VIRGIN BMW | C650GT(2012-) 試乗インプレ

C650GTの画像
BMW Motorrad C650GT

C650GT(2012-)

  • 掲載日/2013年02月14日【試乗インプレ】
  • 取材協力/BMW Motorrad Japan  取材・写真・文/小松 男

長年拒み続けたセグメント
マキシスクーター誕生の意味

BMW が C 650 GT / C 600 Sport という2台のスクーターモデルを発表した際、「世界各国で都市化が進む中、マキシスクーターの登場は必然的だった」といった趣旨のリリースが届いた。このことに間違いはないだろう。しかしここで少し書き加えたいと思う。

かなり前の話になるが、BMW モトラッド本社のスタッフに「BMW はマキシスクーターを作らないのだろうか。出したら間違いなくヒットすると思う」といったことを話したことがある。彼は「ビッグスクーターには“駆け抜ける喜び”が感じられないと思う。だから BMW モトラッドはマキシスクーターを作ることはしないだろう」と応えたのだ。当時は現在と首脳陣が違ったし、確かに世の中の情勢も今とは異なるものだ。しかし私はマキシスクーターの登場を確信していた。以前 C1 (125 / 200cc のシティコミューター) を作ったこともあることだし、自分のように要望を伝えるコンシューマー、そして内部の人間も少なくないはずだ。最終的に BMW のプロペラマークに恥じないモデルが作れればいいのである。そんな話をした数年後には、S 1000 RR や6気筒エンジンモデルが登場することになる。これまでの BMW モトラッドでは想像すらできなかったモデルが次々と現れたのだ。その頃になると、もちろん2台のマキシスクーターの噂は流れていたのだが、もっと重要なことは EV スクーターの存在だった。

ゼロ・エミッション (無公害) を目指す企業概念を持つ BMW では4輪も2輪もそれを目指したモデルを開発していた。その中のひとつとして、EV バイクがあったのだが、大型のバッテリーを積載することを考えると、マキシスクータータイプのパッケージングが一番効率がよく纏められるということになったのだ。つまり現在登場したマキシスクーター2モデルは、今後の登場するであろう EV スクーターへの布石だとも言えるだろう。

C650GTの特徴

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ブランニューモデルに
あえて「GT」のイニシャルをつけたわけ

横道にそれてしまったので話題を C 650 GT に戻そう。C 650 GT と C 600 Sport は、エンジン、フレーム、駆動系、足まわりなど、基本構成をまったく同じとする兄弟というよりも、ほぼ双子モデルととれる。とはいえ「スポーツ」と「GT」と棲み分けを図るためのコンポーネントの違いは明確なものとしている。

C 600 Sport はアグレッシブなライディングプレジャーを得るためのタイトなポジションを持たせ、なおかつシャープなデザインを全面に押し出すためにシート下ラゲッジスペースをやや狭いものとした (それを解決するためにフレックスケースが装備された)。対して C 650 GT は、グランツーリズモのイニシャルに恥じないよう、優雅かつダイナミックなライディングを可能としているのだ。

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デザイン面は、フェイスラインからフットスペース脇のサイドパネル、テールにかけて単色でカラーリングし、なおかつボリュームを持たせた造詣を持たせ、とても重厚なものとしながらも躍動感溢れるものとしている。これによりシート下のラゲッジボックスに約 60 リットルもの広大なスペースを確保することができた。前部を大型のヘッドライトパネルとし、C 600 Sport とは明らかに異なった印象を持たせた。ウインドスクリーンは快適な走行を確保するために広く、そして長くされ、走行中にもスイッチひとつで調整が可能な電動スライドタイプとした。パッセンジャーのフットレストが折りたたみ式バースタイルではなく、広いステップボードを用意している点でも、タンデムで長距離ツーリングを楽しめる GT ならではの使い勝手を考慮した故の措置であることは明白だ。

ポジションはハンドルが高くそしてライダー側にセットバックされており、シートも若干低めでバックレストを装着した楽に着座できるものにされた。これらすべてを総合すると、やはり BMW モトラッドの GT らしいパッケージングになっていることが分かる。

C650GTの試乗インプレッション

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トータルバランスが高いため
仕様用途の幅が広いものとなった

