VIRGIN BMW | S1000RR(2010-) 試乗インプレ

S1000RRの画像
BMW Motorrad S1000RR

S1000RR(2010-)

  • 掲載日/2010年04月02日【試乗インプレ】
  • 取材協力/BMW Motorrad Japan  写真/BMW BIKES編集部  取材・文/バージンBMW編集部

ロードレースからストリートまでカバーする
BMW Motorrad 初のスーパー・スポーツ・マシン

BMW Motorrad が、いわゆる一般的な横置きクランク直列4気筒エンジン搭載モデルを市販化したのは、2004年に登場した K1200S から。直列4気筒エンジンでありながらシリンダを極端に前傾させることで重量物を低く配置し、ボクサー・ツイン同様の低重心化、さらに長いホイールベース、特徴的な独自のサスペンション機構によって優れた直進安定性と旋回性能を実現、超高速スポーツ・ツアラー・セグメントを拡充した。そんな BMW Motorrad 史上最強のパワーを誇るモデルがある一方で、同じく別カテゴリの直列4気筒エンジンの開発は進められ、2009年3月、それは市販車をベースにチューンナップしたマシンで戦うロードレース、『 WSBK (スーパーバイク世界選手権)』の舞台に現れた。

S 1000 RR に搭載される排気量 999cc の直列4気筒エンジンは、最高出力 156ps/10,000rpm、最大トルク 110Nm/10,000rpm を発揮するまったくのブランニュー。WSBK への初参戦は結果として表彰台に立つことは無かったが、レースの舞台で様々な調整作業が行われ、後半は予選上位に顔を出すまでになった。そして翌 2010年には一般ユーザーへ向けて販売を開始し、レース2年目を迎える。

S1000RRの特徴

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全てが新しいもうひとつのセグメント
『S』シリーズの登場

シャフトドライブや独自のサスペンション機構、ツーリングに適した様々な装備などが「イコール BMW 」バイクであり、それはスポーツ・セグメントにおいても相当する。しかし S 1000 RR に関しては、それらの装備・機構は全く見当たらず、完全にスーパー・スポーツ・マシンとして割り切られている。テールアップ、ノーズダウンのシルエットは他メーカー同セグメントのマシン同様定石を踏まえており、そこから BMW であることの特徴は見つけにくい。

しかし各部を見てみると、まずフロントマスク、サイドフェアリングのデザインが左右非対称となっており、これはメーカーのアイデンティティのひとつを表している。また軽量なアルミニウム製燃料タンクの採用、空力学的に最適化されたウィンドシールド、その下に見えるフレーム中央部に配したエアインテーク、アルミニウム製薄型スイングアームなど、他メーカーのスーパー・スポーツ・マシンと同様、もしくは独自の造り込みも随所に見られる。レース・シーンで磨き込まれたスポーツ性能から、市販モデルにも強靭な足回り、ブレーキシステムが装備されていることは言うまでも無い。

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最も特徴的なのは、手元のスイッチで簡単に切り替えが可能な「3+1」のエンジン・モードが設定されていることだろう。このモードはスロットル操作による出力アップを電子的に抑制し、なおかつプレミアムラインには標準装備の「DTC + レース ABS」の介入を調整するもの。「レイン」⇒「スポーツ」⇒「レース」それにサーキットでの使用に限定した「スリック」という4つのモードがあらかじめセットされており、ライダーの要求に対してダイレクトに応えるような設定を選べるようになっている。スリックモードにするにはライセンスプレートベースの取り外しや別途「コーディングプラグ」が必要となる。

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DTC (ダイナミック・トラクション・コントロール)は前後ホイールの空転を検知してエンジントルクを制御、レース ABS は精緻な制御信号により、各モードに応じて減速度の制限が細かく設定されている。また、プレミアムラインには K1300S や R で採用された HP シフトアシストが標準装備され、どのエンジン・モードであっても、アクセルを戻すことなくスムーズなシフトアップが可能。

