VIRGIN BMW | 2016年型 F700GS & F800GS 徹底試乗“ザ・ミドルGS” ステージ別徹底インプレ

F700GS & F800GS (2016)の画像
F700GS & F800GS (2016)

2016年型 F700GS & F800GS 徹底試乗“ザ・ミドルGS”

  • 掲載日/2017年04月01日【ステージ別徹底インプレ】
  • Text & Photo / Ryo Tsuchiyama

エントリーユーザーを意識したモデルでありながらベテラン勢からも絶大な支持を集めている並列2気筒のF-GSシリーズ。ルックスやスペックに大きなインパクトは感じられないものの、兄貴分に当たるR1200GSとは異なる姿勢で開発されたこのシリーズには日本の道路事情にベストマッチと思える特性が備わっているのだ。

STREET

①F700GS

誰もが気軽に使いこなせる
小柄な車体と優しいエンジン

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08年から発売が始まった並列2気筒のF-GSシリーズの最大の魅力は、日本人の体格と日本の道路事情にベストマッチな特性を備えていること……かなあ。いや、編集部が考えた“ジャストフィット”というタイトルに従って、とりあえず文章を書き始めてみたけれど、もちろんF-GSの魅力はそれだけではない。このシリーズには、素直でわかりやすいハンドリングや、従順で扱いやすくて愛嬌のあるエンジン、ロングツーリングを快適にこなせる安定性など、BMWならではと思える魅力が数多く備わっているのだから。

と、まずはF-GSに対する私的な見解を述べてみたものの、このシリーズには、オンロード志向の700と(先代に当たる08~12年型の車名はF650GSだったが、現行のF700GSと同じく、排気量は798cc)、オフロード志向の800が存在し、各車のキャラクターは相当に異なっている。以下の文章では2台の比較を念頭に置きつつ、F-GSシリーズの魅力を記してみたい。

以前から思っていたのだけれど、F700GSの市街地における扱いやすさは、誤解を恐れずに言うなら、ホンダのスーパーカブ的である。気軽に跨って何も考えずに走り出せるし、どこにでも入って行けるし、興味を惹かれた場面ですぐに止まれる。などと書くと、だったらスーパーカブでいいじゃないかと言う人がいそうだが、1日500km以上のロングツーリングを余裕でこなせる安定感や走破性を備える一方で、こんなにも市街地がイージーというのは、とんでもない話である。世の中にはオールラウンダーと呼ばれるモデルが数多く存在するものの、F700GSの守備範囲は、ちょっと尋常ではないレベルに達しているのだ。

もっとも、そういった資質の代償なのだろうか、F700GSには、“パンチが希薄”、“まったりしすぎ”などという異論を述べる人もいる。その意見はわからないでもないけれど、そういうライダーに対して、BMWは刺激的なF800GSを準備しているのだから、F700GSに異論を述べるのは野暮だと思う。

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Fシリーズ全車が搭載する並列2気筒エンジンは、クランクの位相角が360度で、中央にはコンロッド式バランサーを設置。扱いやすさを前提とするF700GSは、最高出力をあえて控えめな75psに設定している。

②F800GS

ちょっとした移動でも
スポーティさが味わえる

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僕がF700GSとF800GSを同条件で試乗するのは、今回が初めてではない。でも久しぶりに2台に乗った僕は、こんなに違うんだよなあ……と、今さらながらにして驚いた。何に驚いたかと言うと、まずは車格感だ。F700GSと比較すると、F800GSの車格感は明らかに1クラス上で(シート高はF700GS+55/60mmとなる820/850mmで、ホイールベースはF700GS+28mmとなる1,590mm)、そうなると乗り手の意識としては、自然に緊張感が生まれるし、何となく気合いも入ってくる。

もっともF800GSの車格感は、今どきの2気筒以上のミドルアドベンチャーツアラーの中では平均的で、逆に言うならF700GSは、このジャンルでは異例と言えるほど、車格を小さく感じるのである。というわけなので、どちらが市街地に向いているかと言ったら、それはやっぱりF700GSのほうだろう。

ちなみにF700GSとF800GSは、エンジンフィーリングもかなり異なっていて、穏やかで優しい特性の700を基準に考えると、800はシャープかつパワフル。そのおかげで、800は前後サスペンションのピッチングも起こしやすいから、自分の意思で車体をコントロールしている感も得やすい。もちろん、混雑した市街地でそういった美点を享受できる場面は、決して多くはないのだけれど、ちょっとした移動でもスポーツライディングという意識が持てるF800GSの乗り味は、オートバイに刺激を求めるライダーにはグサッと刺さるはずだ。

また、F800GSのアイポイントの高さは、周囲を遠くまで見渡せるという点で、市街地では有効な武器になる。べつに700に低さを感じるわけではないものの、他車の流れを見越してスイスイ走れるという点では、800のほうが優勢。なおF800GSが採用する21インチのフロントタイヤは、市街地には不向きという説もあるようだが、このモデルは車体のバランスが絶妙だからだろうか、前輪が大きいことのマイナス要素は特に感じられなかった。

