VIRGIN BMW | 第9回 シート型の製作 365日BMW Motorrad.宣言

第9回 シート型の製作

  • 掲載日/2006年10月28日【365日BMW Motorrad.宣言】
  • コラムニスト/K&H 上山 力

365日BMW Motorrad.宣言の画像

シートベースから開発する
それには理由があるのです

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シートの取り付け方法も決まったので、早速シートベースの製作に入ります。まず、座面の高さを上げても、なるべく足つきが良くなるようにシートベースを作る段階で工夫しておきます。ノーマルシートの幅が広いのは、足を下ろしている内腿に圧迫感を感じている方ならお分かりだと思います。足をつくときにガニマタになってしまい、下ろした足に力が入らないと感じませんか? ノーマルシートの場合、シートが左右のサイドカウルよりも張り出してしまっています。この張り出しは実はシートベースが原因なのです。足を真っ直ぐに下ろせませんから、下ろした足に力が入りません。足に力が入らないので踏ん張りが利かず、車体を支えにくくなってしまうのです。足つきには、足のつく量だけでなく車体を支えやすい「足のつき方」ということも重要なのです。

ノーマルシートベースの内側を覗いてみると、サイドカウルに対してクリアランスをかなり多めに取ってあります。サイドカウルと干渉しないように考えられているのでしょう。シートのレザーを留めているタッカー(大型ホッチキスの刃のような物)は金属ですから、カウルと干渉してしまっては大変です(後に説明しますが、当社のシートはレザーを留めるのに、タッカーなどを使用しない特殊な留め方になっています)。これから作るシートは、前回ご説明したようにシートの取り付けから工夫をしています。シートベース自体の剛性も上がりますので、ノーマルシートのようにグラグラ動きすぎてしまう心配はありません。グラグラしないので、カウルとのクリアランスを少なくでき、シートベースの幅をなるべく細くすることが可能になります。

ノーマルシートベースにもう一つ大きな問題点がありました。それはフロントシートとリアシートが重なる部分です。ノーマルシートでは写真のように、座る後ろ部分までシートベースが回り込んでいません。その部分はスポンジを受け止める物が無いので、お尻からの入力は車体に一切伝えられません。更には加速時に踏ん張りが利きませんね。ということで、今回作るシートベースは座る後ろ(リアシートと重なる)部分まで回り込ませることにしました。既存のシートベースを使用せず、シートベースから新規に専用設計することにより、いろいろなメリットが生まれることはお分かりいただけましたでしょうか。

お次はスポンジ部分の型作り
ここが一番楽しい作業です

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まずはサイドカウルにシートが被さる部分の型を取ります。そして、試作した取り付けステーやゴム足の位置を出し、シートベースができ上がってきました。こうやって紹介すると簡単そうに見えますけれど、実際はものすごい試行錯誤の末に作ったのですよ(笑)。

シートベースができ上がると、その上にシートの表面(座面)部分を形作っていきます。シートベースの製作は、取り付け方法など無い頭をフルに使う地道な作業の連続です。前回もお話しましたが、シートベースはシートの基礎、土台になるとっても大事な部分です。ここで手抜きをしてしまっては、いくら良いスポンジを使用した良い形状のシートでも全く意味がありません。ですが、車体に取り付けてしまうと外からは見えない部分で、やはりシートを作る醍醐味は、製品になったとき表に出る部分を作ることなのです(笑)。でき上がっていく様が目に見えて楽しい作業なので、ある程度のところまでは「さくさく」進みます。形になってきたら実際に跨り、盛っては削り、削っては盛りを何百何千回と繰り返していきます。ちなみに原型はFRPやウレタン・木材・パテや粘土と、使えるものはフルに使って製作します。この原型からシートベースの型やスポンジを発砲させる型を作っていきます。今作っている物が全ての製品のもとになるので、手抜きは一切できません。

硬い原型シートでの試乗
走りながら型を修正していきます

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だんだんとシート表面部分が出来上がってくると、実際に試乗し始めます。試乗をして不具合を見つけると、ここでも削っては盛りの繰り返し。最終的には1mm単位の修正を施していきます。硬い原型で50km以上試乗する日もありました。おかげでお尻の皮が薄くなり、お風呂に入るとヒリヒリ痛むことも(笑)。そんな苦労を重ね、改良を進めていくと硬い原型であっても、ある程度の距離を走ることができるようになります。完成した原型で走ってみると、ノーマルよりステップとの位置関係が良くなり、膝の角度も緩やかになっています。緩やかになったからといって、楽になったということではありません。腿や膝を経由し、腰(上体)の重さをしっかりとステップに伝え荷重を掛けることが出来るのです。ノーマルシートではハンドル操作だけで車体を操作していました。今度は下半身で車体を操作することができるようになるのです。シート前側部分はタンクをしっかりとニーグリップできる形状にし、足を下ろす時に内股に当たる部分も細くしたので、足を「すっ」と真っ直ぐ下ろせるようになりました。とっさのときには即座に足を下ろせ、そして下ろした足にはしっかりと力が入ります。低速から停止時の、テレレバー特有の動きにも俊敏に対応できます。多少足の着く量は減りましたが、ノーマルシートよりも足のつき方が良くなりました。次回はこの出来上がった原型から製品になるまでの過程を紹介したいと思います。

プロフィール
上山 力

32歳。東京都練馬区のシートの名店「K&H」に勤務。シートの開発を主に担当。自らが長い距離を走り抜き、シートを開発するため、彼の年間走行距離は尋常でないものに。

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