VIRGIN BMW | F800GSアドベンチャー(2013-) 試乗インプレ

F800GSアドベンチャーの画像
BMW Motorrad F800GS ADVENTURE

F800GSアドベンチャー(2013-)

  • 掲載日/2013年09月12日【試乗インプレ】
  • 取材協力/BMW Motorrad Japan  取材・写真・文/田宮 徹

旅装備を充実させた
新たな“アドベンチャー”

BMWの「アドベンチャー」といえば、GSシリーズのフラッグシップモデルとなるR 1200 GSのバリエーションモデルとして、長年に渡り世界中の冒険ライダーから支持されてきたモデルだ。そのR 1200 GSは、2013年型で空水冷エンジンを搭載した完全な新型となったが、2013年夏現在もR 1200 GSアドベンチャーについては従来型の空油冷エンジン仕様が継続販売されている。その一方で、本国では2013年5月、日本では同7月に追加されたのが、F800GSをベースとしたアドベンチャー仕様だ。

「じゃあ、1200仕様のアドベンチャーが、今後どうなるの?」というもうひとつの興味は置いておいて、F800GS アドベンチャーの追加がもたらす意味は、非常に大きい。これまでのGSアドベンチャーは、その頼れる走行性能で多くのトラベルエンデューロライダーを支えてきた一方で、多くの日本人を含めたカラダがあまり大きくないライダーにとっては、大きすぎる乗り物だった。オフロード走行性能では、むしろ1200を凌ぐ部分も多い800をベースとしたF800GS アドベンチャーの登場は、BMWを駆る新たな冒険ライダーを生むきっかけとなるかもしれない。

F800GSアドベンチャーの特徴

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真の冒険ライダーをうならせる
超本格的な旅装備の数々

F800GS アドベンチャーは、スポーティかつタフなF800GSの走行性能を生かしながら、各部に変更の手を加えることで、本格的な冒険ツーリングにも向く仕様としている。ベースモデルとの主な違いとして、まず挙げられるのがリアまわり。車体後部に配置された燃料タンクは8Lアップの24L容量となり、これをしっかりとガードするアルミ製プロテクションバーも装着されている。この燃料タンクガードは、アルミ製パニアケースのステーを兼ねていて、オプションでケースを購入すればすぐに装着することができる。

フロントまわりでは、長時間の高速走行時にライダーの疲労を低減してくれる大型ウインドシールドや、万が一の転倒時に車両の重要部分が破損するのを抑止するエンジンガード、そして大型シュラウドの採用も見逃せない。BMWのアドベンチャーを名乗る以上、かなりタフなシーンでも使える必要があるのだ。大型化などで快適性の向上を追求したシートも、ロングランでライダーをしっかりサポートしてくれる。

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また、日本仕様で注目したいのは、電子調整式サスペンション(リア側のみ)のESAと、いわゆるトラクションコントロール機構となるASCが標準装備されている点。ベースモデルのF800GSはこれがオプションとなっているが、その価格は10万5,000円。スタンダードとアドベンチャーで17万6,000円という価格差は、それを考慮すればバーゲンプライスと考えることもできる。そしてESAやASCは、刻々と路面状況が変化するダートを含めたロングツーリング時に、絶大な効果を発揮してくれる。ちなみに旅を助ける電子制御装置という点では、F800GSを含めて標準装備されているABSも同じである。

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さらに、前述のとおりアルミ製パニアケースをすぐに装着可能なことに加え、トップケースやフォグランプなど、よりロングツーリング向きの車両にするためのさまざまなオプションパーツも用意されている。それ以上に、BMWを愛する各ブランドから、多くのアフターマーケットパーツが発売されている(もしくは今後発売される)というのも、この機種に限ったことではないが、BMW製トラベルエンデューロモデルの魅力である。

F800GSアドベンチャーの試乗インプレッション

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ベースモデルよりは重量級ながら
“操れる感”のあるダート性能