さらにユニークな機構としては、前後サスペンションのコンプレッションとリバウンドの設定が、メインキーの先端部分を使って簡単に調整出来る点が挙げられる。これは明らかに一般ユーザーを想定したもので、どれくらい回転させたのかが一目瞭然なように「1」から「10」まで目盛りが刻まれている。メーカーはユーザーに対して、プリロードはあらかじめ工具で決めておき、シチュエーションに応じて積極的に調整することを勧めている、と理解出来る。

ほかにも、エンジンの軽量・コンパクト化を実現したことでスイングアーム長を 592mm まで延長し、同セグメントにおいて最長の部類に入ること。エアクリーナーボックス内に採用された可変式インテークマニホールド、それにエキゾースト・ラインに設置されたバルブなどによって、最適なトルクカーブと最高出力を実現しているなど、この1台に投入された技術はどれもが特徴的と言える。

S1000RRの試乗インプレッション

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サーキットでもストリートでも
悠々とスポーツ・ライディング

プレス向け試乗会がサーキットで行なわれたことからも、このモデルが純粋にスポーツを愉しむためのモーターサイクルだ、というメーカーの思惑が伺える。会場となったサーキットは、前日までの雨で路面はハーフウェット、数箇所水溜りも見られるような状態、しかも非常に寒い。もともと前傾ポジションのバイクはニガテな上にこのシチュエーションは、サーキット走行経験数回程度のビギナーにとっては余計に緊張感が増す。

ピットにはおよそ20台もの S 1000 RR が並べられ、見るからに前傾ポジションを強いられそうなスタイリングに半ばゲンナリしつつ、撮影のために車輌を移動する。そこで気付いたのが、リッターマシンにしてはずいぶんと軽く取り回せることだった。丁度同じ時期に国産メーカーのスーパー・スポーツ・モデル(600cc)を借りており、その時に乗った感触からそう感じた。コンパクト設計で単体重量 59.8kg のエンジンがそう感じさせているのか、車輌全体の重量バランスが良く感じられ、あまりビクビクせずに移動が出来た。

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足をいつもより大きく振り上げて跨ってみると、思ったほど窮屈さを感じないライディングポジションに好感触。足つき性も悪くは無いが、着座位置とグリップ位置の高さがほぼ水平なので良好とは言いがたい。これについては好みの問題だろう。少なくとも走り出すまでフラフラするようなことは無かったので、ファーストコンタクトはいたって平穏。排気音も意外なほど静かで、空吹かしが耳障りと感じることも無かった。

いざサーキット走行となると、やはりこのスタイルのマシンならではの「作法」に戸惑う。当たり前のことだが、マシン操作ひとつひとつの動作をしっかりと、確実に行わなければ苦痛のまま終わる。ある程度身体とタイヤが温まったところで、ブレーキングと旋回中の安定性に意識を集中してみる。ホームストレート全開から第1コーナー手前のハード・ブレーキングでは、車体がブレることなく“ぎゅ~っ”と雑巾を絞るように減速する。減速のし過ぎや理想的なラインを外した際に起こしてしまう、旋回中にありがちな挙動、とりわけステアリングの不安定さも無く、むしろバンクした状態でピタッと安定する感覚は、まるで BMW Motorrad 現行ラインナップに共通して見られる特性だ。感覚的に言えば、前足がとても柔軟で力強い。

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腕の未熟さから DTC やレース ABS が効いてくれるのかと思ったが、作動を知らせるインジケーターは一度も点滅することが無かった。ちなみに試乗車はプレミアムライン。左手のモード切り替えスイッチで「レイン」⇒「スポーツ」⇒「レース」を試してみると、明らかにアクセル開け始めの出力アップが異なる。しかしどのモードでもそれなりに楽しく走れてしまったので、これに関しては走行シチュエーションに合わせて選ぶよりも、ライダーの好みに応じた3つの設定、と言っても良いと思う。ちなみに 192hp のフルパワー仕様(スリックモード)は未体験だったことを付け加えておく。