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ラフランコーニが製造を担当する筒型アップマフラーは、F700GSとF800GSに共通する装備。ただし、バルブタイミングやインジェクションマップなどの違いにより、音質&音量はF800GSのほうが快活。

高速道路:HIGHWAY

①F700GS

ホイールベースの長さが
抜群の高速安定性を生み出す

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上のタイトルにある通り、当ページでは高速道路の印象を語るのだが、過去に僕が体験した他のBMWと比較すると、F-GSシリーズはコレといった言葉がなかなか出て来ないのだった。と言うのも……。

端的に言うとF-GSシリーズには、高速巡航性能に寄与する明確な特徴が存在しないのである。これが他のBMWなら、縦置きフラットツインエンジンやシャフトドライブ、アルミツインスパーフレームなどを取っかかりにして、どうやって各車が安定成分を作り出しているかという話題が展開できるものの、F-GSシリーズが採用する並列2気筒エンジンやチェーンドライブ、スチール製トラスフレームなどに、高速巡航性能を重視した形跡は見当たらない。

とはいえ、F-GSシリーズにはその気になれば最高速に近い領域で走り続けられる、必要にして十分以上の高速巡航性能が備わっているのだ。もっとも、実際に高速巡航をした感触がRやS、Kシリーズほど盤石で優雅かと言うと、必ずしもそうとは言い切れないのだけれど、単体で走っていて不満を感じるかと言うと、まったくそんなことはない。そのあたりを踏まえたうえで、試乗後に各車のスペックを改めて見直したところ、F-GSシリーズの高速巡航性能を語るうえで欠かせない要素は、ホイールベースの長さではないか、という印象を僕は抱いたのだった。

BMWが公表するスペックは仕向け地によって微妙に異なるのだが、日本仕様のF700GSの数値は1,562mmで、F800GSは1,590mm。FシリーズではGTが最短の1,514mmで、兄貴分的な存在のR1200GSやS1000XRが1,550mmであることを考えれば、F-GSは相当な長さである。この長さが良好な高速巡航性能の一因なのは間違いないが、僕自身が考えるF-GSのスゴいところは、市街地や峠道などで、悪い意味でのホイールベースの長さを感じないこと。その背景には、キャスター/トレールや重心位置などの設定が的確なことに加えて、フレームの適度な“しなり”があるような気がする。

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小ぶりなウインドシールドと短いノーズを採用するF700GSのフロントマスクは、GSならではのワイルドさよりも、親しみやすさを追求した印象。なおノーズにつながるラジエターシュラウドも専用設計だ。

②F800GS

防風効果と振動の質で
快適性に対する印象が変わる

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高速巡航の快適性を左右するパーツと言えば、筆頭に挙がるのはウインドシールド。写真を見ていただければわかるように、このパーツはF800GSのほうが大きく、シート高の違いを考慮しても、防風効果はF800GSのほうが高い。ただし、実際に2台のF-GSで高速道路を走った僕の印象は、快適性に関しては五分五分?という感じだった。

防風効果に優れるF800GSが、F700GSに対する優位を築けない最大の理由は、エンジンが発する振動である。2台のF-GSはエンジンの基本設計を共有しているものの、最高出力が控えめな75psに設定されたF-GSが、レッドゾーンが始まる8,500rpmまでスムーズかつ滑らかに回っていくのに対して、最高出力が85psのF800GSは、5,000rpm近辺から手足や尻に伝わる振動の粒が徐々に大きくなってくる(最高出力が90psのF800GT/RにもF800GSと同様の傾向があるが、アルミツインスパーフレームを筆頭とする各部の設計が異なるためか、振動の粒はそんなに大きくならない)。もちろん、振動に対する考え方は人それぞれだから、F800GSのエンジンが発する振動を許容範囲内と考える人もいるはずだが、同条件でF700GSに乗った僕としては、F800GSで中~高回転域を維持して走るのは、少々ツラい行為と思えた。

まあでも、法定速度+αの速度で走っているぶんには、F800GSの振動は特に気になる要素ではないのかもしれない。その一方で僕が以前からちょっと気になっているのは、F700GSのウインドシールドの小ささで、機動性を重視した結果なのか、コストの制約があったのか、実際の事情は定かではないものの、高速巡航時の快適性を考えるなら、もう少し大きくてもいいのではないかと思う。もっともこのパーツについては、アフターマーケット市場に多種多様なハイ/ワイドタイプが存在し、多くのF700GSユーザーが自分好みの仕様に交換しているので、僕がここで異論を述べる必要はないのかもしれないが。

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大きめのウインドシールドと前方に突き出たノーズを採用するF800GSのフロントマスクは、兄貴分のR1200GSを思わせる構成。なお従来は純正アクセサリーだったハンドガードは、’16年型からは標準装備になっている。

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