VIRGIN BMW | #02 8耐マシン制作記 S1000RR 鈴鹿8耐参戦記

#02 8耐マシン制作記

  • 掲載日/2010年07月22日【S1000RR 鈴鹿8耐参戦記】
  • 取材協力/Tras  文・写真/新田 正直  English >>
S1000RR鈴鹿8耐参戦記の画像

がんばれ!『Tras チーム』

2008年に HP2 Sport で“もて耐史上初”となる外国車優勝を遂げたトラスチーム。2009年には新たな挑戦として HP2 Megamoto で“もて耐”参戦。途中1位に浮上しつつもエンジン・トラブルで結果はリタイア。そして2010年、過去 BMW マシンで挑戦し続けてきた“鈴鹿8耐”に戻って来た!

マシン制作はいつもギリギリ!?
妥協なき“ものづくり”の現場

さー、どこから手をつけようか?
8耐に参戦するにあたり、前哨戦である鈴鹿 300km ロードレースに参戦する必要があります。決勝は6月13日…1ヶ月しかない…。

“ものづくり”の、優先順位を考えると、何は無くともレギレーションぎりぎりの 24L ガソリンタンクが必要だ。よし『ビーター』に連絡だ!

新田「仲原さん、8耐やるんだけど?」
仲原「そーかね、ずいぶん急じゃん。まあ~いつもの事だけど、今回はあまりにも突然だね。マシンは何でやる?」
新田「S1000RR、6月13日の 300km にエントリーしてるんだけど。」
仲原「そりゃー無理だ。時間が無さ過ぎるよ。最低3ヶ月ないと…」
新田「とりあえず来週バイク持って行くよ。」
仲原「…」

バイクに合わせた“ものづくり”をするには、当然のことですが手元にバイクがないと何も作れません。よくある話ですが「見本と同じものをカーボンで作成してください」こういう状況で“ものづくり”をするとトラブルの元になります。取り付ける本体を預かり、組み付け、確認する。また、確実な図面データーをもとに作成する。この2つ以外の選択肢はないのです。

例えば、FRP で出来たカウルをモデルにしてカーボン用の型作りをすると、取り付かないことが発生します。

なぜか? FRP も軽くて強いのですが、ある程度の形状追従性があります。ところがドライカーボンの製品の場合、製品の内側に1mm の突起物があるだけでもカウル同士が干渉し合い、取り付け不可となってしまいます。なぜなら、それほどまでにカーボンは「軽く、硬く、強い」のです。他社の事例で恐縮ですが、カーボンフェンダーがタイヤをすり切りバーストさせた、そんなこともあるくらいカーボンは強いのです。

…カーボンのうんちくを始めると、20ページは必要になるので今回はこのへんで。

S1000RR鈴鹿8耐参戦記の画像
2台分の外装作成の為に、モデル、型など(型割を含めると60ピース以上!)が必要となります。すべてが手作業で進められるため、1日にかける作業時間を増やしていかないといけない訳で、寝不足のスタッフも続出します。

S1000RR に乗り、御殿場インターに程近いビーターまで向かいます。 仲原さん自身も DUCATI 1098R に乗って休日を楽しむライダーです。作業中でもバイクの音には敏感でこちらを覗いています。

仲原「うお~良いね~! 雑誌で見るよりカッコいいじゃん! ちょっとアクセルあおらせて。」

フォン! フォン! ブオ~~! フォン…

仲原「音も良いね~! なんかその気にさせるねこのバイク。16,5L しか入らないタンクは勿体ね~な。24L にノーマルキャップが付く状態で売り出しても良い?」

新田「良いね! 8耐でテストして、その後ビーターから 24L タンク売ればいいじゃん!」

“職人”仲原は、通常業務が終了後も S1000RR 用 24L タンクの為に3倍速のスピードで作り上げることになったのです。“アルミタンク職人”のおかげで 300km までに 24L タンクは完成しました!

S1000RR鈴鹿8耐参戦記の画像
出来たてほやほやのタンクからは、アルミ地の凄味の利いたオーラが漂っています。

さ~ここで問題発生!?
車輌はタンク型取りの為ビーターに。トラスには FRP 製のカウルがあるのみ…。まずいぞ! このままではバイクに取り付けるとき干渉する可能性大ありで、最悪取り付け不可! でもバイクを待っている時間はありません。やるしかないのです!

