VIRGIN BMW | S1000XR(2015-) 試乗インプレ

S1000XRの画像
BMW Motorrad S1000XR

S1000XR(2015-)

  • 掲載日/2015年08月31日【試乗インプレ】
  • 取材協力/BMW Motorrad Japan  取材・写真・文/山下 剛

BMW が満を持して世に送り出す
先進テクノロジー満載のハイパワーツアラー

S1000XR は、2014年のミラノショーで発表されたブランニューモデルで、車名が示すとおり排気量 999cc の水冷並列4気筒エンジンを搭載したスーパースポーツ S1000RR を源流とする派生モデルである。

エンジンは S1000XR のキャラクターに合わせて低中回転域での扱いやすさを重視したもので、S1000RR をベースとしながらも専用設計となるアルミのペリメターフレームに搭載する。組み合わされる前後サスペンションはゆとりあるストロークを持ち、ホイールは前後ともに 17 インチだ。

同じようなコンセプト(3気筒以上のエンジン、ストロークの長いサスペンション、アップライトな乗車姿勢)を持つライバルとしては、ホンダ・VFR800X クロスランナー、カワサキ・ヴェルシス1000、ヤマハ・MT-09 トレーサー、ドゥカティ・ムルティストラーダ1200、MV アグスタ・ツーリズモヴェローチェ800、トライアンフ・タイガースポーツなどが挙げられる(ただしムルティストラーダ1200のエンジンは2気筒)。一般的な視点で見れば、R1200GS を筆頭とするアドベンチャーツアラーにカテゴライズされるモデルになるだろうが、列挙したライバルを含め、S1000XR はそれらとはやや異なる方向性を持っているバイクだ。

BMW モトラッドジャパン公式サイトのラインナップでも R1200GS と同じ『アドベンチャー』にカテゴライズされているが、R1200RT や K1600GTL などが並ぶ『ツアー』との境界線に立つモデルといって差し支えない。車名に冠された『X』はクロスオーバーを意味すると思うが、『スーパースポーツとツーリングバイク』、『エンデューロとオンロード』を自由に行き来するキャラクターを持つバイク、それが S1000XR だ。

S1000XRの特徴

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SBK 直系のテクノロジーを持つ
オールラウンドツーリングバイク

S1000XR の特徴をひと言で済ませてしまうと、S1000RR のエンジンを低中速重視とし、足の長いサスペンションを持つシャシーに搭載することで長距離ツーリング向きにしたバイクだ。GS シリーズのようにオフロードを得意としているわけではないが、荒れた舗装路、ちょっとした砂利道ならストレスなく走破できる性能も持ちあわせている万能型オンロードツアラーである。

もう少しスマートに表現すると、SBK 直系のマルチツアラーだ。つまり BMW がスーパーバイク世界選手権で培ったテクノロジーをフィードバックしたオールラウンドツーリングバイクである。

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エンジンはネイキッドモデル S1000R と同一となる排気量 999cc の水冷並列4気筒で、最高出力は 160ps を発生(ただし S1000R の日本仕様は 156ps)。ギア比は S1000RR/S1000R と同じ設定だ。ディメンションの変更に伴い、フレームは新設計となっているが、エンジンを強度メンバーとするアルミペリメターフレームという構造も S1000RR/S1000R と同じである。

サスペンションは、フロントがテレスコピック式の倒立フォーク、リアは両持ち式スイングアームとモノショックを組み合わせている。前後ホイールは 17 インチが採用されている。

『ライディングモード PRO』と名づけられたエンジン出力モード変更機能を備えており、『Rain』『Road』『Dynamic』の3種から任意に設定できる(クローズドコースでの使用を前提とした『Dynamic Pro』も備えている)。

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ライディングモードはエンジンの最高出力や出力特性を変化させるだけでなく、ABS Pro、DTC(ダイナミック・トラクション・コントロール)、ダイナミック ESA(セミアクティブ式の電子制御サスペンション)の設定も同時に変更する。それを可能にしているのはリーンアングルセンサーで、車体の傾きを常時監視。これに加えて速度、エンジン回転数、加減速の状態、前後輪の回転差などをモニタリングし、それぞれの設定を瞬時に最適なものへと変化させるのだ。ちなみにダイナミック ESA は 1/1000 秒ごとに車体の状態をチェックし、ダンピング特性を常に最適なものへと変化させる。

