、最初は目線の位置を意識して、進む先に点を置き、その点と点を結ぶことで線になり、それが「走行ライン」になります。

 

快走ルートではつい漫然と走りがちですが、無線機を使ったトレーニングは非常に有効、気が引き締まります。

快走ルートではつい漫然と走りがちですが、無線機を使ったトレーニングは非常に有効、気が引き締まります。

目線の重要性を理解してから走り方が変わり、いつも以上に余裕をもってコーナーを走り抜けて行きます。

頭を使うと腹も減る。食事はツーリング先での楽しみのひとつですね。伊豆と言えば海鮮! それにケモノ系のお肉も。

食後は「タイヤの限界域を意識すること」について、齋藤センセイから貴重なお話を聞くことが出来ました。

1日中走り回るのではなく、休憩を多く挟みながら、いつもとはちょっと違ったツーリングを愉しめます。

 

さらに、走っている速度によって目線の位置は遠くに置く必要があります。走行環境を頭で理解してから身体を動かし、マシンを操作して実際に動作するまで、約1秒かかります。1秒もあれば、時速50キロのバイクは約15メートル進んでしまいます。時速100キロならその倍。余裕を見て2~3秒ぶんの距離を置くのがベターなので、時速50キロなら約30~40メートル先、時速100キロなら約60~90メートル先に目線を置く必要があります。

 

齋藤センセイ(無線)コーナリングではアクセルを完全に閉じないで、駆動力で安定させます。リアブレーキをしっかり踏んで速度をコントロールしてください。スロットルはミリ単位で繊細な操作を心がけてくださーい」

 

コーナリング中や交差点を曲がる時など、車体を安定させるためのアクセルワークとリアブレーキの併用は、Uターンやタイトコーナーだけではなく、色々なシチュエーションで有効です。

 

齋藤センセイ(無線)「この先はコーナーの連続です。ステアリングワークで曲がる方向のハンドルを押してバイクを曲げてみましょう

 

「目線」と「走行ライン」という基本を理解してもらったうえで、「安定走法」や「曲げ方」というテクニックもレクチャー。走行距離は短いものの、かなり内容の濃いツーリングとなりました。

もしもに備えたレッスンも希望に応じて

朝から走り始め、明るいうちに元の集合ポイントへ戻ります。普段と違っていろいろ考えながら走ってきたので、みなさんの顔には若干疲労が見られます。しかしここでまたひとつ、倒れたバイクの起こし方をレクチャーして欲しいとの提案がありました。みなさん知りたいことに関しては貪欲です(笑)。これもまた実践で、齋藤センセイの愛車を寝かせて2通りの起こし方を教えてもらいました。フラットツイン・エンジンの場合、左右に飛び出したシリンダヘッドのおかげで完全に倒れることがありません。車体の持ち方、力の入れ方など、コツさえ理解すれば、体格や体力にあまり自信のないライダーでも、結構簡単に起こせてしまいます。でもKシリーズの場合は…? 周囲の人たちに協力をお願いしましょう!

 

今回のスクールでレクチャーしていただいたのは次の5項目です。

みなさんも参考にしてみてはいかがでしょうか?

 

①目線の重要性(基本)

時速×0.3=秒速×2~3秒ぶん先を見る

 

②走行ラインの見極め(基本)

点と点をつないだラインをトレースする

 

③安定走法(テクニック)

駆動力(アクセル)とリアブレーキの併用

 

④曲げ方(テクニック)

ステアリングワークによる軽快な車体操作

 

⑤タイヤの限界域を意識する(基本)

状況に応じた前後タイヤのグリップを考えて安全に走らせる

 

ハンドルを完全に切った状態で、両手で片方のグリップを持ち、上ではなく後ろに倒れる感じで車体を起こす方法。

ハンドルを完全に切った状態で、両手で片方のグリップを持ち、上ではなく後ろに倒れる感じで車体を起こす方法。

オススメはこちら。ハンドルとシート脇辺りを持って、車体に身体を預けるように起こします。

「あ、出来た」と、本人もびっくり。重いことに変わりはありませんが、やり方さえ分かれば出来てしまうものです。

実技レッスンから戻って本日のテーマをもう一度確認。学び、練習し、実践を繰り返し、復習することで、より身につきます。

使い倒されている痕跡がいたるところに見られる齋藤センセイのR1200GS(初期型)。

 

