VIRGIN BMW | HP2メガモト(2007-) 試乗インプレ

HP2メガモトの画像
BMW Motorrad HP2 Megamoto

HP2メガモト(2007-)

  • 掲載日/2009年02月16日【試乗インプレ】
  • 取材協力/BMW Motorrad Japan  写真・取材・文/VIRGIN BMW編集部

大排気量のモタードスタイルマシン
贅肉をそぎ落としたストリートBMW

日本では2007年8月から受注生産による販売が開始されたHP2メガモト。HP2エンデューロに続くHPシリーズの第2弾として登場したロードスポーツマシンは、カラーリングや車体構成などHPシリーズとして統一されたデザインで、最初は「HP2エンデューロをロードモデルにアレンジした派生モデルでは」という印象を感じせる。確かにそのスタイルはオフロードマシンをベースとしたモタード風ではあるが、決してHP2エンデューロのアレンジモデルではない。純然たるロードスポーツモデルとして設計されており、たとえばモタードモデルにありがちな、タウンスピードでハンドルが切れ込むといったネガティブな部分は完全に払拭されている。

安全性や快適性、環境性能を追求し、常にツーリングモデルに軸足を置いてきたBMWが、パフォーマンス重視路線に大きく舵を切った象徴としてHPシリーズを打ち出し、その第1弾が、純粋にエンデューロ性能のみを追求した究極のオフロードモデル、HP2エンデューロであり、HP2メガモトは、特定の性能を追求するというHPシリーズのコンセプトをオンロードモデルとして具現化した、究極のロードスポーツである。そのキャラクターは全くの別物であり、単なる外装とホイール径の変更ではない。それぞれのステージで優れた性能を発揮する、純粋なスポーツマシンなのだ。

HP2メガモトの特徴

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一切の妥協を排した
ロードスポーツへのこだわり

HP2メガモトの個性を強調しているのは外観だけではない。心臓部を見てみると、HP2エンデューロではR1200GSと同じエンジンをベースにしているのに対して、HP2メガモトの場合はR1200RT/STに搭載されるエンジンと同じものをベースとしている。アスファルトの上を駆けるメガモトのエンジンには振動を抑制するバランサーシャフトが内蔵され、低~高回転域までよどみなく上昇し、HP2エンデューロを遥かに凌ぐ110psのパワーと115Nmのトルクを発揮する。HP2メガモト用に設定変更されたエンジンは、低速での扱いやすさとレスポンス性能が向上し、常識的な範疇で走る上では、エンジンスピードは3000から4000rpmも回っていれば十分といえる。エンジンの搭載位置もHP2エンデューロとは異なり、最新のスーパースポーツマシン同様かなり前方に搭載される。そして1,600mmを超えるロングホイールベースは絶大な安定性をもたらし、ライダーが望む旋回速度をいとも簡単に実現する。

強烈なパワーを発揮するエンジンはHP2エンデューロ同様、高剛性シャーシに支えられ、同じくドライブトレインによって、HP2メガモト専用設計の軽量17インチホイールへと伝達される。レーシングスペック並みのハイグリップタイヤを標準装備とし、サスペンションにはフロントにマルゾッキ社製倒立フォーク、リアにはオーリンズ社製ユニットを装備。スプリングの張力よりもダンパーの効き目が前面に出るセッティングとなっており、ストロークはフロント160mm、リア180mmと絞り気味で、エンデューロモデルのような腰高感は薄い。 猛烈な突進力を制御するブレーキシステムは、フロントに直径320mmのディスクをダブルで、リアは直径265mmのシングルディスクを装備し、高い制動力とコントロール性を持つ。

あらゆる性能が高い次元でまとめられたHP2メガモトは、スタイルこそモタードルックだが、軽量・腰高・長いサスペンションストロークという、モタードモデルにありがちな、あまりにも軽くインに切れ込んでしまうハンドリングは皆無。バイクをリーンさせればフロントがリニアに応え、真にロードスポーツモデルの絶妙なハンドリングを実現している。アップライトなポジションでスーパースポーツマシンのような走行ラインを、倒れる気がしない安定感でトレースできる瞬間というのは、ライダーにとって愉悦のひとときといえるだろう。 HP2メガモトは、エンデューロモデルの単なるセッティング変更というレベルではなく、ストイックなまでにオンロードスポーツ性能を追求し、一切の妥協を排した、まさにハイ・パフォーマンス・マシンとなっているのだ。