さらに日本仕様には『ギアシフトアシスタント PRO』『クルーズコントロール』『純正ナビゲーションマウントセット』が標準装備となっており、センタースタンド、LED ウインカー、グリップヒーターも装備されている。

S1000XRの試乗インプレッション

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ライバルの先を行く徹底した安全性が
ライダーに大いなる安心感をもたらす

排気量 999cc 水冷並列4気筒エンジン、ロングストロークサスペンション、前後 17 インチホイール=スーパースポーツ直系のハイパワーエンジンを、アップライトな乗車姿勢で操ることができるバイク、それが S1000XR の特徴だ。乱暴な言い方をすれば、S1000RR のサスペンションを伸ばして、エンジンをデチューンしてさらに乗りやすくしたバイクである。

日本仕様ではダイナミック ESA(電子制御サスペンション)をはじめとして、ABS Pro、DTC(トラクションコントロール)、ギアシフトアシスタント PRO といった最新電子制御テクノロジーがすべて標準装備となっている。

付け加えておきたいのは、それらの電子制御テクノロジーは R 1200 R/R 1200 RS 同様にリーンアングルセンサーを搭載した最新バージョンとなっており、ABS が『ABS Pro』へと進化している点だ。既存の ABS はホイールセンサーによる前後の回転差を検知してタイヤのロックを未然に防ぐものだったが、ABS Pro ではリーンアングルを同時に検知、データを演算することで急制動における車体の挙動変化を軽減する役割も担っている。つまりこれまでの ABS がタイヤのロックを防ぐのみだったのに対し、ABS Pro はタイヤがロックするよりも前の段階において車体の安定性を確保するのだ。

これらの電子制御機能はライディングモード PRO と連動しており、『Rain』『Road』『Dynamic』の3種それぞれで適切な挙動をするようプログラムされている。エンジンのパワー出力特性、ABS や DTC の効き方、ダイナミック ESA のダンピング特性、すべてがライディングモードと連動している。

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これらの効果をもっとも体感できるのはコーナリング中に急ブレーキをかけてみることで、たとえば高速道路のレーンチェンジ中に前走車に突然進路を塞がれて急ブレーキをかけた、という場面であっても ABS Pro とダイナミック ESA が速度やバンク角などを検知し、瞬時に演算をして車体を安定させるべくブレーキ圧とサスペンションダンピングを調節してくれるのだ。何度かコーナリング中にブレーキを握ってみたが、急激な挙動変化はまったく起こらない。もちろんノーズダイブはするのだが、フォークがじわりと沈み込んでそこからしっかりと踏ん張り、車体を安定させるのだ。

これはもう異次元の体感といって過言でない。言い換えると、握りゴケしようとしてもなかなかそれをさせてくれない。ひょっとするとまったくできないのかもしれない、と思わせるほど、車体を不安定にしようとしてもそうならないのだ。これが不意の事態においてどれほど安全に貢献するかは想像するまでもないだろう。

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さて、話を少し戻そう。S1000XR は平均的な日本人にとって、やや大柄な部類に入るだろう。筆者は身長 175cm だが、ローシートが装着された日本仕様でも両足のかかとまでは接地しない。ハンドルもけっこうな幅があり、タンクの張り出しもある。R1200GS をひと回り小さくしたくらいの印象だ。

エアロダイナミクスについては、あえて走行風をライダーに当てるデザインとなっている。可変式のスクリーンは標準状態でヘルメットのシールドをかすめて上方へ流れ、高くした状態ではヘルメットの上部をかすめていく。また、オプション装備ながらハンドガードの防風性はとても優れていて、手の甲から肘のあたりまでをしっかり風から守ってくれ、グリップヒーターの効果を大いに高めてくれる。これはぜひ装着したいオプションだ。

ハンドリングは前後 17 インチタイヤから想像するよりは大らかな設定で、テレレバーとテレスコピックの中間的な味つけだ。ダイナミック ESA が安定志向に設定されているためだと思うが、このハンドリングは長距離ツーリングにおいて疲労を軽減してくれる。しかし幅広いハンドルを使い、ステップと腰で荷重してやれば思ったとおりのラインをトレースしてくれるし、けっして鷹揚なハンドリングというわけではない。高重心になるディメンションを生かせば、クイックにも曲がってくれる。