F800GSと共通化されたエンジンは、並列2気筒エンジンというレイアウトもあり、スペックから受ける排気量と最高出力の関係(798ccで85馬力)だけを考えると、控えめな印象もぬぐえない。しかし実際には、ショートなギア比にも助けられた非常に軽い吹け上がり感により、日本の道路で普通に使う限り、これといった不満はない。5,000回転以上に盛り上がりがあるが、回転上昇に合わせてフラットに力が増していく印象のほうが強く、スムーズな加速感による扱いやすさもある。ちなみに6速トップギア時に100km/h巡航した場合、エンジン回転数は約4,000回転を指す。一方で、レブリミットは8,500回転。実用範囲での最高速度などは、このあたりから推測していただきたい。

ここまでのエンジンに関する印象はあくまでもオンロードでの話だが、これがオフロードへと分け入ると、少し印象が異なる部分もある。まずエンジンの出力については、日本のダートでは「もうこれで十分です!」というほどのパワーがある。その一方で気づくのは、低回転域での扱いやすさ。トコトコとフラットダートを進むようなシーンで、適度なトルクがライダーをサポートしてくれる。

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つまりエンジンについては、スタンダードのF800GSと基本的には同じ印象である。車両重量の差はあれど、同じエンジンを使っているのだから当然のことだ。しかしF800GS アドベンチャーと、ベースモデルとなったF800GSでは、コーナリングや高速巡航などの点で、明らかな違いがある。

まずコーナリング。これは、アドベンチャー仕様のみに乗ると意外に気づかないのだが、F800GSと比べれば明らかに重さがある。しかし、とくにオンロードでは扱えないイメージはまるでない。どっしりとした安定感に安心しながら、それなりのハイペースでコーナーを駆け抜けることもできる。またオフロードでも、極低速走行時から車体に安定性があるため、車体を足で支えなければならないシーンは少なく、まっすぐ走っている限り重さが気になることはない。

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もっとも、よりハードな路面にチャレンジしたり、深くバンクさせたりしようとした際には、スタンダードのF800GSよりも気を遣わなければならないシーンは増える。たった10kgの差だが、シュラウドまわりの変更などで重さだけでなく大きさも増していて、身長167cmの筆者にとっては、かなり威圧感もある。それでも、R 1200 GS アドベンチャーが持つ絶望感に比べれば、はるかに「操れる!」というイメージである。

さて今回は、舗装路を重視した純正タイヤのままでだったことから、あまりうまくない自分がダートの奥の方へと踏み込むのには躊躇してしまったが、それでもフラットなセクションを中心にダート走行を楽しんでみた。数々の電子制御パーツが投入されているF800GS アドベンチャーだが、その際にもっともライダーを助けてくれたのが、トラクションコントロール機構のASCだ。

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この機種に搭載されているASCとABSは、モードを「ロード」と「エンデューロ」に切り替えられる(OFFも可能)。純正タイヤのままフラットダートに分け入ると、さすがに「ロード」モードではエンジン出力がカットされてしまう時間が多すぎる。しかしOFFでは、ダイレクト感はあるが操作がシビア。「エンデューロ」がもたらす適度な制御は、コーナー立ち上がりからストレートの加速まで、安心感と高揚感をバランスよく提供してくれた。後日、F800GSのスタンダードにほぼ同じシーンで試乗する機会があり、最初はその軽さにほっとしたが、実際に走ってみると電子制御されたアドベンチャーのほうがイージーにも感じられた。ESAの快適性や利便性もさることながら、ASCの効果は絶大である。

しかし、実際に日本でこの機種が使われるシーンを想像すれば、その多くは、オフロード走行を伴わない舗装路ツーリングかもしれない。手軽にたどり着けてこのクラスを持て余さない広さのダートは、日本ではそれほど多くない。では、「日本にF800GS アドベンチャーは無用か?」と聞かれれば、答えは「No」だ。

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大型化されたウインドシールドは、身長167cmの筆者なら、伏せなくても目の上あたりまで走行風がカラダに当たるのを避けてくれる。それでいて、巻き込みや背中を押すような風もない。高いアイポイントは旅先でライダーにさまざまな景色を見せてくれ、また市街地では素早い状況判断にもつながる。大型化された燃料タンクは、わずらわしい給油回数を減らしてくれる。そしてなにより、R 1200 GS アドベンチャーと同様の圧倒的な存在感がありながら、1200を超える扱いやすさとスポーツ性を備えている。