HP2メガモトの試乗インプレッション

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エンジンもハンドリングも「待ったなし」
ひたすら速さを求めるライダーのために

軽量な車体と110馬力の大パワーを発生するボクサーエンジンの組み合わせは、停車中に軽くブリッピングしただけでも大きくその身を捩じらせ、HP2メガモトが「定番メニュー」のBMWではないことを主張してきた。

それは車体の造りにも現れており、辛うじてアクセサリー用の電源ソケットを装備する以外、余計なものは一切持たない潔い佇まいだ。価格的にはプレミアムなバイクだが、バッテリーはほぼむき出しの状態で搭載され、簡素なリアフェンダーは一部を結束バンドで固定。マシンを踵でホールドするためのヒールプレートもフレームの一部で代用し、傷つき防止用の透明フィルムが貼ってあるだけという徹底振りだ。こうした一つひとつの積み重ねが、高剛性を確保しながらも乾燥重量179kgという軽さを実現した要因であり、各部に採用されたカーボンパーツも決してお飾りではないということを語りかけてくる。

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短い暖機が終わり、いよいよ発進すべく取り回してみると、とても1169ccとは思えない軽さだ。BMWのお家芸とも言えるボクサーエンジンは、非常に汎用性の高いユニットで、モデルの用途に適した数々の装備を与えることでバリエーションの拡張を実現してきた。しかし、それゆえに車体の重量が増すことは避けられず、エンジン単体の実力を味わうことが難しいという側面をもっていた。だが、メガモトはまったく違う。もちろん味付けは違うのだろうが、エンジンは基本的にR1200RTに搭載されているものと同様のユニットだ。しかし、始動するだけでビンビンと弾けるようなビートを刻み、右手の動きに先回りするかのごとく俊敏な反応を示す様は、RTのそれがベースになっているとはにわかには信じがたい。軽量な車体と組み合わされた「素」の状態のボクサーエンジンがこれほどの荒々しさを秘めていたことに動揺してしまったほどだ。

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気を取り直し、いつもの試乗コースに向かうため首都高速に入ったのだが、コーナーが連続するそこは正しくHP2メガモトのためのステージだった。スロットルワイヤがピンと張った瞬間から強大なトルクが炸裂し、それをハイグリップなリアタイヤが一切ロスすることなく路面に叩きつけるといった走りっぷりだ。この印象は一般道に降りてからも変わらないのだが、ワインディングではハンドリングやブレーキングもエンジン同様に過激な味付けであることが実感できた。速度が落ちても、モタード的なモデルにありがちなフロントが切れ込む傾向がないのはさすがBMWといったところだが、車体はロールするときの軸が高く、どこまでも運動性を重視した設定だ。重心位置を下げることで安定性を確保してきた歴代モデルとは考え方がまったく違う。高荷重を意識してハンドルバーに正確な入力を加えれば、猛烈なトラクションとともに突進中でも狙ったラインをピタリとトレースできる前輪重視のシュアなハンドリング。レバーを軽く引けば、パッドがディスクに接触した瞬間から壁に激突したかのようなストッピングパワーを発揮するフロントブレーキと、制動力そのものよりもコントロール性を優先したリアブレーキ。フロントタイヤを軽々と押しつぶす固いセッティングの倒立フロンフォークなど、エキスパートライダーにとっては、使いこなすのが楽しい要素に満ち溢れていると言えるだろう。しかし、はっきり言ってこれらの武器は使い手を選ぶ。(私のように)判断が遅れたり、入力が中途半端だったりすると、とたんにラインが乱れライダーのミスを容赦なく指摘してくる厳しさを味わうことになる。基本性能は余裕しゃくしゃくで、過激さを上手くまとめあげているため危険を感じることはないものの、エンジンもハンドリングも、HP2メガモトは「待ったなし」だと感じた。

こんな方にオススメ

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「Megamoto」のMは「ドM」のM !?
敗北感を味わうのが好きな方にオススメ ?

