VIRGIN BMW | 第4回 アールズ時代 BMWバイクの歴史

第4回 アールズ時代

  • 掲載日/2006年12月01日【BMWバイクの歴史】
BMWバイク歴史の画像

クラシックBMWの名車
アールズ・フォークの時代

「R51/3」、「R67」で、新開発モデルの生産を再開したBMWは、その後「R68」や「R25/3」など各部をさらにブラッシュアップしたモデルを開発、販売を開始します。戦後しばらくは新機軸のモデルの発表がなかったBMW。

この新モデルは、モーターサイクル部門への情熱が未だに熱いものであるのを感じさせてくれる動きといえるものでした。そんな周囲の期待通り、1955年には現在でも名車としてその名が高い3モデル「R26」、「R50」、「R69」が登場します。

この3モデルの大きな特徴としては、従来のテレスコピックフォークでなく「アールズ・フォーク」と名づけられた独創的なサスペンションシステムが採用されたことが挙げられます。ブレーキをかけた際、フロントが沈み込むいわゆる「ノーズダイブ」が抑えられるサスペンションで当時としては画期的なものでした。リアサスペンションも一新され、従来のBMWに比べ乗り心地は多いに進化したモデルです。

各部の信頼性も非常に高いものとなり、BMWへの名声をさらに高めました。発売から50年以上たった今もなお「アールズ・フォーク」モデルが名車として人気を博しているのは、当時としては高いクオリティ、高級感が漂うスタイルを考えると、不思議なことではありません。ただ、当時は「アールズ・フォーク」モデルの販売実績は振るわず、後にBMWが赤字転落する一因となりました。

50年代末のBMW
企業存続の危機に面していました

BMWにとっての50年代はモーターサイクル部門、自動車部門の復興が始まった年代でもありますが、深刻な赤字に見舞われ、企業としての存続が危ぶまれた年代でもあります。各部門での好調な販売実績が、50年代後半には陰りが見え始め、50年代末には会社を身売りする一歩手前まで追い込まれたのです。「メルセデス・ベンツ」がBMWを買収する…そんな話が成立寸前まで進んでいました。

もしこの買収が成立していたら、現在のBMW Motorradの歴史はまったく違うものになっていたでしょう。もしかするとBMWからモーターサイクル部門はなくなっていたかもしれません。BMWのこの危機を救ったのは、ドイツ有数の富豪として知られる「クヴァント家」でした。BMWはクヴァント家の著名な銀行家であった「ヘルベルト・クヴァント」に支援を受け、一部部門を売却した結果、再建の道を歩み始めることになるのです。

企業存続の危機の間も、BMWのエンジニアたちはモーターサイクルや自動車の改良、最新モデルの開発は怠っていませんでした。60年代に入るとモーターサイクル部門では「R50S」、「R69S」の販売が開始されました。走行性能を高めたアールズ・フォークモデルが、世界中で販売されました。

この両モデルは60年代を代表するモデルとして、またクラシックBMWの名車として、その名を世界に轟かし未だに根強い人気を誇っています。モーターサイクルとしての名声は高かったBMWですが、ビジネスとしての観点からは、モーターサイクル分野からの撤退も議論されており、BMW Motorradは決して順風満帆ではありませんでした。

大きな方向転換を遂げた
1969年からのBMW Motorrad

撤退かどうか、そこまでの議論が交わされたモーターサイクル部門ですが、BMWは続行の意思を固めます。モータリゼーションの波が進み、日常の足としてのモーターサイクルの存在意義は薄く、BMWは自動車の販売を主とした企業へと移行していきました。その中でBMW Motorradは高級な趣味の乗り物として、そのブランドを高めていくことが決断されます。アールズ・フォークのBMWはその流れには合っていましたが、技術革新が甚だしい他メーカーのモーターサイクルに対抗するためには革新が必要とされていました。

1969年に新しく発表された「R50/5」、「R60/5」、「R75/5」は、フラットツインという伝統は守りつつも、未だかつてないほど多くの新機構の採用が行われています。エンジン潤滑方式やカムシャフトの位置、そしてアールズ・フォークと決別し、再びテレスコピックフォークを採用したのです。BMWのこの思い切った方針転換は大いに議論を呼びます。伝統に基づいた従来モデルとは、ガラリと機構を変えてしまったBMWに対して、批判的な意見もありました。

しかし、それから半世紀以上たった現在、1969年以降のBMWも名車として評価されていることを見ると、当時のBMWの判断は正しかったと言えるのでしょう。「伝統的な部分は頑なに守るけれど、新しいことへのチャレンジを恐れない」脈絡と、BMWに受け継がれてきたこの精神が感じられる変革の時期が1969年から始まったのです。

この時期に発表された代表的なモデルで、現在でもその名が高いのは、スタンダードなスタイルが今でも人気の「R75/5」。そして世界で初めてビキニカウルが採用された「R90S」でした。「R90S」はスポーツを表す「S」という名を冠した初めてのモデルで、900ccという当時の最大排気量と強化されたブレーキ性能から高い人気を博しました。

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