後日ストリートでも試乗してみた。ゴー&ストップの多い市街地だとライディング・ポジションが苦痛に感じるかと想像していたが、思いのほか普通に乗れてしまう。以前 R 1100 S に乗った時もそのように感じたのを思い出す。S 1000 RR は、スーパー・スポーツのカテゴリに異なる手法でアプローチしている。確かに見た目はそれらしいが、造り込みは BMW Motorrad そのもの。個人的にはストリートでこそ、その個性が感じられた。つまり加速、減速、旋回、制動、どの動作でも尖った印象が薄いのだ。気が遠くなるくらい過激な加速をすることに変わりはないが、速度と比例して恐怖が強まるだけの他メーカーモデルに対して「行けてしまう」錯覚に陥る。BMW のモーターサイクルは、ライダーが不安に感じる情報は極力抑える反面、車体の動作と路面からの情報はしっかり伝えることで、マシン操作に集中させようとする。ある意味お節介なヤツだ。

S 1000 RR は、ライダーがマシンを操ること、それを優先するモノヅクリが垣間見える不思議なスーパー・スポーツ・マシンだ。望む者なら誰でもスポーツ・ライディングを愉しめる懐の深さがある。欲を言えば、この寒い時期にもっと走りたいと感じるライダーのために、オプションでグリップヒーターを用意して欲しい、と思った。

こんな方にオススメ

マシンの限界よりも自分の限界を知り
1台でロードスポーツを愉しみたいライダーへ

市販車ロードレース世界最高峰の舞台からやってきたスーパー・スポーツ・マシンを相手にするには、ライダーにもそれなりの心構え、ストイックな一面が求められる。バイク遊びはサーキット・メインでナンバーは外したまま、という割り切ったバイクライフを楽しんでいるライダーにはそれでも構わないかもしれないが、実際はサーキットも走りたいけどストリートがメイン、もろもろの事情でバイクは1台しか所有することが出来ない、そんなライダーにこそ S 1000 RR はオススメだ。

ABS や DTC だけでなく、エンジン・モード切り替えが出来るハイテク装備、ラジアルマウントのブレンボ社製モノブロック・ブレーキ・キャリパ、ザックス社製前後サスペンション、アクラポビッチ・サイレンサーに軽量アルミキャストホイールなど、単体でも十分高価なパーツを標準装備したモーターサイクルが、税込車輌本体価格199万円で購入出来る。これをバーゲン・プライスと言わずして何と言う? 最初から贅沢な装備満載の車輌を1台所有しておけば、購入後にかかる費用は維持費(プラスアルファ)のみ。そのような価値観を持つライダーに S 1000 RR ほど適したバイクは無い。なによりBMW Motorrad の造り込みは他メーカーとは一味も二味も違う。 ベテラン・ライダーからスーパー・スポーツ・マシンに不慣れなライダーまで、幅広いユーザーに応える優秀な乗り物だ。己を知るライダーにこそ、この価値が理解できることだろう。

S1000RR プロフェッショナル・コメント

高い技術力でまとめられた造り込みには
所有欲まで満たされることでしょう

S 1000 RR のお勧め箇所は、なんと言っても「細部にまでこだわった、凝ったデザイン」です! 国産車の 1000cc スーパー・スポーツ・モデルとは比較にならないほど美しいです。さらに標準装備のアクラポビッチ製カーボンサイレンサーには、BMW の作り手としての意気込みが強く感じられます。このデザイン・装備で169万円(Active Line)はお買い得です! 個人的な「スゴイところ」 No.1 は、走行条件によって4段階に選択可能なパワーモードです。例えば、サーキットやワインディングをガンガン走りたい時は『Raceモード』、ツーリングの帰り道にのんびり走りたい時は『Rainモード』を選択。ライド・バイ・ワイヤーにより最適なスロットル制御を行なってくれるので、これならツーリングにも出かけられます!