名刀は使い手を選ぶというが、今回の試乗では最後までHP2メガモトの真髄に近づくことすらできなかったという印象だ。はっきり言って完敗である。HP2メガモトぐらいのバイクになると、私程度のライダーではまったく歯が立たず、もっと高度なインプレッションをお求めであれば、エキスパートライダーの意見を待たなくてはならない。では、HP2メガモトが極々一部の手練だけが楽しめる乗り物かというと、そうでもないような気がする。まったく乗りこなせなかった身分で言うのもナニだが、乗るたびにバイクから「この未熟者が!」と罵られ、毎回毎回居残りを命じられたり、課題を出されたりするのが好きな「ドM」なライダーにもHP2メガモトはオススメだ。ポジションは基本的にアップライトで楽だし、エンジンも極低速から十分なトルクを発生するので、普通に流すような街乗りでもHP2メガモトは楽しい。しかし「乗りこなそう」と考えた時から、HP2メガモトがとてつもなく冷徹であることに気づくライダーは多いのではないだろうか。ビシビシ叱ってくれる厳しいセンセイをお求めのライダーには超オススメだ。

HP2メガモト プロフェッショナル・コメント

所有欲をも満たしてくれる
高性能なロードスポーツ

好みの分かれるところかもしれませんが、メガモトのルックスはBMWモトラッドのラインナップの中でも特に個性的で、他とはちょっと違った存在感を醸し出しています。それに、まとっているパーツもスペシャルなものばかり。外装の各部にカーボン素材をあしらい、マルゾッキ社製のフロントサスペンションにオーリンズ社製のリアサスペンション、アクラポビッチのサイレンサーなど、すでにストック状態で高性能なパーツを装備しています。これは個性的なルックスとともに、所有欲もかきたてる要素ではないでしょうか。

一見して近寄りがたい印象もありますが、サスペンションの調整によって、足つき性が不安という方でも無理なくまたがって走り出すことが出来ます。むしろ軽量にまとまった車体はサイドスタンドからの引き起こしも驚くほどラクで、とても扱いやすく感じられると思います。

メガモトは、フラットダートでの走行性能に特化したHP2エンデューロに続く、ロードスポーツ性能を追求したハイ・パフォーマンス・マシンなので、その車体にツーリング性能やラグジュアリーを求めるものではありません。たとえば天気の良い休日、軽く高速道路を流して峠へおもむき、タイトコーナーの連続や高速コーナーといったシチュエーションで無理なく旋回性能を味わって家路に就く。またはサーキットへ持ち込み、自分のライディングスキルとマシンの性能を存分に発揮する。といった、濃厚な時間を過ごすためのスペシャルマシンと言えるでしょう。1169ccという余裕の排気量は街中でも疲れず、アップライトなポジションもあって愉しく走ることができます。

HPシリーズは、特にスペシャルなモデルなのでなかなか試乗車をご用意することはできませんが、乗ってこそわかる、贅沢で高性能なロードスポーツマシンだということは間違いありません。(ヤナセモトラッド芝浦 吉岡さん)

HP2メガモト の詳細写真

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絶妙なハンドリングに貢献する
強靭なフロントサスペンション

インナーチューブ径45mm、スプリングトラベル160mmのマルゾッキ社製倒立テレスコックフォークを採用。直径320mmのブレーキディスクがダブルで組み合わされる。フロントフェンダーはカーボン製。
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ハイグリップタイヤに負けない
コシのあるリアサスペンション

スプリングトラベル180mmのオーリンズ社製フルアジャスタブルタイプを採用。スプリングのプリロードを調整する専用ツールが車載工具に追加される。ダンパーの効いたセッティングとなっている。
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HPシリーズのデザインを踏襲する
前方へ伸びたフラットシート

HP2エンデューロに比べて前方に搭載されたエンジンに合わせて、着座位置もやや前方に設定されている。ステップ位置はほぼ同じで、車体に覆いかぶさるようなライディングスタイルになる。
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スポーティで精悍な印象の
デザインコンシャスなタンクカバー

側面の樹脂製カバーはホワイトとシルバーのツートン。さらにトップにはカーボンパネルを採用。カバーに覆われた燃料タンクはHP2エンデューロ同様、半透明素材で燃料残量が目視で確認できる。
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