トラスでは、新田と共にスタッフも終日残業&休日返上で制作作業に没頭します。

スタッフ「フレーム補強パーツも創った方が良いですよね? ダクトもカーボンの方がカッコ良いし、スイングアームの補強もしましょうか?」

新田「えっ!? そんなに創れるの? 時間ペースは大丈夫?」

スタッフ「やるっきゃ無いっしょ!」

う、嬉しい。時間が無いのに前向きなスタッフのおかげで何とか物が出来上がり、『 S1000RR Tras スペシャル』は、鈴鹿でのテスト走行に旅立ったのです。

S1000RR鈴鹿8耐参戦記の画像
トラスイエローに塗られた外装をセット。トラスイエローは、有名スポーツカーの色をベースにしているので S1000RR にもぴったりな雰囲気? 紫外線の下では、パールがきらりと光る素敵な色ですよ。
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見た目は大きいのですが、ライダー達にはポジションが良くなったと評判の 24L アルミタンク。ビーターから販売されます。
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フロントカウルの捨て型(マスタモデル用の型なので、製品制作には使用出来ない型)を作成。
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カーボンの型を作成するためにモデルを作成していきます。細かなエッジやシャープなラインをパテやサフェーサーなどで創り込んでいきます。本来ならばマシンに SET して作成するのですが、マシンはビーターさんに行ってしまい…
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夜も更けたころ定盤で計測を終えたスタッフはライダーの気持ちになっているようです。
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今回は、シート位置を確認するためノーマルシートレールに SET 出来るようモデルを作成し、戸田さんのもとへ。
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まずはアッパー&センターカウルが完成。カーボンの持つ素材の凄味が強調されていますね。
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スクリーンもトラス製です。カウルにクリアー塗装を施し、全体の雰囲気を確認中です。
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2セット分の製品群です。凄い数ですね!
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8耐特有の反射ゼッケンも貼り付け作業完了。トランポに積み込みいざ鈴鹿へ!
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PIAA 製の HID ライトは8耐の必需品です。
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フレーム補強の為のカーボン。
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BMW デザインを超えるものは無い! と思っている私は、ノーマルを基調としたデザインを取り入れました。
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特殊な接着剤を使用して取り付けられたエンジンカバーは、熱伝導率の特性も活かしているのです。
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重さ 850g を切ったシートレール。カーボンシートカウルを使用すればシートレールも軽量化出来るのです。
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これまた軽量なアクラボビッチのレース用マフラー。CPU と共にレース専用部品として市販の可能性ありのようです。
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鈴鹿 300 km の練習走行用車両。ノーマルマフラーにアンダーカウルを取り付け 24L タンクも取り付けた車輌です。灯火類を取り付ければ公道を走れますね。
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武藤さんがドイツにオーダーしていたラジエターが届きました。あれ? 取り付けホースが見当たらないぞ?
挑戦者
新田 正直 Masanao NITTA
ドライカーボン製品のデザインから設計、製造、販売まで、つねに新たな挑戦と遊び心をもってモノづくりに取り組む“ドライカーボンの職人集団” Tras代表。カーボンという“夢の素材”で、そのメリットを最大に活かしたハイクオリティな製品は世界トップレベル。自身もBMWオーナーとして、R100ロードスター、R1200RT、HP2 Megamoto(もて耐仕様)を所有。自社の技術力向上と新たな挑戦の一環として、2006年の鈴鹿8耐、2008年のもて耐など、周囲の人間と愉しみながらBMWでのレース参戦に挑む。毎年レーサーの製作(外装)を行い、単なる工業製品ではなく、誰もやったことのない付加価値のあるものづくりを目指すチャレンジャー。

がんばれ“Trasチーム”!

この記事に関するコメント(ご意見、ご感想、ご声援!など)を受付ています。S1000RR レーサー製作は、すべてプロフェッショナルの手により、豊富な知識と経験、確かな技術によってレーシングユースを前提とし、参加する人やその周囲の人たちが愉しみながら行っています。

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これまでのコメント一覧

ものづくり見習い さん

スゴイ。。。まるでファクトリーチームですね。。。
この現場シーンは、当然ほんの一部でしょうが、その背景にはマシン制作のたいへんなご苦労と、ものづくりへの情熱があのだろうと想像いたします。
鈴鹿での雄姿を期待しています!(2010年07月22日)

レースは観るだけ さん

“創り手のプロ”として…レース参戦にもいろいろなカタチがあるのですね。
マシンの性能とかライディングの技術だけじゃなく、レース仕様のマシンを創るというパートで夢を現実にされるとは、感服いたします。
やはりレースの世界では、タンクはアルミ、外装はカーボン素材、というのが定石なのですか?(2010年07月22日)

Tras 新田 さん

>ものづくり見習いさん
そうです…ファクトリチーム…そのものです…?
ものづくり同志。心は通じあうものですね。
応援ありがとうございました!(2010年08月04日)

Tras 新田 さん

>レースは観るだけさん
レースを観て楽しんでいただける方があってこそ、参戦している我々にも張り合いがあるってものです!
レースの世界ではタンクはアルミ製が定石ですが、外装はまだまだFRPが主流です。カーボンとするには素材と成形法のコストが…高過ぎます!(2010年08月04日)

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