VIRGIN BMW | S1000RR(2015-) 試乗インプレ

S1000RRの画像
BMW Motorrad S1000RR

S1000RR(2015-)

  • 掲載日/2015年04月14日【試乗インプレ】
  • 取材協力/BMW Motorrad Japan  取材・文/TOMO  写真/山下 剛

2009年に登場した S1000RR
本気が詰まったスーパースポーツ

S1000RR が登場したのは 2009年。それまでの BMW といえば、独自のボクサー系スーパースポーツである HP2 シリーズなどはあったものの、ワールドスーパーバイクをはじめとする市販車レースで活躍できるほどのハイポテンシャルなスポーツモデルはなかった。K1200S や K1300S といったけっこうスポーティな走りができるモデルもあったけど、やはり大柄で、あくまでもスポーツツアラー。その域を出ることはない。けっしてそれが悪いのではなく、そのカテゴリの中では確かな技術力と高い完成度を誇り、他メーカーのそれらとは一線を画すマシンを造り上げていた。

そんな BMW がスーパースポーツ界にも本気を出した。日本やイタリアのそれとレースで戦い、そして勝てるポテンシャルを持った4気筒モデルを創った。それが S1000RR だ。それまでのイメージをガラリと変えた衝撃的な出来事だった。

S1000RRの特徴

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第三世代の最大の特徴は
DDC とギアシフト・アシスタント Pro

2015年2月に発売された S1000RR は三世代目の進化モデル。これまでの第一世代から第二世代へ移行は、整流フィンが付いたり、空力バランスやフレームの剛性バランスを変更したりと、わりと地味なもので、違いがわかりづらい部分を改良していた。日本仕様の最高出力はどちらも 156PS。これは騒音規制のためで、もともとの小さなメガホンマフラーではなく、アクラポヴィッチ製のサイレンサーをおごった上で抑えられていた。

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しかし、第三世代は違う。外観も車体もスペックも大きく進化&変貌し、完全なニューマシンと言ってもいいくらいだ。まず外装やフレームを大幅に変更。ステアリングヘッドまわりやスイングアームピボット周辺の剛性をアップさせている。DTC(ダイナミック・トラクション・コントロール)に加えて、ABS と連動する DDC(ダイナミック・ダンピング・コントロール=電子制御セミアクティブサスペンション)も搭載。また、シフトダウン時にもクラッチやスロットル操作を必要としないギアシフト・アシスタント Pro も標準装備している。パワーが 199PS にアップしたにもかかわらず、より乗り心地が良く、扱いやすくて強烈に速い “快適スーパースポーツ” になったのだ。

S1000RRの試乗インプレッション

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これまでの S1000RR よりも
ずっと BMW 的な優しさを持つ

私はサーキットを存分に走れるような技量も経験もない一般的なツーリングライダーだ。そもそも、スーパースポーツモデルの経験自体が少ない。でも S1000RR のメディア向け発表試乗会はサーキットで行われた。当然ながら、どう走ったら良いのかわからず、オロオロするばかり。しかも一緒にコース上を走っていたのは、現役のレーシングライダーやそれに負けないくらい元気なテストライダーたち。走っていることが邪魔なんじゃないかと恐縮してしまい、マシンの性能を試すという以前に、走り方もままならないうちに終了してしまった。

これではいかん! と後日、場所をワインディングに移して再試乗した。選んだコースはプライベートでも走り慣れた道。勝手はわかっている。しかし、S1000RR に馴染めるかどうかは別問題。ライディングポジションが前傾姿勢というだけでも身構えてしまい、乗り方がわからない。試乗開始直後はそんな状態だった。

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「こんなバイクのインプレなんて書けないぞ。やっちゃったかなぁ~、困ったなぁ~」などと考えつつ、コーナーをひとつふたつとクリアしていくごとになんとなく慣れてきて、それと同時に思った。「乗り方がどうとか、何も考えなくていいんじゃないかな」と。バイクが勝手にライダーに合わせてくれるのだ。

ライディングモード Pro を『スポーツ』に設定してもエンジンが優しく応答するので、気を使わずにスロットルを開けられる。199PS のピークパワーを生み出す 13,500rpm の高回転域なんて別世界で、自分が峠道で使っている回転域はもっと低いから……と思っていると 10,000rpm くらいはふつうに使っていた。エンジンを高回転まで回すのが怖くない。

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それに DDC がとても利口だ。1,000分の何秒という単位で、ほぼ瞬時に路面状況やマシンの挙動を感知し、ダンパーの強弱を微調整している。しっとりした乗り心地なのも、良い意味でスーパースポーツらしくない。同じ場所で 2012年モデルの S1000RR に乗ったことがあるが、それはもっとガツガツした硬い感じの乗り心地だった。2015年型にはそんな感じがない。

もちろん、いま DDC が考えて調整しているということなどわからない。だけど、跳ねずにしっとりしているのがその証拠。おかげで、少々凸凹したところを走ってもリラックスでき、乱暴な走りになってしまってもバイクがカバーしてくれる。初心者でも気負わずに乗れてしまう不思議な優しさを持っている。そう思い始めたら、走るのがもう楽しくてしかたがない。慢心は危険とわかっていても、楽しくてついついペースが上がってしまう。

