VIRGIN BMW | 吉野 隆之(R26, R65 LS, R100T, K1200R) インタビュー

吉野 隆之(R26, R65 LS, R100T, K1200R)

  • 掲載日/2007年06月14日【インタビュー】
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乗り手に忠実かつ正確に応えてくれる
それがBMWの魅力かな

今回、ご紹介する東京都にお住まいの吉野さん。その愛車は「R26」、「R65LS」、「R100トラッド(以下R100)」、そして現行モデルである「K1200R」と4台のBMWを所有するという羨ましい限りのBMWフリークだ。しかし、吉野さんは、決してコレクター的にBMWを楽しんでいるわけではない。R26やR65LSはサンデーメカニックの題材として不動車を格安で手に入れ、自宅の庭先で自身の手で再生させたもの。また、ロードバイクであるK1200Rはツーリング先で林道を走ることもいとわない。昨年の「GS泥んこ祭り」では参加車のほとんどがGSシリーズという中をR100で爆走し、参加者の注目を浴びていた。BMWは晴れ着のように大切に乗られることがほとんどだと思うが、吉野さんはあくまでも自己流で、BMWというバイクをとことん楽しんでいる。そんな楽しみ方ができるBMWの魅力を、熱く語っていただいた。

旧いBMWに乗ってみてわかった
変わらない筋の通ったコンセプト

ー4台のBMWで最初に買ったのはどのモデルですか?

吉野●R100ですね。92年に手に入れてから、もう15年間乗っています。27歳のときに晴海でやっていたBMWの認定中古車フェアで、このR100に出会ったんです。それまでは国産アメリカンを乗り継いできて、漠然と「次は外車かなぁ」と思っていましたが、実はどちらかというとBMWよりもハーレーが欲しいと思っていました(笑)。ただ以前、エンジニアをやっていた関係で「K75」の3気筒やインジェクションに技術的に関心があったんですね。それでK75の実車を見てみようと会場内を歩き回っていたとき、たまたま見たR100のクラシカルブラックと“子持ちライン”のスタイルにぐっと来ちゃったんですね。

ー旧いBMWのスタイルがお好きだったんですか?

吉野●決してそんなことはありませんでしたよ。「BMWにRシリーズがある」というのは知っていましたが、カッコいいバイクとは思っていませんでしたね。当時はKシリーズのスタイリングの方が好みでしたから。でも、そこにあったR100を見たり触ったりしているうちに、その佇まいや作りこみの良さに惹かれてしまい、その場でハンコを押してしまったんです。

ーR100初めて乗った感想はいかがでしたか?

吉野●ディーラーで受け取って跨った瞬間に、何年も飼っている愛馬に「ご主人様。今日はどこに行きますか?」と旅に誘われているような気がして(笑)。ディーラーからまっすぐ帰るつもりが、そのまま日光から金精峠を回ってきてしまったんです。初めて乗るバイクに感じるようなクセや手ごわさ、おっかなびっくりという感じはありませんでした。昔から知っていたような乗り心地に「こんなに乗りやすいバイクはないな」と虜になってしまいました。

ーその次に手に入れたBMWはどれでしょうか。

吉野●R100が事故に遭ってディーラーへ修理に出した時期は、ちょうどR1100Sが出た頃で。ディーラーでR1100Sを試乗させてもらいました。OHVとは格段に違う新世代ボクサーエンジンのレスポンスとパワー、すばらしい操縦性を体感しました。しかも、R100と同じような親しみやすさもありました。結局、そのときには買わなかったのですが、数年後にひょんなことから知人の紹介のディーラーで買ってしまいました。

ー新しい“愛馬”で、さらに楽しさが増したわけですね。

吉野●R1100Sはショートトリップ車としてはすごくいいバイクで、今でも欲しいとは思います。ただ、僕はよくキャンプツーリングに行くのですが、パニアケースを付けて荷物を満載するとどうもバランスが悪かった記憶があります。それで、買ってから1年半後に登場したR1150Rロックスターに乗り換えました。ロックスターはR1100Sとほぼ同じ動力性能と足回りを持ちながら、しっかりパニアが付いて後ろに荷物もたっぷり積める。まさに僕にうってつけのモデルだったんです。

ーロックスターで、林道もかなり走られたそうですね。

吉野●北海道なんかには荷物をどーんと積めるだけ積んで、奥地の温泉を目指して林道を走りましたね。僕は旅が好きで、オートバイはそのための移動手段という感覚がありましたから、目的地に行く途中に林道があればロードバイクでも入っていってしまうんです。21歳でオートバイに乗り始め、アメリカン2台とポンコツから起こしたセローを乗り継いできました。でも、どのバイクでも林道をガシガシ走っていました。

ー現在お持ちのK1200Rを手に入れた経緯は?

