VIRGIN BMW | F800GS(2012-) 試乗インプレ

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BMW Motorrad F800GS

F800GS(2012-)

  • 掲載日/2014年09月10日【試乗インプレ】
  • 取材協力/BMW Motorrad Japan  取材・写真・文/山下 剛

Fシリーズの乗りやすさと
GS シリーズの走破性をミックス

『長い距離のオフロードを快適に走れ、なおかつオンロードも素早く走れる』という BMW の GS フィロソフィーをしっかりと継承しているバイク、それが F800GS である。

Fシリーズは、BMW が 1994年に発表した F 650 ファンデューロを始祖とする。扱いやすくタフな単気筒エンジンを心臓に持ち、街乗りからツーリングまで楽しく走れてオフロードへも行けることをコンセプトとする、安価な車両価格を実現したシリーズだ。そして 2000年には F650GS が登場、オフロード走破性を高めるとともに快適な走行性能を得て、世界中で人気シリーズとなった。

同年に販売開始となった F650GS ダカールは、フロントホイールを 21 インチとして、前後サスペンションのストローク量を増やし、オフロード走破性をさらに高めたモデルである。F800GS はこのモデルの進化版で、排気量 798cc の水冷並列2気筒エンジンを搭載して 2008年に登場した。

F700GS とはサスペンションとホイール構成などが異なる。エンジンの基本部分は同じだが、燃調マッピングなどの変更によって、ハイパワーな特性を持っているのが F800GS の特徴だ。

F800GSの特徴

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ツーリングからコンペティションま
高次元で走破する実力を持つ本格派

排気量 798cc の水冷並列2気筒エンジンを心臓とする BMW のFシリーズは、低重心と車体バランスを適正化するために燃料タンクをシート下に搭載していることが大きな特徴だ。とくに F800GS&F700GS はトレリス構造を持つスチールフレームを採用することで、剛性だけでなく適度なしなりを持っており、オフロード走行を重視した設計となっている。駆動方式は R 1200 GS のシャフトドライブ、F 800 S/ST/GT のベルトドライブと異なり、チェーンドライブを採用する。

ここまでは兄弟モデルの F700GS と同じ車体構造だが、F800GS はフロントホイールを 19 インチから 21 インチへと大径化するとともにスポークホイールとし、前後サスペンションストローク量を増やすことで、積極的にオフロードを楽しめる特性としている。エンジンも 75ps から 85ps へとハイパワー化されている。

かといって過激な走破性ばかりが F800GS の持ち味ではない。電子調整式サスペンション『ESA』、トラクションコントロール『ASC』をオプションで装着することができるし、ABS は標準装備されている。オンロードからオフロードまで、一般公道を安全かつ快適に走る性能をしっかりと持っている。これこそが BMW らしさであり、F800GS のアイデンティティともいうべき特徴だ。

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F700GS と F800GS の違いは、いま人気のアドベンチャーモデルと F800GS の違いとほとんど同じといっていい。F700GS やアドベンチャーモデルが『オフロードを安心して通過できる』くらいの走破性を狙っているのに対して、F800GS は『オフロードを積極的に楽しめる走破性』を狙って設計されている。

誰もいない山奥まで踏み入っていきたい。交通量が少なく荒れた林道を走破したい。そんな冒険心を満たしながら、日本という国を隈なく見て旅したい。このようなツーリングスタイルを愛するライダーにうってつけだ。冒険心だけでなく挑戦心もありあまっているなら、ラリーやエンデューロといったコンペティションに参加できる実力も持っている。旅の足としての実用的な性能だけでなく『もっと速く、もっと上の世界へ』という夢を抱けるバイク、それが F800GS だ。

F800GSの試乗インプレッション

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オフロードを必ず走るツーリングライダーなら
迷わず選んで後悔しないモデルだ

さて、そんな F800GS を実際に走らせてみた。まずは街乗りから高速道路を含む一般公道だ。

水冷並列2気筒エンジンは 360 度クランクということもあってクセがなく、低回転から高回転まで淀みなくフラットに回る。アイドリングからクラッチをつないだあたりにやや唐突感があるため、乗りはじめは半クラッチの操作を慎重にしていたが、これは数回の信号発進で慣れるレベル。

