VIRGIN BMW | 最終回 総括 S1000RR編

最終回 総括

  • 掲載日/2012年04月04日【S1000RR編】
  • 執筆/モトラッド阪神 田中 建次
    このコンテンツは BMW BIKES Vol.52 (発行:2010.09.15)「最新 BMW を世界一詳しく徹底解剖 BMW マイスターが解説する S1000RR テクニカルディテール」掲載の記事を引用しています。

S1000RR編分解レポートの画像

ウエット路面での S1000RR

スポーツ走行に関するインプレッションに関しては、BMW BIKES VOL.51 のプロライダーの記事を再読いただきたい。私にはこのバイクをあれこれと評価できるライディングスキルが無いからだ。その代わり、雨中走行における電子デバイスについての印象をお届けしよう。

S1000RR の初試乗は、全国のディーラースタッフの集まった BMW Motorrad Japan 主催の新型車トレーニングであった。普通なら車両の分解やメカニズムの解説に終始するのだが、S1000RR は特別にサーキット走行もメニューに含まれていたのだ。場所は北関東の某サーキットコース。前日はメディア向けの試乗会で好天であったが、試乗当日は東京では雪が降り、パドックの待合所にはストーブが焚かれるほど真冬のような寒さ。おまけにかなり強い雨まで降ってくる始末。これではタイヤや路面の温度はまったく上がらない。正直いって遠慮したい気持ちだが、貴重な体験と割り切るしかない。

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コースの説明後、私の担当車がまわってきた。サスペンションセッティングはノーマル。私より 15㎏ 以上重いライダー向けの設定だが、調整している時間がない。当然「RAIN」モードを選択し、先導車に続いてピットロードを加速していく。

ただでさえ緊張するハイパワーバイクのうえに、まったく初めて走るコースだからラインやブレーキポイントはまったく分からない。そもそも先行車の巻き上げる水煙で視界は最悪。シールドが曇ってメーターすらよく見えない。コーナーを直進しないように、先行車のテールライトを追いかけ、ひたすら周回を続ける。まるでカットスリックのように溝が少ないメッツラーの K3 だが、意外にウエットグリップが良く、スローペース (それでも一般道よりは速い) ではあったが冷や汗をかかされることはなかった。

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セッションも後半になると少しは余裕が出てきた。DTC (ダイナミック・トラクション・コントロール) とレース ABS という二種の電子デバイスを試してみたくなる。公道よりグリップの良いサーキット路面とはいえ、完全なウエット条件なのでテスト環境としては申し分ない。最終コーナーからの立ち上がり、後続車との距離を確認したうえで、走行ラインを外れてアクセルをワイドオープンしてみる。普通ならウイリー気味になるほどだが、この路面状態ではホイールスピンするはず、そこに DTC が介入して……という読みである。一瞬、DTC の作動を知らせるランプが光ったような気がしたが、猛然と加速しはじめたのは正直驚いた。これは何回繰り返しても同じだった。おそらく、S1000RR に採用されている「ライド・バイ・ワイヤ」システム (アクセルケーブルとスロットルバルブは直結していない) が、「RAIN」モードでの、アクセルの無茶な操作に対して実際のレスポンスを若干穏やかに補正してくれたのだろう。

ABS も同様で、わざと (ABS 無しでは絶対にやらないような) 危険なハードブレーキをかけてやっても、ほんの一瞬 ABS が動作し、体が前に飛ばされそうなほど減速する。

「SPORT」 「RACE」 「SLIK」 モードを試すことはできなかったが、もっとも介入レベルが低い「RAIN」ですら、あきらかなライダーの操作ミスでもないかぎり、無粋な介入をしないことが体感できたのは収穫だった。

S1000RR は、見た目ほど特殊な乗り方や、用途を限定されるバイクではない。これは以前レポートした、HP2 スポーツと同じだ。かえって、中間排気量クラスよりトルクがあるぶんイージーかつズボラな乗り方も許容してくれる。直接のライバルである国産リッター SS もその点は概ね同じだが、S1000RR 独自のアドバンテージは電子デバイスによる安心感だろう。その電子デバイスも、軽々しく介入せず、転倒や事故にいたるような、ライダーのスキルではどうしようもない状態にはじめて介入する。さらに、モードの切り替えによって介入レベルを変えることができる。電子デバイスに拒否反応を持つ方もいらっしゃるだろうが、誰だって転倒してボロボロになった愛車を見るのは嫌なはずだし、転倒して痛い思いをするのはもっと嫌だろう。S1000RR はスーパースポーツに、「安全性」という概念をもたらした現在唯一のバイクなのだ。

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