VIRGIN BMW | F800S(2006-) 試乗インプレ

F800Sの画像
BMW Motorrad F800S

F800S(2006-)

  • 掲載日/2008年10月02日【試乗インプレ】
  • 取材協力/BMW Motorrad Japan  取材・写真・文/バイクブロス・マガジンズ編集部

BMWの次世代を担う
親しみやすいスポーツマシン

BMWは、ここ数年で最もイメージが変わった活気溢れるあるメーカーだ。これまではどうしても大型ツアラー、年輩のライダーが好む「アガリバイク」というイメージが強かったが、最近では超高速巡航、見た目とは裏腹の軽快さを見せるスポーツツアラーから、オンロード/オフロードの両フィールドで、これまで無かったピュアスポーツマシンも登場している。そんななか、近年もっとも変化を印象付けたモデルといえば、F800SとF800STではないだろうか。

新開発の水冷並列2気筒エンジンを搭載し、価格帯は100万円台からの安価な設定とされたF800Sは、明確にBMWの変化を感じさせるものだ。大型のツーリングスポーツと、趣味性の高いデュアルパーパスモデルを中心としたラインアップの中、ごくスタンダードなスポーツバイクとして登場したF800Sは、まさに新規顧客層の開拓を狙ったエントリーモデルとも言える。事実、店頭に並ぶと同時に大ヒットとなり、販売店では多くの飛び込み客による指名買い、納車待ちが発生したほど。各バイク専門誌でも大きく取り上げられ、日本人の体格や道路事情を考慮した場合、まさにど真ん中に位置するスタンダードバイクとして評価された。

また、F800Sに搭載された新型エンジンは、リッター未満、中型以上というミドルクラスを拡充する意欲的なもので、現在は新型F650GSというデュアルパーパスモデルにも搭載され、来年早々には、そのさらにその上の領域を愉しむためのF800GSが登場予定。BMWというバイクのイメージを大きく変えたF800Sの実力を、試乗を通して早速体感してみようと思う。

F800Sの特徴

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扱いやすいサイズとスペック
ジャストサイズのパッケージング

F800Sは、これまでのBMWと比較すると驚くほどコンパクトだ。跨った時の印象は400ccのネイキッドバイクと感じてしまうほど納まりがいい。シート高は790mm(国内標準仕様のローシート)でスポーツモデルとしては標準的なもの。女性の場合は少し高く感じてしまうかもしれない。ちなみに身長174cmの筆者の場合、跨った状態で両足のつま先が接地するので特に不安を感じることはなかった。車輌重量はおよそ210kg(満タン、走行可能状態)となっているが、シート下に配置された燃料タンクなど、重量マスの低重心化により取り回しはいたって良好。実際に斜度のついた駐輪場に停めてから動かしてみたが、教習所で習ったようにバイクを動かせば、特に苦も無く車輌を出すことができた。ライディングポジションはややアップライトなハンドル位置もあって、前傾ながら腰への負担は控えめ。大型バイクはこれがはじめて、というライダーでも、F800Sなら不安なく扱えそうだ。

F800S最大の特徴とも言えるのが、このモデルにあわせて新開発された798cc水冷並列2気筒エンジン。オーストリアのロータックス社とBMWで共同開発され、最高出力の90%を5,000rpmで発揮するように設定されており、非常にドライバビリティが高い。また、第3のコンロッドとも呼べるバランサーアームを内蔵しており、振動を抑えた滑らかな吹け上がりを実現している。

足回りは標準的なテレスコピックフォークと片持ち式スイングアームの組み合わせだが、駆動にはシャフトやチェーンではなく、ベルトドライブを採用しており、軽量でありながらメンテナンスフリーを実現。ベルトの寿命はおよそ走行距離4万kmと、交換のサイクルにも余裕がある。ブレーキは前後ともディスクを採用しており、メーカーオプションでABS装着の選択も可能だ。サイズ、スペックだけでなく、扱いやすさという面においても、F800Sはスタンダードなスポーツモデル以上の仕上がりとなっている。