大型クラスのライバルスクーターと比べ、格段に大きいわけでもなく、かといってコンパクトというわけでもない車体だが、跨ってみると思っていた以上にシートが高いと感じられた。C 600 Sport の 810mm と比べても、780mm と 30mm も低いにも関わらずだ。それは実質的なシート高によるものというよりも、スクーターというスタイルがどうしても車幅が広くなってしまうからだと思う。そのことを見越してステップボードも足を下ろす位置はシェイプされているのだが、それでも両足を出す際にはやや注意が必要だ。

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セルボタンを押してエンジンに火を入れると、新型パラレルツインエンジン特有のサウンドが聞こえてくる。ゆっくりとスロットルを捻ると、2000~3000 回転あたりでスルスルと前に進み始める。もちろん遠心クラッチと CVT ミッションの組み合わせなので、スロットルの開け方によってトルクカーブが変わってくるものである。設定自体は C 600 Sport と同じとされているが、C 650 GT の方が、やや低回転からクラッチが繋がる印象を受けた。ウエイトローラーなどの部品番号も同じようなので、個体差や走行距離相応の慣らしグセがあるのかもしれないが、C 650 GT の印象は良いものだ。

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エンジン、ミッション、タイヤ、足回り、全体的に温まってきたところで、全開走行をテストしてみる。シグナルダッシュでは先に述べたとおり低回転から繋がるため、ライバルよりアタマ一つ分速いイメージだ。ただし鼓動感を持たせるために、あえて 270 度間隔クランクとしたエンジンのおかげで、バタバタ感は若干気になった。この点に関しては好みによって分かれるところであると思う。対して高速道路を法定スピード+α程度で流している時の心地よさは格別なものがある。

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急制動を行っても、ABS センサーのキックバックパルスがブレーキレバーを通じ指に伝わってくるだけで、何事もなかったかのように車体を止めることができる。15 インチというタイヤ外径の小さなスクーターモデルであるから、ABS の存在は非常にありがたい。路地裏での飛び出しや、渋滞路での不意なクルマの動き、さまざまな危ない場面に遭遇した際、その恩恵を垣間見ることであろう。それと付け加えるならば前後のブレーキを両手で操れるということ、これもスクーターの特徴であり利点のひとつでもある。コーナリング中にリアブレーキで行う車体制御を左手でできるのは些細な調整ができるため、思い切り走らせることができる。実際ブラインドコーナーが続くワインディングなど楽しくて仕方なかった。

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リラックスできるポジションにより上体が起きているため、視界が広いこれは心地良い走りを楽しめるだけではなく、ゆとりを持ったセーフティライドにも直結する。電動スクリーンはいまさら口上するまでもないほど便利な装備であるし、グリップ/シートヒーターも寒い季節の必需品であるし、C 650 GT には強弱設定の他にセンサーによって加熱とオフを自動で行うオートポジションが設定されたので、年中つけっぱなしで OK だ。それらを総じてライダーに優しく包み込むかのような、マキシスクーターに仕上がっていると感じた。

全体に好印象が持てた C 650 GT だが、あえてネガティブな意見も挙げさせてもらえるならばタンデム時に起こる重量物の腰高感が気になったこと、それとサイドスタンド連動式のパーキングブレーキに助けられる場面と、煩わしく思う場面があることが気に掛かった。同時にこれらは C 600 Sport でも感じたことだった。とはいえ、初めて市場に送り込んだマキシスクーターがこれほどの出来栄えなのであるからして、BMW モトラッドの技術力を改めて驚かされるのとともに、ライバルモデルも強い危機感を持つことであろう。

こんな方にオススメ

バイクから遠ざかっていた人にも
現役バリバリのエキスパートライダーにも

市街地を颯爽と走るような使い方ができるものの通勤で使うには大柄なため、郊外に住み週末の温泉ツーリングを楽しむといった方がいいかもしれない。温泉道具はすっぽり入るし、たくさんお土産を購入してもまず溢れることはない。クラッチワークが面倒になってきたけど2輪から離れるのは寂しいと考えているライダーや、リターンライダーだけどミッションつきバイクを操るにはちょっと不安が残ると思っている人などにオススメ。あわせて、バイクのことをまったく知らない家族に、なんとなく購入を納得させてしまうような存在感は BMW モトラッドならではだ。