トルクは下からこってりと湧き上がってくるタイプで、高速道路をワープするような走りをしない限り、不満はまったくない力強さだ。必要なときにスロットルをひねれば、必要なトルクが生まれてバイクが前へ進んでいく。とくに低~中回転域での扱いやすさとパワーのバランスがよく、スムーズで滑らかな回転上昇と、それに伴いすうっと消えていく振動がもたらすエンジンフィールは、快感すら与えてくれる。BMW ボクサーにも似た、乾いた低音の排気音も力強さを感じさせるし、なにしろ心地いい。パーシャルで定速走行するときのフィーリングも気持ちよく、長距離巡航も快適だ。

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21 インチのフロントホイールがもたらすハンドリングは、ロードバイクのほとんどが採用する 17 インチに比べると俊敏さこそスポイルされているものの、逆にいえばおおらかでゆったりとしたコーナリングが安心感を伴うため、リラックスして走れるメリットのほうが大きい。デュアルパーパス特有の起き上がった上半身による高いアイポイントは、混雑した市街地において遠くまで視界を確保でき、危機回避にも大いに役立つ。

サスペンションの動きはしなやかで、ブレーキを握り込むほどに踏ん張るタイプ。橋のつなぎ目や段差などもすっと越えてくれる。ストローク量が多いため、急ブレーキをかけるとさすがにフロントがかなり沈み込むが、唐突さはないため不安を覚えることはないだろう。

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ウインドプロテクションも良好だ。巡航時には上半身をすっぽりと包んでくれ、腕に風を感じる程度である。高速道路を走っているときなら、よほどの豪雨でない限りは次のパーキングエリアまで走ってレインウェアを着ることに抵抗はないだろう。もちろんこの性能は巡航時のライダーの疲労を軽減するから、長距離ツーリングで大いに威力を発揮する。

オフロードに入ると、F800GS は本領を見せる。少々のギャップや穴はスロットルをサッと開ければフロントタイヤがスッと通り抜けてくれるし、そんなことをしなくても 21 インチスポークホイールの効果で、大きな『オツリ』をもらうこともなく安定して走れる。250cc クラスのオフロードバイクと比べるとさすがに大柄で重いから、同じように走らせるには相当のスキルが必要だが、グリップを重視した走りを心がければ、素直なハンドリングとサスペンション特性によってスムーズに走れるはずだ。

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ABS と ASC は、ダートでも心強い味方だし、効果的な先進装備といっていい。たしかに ABS が効きはじめると停止距離が伸びる不安に見舞われるが、逆にいうと林道走行においてそう感じる速度やブレーキタイミングで走ることがそもそも危険でもある。ASC については雨上がりの泥、水たまりなどでスタックしそうな上り坂で有効だ。いずれにしても、どちらの機能もスイッチオフできるので、純正タイヤでダートを走るとき、ブロックタイヤで舗装路を走るときなど、そのときどきのシチュエーションや好みに応じて使い分けるのが得策だ。

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F800GS のオフロード特性は『オフロードを攻める、速く走るため』と誤解してしまいがちだ。たしかにそうした側面があることも事実だが、それにはライディングスキルが必要とされ、ごく一部のクローズドコースでこそ発揮すべき性能といえる。F700GS や多くのアドベンチャーモデルではなく F800GS を選択する理由としては、オフロードを走る比率によるところが決め手だろう。『未舗装路でも迷わず入っていきたい』なら前者、『長距離ツーリングでも必ず未舗装路にいくし、たとえその先が行き止まりとわかっていても未舗装路を走る』というスタイルなら後者だ。つまり簡単にいうと、オンロードとオフロード、どちらを『より楽しみたいか』が判断基準といえる。そしてオフロードを選択するなら、F800GS ほど頼もしいパートナーはいないだろう。

最後になるが、BMW らしさのひとつである積載性の高さも忘れてはいけない。純正オプションで選べるケースには樹脂製とアルミ製があり、どちらもたっぷりと荷物を積める。とくにパニアケースは転倒の際に車両へのダメージを軽減する効果が高いので、林道走行時にはぜひ装着をお勧めしたい。

