VIRGIN BMW | 最終回 総括 F800R編

最終回 総括

  • 掲載日/2012年05月21日【F800R編】
  • 執筆/モトラッド阪神 田中 建次
    このコンテンツは BMW BIKES Vol.48 (発行:2009.09.15)「ディーラーメカが解説する 世界一細かい F800R テクニカルディテール」掲載の記事を引用しています。

F800R編分解レポートの画像

新しいBMWの世界を開拓する
カウルを持たないミドルクラス

F800S / F800ST は、BMW BIKES VOL.37、GS は BMW BIKES VOL.44で詳細なインプレッションを紹介しているので、細かい表現を避け、要点だけまとめたい。

F800R の最大の特徴がそのハンドリングにある。「ハンドリング」と書くとなんだか難しそうだが、ひらたく言えば「曲がり」である。S / ST はもともと素直で平均的なハンドリング持つスポーツツアラーだ。Rはフォークのキャスター角を立て、トレール量を減らしている。これによって、直進を保とう・戻ろうという力を若干小さくし、コーナーリング性能を高めている。また、サスストロークを 10 %も縮め、ブレーキングや加速による挙動変化を抑えている。大きなカウルを持たないが故に平均速度は S / ST より低いと割り切って、街乗りやワインディング走行重視にシフトしているのだ。

このカテゴリーのバイクのまとめ方は各社同じ。ベースとなるバイクからカウルを外して、アップライトなライディングポジションを与える。エンジン特性やギア比を低中速重視に変更。クィックなハンドリングを得るために、キャスターを立ててホイールベースを縮めるのがセオリーだ。F800R も概ねそれに順ずるが、逆にスイングアーム以降を新作してホイールベースを伸ばしている。S / ST より 50mm 長い 1520mm のホイールベースは、もはやリッターバイクでも長い部類で、800 クラスの他メーカー車では 1400mm を切るバイクもある。多少バイクのことを知った方なら、スイングアームやホイールベースの 100mm の差がもたらす意味をご理解いただけると思う。

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おそらく、回頭性能を上げつつも、乗り心地や直進安定性、タンデムや積載能力を犠牲にしたくなかったのだろう。実際走ってみると、倒しこみはクィックだが、コーナリング中に段差やうねりがある荒れた路面でも車体は安定しており、サスストロークが短くなったのにもかかわらず乗り心地も良い。これが、S / ST と大半の部品を共有しつつも、わざわざ (コストアップ承知で) スイングアーム以降を新作した理由だ。

ユーザーは、過度な刺激や刹那的なスピードを BMW ブランドに求めてはいない。求めるならば、もっと適切なバイクが他にたくさんある。Rは S / ST と兄弟車であり、動力性能や車体の大きさ、重さも同じようなものだから、使い勝手の差異もほとんど無い。(強いて言えば) 高速道路か街乗りか、得意とする分野が違うだけだ。そこに F800R の存在意義があるのだ。

皆が皆、大柄なハイスピードバイクを欲しいわけではない。ミドルクラスの需要は大きいし、代々のFシリーズはそこで確固たるシェアを確保してきた。Fは、RやKの格下でも、BMW 入門車でもないのだ。F800R はカウルを持たないミドルクラスのバイクとして非常に良くできており、顧客が BMW に求める資質をじゅうぶん理解したうえで、手堅くまとめあげたバイクだと思う。S / ST 、GS に続いて、市場の支持を得ることだろう。

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