これまでの BMW と違って純粋なスーパー・スポーツ・モデルなので、車体、足回り、エンジンなど、既存モデルとは大きく違います。ですが、乗り慣れてくると様々な面で既存の BMW モデルと通じるところが見えてきます。国産スーパー・スポーツと比較すると、国産車が自転車のようでした…(かなり大げさですが)。なにより BMW ならではの安全性。レース ABS およびダイナミック・トラクションコントロール装備(プレミアムライン)で、安心して加速・減速が出来ます。また、F-1 直系のエンジン、特許取得のウィンドシールドによるエアロダイナミクス、アコースティック・バルブを設けたエキゾースト・システムによる排気音など、BMW の高い技術を感じられます。

国産スーパー・スポーツを検討されている方、既に所有されている方にこそ、是非乗って頂きたいです。きっと、BMW のバイクに対する意気込みや基本理念を感じ取って頂けると思います!(コクボモータース 店長 小久保 宏登さん)

取材協力
住所/東京都八王子市元横山町 1-14-2
電話/042-645-6105
営業時間/10:00-20:00
定休日/火曜日、祝日

S1000RR の詳細写真

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アシンメトリー(左右非対称)なフロントマスク。わざわざコスト面、軽量化よりも優先してデザインされたもの。通常丸型(右側)が点灯。
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ウィンドシールド左右に設けられた4つのスリット(切り込み)。空力学的に優れた実績を持つ BMW ならではの細かい設計。
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ハンドル幅、絞り角度は他メーカーのスーパー・スポーツ・モデルよりもやや広めで窮屈感は少ない。意外と近いポジション。
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アナログタイプのタコメーターにデジタルタイプのスピード、ライディングモード、シフトインジケーター。7,000回転を超えると右上のフラッシュ・インジケーターが光る。
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右グリップ。ブレーキマスターシリンダーはニッシン製。スイッチボックスにはセルスイッチとモード切替スイッチのみ。
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左グリップ。クラッチは油圧ではなくワイヤー式。レバーは大きめ。スイッチボックスにはウィンカー、ハザード、ハイビーム、ホーンスイッチのほか「ABS/DTC」と「TRIP/SET」も。
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前後サスペンション全てのダンピング設定はキーの先端で調節することが出来る。プリロードは通常の工具を使用する。
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左右非対称の BMW のアイデンティティは車体フェアリングにも見られる。右側のフェアリングはサメのエラのようなデザイン。
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左側のフェアリングには右側のような「エラ」は見られない。左右共にエンジン熱を効率的に排出するデザイン。
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かなりしっかりしたタンデムステップ。シートレール形状を見ても、スーパー・スポーツ・マシンとは言えタンデム走行を考慮していることが解る。
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尖ったデザインのテールランプはデザイナーの遊び心。ライセンスプレート・ベースを取り外し、別売りの「コーディングプラグ」を装着すれば「SLICK」モードをセレクト可能。サーキット走行が大前提。
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フロントブレーキには直径 320mm のデュアルディスクにラジアルマウントのブレンボ社製4ポットキャリパーという組み合わせ。ABS機能搭載。
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リアブレーキには直径 220mm のシングルディスクにブレンボ社製1ピストンフローティングキャリパを装着。リアアクスルの調整幅は 45mm と広く、フロント方向に 17.5mm、リア方向に 27.5mm まで変更することが可能。前後共に高強度の10本スポーク、キャストアルミホイールを装着。
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HP シフトアシストはプレミアムラインに標準装備。アクセル開けたままでトラクションが途切れることなくシフトアップ出来るのはこの上なく気持ちよい。
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左フットレスト。シフトペダルはステップと同軸に置かれたシンプルな構造。ステップの外側部分の切り込みは滑りにくいよう細かくなっている。
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右フットレスト。こちらもステップ同軸構造。ペダルステー後部に見える丸い穴は、本国仕様のサイレンサーが取り付けられる名残。
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日本仕様ではアクラポビッチのサイレンサーが標準装備となる。出力への影響は無く、むしろ軽量化が図られている。
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キャタライザーとサイレンサーを繋ぐパイプには制御式アコースティック・フラップが装着される。サーボモーターによって開閉動作し、排気圧をコントロールする。

BMW Motorrad S1000RR Exhaust Note

BMW Motorrad S1000RR Instrument Panel

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