VIRGIN BMW | R nineT(2014-) 試乗インプレ

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BMW Motorrad R nineT

R nineT(2014-)

  • 掲載日/2014年05月21日【試乗インプレ】
  • 取材協力/BMW Motorrad Japan  取材・写真・文/山下 剛

コンセプトスタディから生まれた
BMW 初のカスタム前提のカフェレーサー

2008年、ミラノショーで BMW が発表した『Lo Rider』は、低く構えたシャシーとチョップされたシートが強烈なインパクトを放つコンセプトモデルだった。これまでの BMW のイメージから大きく離れたこのモデルは、コンセプトスタディとされ、市販を見据えたものではないと思われていた(もちろん市販を望むファンの声はあった)。

そして BMW が創業 90 周年を迎えた 2013年、市販車初のビキニカウルをまとって 1973年に登場した『R 90 S』をモチーフとするオレンジ色のカフェレーサー『Concept 90』が登場した。ハーレーダビッドソンのカスタムビルダーとして世界的に有名なローランド・サンズと共同でデザインされたそのコンセプトモデルは、BMW ファンはもとより世界中のモーターサイクルファンの注目を浴びた。

そうした経緯を経て、『R nineT』は 2013年秋のミラノショーにて発表された。当初、Concept 90 を母体とする市販バージョンかと思われたが、真相はその逆で、Concept 90 は R nineT をベースにローランド・サンズがスペシャルパーツをデザイン、製作したものだったのだ。

つまり、R nineT とは “自由なカスタマイズを楽しむための BMW ボクサー” なのである。

R nineTの特徴

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どこまでもシンプルに
贅肉を削ぎ落としたボクサー

R nineT の車体的特徴は、ざっと三つある。『空油冷ボクサー』『テレスコピックフォーク』『脱着可能なリアフレーム』だ。

空油冷ボクサーエンジンは、水冷化されるまで採用されていた DOHC で、R 1200 GS Adventure に採用された『90 周年記念仕様トリプルブラック』だ。最高出力は 110ps/7,550rpm だが、水冷ボクサーを知ってしまったライダーにとっては柔らかな印象すら抱くかもしれない。

R nineT 独自の構造を持つフレームにセットされるフロントサスペンションは、BMW ボクサーの常套手段であるテレレバーではなく、コンベンショナルなテレスコピックフォークだ。R 1100 以降のボクサーでテレスコが採用されたのは HP2 Enduro、HP2 Megamoto に続いて3台目となる。どちらも採用の理由がスポーツ性を重視した軽量化にあるのに対し、R nineT の場合はカスタムビルダーがその自由な発想を生かすためという点で画期的だ。ちなみに、46mm 径という極太なテレスコピックのチューブは S 1000 R と同一部品だが、内部構造が異なるため、調整機構はない。

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脱着可能なリアフレームも、やはりカスタムビルダーたちの発想をさらに広げ、深めるためのアイディアだ。リアフレームが外された R nineT の姿は、およそ BMW の市販車らしからぬ大胆不敵さにあふれている。

前後ホイールはワイヤースポークホイールで、リアは 5.5 インチリムが装着されているが、6インチリムの装着も可能となっており、200 サイズ幅のタイヤを履くこともできる。

スイングアームは R 1200 R のものが使われているが、リアドライブは R 1200 GS となっている。装着されるサスペンションはモノショックで、リバウンド/ダンピングともに調節可能なプリロードアジャスター付きだ。

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前後ブレーキはブレンボ製キャリパーに ABS をセット。フロントキャリパーはラジアルマウントされ、強力なストッピングパワーを持つ。

これらが織り成す R nineT のスタイリングは、/6 シリーズあるいは /7 シリーズの 1970年代ボクサーを思わせながら、パワーソースと足まわりは最新テクノロジーによる現代的なスポーツ性を確保している。まさしくクラシカルとモダンが融合したデザインだ。

R nineTの試乗インプレッション

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技と知を磨きつつ、快楽を求めて遊ぶ
贅沢なひとときを過ごせる