吉野●2年前にヨーロッパにツーリングに行ったときにK1200Sをレンタルしたのがきっかけです。BMWのさらなる進化に感動しましたね。K1200Sのフルカウルは好みではなかったのですが、カウルレスのK1200Rが出たときに「ロックスターの次はコレだ!」と。当時、横置き4気筒という新しいレイアウトや、国産4気筒のようなエンジンのキャラクターに賛否ありましたが、僕の中ではそういったこだわりはありません。それよりも、跨った瞬間に「ご主人様。どこに行きましょうか?」と訴えかけてくるかどうか、僕がBMWに求めるのはそこなんです。バイクのほうが一歩引いた従順なお馬さんのような感じが、やはりK1200Rにもありました。

ー4気筒ということで、ロックスターとの違いは感じませんでしたか?

吉野●従来のBMWと方向性は変わらないままで、パワーが全部かさ上げされている、そんな感じですね。強大な力を持っていながらも、それが乗り手の意志に忠実な出方で、決してバイクが先に行ってしまうようなことはありません。すべてが乗り手に対して忠実かつ正確。まさに「打てば響く」という感じでしょうか(笑)。BMWの良いところは、旧いのでも新しいモデルでも一本筋が通っていることですね。僕にとってBMWの魅力はそこに集約されます。

ロードバイクだから林道は走れない
それはライダーの思い込みじゃないか

ー最新型だけでなく、R65LSやR26のような旧いBMWも持っているのはなぜでしょう?

吉野●正直言って「R65LSが欲しい!」、「R26が欲しい!」とモデルにこだわったわけではありません。いずれも「たまたま手に入ったから」という理由で手に入れたんです。R65LSは、たまたま知人の紹介でポンコツが手に入ることになり「サンデーメカニックのトレーニングにちょうどいいや」ということで買いました。R26は、同じディーラーのお客さんの持っているR50を見て、技術的興味から「旧いBMWも一度いじってみたいな」と思ったんです。そうしたら、たまたまヤフオクで手ごろな値段のR26を見つけたので買ってしまいました(笑)。

ー自分で手を入れるのは大変だったでしょう。

吉野●バイクいじりが好きなんです。BMWに乗り始める前は5万円でオンボロのセローを手に入れて、自分の好きなように改造しながら乗っていたことがあります。今で言う“スカチューン”ですね。ただ、R100は自分にとっては欠かすことはできないバイクなので、興味半分でバラバラにして壊れたら困ります(笑)。だからR100では基本メンテくらいしかやりません。でも、R65LSはもともとポンコツでしたから「壊してもいいオモチャを手に入れた」という感覚でしたね。

ー「壊してもいい」くらいイジるというのはどのくらい?

吉野●R65LSはほとんど全バラにしました。エンジンを塗装し直したり、キャブレターをばらばらにしたり…何でも自分でやってみましたね。キャリパーやフォークも全部バラしたし、ホイールもベアリングを打ち変え、シリンダーも外してブラスト屋さんにもって行ったりしました。

ーR26を手に入れた経緯をもう少し詳しく教えてください。

吉野●R100から始まって、新しいモデルを順番に味わってきました。その中で、一本筋の通った忠実かつ正確な出力特性が、どんどん上増しされてきたことを実感できたんです。そこで技術的な興味として「BMWの歴史を逆にさかのぼると、何を感じられるだろう?」と思ったんです。R100は今でも不満がないし、R65LSの2本サスも乗っていて面白い。しかもバイクが向き合ったときの面白さは旧くても失われるものがないだけでなく、逆に時代を遡るほど工業製品としてのクオリティが高い気がしました。だからこそ、もっと旧いモデルを自分の手で触って確かめてみたいと思ったんです。そんなときにヤフオクでR26を見つけ、京都まで車両を見に行って買ってしまいました。タイミングが良かったんでしょうね。

ーこれもご自身の手でレストアされたんですね。

吉野●エンジンは一通り開け、基本的なメンテナンスをしました。キャブレターが腐っていたので中のスモールパーツをすべて交換して、点火系もポイントを交換、ハーネスも全部自分で引きなおしました。もともと電気系のエンジニアでしたから、こういうのは得意なんですよ。最初の半年くらいはちょくちょく不具合が出てはそれを直し、を繰り返しましたが、勉強だと思って楽しんでいます。最近はあまりトラブルがでなくなりましたが…。

ーR26は単気筒ですが、フラットツインとは違いますか?