もっと詳しく知りたい! という方は、仲間を集めてMSPのプライベート・トレーニングにお申し込みすることをオススメします。

■MSP『Private Training』に関する詳細はコチラ >>

前列左から、今回のプライベート・トレーニングを受けようとみんなに呼びかけた新田さん、じつは一番質問が多かった山田さん、ドゥカティから乗り換えの寺山さん、後列左から、ハーレーから乗り換えた藤井さん、MSPプロデューサーでありライディング・インストラクターの齋藤センセイ、そしてBMWに乗るのは今日で数回程度という、借り物のR1200RTで参加した川井さんです。

前列左から、今回のプライベート・トレーニングを受けようとみんなに呼びかけた新田さん、じつは一番質問が多かった山田さん、ドゥカティから乗り換えの寺山さん、後列左から、ハーレーから乗り換えた藤井さん、MSPプロデューサーでありライディング・インストラクターの齋藤センセイ、そしてBMWに乗るのは今日が初めてという、借り物のR1200RTで参加した川合さんです。

 

新田 正直さん F800R

「低速走行やUターンなどは、教習所で学習したことをベースに、あとは我流というライダーがほとんどだと思います。実はここに大きな問題があって、バイクの性能は大きく進化しているのに、ユーザー側にその意識が無く、自身でコントロール出来る範疇を超えてしまう…そのような現状を痛感出来る良い機会となりました。プログラムの流れも非常に洗練されていて、トレーニング前と後では、みんなの走りに安定感が見られました。たった一日でこの成果は大満足と言えます。積極的に講師に質問することも重要ですし、なにより気の合った仲間のみという環境が良かったと思います。オートバイを長く楽しむために、このトレーニングは必須だと感じました」

 

山田 晴美さん R1150RT

「全てバイクに乗る上での原点の話で、当たり前のことなんですが、つい忘れてしまうことを改めて意識する良いきっかけになりました。これまで我流で乗ってきたこともあって、その固定概念や先入観といった悪いところが打ち砕かれました。極低速の練習は難しかったです。ステアリングワークについても、実際に意識してやってみて、しっかり理解することが出来ました。人数が少ないので分かり易く説明してもらって、また受けたいと思いました。バイクはスポーツですから、目標や目的を持って乗ることの方が、なんとなく乗っているだけよりもずっと楽しいです! 考えながら走った後の疲労感は気持ち良いものです。この日は家に帰ってグッタリでしたよ」

 

寺山 政幸さん K1300GT

「目線ひとつでこんなに違うとは思いませんでした! 行きと帰りでは走りの余裕が全然違いましたね。目線が大事ということはクルマの運転でも知っていましたが、バイクで改めてそのことについて意識してみたら、とても重要だということに気付かされました。それにリアブレーキをあんなに積極的に使うなんて! 低速ターンだけじゃなく色々なシチュエーションでも安定した走行に役立って、それが安心につながり、不安感が無くなって、気持ちの余裕が出来ました。齋藤センセイの言うことを素直に聞けたのは、やっぱり生徒がみんな仲間だったからだと思います。他人の前だと緊張するし、失敗したくないという気持ちが出てしまいますが、知り合いの前なら素直に言われたことを出来るし、気軽に質問も出来て良いですね」

 

藤井 陽介さん K1300GT

「スクールやレッスンと言うと敷居が高いイメージがあって、あまり速く走るつもりもなくバイクに乗っていたので興味はありませんでした。でも少人数でカスタマイズされたスクールで、公道の中で役に立つテクニックをとても親身に教えてもらえたのが良かったですね。普段走るルートでも新しい発見があって、今まで意識していなかったことに意識出来る、視点を持てるようになったのは大きな発見です。大きいバイクでゆっくり走ることは、なんとなくやっていただけで意識はしていなかったのですが、改めて教わってみると、とても有意義ですね。バイクは速さよりも、日常の中で取り回しやUターンなどゆっくり走ることの方が多いですからね。支払った受講料は適正、むしろ安いくらいだと思います」

 

川井 充也さん R1200RT

「今回は借り物のBMWで初めてR1200RTに乗らせていただきましたが、クラッチ操作が不慣れで最初の低速走行の練習では何回かエンストを繰り返してしまいました。スロットル操作で駆動力を残しながら、リアブレーキの併用で速度コントロールする安定走法は、下りコーナーではちょっと怖かったです。でも、やってみるとあんなに安定感があって、しかも綺麗に曲がれることが分かって、とても良い勉強になりました。体重移動せずにステアリングワークで曲がるというのも不思議でした。今まで国産スポーツ系バイクに乗ってきましたが、今回のレッスンでは知りもしなかったことばかりで、今後も役立つ経験でした。鈴鹿8耐経験者の齋藤さんにはレースの話も聞きたかったですね!」

 

MSP『Private Training』に関する詳細はコチラ