R nineT のライディングフィールは、『軽さ』と『バランスのよさ』に尽きるだろう。テレスコピックフォークの採用と、ABS 以外の電子制御パーツを持たないシンプルな車体構成が、近年の BMW ボクサーにない軽量な車体を作っている。その軽さはサイドスタンドがかかった状態から車体を起こすだけで感じられるはずだ。そのままハンドルを持って押し引きすれば、さらにその軽さがわかるだろう。

もちろん、走り出すとその軽さはもっと引き立ってくる。近年の BMW ボクサーに乗り慣れた身としては、テレレバーの安定性を否定するものではないが、安定性と引き換えにどれだけの軽さを犠牲にしていたのかをまざまざと知らされる(もちろんこれはどちらが優れているという話ではなく、どちらにも美点がある)。文字どおり、ヒラヒラと曲がってくれる。前方にカーブを見つけてスロットルを戻すと、フロントフォークがすっと沈み、リーンのきっかけを作り出す。それからはステップに加重してもいいし、ハンドルをそっと押し出してもいいし、上半身をコーナー内側に傾けてもいい。コーナリングのための動作をひとつするだけで、するすると曲がる。フロントまわりが軽くなったことで、ハンドリングが素直になっているのだ。これは楽しい。ワインディングはもちろんだが、市街地の交差点すらおもしろく感じてくる。

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空油冷ボクサーエンジンのパワーフィールはこれまでのRシリーズと変わりはなくとも、車体が軽いせいか吹け上がりも軽やかに思えてくる。目新しさこそないが、アクラポヴィッチ製チタンマフラーが吐き出す乾いた排気音は、ほどよく調教された音量と音質で、低~中回転域ではまろやかで静かだが、5,000rpm を回ったあたりから野太い低音を響かせる。

低回転域からトルクはじゅうぶんに発生するから、スロットルをほんの少しずつ開けていきながらの加速も心地いい。2速、3速と上げ、パーシャルに保ったままクルーズするときの鼓動感は柔らかく、BMW のフラットツインらしい穏やかさがある。しかしワイドオープンすれば、そのぶんだけきっちりと、そして鋭く加速していく。リアタイヤがアスファルトを蹴りつける感触を味わいつつ、震え上がるエンジンの躍動感に身を預けられる。ゆっくりと景色を見ながら走るのも、カフェレーサーの気分で走るのも、どちらも気持ちよく乗り回せる。

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そこで気づくのが、全体のバランスのよさだ。スロットルの開き具合と加速の具合、ブレーキの握り具合と減速の具合、それらに応じて伸び縮みするサスペンションの味つけ。フレームの剛柔。どれもが隅々まできっちりと調教されていて、まったくの自然体でバイクを操れることに気がつく。その根っこにあるのは、ボクサーエンジンならではの低重心、180 度クランクの等間隔爆発による自然な躍動だ。近年の BMW はテレレバーやデュオレバーといった独自機構に加えて、水冷ボクサーでは最先端の電子制御技術がふんだんに盛り込まれている。私自身、それらが作り出すモーターサイクルの乗り味こそが BMW らしさだと感じることが多いし、そうした感想を抱くオーナーも多いと思う。革新性と先進性を持つバイクメーカーと呼ばれることも多い BMW だけに、そこにばかり注目してしまうし、その出来のよさ、素晴らしさに魅力を感じてしまうのも致し方ない。

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だが、そうした革新性をほぼすべて排除した BMW ボクサーである R nineT で感じられるのは、モーターサイクルという乗り物を 90 年に渡って作り続けてきた歴史であり、積み重ねてきた技術の集大成だ。とにかくバランスがいいのである。手足のように操れるというのとはちがう。手と足、肩と腰、そしてアタマを使ってバイクという機械を操り、走らせる楽しさを色濃く味わえる。技と知を磨きながら、快楽を求めて遊ぶという贅沢なひとときを過ごすことができるのだ。これこそが BMW がプレミアムブランドたる由縁なのだと思い当たる。

ひとしきり走らせたところで路傍に停め、エンジンを切る前にスロットルを軽くあおってやる。するとブルルンと震えながら、R nineT は右側に車体を傾ける。縦置きクランクならではのこの挙動、消そうとすれば消せるこのクセをわざわざ残しているのは、そうした車体作りの巧みさを引き立てるためなのか。それともひとつだけ残した可愛気なのか。