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もうひとつ『ギアシフトアシスト PRO』はクラッチを使わずにギアチェンジできる機構で、アップもダウンもクラッチ操作なしで行える。このテクノロジーと並列4気筒エンジンの相性はとても良く、2,000rpm あたりでシフトペダルをかき上げてもスムーズにギアチェンジできる。ダウンも同様で、これは一度使ってしまうとクセになる気持ち良さだ。

今回はダートでの試乗はできなかったのだが、前後 17 インチホイールにスポーツツーリングタイヤが装着されていること、ライディングモード PRO に『Enduro』が設定されてないことを考えると、積極的にダートへ入り込むキャラクターではないといえる。ただし、ステップはオフロードタイプのすべり止め加工されたものに、ブーツソールを保護するためのラバーが装着されたタイプを装備している。

オンロードの長距離ツーリングが主体、あるいは未舗装路へ入り込むことを厭わないスタイルであれば、S1000XR はすばらしいパートナーになってくれるだろう。超絶した車体安定性は、転倒の危険性を限りなく小さくしている。極力リスクを軽減しつつ、バイクツーリングという趣味を満喫するための必須装備ともいえる。

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最後に、気になった点について触れておく。まずひとつはエンジンの微振動で、とくに常用回転域といえる 4,000~6,000rpm でハンドルやステップへの振動が強くなる。このためミラーに映る後方車はブレてしまうし、手足に感じる振動は疲労の原因にもなる。これについては改善を期待したい。

もうひとつは日本仕様に装着されるローシートで、座面を低くしたためにシートに角ができてしまっており、太ももの内側を刺激してくる。購入にあたっては、跨るだけでなく試乗をし、必要ならば標準シートやスポーツシートへの換装を検討したほうがいいだろう。

ライバルモデルが多くリリースされているカテゴリーのバイクだけに、購入を検討している人はかなり迷っていることだろう。そうした中で S1000XR を選ぶ理由は、乗りやすさと扱いやすさは前提として、なんといっても安全性と安心感である。S1000XR は、前述したライバルモデルよりも一歩先を進んでいる。

S1000XR プロフェッショナル・コメント

“走るスタイルを選ばない自由さ”は
BMW の4気筒ファンからも注目される

S1000XR は、GS のアドベンチャー要素と S1000RR のスポーツ要素をクロスオーバーさせたアドベンチャースポーツバイクです。GS を “走る道を選ばない自由さ” とすれば、S1000XR は “走るスタイルを選ばない自由さ” があると言えます。GS からオフロード要素を排除するのと引き換えに、その圧倒的なエンジンパフォーマンスと自由なハンドリングを手に入れたのです。S1000XR は、GS のようにリーンアウトでも、S1000RR のようにリーンインでも、ライダーのあらゆるライディングスタイルに適切な挙動で応えてくれます。ほとんどの道が舗装された現代の道路事情を考慮すると、この自由さもまた、正しくアドベンチャーバイクと言えるのではないでしょうか。

その一方で、ひさびさに登場した『4気筒エンジンのツアラー』ということで、BMW の4気筒ファン(縦置き、横置きともに)から熱い視線が送られています。そんな S1000XR にぜひ試乗してみてください。フリースタイルツアラーとでも呼ぶべきその自由さに、バイクに乗り始めたころの感動が蘇ることでしょう。(モトラッド鈴鹿 川合 稔さん)

取材協力
住所/三重県鈴鹿市稲生西3-9-35
Tel/059-386-3700
営業/10:00-19:00
定休/月曜(祝日の場合は翌日)