F800GS プロフェッショナル・コメント

F800GS はオフロードキング
もちろん舗装路でも ASC&ABS は有効

剛性の高いフレームと低重心の安定性によって、ガレ場も走り抜けられる保安部品付きオフロードバイクが F800GS。水冷並列2気筒のパワフルなエンジン特性をオフロードで最大限に引き出すための ASC がホイールスピンを制御し、オフロードでの走りをサポートしてくれます。

その一方で、「オフロードを走ることがない」と言われる方もいらっしゃるかと思いますが、ASC は舗装路でも有効です。ワインディングロードなどでは山からの湧き水で路面が濡れていたり、砂や木の葉が積もっていたりといったライダーが予測できない突然の路面状況にも瞬時に作動します。リアの空転によるスリップ転倒の抑止は、オンロードでも心強い装備と言えます。

ABS もパニックブレーキ時に活躍します。握りゴケなどはまずありません。先日も危うくクルマとの側面衝突を間一髪で……ABS 恐るべし! 付いていて良かった、と。それに加えて、伸び側減衰力を指1本で3段階に切り替えできる ESA リアサスペンションをオプション取り付け可能になった 2013年モデル(2012年10月発売)は、非常にオススメです。(モトラッドセントラル飛鳥山店 加藤 博史さん)

取材協力
住所/東京都北区西ヶ原2-34-10
Tel/03-3576-7077
営業/10:00~19:00
定休/火曜

F800GS の詳細写真

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BMW の個性といえる異型2灯ヘッドライトが個性的なフェイスを演出。装着されるスクリーンはやや小ぶりで、防風性能は必要十分といったところ。長距離移動が多いならハイトスクリーンへの換装が効果的だ。
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ラジエターシュラウドは左右に張り出しており、ウインドプロテクションも兼用する。パーツは複雑に組み合わされており、黒と車体色の切り分けはボディをスタイリッシュに見せる視覚的効果も高い。
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排気量 798cc の水冷並列2気筒エンジンは、360 度クランクでスムーズな吹け上がり。低回転から高回転域までフラットなトルク特性だが、とくに低~中回転域では力強いトルクを生み出し、必要なときにすっと力を取り出せる。
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着脱可能なゴムラバーは、振動を軽減する効果に加えて、靴底を傷めない。市街地走行やオンロードツーリングがメインなら装着したままがいいだろう。オフロードでゴムラバーを外すと、人車一体感が高まる。とくに雨天走行時に有効だ。
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リアサスペンションは、プリロードとリバウンド調節が可能だ。プリロード調整のダイヤルは手でも回せるので(無段階)、ツーリング中でも積載状態に応じて調整できる。
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日本仕様にはローシートが標準装着されるが、シート高は 880mm と低くはない。幅が狭く設計されているため、実際の足つきはこの数値以上に良好だが、積極的に走らせたいならシートを換装するのも手だ。
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タンデム用グラブバーは、パニアケースステーも兼用している。径がやや小さいが、前後長があるためパッセンジャーの不安はない。荷物固定用ベルトを通せるループホールがついているものの、コードを引っ掛けるためのフックはない。
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左ハンドルスイッチ(ESA と ASC は非装着)。ABS はこのスイッチ操作でオン・オフを選択できる。ESA と ASC を装着した場合は ABS スイッチに機能が追加される仕様。ウインカーはプッシュキャンセル式。
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イグニッションキーは、ハンドルロック、オフ、オンの3ポジションで、パーキングランプポジションはない。その左に 12V 電源ソケット(ヘラータイプ)を装備する。ナビやスマホなどのモバイル機器や電熱ウェアの使用に便利だ。
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スピードメーターとタコメーターは針回転式。右側にある液晶パネルには、水温・時計・気温・走行距離(オド、トリップ×2)・燃費(平均、瞬間)などの各種情報に加えて、ギアポジションが大きく表示される。燃料計のバー表示は残量が1/2を切ったところから減りはじめる。
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車体左側の上部に設置されるステンレスサイレンサーが吐き出すのは低く乾いたサウンドで、抑制を効かせつつも迫力を感じさせる。BMW ボクサーと似た音質だ。
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テールランプとウインカーは LED タイプが標準装備となる。ウインカーはコンパクトだが、光量は十分。照射範囲も広いため、被視認性は良好だ。ラバーマウントで、転倒時にダメージを受けにくい。

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