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カスタムの自由度を広げるために機能を省き、シンプルに仕上げたことで、BMW の素性のよさがすっかりとさらけだされている。カスタムして自分だけの一台を作るのもいいが、あえて手を加えずにストックのまま乗るのもよさそうだ。長く乗り続けられるのは BMW バイクの特徴のひとつだが、R nineT はことさら長く乗り続けられるモデルだ。

R nineT プロフェッショナル・コメント

少しのカスタマイズでも
“自分だけの特別” になるモデル

R nineT のセールスポイントは、車体全体のフォルムと細部のこだわりです。たとえばヘッドライトの内側中心部には BMW のマークが誇らしげにかつ、さりげなく付いています。ネックの部分には、旧車などにある金属プレートがやはり存在感を主張しています。

今まで BMW になかった “カスタムを楽しむ” という前提での車両設計は魅力的です。カスタムビルダーのような個性を出しても、ライディングポジションの変更など少しのカスタマイズだけでも、“ご自身の特別な車両になる” ことは間違いないでしょう。もちろん、このままでもじゅうぶんに存在感のある車両ですが、カスタムしても楽しめる BMW として、多くのお客さまと一緒に楽しんでいけるのがいいですね。

最新の水冷ボクサーエンジン搭載でないことを気にされる方もいらっしゃるでしょう。しかし、空冷エンジン独特のサウンドであったり、ラジエターが付かないシンプルな車体であったり、と “空冷でよかったという面” のほうが大きいと思います。水冷でなくてもテレレバーでなくても納得されるはずですので、まずは試乗することをおすすめいたします。シンプルな分だけ、よさも違いもわかると思いますよ。お近くのディーラーで R nineT の魅力を存分にお試しください。(モトラッド東京ベイ 池田 天平さん)

取材協力
住所/東京都江東区佐賀1-4-9
Tel/03-3630-9751
営業/9:15~18:00
定休/月曜、第1火曜

R nineT の詳細写真

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オーソドックスな丸目1灯式ヘッドライト。バルブカバーには BMW のロゴが、モノクロでさりげなく描かれている。
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そのヘッドライトは2本のボルトでマウントされる。デザインを優先させた結果だろうが、アウトバーンでの高速走行を想定していながらこれだけシンプルな固定方法は、BMW の技術力の自信の表れでもある。
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フロントブレーキは 320mm 径ディスクローターにブレンボ製4ポッドキャリパーがラジアルマウントされる現代的な装備。ABS は標準装備している。
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倒立フロントフォークは S 1000 R と同一のチューブを採用するが、調整機構はない。ちなみに、今でこそテレレバーやデュオレバーを多く採用する BMW だが、テレスコピックフォークを発明したのは BMW だ。
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ステアリングダンパーが装備され、クセのないハンドリングに貢献している。
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ブラックにペイントされるアルミの燃料タンクは、サイド部は無塗装としてアルミ地を残し、ヘアラインの美しさを際立たせるデザイン。インテークパイプにもアルミパネルが装着される。
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90 周年という節目で水冷化された BMW ボクサーにとって、DOHC 4バルブ空油冷フラットツインエンジンは、空冷の歴史に有終の美を飾る。
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片持ち式スイングアームは R 1200 R と共通。もちろん BMW 伝統のシャフトドライブだ。
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リアサスペンションは油圧調整式プリロードアジャスターを装備。リバウンド/ダンピングともに調節可能。
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シートは前後セパレートタイプ。薄い作りだが、コシがしっかりとしたスポンジを採用しており、乗り心地は良好だ。
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3ピース構造のリアフレームセクションは簡単に脱着できる構造だ。
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片側2本出しのアクラポビッチ製チタンサイレンサーを装備。ヌケのいい乾いた低音を奏でる。
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リアフレームには積載用の荷掛けが装備されている。これも近年の BMW ではめずらしい装備だ。
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12V 電源のヘラーソケットは車体左側、ボクサーエンジンの上部に備わっている。
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キーオンにすると速度計と回転計の針が右に振れる演出が見られるメーター。中央の液晶パネルにはギアポジションや気温、距離、時計などを表示する。

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