F800Sの試乗インプレッション

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誰もが愉しめる高性能
BMWならではの世界

F800Sにまたがり、並列2気筒エンジンに火を入れると、迫力のある低音のエキゾーストノートに驚く。しかし、決して大きいということではない。控えめながらも、しっかりと存在をアピールするサウンドだ。軽く手首を返してみるとレスポンスも良好で、元気のよいサウンドは自然とライダーを「やる気」にさせてくれる。BMW独特のウィンカースイッチは、最初は戸惑うものの、すぐに慣れるので気にするほどでもないだろう。ライディングポジションやシートの座り心地は、まるであつらえたかのようにしっくりとくる。

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ゆっくりとアクセルを開けて走りだすと、予想以上の扱いやすさにまた驚かされた。東京の昼、しかも中心部の渋滞でありながら持て余すことが無い。低速のトルクは太く、スロットルからパワーの立ち上がりが伝わってくるかのようにコントロールがしやすいのだ。かといって物足りないかと言えばそんなことは無く、アクセル開度にあわせて必要なだけのパワーを簡単に引き出せる。高速道路の追い越しはもちろん、ワインディングでのコーナー立ち上がりなど、いまここでこれくらいの推進力が欲しいというときに、まるで自分がエンジンとつながっているかのような一体感、フィーリングを感じさせてくれるのだ。

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また、ブレーキ性能の良さは特筆すべきレベルで、フロントにダブルディスク、リアがシングルというごく一般的な構成ながら、レバータッチが抜群に良く、車体に応じてしっかりとバランスされていることが分かる。引き込みに応じて素直に立ち上がる制動力は、まるで指先で直接ローターを制御しているかのような感覚で、ストップ&ゴーの多い街中からワインディングまで、ステージを選ばず安心感のあるブレーキングを楽しめる。足回りも安定志向になっており、国産スポーツのように、マシンに任せて切り込んでいくような曲がり方には不向きだ。しかし、ライダーが操りやすい素直な特性のため、「腕に覚えあり」なベテランはもちろん、初心者でも積極的に入力を行えば、レベルに応じたコーナーリングを愉しめてしまう。F800Sは、エンジン、ブレーキ、足回りともに、本当にコントローラブルだ。時間さえ許せば、もっと多くの道でこの扱いやすい高性能を試してみたかった。

こんな方にオススメ

初心者からベテランまで愉しめる
真にスタンダードなスポーツバイク

これからスポーツバイクを愉しみたい、というライダーにオススメするなら、F800Sは最右翼に位置するマシンだと言っても過言ではない。素直で扱いやすいということは、見た目のスペック以上に重要なもの。F800Sから始めれば、無理なくライディングスキルを積み重ねていけるだろう。また、この扱いやすさはベテランライダーにもおすすめしたい。「扱い易さ=底が浅い」では決してないのだ。この辺りはさすがBMWと言うべきか、扱い易いだけに留まらず、扱えるからこそよりエキサイティングな走りを愉しめてしまう。その気で走れば公道の速度域では収まりきらない性能を持ち合わせているのは間違いない。

ひとつ注意したいのは、いつものコーナーを、いつもより高い速度域で旋回できてしまうという点だ。これは決してライダーのスキルが上がっているワケではなく、ライダーのレベルに応じて、マシンがそれなりのパフォーマンスを発揮しているに過ぎない。ある程度のスキルを持つライダーにのみ扱えるマシンはいくらでもあるが、F800Sのように、無理せず自分の身の丈レベルかそれよりもチョット上のレベルを体感させてくれるバイクは、そうあるものではない。もし心が躍るスポーツバイクをお望みなら、F800Sは是非一度体験して欲しい。

クローズアップ

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日常域からスポーツ走行まで対応
最新技術の多目的ユニット

BMWのトレードマークで在り続けるボクサーエンジン。しかしBMWは並列多気筒エンジンや単気筒エンジンなど、1メーカーでありながらバラエティに富むエンジンを創出してきた。そこへ新たに加えられたパラレルツインエンジンの登場が意味しているものは、これまで存在しなかった、他メーカーに競合するミドルクラス・モデルのギャップを埋めるための戦略的モデルをラインナップした、ということだ。シングルの旧Fシリーズ同様、エンジン製造の名門、オーストリアのボンバルディア・ロータックス社との共同開発によって生み出されたこのパラレルツインエンジンの登場により、BMWの新たな脈流が生まれたのだ。

