VIRGIN BMW | R1200GS インプレッション “GS”が陸の王者たる理由 ステージ別徹底インプレ

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BMW Motorrad R1200GS

R1200GS インプレッション “GS”が陸の王者たる理由

  • 掲載日/2017年03月14日【ステージ別徹底インプレ】
  • Text / Tomohiko Nakamura  Photo / Naoyuki Shibata

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ライバル勢を圧倒する抜群のトータルバランス

80年から発売が始まったフラットツインのGSと言ったら、アドベンチャーツアラー界の先駆車にして、長きに渡ってこの分野を牽引してきた盟主である。もっとも当初は異端児的な存在だったGSが、幅広い層のライダーから支持されるようになったのは、オンロード性能に磨きをかけたR1100GSが94年に登場してからで、その人気が飛躍的に高まったのは、(オフロード性能を含む)全方位の性能向上を実現したR1200GSが04年にデビューしてから。そして、新世代の空水冷ユニットと多彩な電子制御を導入した最新型が13年に発売され、3年が経過した現在、GSの人気は盤石と言えるレベルに達しているようだ。

とはいえ、近年の2輪業界では“打倒GS!”をコンセプトに掲げる魅力的なライバル車両が続々と登場しており、正直な話をすると、最近の僕は他社製アドベンチャーツアラーを試乗した際に、“GS、ヤバイかも?”と感じたことがある。だから久しぶりにR1200GSをじっくり走らせるにあたって、僕の気持ちは期待と不安が半々だったのだが……。

うーむ、やっぱりコイツは陸の王者だなあ。当企画用の試乗と撮影を終えた僕は、しみじみそう感じたのだった。例えばコーナリングスピードやオフロード性能、トルクの太さ、最高速などといった要素をひとつずつ検証してみると、GSは必ずしもクラストップではない。でもマシン全体のトータルバランスなら、相変わらずGSはライバル勢を圧倒する天下一品の能力を備えている。おそらく、アドベンチャーツアラーの経験が豊富なライダーを集めて、“今から宗谷岬か佐多岬まで、あるいはユーラシア大陸を横断してポルトガルのロカ岬まで行くなら、どのモデルを選びますか?”という質問をしたら、誰だってGSを選ぶだろう。

余談だが、約20年前から2輪雑誌の仕事をしている僕は、GSの構造を徹底的に研究しているはずの他メーカーが、なかなか打倒GSを実現できないという事実が、昔から不思議だった。でも今回の試乗中に、はたと気づいたのである。そうか、GSの絶大な安心感と信頼感は、フラットツインというエンジン形式だから実現できたのかと(何を今さらの話だが)。どうりで他メーカーがどんなに創意工夫を凝らしても、GSから王者の座を奪えないわけだ。

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GS人気を決定づけた04年型。最高出力はフラットツイン史上初の100psで、重量はR1150GSより20kg以上軽い240kg。

ワインディング

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なぜ自信を持って飛ばせるのか?

僕の人生初GSは、96年に乗ったR1100GSである。当時の僕は2輪雑誌の仕事を始めたばかりで、諸先輩方と一緒にワインディングを走ると、いつもあっという間に引き離され、自分の技量の至らなさが身に染みてばかりだったのだが、GSに乗ったときは、意外なことに先行する諸先輩方の背中を見失わなかった。当時からGSの運動性能は侮れないと言われていたけれど、まさかこんなにデカくて重くて曲がらなさそうなバイクで(←当時の感想です)、ベテラン勢について行けるとは。改めて考えると、GSが世界中で大人気を獲得した背景には、僕のように感じたライダーが多かった、という事情もあるのかもしれない。

言ってみれば昔からGSには、自分の技量が上がったかのように感じさせてくれる包容力が備わっていたのだ。その包容力のベースにあるのは、乗り手の身体を自然にリラックスさせてくれるアップライトなライディングポジション、安定したジャイロ効果を生み出す19インチの前輪、路面の凹凸を軽やかにいなしてくれる前後サスペンション、どんな状況でもフルブレーキングを可能とするテレレバー、そして絶妙の直進安定性&旋回性に貢献することに加えて(一般的な横置きクランクのエンジンとは異なる特性で、コーナー進入時に妙な粘りや抵抗を感じない)、穏やかで優しいトルクを発揮するフラットツインエンジン、だと僕は思っている。中でもテレレバーとフラットツインは、R1100/1150/1200GSの躍進を語るうえでは欠かせない要素だろう。