S1000XR の詳細写真

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S1000RR 直系であることを如実に語るフロントマスク。フェアリングは左右対称だが、内蔵されるヘッドライトは左右非対称。左がロービーム、右がハイビームとなる。
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スクリーンは可変式となっており、手動で2段階に調節可能。標準位置だとヘルメットのシールドを走行風がかすめ、高い位置に合わせるとヘルメット上部を走行風が抜けていく。
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ダイナミック ESA で制御されるテレスコピック式の倒立フォーク。停止状態のままイグニッションをオンにして、車体を揺らすようにフォークに荷重を何度かかけると、ダンピング特性が変化するのがわかる。
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アンチロック・ブレーキ・システムは『ABS Pro』へと進化し、タイヤのロックを防ぐだけでなく、コーナリング中のブレーキで車体が不安定になった際にブレーキ圧を制御して車体を安定させる機能を持つ。
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上段は冷却水が循環するラジエター、下段はエンジンオイルを冷却するオイルクーラー。車両のキャラクターを考えると、荒れた路面や未舗装路も走るため、コアガードを装着しておきたい。
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フロントのブレーキローターの内側に設置される ABS 用の車速センサーはすっかりお馴染みだろう。ちなみにキャリパーだけでなくローターもブレンボ製だ。
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サイドパネル前部に装着されるコンパクトな形状のウインカーは LED 式を採用。照度は十分で、側面からの被視認性も良好だ。
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サイドパネルは S1000RR の意匠を巧みに継承しており、ツーリングモデルながら SBK 直系であることを強烈にアピールする。
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160ps を発生する排気量 999cc 水冷並列4気筒エンジンは、内部パーツも含めて S1000R と同一仕様だ。低中回転域での扱いやすさを重視したチューニングとなっており、アイドリングのままのクラッチミートも容易だ。
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ステップはマディや雨天でも滑りにくいオフロードタイプを採用。ブーツのソールを傷めないよう、また振動を軽減するようゴムカバーが装着される。
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六角形の断面を持つサイレンサーは、スーパーバイク直系らしい迫力あるサウンドを吐き出すが、常用回転域ではジェントルな音質で、ロングクルーズでも疲れにくい。
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2ピストン式キャリパーが採用されるリアブレーキ。これは S1000RR/S1000R とは異なる点で、S1000XR がツーリングモデルであることを物語る。姿勢制御用ではなく、あくまで制動用のブレーキだ。
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リアセクションの裏側の様子。雨天走行や未舗装路走行が多いなら、リアフェンダーを長いものに換装したいところだ。ちなみにパニアケース用ホルダーはオプション設定となっている。
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アルミペリメターフレームは S1000XR のために新設計されたもの。S1000RR 同様にエンジンの放熱はけっこう高く、夏場は太ももを熱気が直撃してくる。カーボンフレームカバーなどの対策も有効だろう。
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日本仕様に装着されるのはローシート。足つき性は向上するが、座面の角が太ももを刺激してしまうのが玉にキズ。購入にあたっては標準シートも試したいところだ。
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セパレートタイプに見えるが、実は前後ワンピース構造のシート。シート下にはバッテリーや電装系パーツが並ぶ。ETC 車載器を搭載するスペースは十分にある。
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ドライブチェーンが貫通する意匠は S1000RR/S1000R から継承するが、スイングアームはもちろん専用設計だ。
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セミアクティブ式の電子制御サスペンションであるダイナミック ESA を標準装備。プリロード、ダンピング、コンプレッションすべてがコンピューター制御され、車体姿勢を常時安定させる。
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燃料タンク容量は 20 リットル。90km/h 走行時の燃費はカタログ値で 18.5km/L だから、航続距離は単純計算で 370km となる。なお、樹脂タンクカバーが装着されているため、マグネット式タンクバッグは使用不可。
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メーターの左側に 12V 電源をとれるヘラーソケットを装備。スマートフォンの充電や電熱ウェアの使用に重宝する。
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テーパードタイプのバーハンドルは幅が広く、リラックスした乗車姿勢をとれることに加えて、不整地走行時の扱いやすさにも優れる。
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BMW 純正ナビゲーションシステムをそのまま装着できるマウントキットは標準装備となっている。
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BMW 共通の左側ハンドルスイッチ。グリップ内側にあるのはマルチコントローラーで、純正ナビゲーションの操作を感覚的に行える。スイッチ類はクリック感も良く、使いやすい。
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右側ハンドルスイッチにはセルスターター、エンジン停止、ライディングモード切替、グリップヒーターのスイッチが並ぶ。
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ブレーキレバーには、5段階の調節機構を備える。
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回転計は針式、速度計はデジタル表示式。液晶画面にはギアポジション、ライディングモード、距離、時刻、気温などを表示可能。バックライトは白色で、夜間の視認性は良好。上部にある白い円はレブリミットモニター。
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イグニッションキーは、給油口とハンドルの中間に設置されている。純正以外のナビゲーションやカメラなどをハンドルマウントしても干渉しにくい。
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クラッチはワイヤー式。レバー位置の調節機構はなく、シンプルな構造だ。
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大荷物を積載しても干渉しにくいテールランプとウインカー。テールランプは LED が採用される。上部にあるキーシリンダーはシート着脱用。
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パッセンジャー用グラブバーは大きな形状をしており、握りやすい。フックを持たないため、荷掛け用としての使い勝手はいまひとつ。

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