C650GT の詳細写真

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BMW モトラッドが推進するスプリットフェイスを採用しつつも、兄弟モデルの C 600 Sport とは明らかに違った印象を持つ C 650 GT。中央の三本ラインは LED デイライトが収まっているが、日本の車検基準に沿って本国仕様より光量が抑えられている。
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アップライトなポジションと相まって視界が広く後方確認がしやすいバックミラー。ボディマウントとされており、振動も少ない。ウインカー内蔵式という点で、C 600 Sport とは異なっている。ウインカーは LED ランプを採用している。
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K 1600 GT / K 1600 GTL で採用された走行風の流入を調整するフラップ。写真は閉じている状態で、スクリーン下部の隙間から、走行風がライダーに向かい流れてくる。
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こちらはフラップを広げた状態で、走行風を外に逃がす。冬場の寒い日などは広げ、夏の暑い日には閉じるような使い方ができるのだ。
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速度計のみをアナログタイプとしたことで視認性が高いコックピット。液晶パネルでは、燃料残量、回転計の他に、さまざまなインフォメーションを表示する。写真の表示では、シートヒーターはライダー、パッセンジャーともに強、グリップヒーターも強ということがひと目でわかる。
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C 600 Sport のウインドスクリーンが手動調整式なのに対し、C 650 GT は電動調整機能を持たせた。走行中でも高さを細かく調整できるので非常に便利だ。
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右側のスイッチボックスには、セル/キル兼用スイッチと、グリップヒータースイッチ、ライダー側のシートヒータースイッチが設置された。なお、C 650 GT / C 600 Sport のライダー側ヒーターは弱/強と、新規にオートポジションが採用された。
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ハンドル下部には容量の大きいラゲッジスペースが左右に備わっている。左側のケースの奥には電源ソケットも装備されており、駐車中のトリクル充電や、携帯電話の充電など、さまざまな用途で活躍するだろう。
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メインキーボックスで、イグニッションオンオフの他に、シート下ラゲッジスペースや給油口カバーのオープンが可能。ハンドルロック時にはすべてのラゲッジスペースもロックされる。
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フットーボードは幅が広く、前後にも長いので自由度が高い。足を投げ出すようなゆったりしたポジションはスクーターならでは。フロア側に足を置けば軽いステップ入力でコーナリングを楽しめる。
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シート前部に設けられた給油口。メインキーシリンダーでカバーを開けることができる。なお、燃料はハイオク指定となっている。
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適度なコシがあり座り心地の良いシート。形状も入念に計算されており、足つきをスポイルしないための前部の大胆なシェイプ、リラックスできる背もたれは快適だ。パッセンジャーシートも良くできており、タンデムツーリングにも適している。
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広大ともいえる容量を持つシート下のラゲッジスペース。ヘルメットを2個を簡単に飲み込み、なおもスペースがあるほどだ。スクーターには、パニアケース設定がないが、その点はこのスペースで補うことができる。
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パッセンジャー側のシートヒーターは、シート脇にスイッチが備えられている。弱/強から選ぶことができ、使用状況はメーターパネルにも表示されるため、ライダーも確認が容易だ。
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パッセンジャーのステップボードも面積が広くしっかりしており、角度も良いため長時間足を乗せておくようなツーリングでも披露が少ない。
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リアサスペンションは車体脇に深く寝かされて装着されている。ラゲッジスペースの容量をスポイルしたくなかったことと、走行時のショックを吸収しつつも、しっかりとトラクションを得ることができるための位置だ。
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大型リアキャリアも標準で装備する。頑丈に作られているうえ、荷紐を使うような積載でも使い勝手がいい。純正トップケースのベースとしての役割も果たす。
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テールライトはモダンな造詣とされ、後ろ姿だけでもそれだとわかるものとなっている。ウインカーも内蔵されている。
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ホイールは前後 15 インチとされ、タイヤはメッツラーの FEEL FREE を採用。しなやかなハンドリングを楽しめる。ABS も標準装備だ。
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サイレンサーはショートタイプとされ、デザインにマッチするように纏められている。エキゾーストノートは、これまでの BMW モトラッドにない独特なものとなっている。
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エンジンで発生したパワーは、遠心クラッチを採用した CVT ミッションを介しドライブチェーンにてリアタイヤへと伝えられる。低回転から違和感なく繋がるため、フィーリングも良い。
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BMW モトラッドマキシスクーター専用設計の5本スポークホイール。シングルスイングアームとショートサイレンサーで、デザインが良く分かる。ブレーキキャリパーは2つ装備され、下部のものはサイドスタンド連動のパーキングブレーキだ。

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