そしてもちろん、ここまでに述べた資質と構造は、現行GSにもきっちり受け継がれている。と言うか、エンジン特性を任意で選択できるライディングモードや、状況に応じて前後ショックのダンパーが変化するセミアクティブサス、後輪の滑りを抑制するトラクションコントロール、かつてより格段に洗練されたABSなどを導入した現行GSに乗ると、自分の技量が上がったどころか、無敵? という言葉が頭に浮かぶ。

もっとも、見通しがいい良路だけなら、GS以上の快感と速さが味わえるモデルはいくらでもあるだろう。でも刻一刻と状況が変化するうえに、常に一寸先は闇という心構えが必要な現実のワインディングで、GSほど自信を持って飛ばせるモデルは、なかなか存在しないのである。

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BMWが独自に開発したテレレバーの本来の目的は、操舵と衝撃吸収という2つの仕事を分離すること。現行モデルではGSとRTのみが採用。

高速道路

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鼻歌交じりのハイスピードクルージング

海外の2輪雑誌のテストによると、現行R1200GSのトップスピードは220・/h前後のようである。今どきのビッグバイクの中では、この数値は取るに足らないものだし、他社製アドベンチャーツアラーの中に240・/h以上をマークするモデルが存在することを考えると、GSの性能を物足りなく感じる人がいるかもしれない。でもそれは、早計というものだろう。高速巡航という視点で考えれば、GSは驚くべき資質を備えているのだから。

と言っても、この要素に関してはライダーの技量と体力で印象が変わってくるので、僕とは異なる意見の人もいるはずだが、技量が万年中級で体力が年式相応(70年生まれの45歳)の僕が、過去に他誌の企画で何度かアドベンチャーツアラーの比較試乗に参加した際に、帰路の高速でいつも乗りたくなるのはR1200GSだったのだ。何と言ってもこのバイクは法律的に許されるなら、最高速付近での巡航が鼻歌交じりでできてしまうのだから。対する他社製アドベンチャーツアラーは、絶対的な速さがGSより上でも、心身が疲れてくると徐々に速度が落ちて来るのが普通で、逆に心身が疲れた状態でハイスピードを維持するには、かなりの精神力を必要とする。

どうしてそんな違いが生まれるかと言うと、それはやっぱりR1200GSが直進安定性に大いに貢献すると言われている、クランク縦置きのエンジンを採用しているから……ではないだろうか。もちろん、クランクが縦置きなら何でもかんでも高速巡航がイージーかと言うと、必ずしもそんなことはないのだけれど、よくよく考えると縦置き90度Vツインを搭載するモトグッツィの一部機種にも、GSに通ずる資質は備わっている。いや、そうするとGSと言うより、BMWのRシリーズ全般に通ずる話になってしまうのだが、いずれにしても近年のアドベンチャーツアラーの中で、R1200GSがライバル勢を圧倒する、高速巡航性能を持ち合わせているのは事実なのだ。

そんなGSに唯一の異論を述べるとしたら、スピードが出ている感が希薄なことである。このバイクに乗っていると、本人的には安全運転でも、周囲からは飛ばし過ぎとみられる可能性が高い。だからR1200GSを試乗する際、僕はいつも“自重”の二文字を念頭に置いている。

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R1200GSの高速巡航を語るうえで欠かせないのが、一定速度の維持を容易にするクルーズコントロール。操作は左側スイッチボックスの上部のボタンで行う。

市街地

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市街地でも享受できる万能車の資質

BMWバイクスの編集部は世界でも有数の深刻な渋滞地帯、東京のど真ん中にある。その周辺を巨体のR1200GSで、しかも通勤時間帯に走るとなったら、たいていの人はイヤな顔をするに違いない。とはいえ、過去に何度か仮オーナー気分になって、このバイクを編集部と自宅の往復を含めた日常の足として使った僕は、GSで走る市街地がそんなに嫌いではないのだった。

市街地で感じるGSの最大の美点は、アイポイントの高さだ。一般的なロードバイクより遠くを見渡せるこのモデルは、先を見越したライン取り? が行えるから、混雑した状況でも意外にストレスが溜まらない。それに加えて、フロントサスペンションがほとんどノーズダイブしないおかげで、突発的なフルブレーキングが落ち着いてできることも、テレレバーを採用するGSならではのメリット。言うまでもなくこのメリットは、他車の急な進路変更/停止や歩行者の飛び出しなどに対して、絶大な効力を発揮する。さらに言うなら道路状況や自分の体調に合わせてエンジン特性が変更できることも、GSの魅力と言えば魅力だが、それは市街地に限った話ではないし、他のフラットツインやK/Sシリーズでも味わえる資質なので、それについてはBMW全般の魅力と言うべきなのだろう。