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ギアシフト・アシスタント Pro も実に滑らか。オーバーギアで下りコーナーに進入してしまったときでも、スッとシフトダウンできるのは心強い。前を走るクルマやバイクに追いついて後ろを走ろうとしても、みんなが道を譲ってくれる。なぜだろう? そんなに威圧的なのかな? と考えたら気がついた。高回転域までエンジンを回したときの音だ。少し大きくてやんちゃな排気音とエンジン音には、周りの誰もが気づく。だから避けてくれる。でも走る私は、流しているだけの意識。しかも乗り心地は快適なのだ。

この新型 S1000RR は、私がワインディングを走っただけではそのポテンシャルの幾分も発揮することはできない。しかし、初心者からベテランまで楽しめる。つまり、間口が広くて奥も深い。乗り手を限定しない。これまでよりもずっと “BMW 的な優しさ” を持った本気のスーパースポーツバイクだ。

S1000RR プロフェッショナル・コメント

今までの S1000RR も最高
そしてこの S1000RR こそ最高

それが率直な意見です。2015年型 S1000RR の発売を前に、ディーラースタッフを対象とした研修でサーキットを走行しました。

今までそれなりの走りを経験してきましたが、新型 S1000RR のひとつひとつの挙動の安定感には脱帽でした。ストレスを感じさせないモード切り替えやギアシフト・アシスタント Pro の動作はもちろん、減速時に一気にシフトダウンしてクラッチをつないでも怖くないスリッパークラッチの性能はたまりませんね。また、フルスロットルから全閉にしてフロントブレーキを強くかけた際に「ヤバっ!」と感じたのにも関わらず、転倒しなかったのは DDC のおかげでしょう。

メカ的なところに強烈な性能を感じた一方で、バイクそのものが単純に乗りやすくて速いことにも気づきました。ライダーが感じられる情報を最大限に伝えてくれた上で、電子デバイスが補助してくれる高性能かつ安全なマシンが S1000RR です。(モトラッド東京ベイ 秋山 敬太さん)

取材協力
住所/東京都江東区佐賀1-4-9
Tel/03-3630-9751
営業/9:15-18:00
定休/月曜、第1火曜

S1000RR の詳細写真

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左右非対称のフロントマスクはそのままだが、そのハイビームとロービームの配置が以前のモデルとは左右逆になった。ノーズの先端も伸ばされている。
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エンジンから発生する熱を効果的に流すサメのエラのような右サイドカウル。別体構造だった整流フィンは消え、カウル形状を見直すことで空気抵抗を軽減させている。
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燃料タンク容量は 17.5 リットル。そのうち4リットルがリザーブ。タンクカバー、エアボックスカバー、サイドパネルはカーボンのものがオプションで用意されている。
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シート高は 815mm。ちょっと高めだが、前半分がスリムで足つきは良好。スーパースポーツモデルらしく、スポンジは少なめで長く乗るとお尻が痛くなるかもしれない。座り心地はスポーティ。
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トゲが生えたようなテールレンズはこれまでのSシリーズと同じ特徴的なデザイン。今回、ウインカーはKシリーズなどと同じ小型軽量の LED タイプになった。視認性もアップしている。
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吸入バルブをチタンとしたり、カムを見直したりと、エンジンにも手が加えられた。これまでの日本仕様は 156PS(本国仕様は 193PS)だったが、新型 S1000RR では日本仕様も 199PS のワールドパワーになった。『レイン』『スポーツ』『レース』の走行モードに加え『スリック』『ユーザー(カスタマイズ可能)』の2つを追加したライディングモード Pro も標準装備する。
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シフトアップだけでなく、シフトダウンも可能なギアシフト・アシスタント Pro。シフトペダルは、取り付け位置を変えるだけで、逆シフトに切り替えられる。
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新設計の排気システムのサイレンサーは、2本パイプの新デザイン。アフターファイヤーの減少と大幅な軽量化をはかった。太くてやんちゃなサウンドを奏でる。
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フロントフォークからは DDC の配線が伸びる。ライディングモード Pro を『レイン』『スポーツ』に設定するとダンピングは『ロード』、『レース』設定では『ダイナミック』、『スリック』設定では『トラック』となる。
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フロントブレーキディスク経は 320mm。組み合わせられるレース ABS は、ライディングモード Pro の『レイン』『スポーツ』では姿勢制御優先、『レース』ではドライ路面設定、『スリック』ではサーキット設定となる。
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リアサスペンションにも DDC が装備される。ショックの手前にあるロッドはストロークセンサーで、これでスイングアームの動きをコンピューターへと伝えている。
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ハイパワースーパースポーツモデルの証でもある強烈にゴツくて丈夫そうなスイングアーム。アーム長は 604mm(前モデル比+11mm)、ホイールベースは 1,425mm(同+8mm)と延長された。
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ライディングモード Pro とそれに関連して変更される DTC や ABS、リーンアングルなど、マシンの状態を表示するメーターパネル。照明の明るさは、周囲の明るさに呼応して自動的に変化する。
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ラップ計測やトリップ計などのメーター表示切り替え、ABS のオン/オフコントロールするボタンは、左側ハンドルスイッチに集中している。
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キルスイッチ一体型のセルボタン。その上にあるのは、ライディングモード Pro の切り替えボタン。スーパースポーツモデルながらもグリップヒーターを備えるのは BMW 流。

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