パラレルツインは、決して目新しいエンジンデザインではないが、その技術進歩には他メーカーにはない、BMW独自の努力が見られる。先に登場した、横置きクランクシャフト並列4気筒エンジンのKシリーズから応用されている部分も多く、超が付くほどコンパクトなエンジンボディは、最も効率的にパフォーマンスを発揮するためのもの。最適な圧縮比は極端に狭いバルブ角によって実現しており、それはF1エンジン直系のつくりを示している。

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ハイパワーを求める4気筒エンジンのKシリーズに対し、2気筒エンジンのF800が求めるコンセプトは明らかに異なる。低い速度から滑らかに走り出す理想的なトルクカーブは、先代Fシリーズのシングルエンジンを正当に継承するものだ。85psの充分なパワーを全域で引き出すことが出来るのは特筆すべき点だろう。

コンパクトなヘッドには4バルブDOHCのメカニズムが効率よく収められ、潤滑はドライサンプ方式を採用。単気筒モデルのF650CS以来の採用となるベルトドライブによる2次駆動が採用され、ローメンテナンス化と低振動も実現している。さらに、360度クランクの中央には慣性力をキャンセルするバランサーロッドが連結され、効果的にエンジン振動を抑制。これにより、高回転を許容し、スポーツモデルをはじめとするさまざまなモデルへの搭載が可能な汎用性も獲得している。

F800S プロフェッショナル・コメント

扱い易さが魅力のF800S
スポーツライドを存分に味わえる

これまでBMWのFシリーズといえば、シングルエンジンの650ccデュアルパーパスモデルやシティコミューターがありましたが、それを継承する、この新開発の800ccパラレルツインエンジンのポテンシャルは非常に好感が持てます。低速から高速まで、スムースな回転の上昇と、バランサーロッドによる不快な振動の低減、コンパクトな車体設計など、老若男女問わず、とても扱い易いスポーツバイクとなっています。市街地から長距離ツーリング、ワインディングやサーキット走行など、ほぼ万能にライダーの望みを叶えてくれるのです。私もお客様と一緒になってサーキット走行を愉しませていただいているのですが、サーキットデビューの初心者の方にも、安心しておすすめできます。事実、F800S/STをご購入されたお客様のなかには、ツーリングもサーキット走行も、この1台で愉しまれている方もいらっしゃいます。オンロードのあらゆるシチュエーションで、常に平均点以上の満足度を感じさせてくれる愉しいバイクですよ。是非一度、試乗体験されることをおすすめします。(Motorrad SHONAN 滝本 幸一さん)

取材協力
住所/神奈川県大和市下和田953
電話/046-269-1377
営業時間/10:00-19:00
定休日/火曜日(年末年始12月29日~1月5日)

F800S の詳細写真

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Fシリーズのために開発された
並列2気筒798ccエンジン

BMWがミドルクラスを開拓するために開発した、水冷並列2気筒エンジン。バランサーアームによる振動を抑えた滑らかな吹け上がりが特徴。また、エンジンサイズが小さく車体のコンパクト化にも貢献している。
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ローメンテナンスのベルト駆動
新開発の幅広ベルトで長寿命を実現

F800S/STの駆動系はコッグドベルトを使用。最初にテンションを正しく調整すれば、チェーンと違い頻繁なメンテナンスは不要。ベルトは新開発の幅広タイプとなっているため、耐久性が高く交換サイクルも長い。
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安心感のあるブレーキングを楽しめる
高性能ブレーキシステム+ABS

フロントは320mm径ダブルディスク、リアに265mm径シングルディスク、前後ともブレンボ製キャリパーを採用。操作性と制動力を両立したブレーキフィールを持つ。また、メーカーオプションでABSが設定されている。
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個性的なフロントマスク
低めのスクリーンは防風性も十分

異形ヘッドライトユニットが独特の表情を持つ。ライトの光量はナイトランでも全く問題が無い。ウィンドスクリーンは低めだが、先端部の折り返しや形状から、空気の剥離もスムースで、見た目以上に防風性能は高い。
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