逆に市街地で感じるネガティブな要素としては、フラットツイン特有のエンジンの左右への張り出しが挙げられるものの、この点は慣れればまったく気にならなくなるし、そもそも近年のフラットツインは、左右幅をできるだけ抑えた構成になっているうえに、シリンダーヘッド位置がかつてより高めに設定されているから(前後サスストロークが長いGSは、他のRシリーズより高め)、路肩を走行する際も気遣いはほぼ無用。だからと言って、ミドルクラス以下の車両のように水スマシ的な走りができるわけではないけれど、GSの万能車としての魅力は、市街地でも十分に堪能できるのだ。

ちなみに、R1200GSで信号待ちの最前列にいると、目の前を横断する歩行者から熱い視線を感じることが多く、僕自身はこれもGS特有の魅力だと思っている。もっともそういう点では、フルパニア状態のR1200GSアドベンチャーやK1600シリーズのほうが、優れた資質を持っているのだけれど。

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現行Rシリーズの空水冷フラットツインは、左右幅を抑えるため、DOHC4バルブの動弁系にS1000RRと同様のロッカーアームを投入している。

オフロード

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巨体で悪路を疾走する充実感

R1200GSのオーナーの中で、オフロード好きの比率は、全体の20%にも満たないそうである。装備重量が245・で価格が232万6000円という事実を考えれば、それはまあ当然のことだと僕は思う。

とはいえ、仕事としてこれまでに何度もR1200GSでオフロードを体験した僕は、このバイクの悪路走破性を満喫しないのはもったいないとも思うのである。何と言っても現代のGSは、ライテクが万年中級の僕ですら、路面の凹凸に弾かれながら全開加速をしたり、コーナーでちょっとリアを流したりといった、オフロードの楽しさが気軽に堪能できる特性になっているのだから。

ただし、単純にオフロードを楽しみたいだけなら、車重が軽くて価格が安い、250・以下のトレール車を選ぶのが正解だ。GSで走るオフロードは、見方によっては悪戦苦闘の連続で、門外漢からするとそれは不思議な行為かもしれない。でも巨体のGSでグリップの悪い路面を走っていると、他では得られない、何とも言えない充実感が手に入るのである。その充実感にはちょっとした中毒性があって、だからこそ一部のコアなGSオーナーは、オフロードランにハマっているのだろう。

GSシリーズが抜群のオフロード性能を獲得できた背景には、大前提として豊富な前後サスストロークや悪路走破性を重視したディメンション&ライディングポジション、優しさとダイレクトさを兼ね備えたエンジン特性などがあるのだけれど、近年のGSの進化を語るうえで欠かせないのが、乗り手を優しくサポートしてくれる電子制御だ。この点は日進月歩の世界で、ABSやトラクションコントロールの洗練度が増し、セミアクティブサスが導入された13年型以降のGSは、歴代最高の悪路走破性を身に付けている。

なお電子制御と言えば、現行GSにはエンデューロプロというモードが存在するものの、これはブロックタイヤ+ベテランライダー専用で、ノーマルタイヤ+普通のライダーが選択すると、手強いを通り越して恐怖を感じる可能性が高い。実は今回の試乗で僕は、モノは試しとエンデューロプロでオフロードを走ってみたのだが、適度にABSとトラクションコントールが介入してくれるエンデューロのほうが、確実に乗りやすくて安心という印象を抱いた。

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07年の導入当初はABSセンサーのみを用いて後輪の滑りを抑制していたASC:オートマチックスタビリティコントロールだが、R1200GSを含めた現行Rシリーズは、複数のセンサーを介してキメ細かな駆動力の制御を実現している。

タンデム

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快適さが共有できる秀逸な設計

タンデムランで最も重要なものは何かと言ったら、それはパッセンジャーに対する“気遣い”だろう。ただし近年のBMWなら、その気遣いはごくわずかで済む。中でも走行中に車体の姿勢変化が少ないR1200GSとRTは、ソロとほとんど変わらない乗り味が楽しめる特性になっている。以下は今回の試乗でタンデムライダーを務めてくれた、TOMOの言葉。

「とにかくもう、快適のひと言ですね。座面が広くて肉厚なシートは座り心地がいいし、アシストグリップはつかみやすいし、大きなスクリーンのおかげで走行風はほんの少ししか当たらない。あまりに快適なので欲が出て、バックレストが欲しくなりましたけど(笑)、この感触なら1日500・くらいは余裕でイケそうです」

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R1200GSのライポジはパッセンジャーの快適性に配慮した設計になっている。乗降時は最初にタンデムステップに左足を乗せるのが基本で(左)、一般的なバイクのようにいきなりシートに跨るのは(右)、かなり難儀?

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