これらのことを考えれば、オフロードで使わなくても、F800GS アドベンチャーの旅性能は、多くのツーリングライダーにとって魅力と言える。大陸に住むライダーのように、本格的な冒険ツーリングを楽しむことは、日本ではなかなか難しいかもしれない。しかしその気分を味わいながら、日本らしいロングツーリングを楽しむことは十分にできる。世界中で冒険ライダーを育ててきたBMWの思想が詰まったF800GS アドベンチャーならきっと、世界を感じながら日本を旅できる。

こんな方にオススメ

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センニヒャクを諦めていた
旅好きの日本人ライダーに

排気量至上主義傾向にある日本では、800は1200の弟分という印象が強いだろうが、むしろスポーツ性と“現実性”では、800のほうが上を行く。これまで、大きさや重さの面でR 1200 GS アドベンチャーを諦めていたライダーにも、ぜひ胸を張ってF800GS アドベンチャーで日本を旅してもらいたい。一方で、これまで1200に乗ってきたユーザーなら、800にすることでよりチャレンジングな走りができるかも。オンロードツアラーとしての資質も高いので、タンデムを含めたのんびりツーリング派にも向いているが、せっかくなのでフラットダートくらいにはぜひ挑戦を!

F800GSアドベンチャー の詳細写真

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車体後部に配置された燃料タンクは、F800GSのスタンダードよりも8L増となる24L容量。満タン時の航続距離では、約120kmアップとなる。この変更に伴い、リアのサブフレーム強化が図られている。
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リアまわりの左右には、オプションのアルミ製パニアケースのステーを兼ねた、燃料タンクプロテクションバーを標準装備。左右ともに、タンデムライダー用のグラブバーとしても機能している。
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ウインドシールドもアドベンチャー仕様専用パーツに。上方に大型化されただけでなく、防風効果を高めるために左右下側へも広がっている。ステーは、メーターのプロテクション効果も生む構造だ。
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オール樹脂製のハンドガードも標準装備される。林道走行時などに木の枝が手に当たるのを避け、転倒時にはレバー類が破損する可能性を低減。高速走行時には、手に冷たい風が当たるのを抑止してくれる。
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ラジエターを保護するシュラウドは、F800GSよりも大型化された。これに合わせて、アッパーフェンダー周辺のデザインも専用化。フロントフォークは、F800GSと基本部分が共通化された倒立テレスコピック式。
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F800GSと共通化されたエンジンは、最高出力85馬力の798cc水冷DOHC4バルブ並列2気筒。その左右には、エンジンガードが標準装備される。フレームはスチール製で、トラス構造となっている。
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フットブレーキペダルは、R 1200 GS アドベンチャーにも使われる高さ調整式タイプ。右足カカトで上側だけを手前に引き上げて調整する。ステップはワイド仕様で、ゴムを取り外しても使える。
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シートは、快適性をさらに高めたアドベンチャー専用タイプ。シート高は、スタンダード時で890mm、ローシート装着時で860mm。標準シートはツートーン。アルミ製のリアキャリアを装備する。
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日本仕様はABSに加えて、電子調整式サスペンションのESAとトラクションコントロール機構のASCが標準装備される。ABS、ESA、ASCのモード切り替えは、ハンドル左右のスイッチで行える。
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指針式の速度計と回転計を縦に配置し、その右側に多機能液晶パネルを配置したメーターまわりは、基本デザインが他のF - GSシリーズと共通されたもの。液晶部には、各種走行モードも表示される。
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より旅を快適に、冒険を本格的にするためのオプションパーツも充実している。写真は、LEDタイプのフォグランプ。本国ではこの他、各部のガード類やLED式ウインカーなどが発表されている。
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オプションとなるパニアケースとトップケースを装着した例。このうちパニアケースは、標準装備されるガードを兼ねたステーにそのまま搭載できる。トップケースは、別売のステーを使用する。
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