吉野●クランクの位置は同じでもシリンダーが上にあるため、フラットツインのように低重心エンジンではありません。でも、そこはやはりBMWですね。パワーはありませんが乗り手の操作に忠実に正確に反応してくれます。50年も昔にこれができていたということはすごいことだと思いますよ。R100、R65LS、その他の現行車にも乗ってきて、R26に乗っても共通するモノが感じられる。R26の時代から“バイクはこうあるべき”というポリシーや設計者の意志があるんですよ。「BMWは何十年も変わらず、1本筋を通して車両を開発してきたんだ」と改めて実感しました。マックス・フリッツ博士がエンジンを考案して以来、ずっと研究者が車両を開発してきたから、ポリシーが貫かれていたのだと思います。

ー元エンジニアとして共感するところがあるんですね。

吉野●ドイツは製造技術が高いと言われていますが、それだけでなく“思想”がないとBMWのようないいモノはできません。いくらいい技術者がいても「こういうバイクを作りたい」ということを伝える人がいないとダメなんです。いくら素晴らしい技術を持っていても「その技術をこういう方向に発揮したい」というポリシーが、日本の工業製品からは残念ながらあまり感じられません。BMWは最初の言い出しっぺが筋を通していたから、そしてそれを受け継ぎ伝える人がいたから、50年以上たっても当時のモノづくりの考え方が最新のモデルにも伝わっているのでしょう。

ー吉野さんは去年のGS泥んこ祭りにR100で“チャレンジ”されていますね。

吉野●R100だけでなくK1200Rでも林道を走ることはあります。「ロードバイクだから林道は走れないだろう」などというのは、バイクの能力とは関係なく、勝手にライダーが決め付けているだけではないでしょうか。「こういうバイクだからダートは向いてない」と思っているだけで、行ったこともなければ、たとえ行ったとしても“高級車だからコケたら…”と“おっかなびっくり”で走るから先入観がさらに強くなるんでしょう。R100が発売されていた時代は、舗装されていない道なんていくらでもあったでしょうし、ダートを当たり前に走っている人もいたでしょう。「R100ではダートは走れない」と思っている人の方が僕には不思議です。

ーそれは吉野さんがBMWに乗る前から林道に走りに行っていたから、という面もあるのでは?

吉野●もちろん、それは多少あるかもしれませんが、とはいってもアメリカンやスカチューンのセローで林道に行く程度でした。それよりも、BMWの忠実かつ正確性があるからこそ、路面を問わずにポテンシャルを引き出せるのでしょう。設計者が意図した“ライダーに対して忠実であれ、正確であれ”という信念が貫かれているので、ライダーがそれを引き出してやれば路面を問わず走れると思っています。それを実証するためにも、GS泥んこ祭りをR100で走ってみたんです。

ーだとすると、吉野さんにとっての万能選手は、最初に買ったR100なのでしょうか。

吉野●コレが欲しいと指名買いしたバイクはなく、それぞれに思い入れがあります。ひとめぼれ、パワー路線、メカ的興味、衝動買いなど。「ひとつに絞れ」といわれたら困りますね…。旧いのからパワーのある最新型まで味わいましたが、どれか1つだけを残すとするならば…最終的にはR100ですかね。

ー最後に吉野さんにとってのBMWとは?

吉野●やはり“乗り手に忠実かつ正確”な操縦性能に尽きます。どのモデルでもフレンドリーで乗り手との距離が近く、バイクとのコミュニケーションが親密な乗り物だと思います。

プロフィール
吉野 隆之
42歳、東京都在住。電機メーカーにエンジニアとして勤務した後、家業のコンビニを継ぐ。仕事の夜勤明けにはワインディングや林道に走りに行くバイクライフを送る。21歳で通勤のために中型免許を取得して以来バイクに乗り続け、現在はBMW4台のほかハーレーFLTも所有。

Interviewer Column

人懐っこい笑顔が素敵な吉野さん。ジーンズにトレーナー、その上からプロテクターを付ける出で立ちでツーリングに行く。K1200Rには近所のホームセンターで買ってきた3000円程度のスクーター用トップケースを付け、「GIVIってシールを貼ればそれっぽく見えるでしょ」と笑う。R65LSは紫メタ地に白でチェッカーとファイアーフレアのパターンという個性的なカラーリング。BMWディーラーのツーリングには「ショートツーリングだから」と、K1200Rを置いてR26でご登場。人の見る目、人の言うこと我関せずといった感じで、自分流にBMWを楽しんでいる。私もBMWを持っているが、どうしても高価な乗り物だけに、工事中の砂利道でも進むのを躊躇してしまう。肩肘張らず自然体でBMWを楽しむ吉野さんが、ちょっとうらやましくも思えた。(八百山ゆーすけ)