VIRGIN BMW | ヨシムラジャパンがR1200GS用スリップオンマフラーをラインナップ 特集記事&最新情報

メイン画像R1200GS SLIP-ON HEPTA FORCE

取材協力/ヨシムラジャパン 車両協力/サカエオート
取材・文/石橋 知也 写真/柴田 直行 構成/VIRGIN BMW.com 編集部

掲載日/2014年9月1日

意外かもしれない。4-1集合管を発明したアフターマーケット製マフラーのトップブランド『ヨシムラ』が、BMW R1200GS(2014年式)用マフラーをリリースしたのだ。乗ってみると、スリップオンなのに豊かなトルクとスムーズさに驚き、そして重厚なサウンドに魅了された。BMW水冷ボクサーの素質を見事に引き出し、ヨシムラらしい味付けを加えた逸品だ。

 

IMPRESSION

ビートの効いた重厚なサウンドを奏でる
7角形『HEPTA FORCE』

“ヨシムラ アドベンチャーシリーズ”第1弾として、この6月から発売開始されたマフラー、BMW R1200GS用Slip-On HEPTA FORCE(ヘプタフォース)サイクロンEXPORT SPEC(政府認証・車検対応)は、エッジの利いたシンメトリー7角形(Heptagon:ヘプタゴン)断面がデザインベースで、斬新なコーン形状は独特の存在感と気品が漂う。コーンエンドは美しい光沢を持つステンレス製と、レーシーなイメージのカーボン素材の2種類。これらにステンレス、メタルマジック(ステンレス素材に特殊なエッチング処理を施したカーボン風のブラックオリジナル耐熱塗装)、チタン、チタンブルー(鮮やかな虹色。ポリッシュ加工以後に陽極酸化処理)の4種類を組み合わせ、合計8バリエーションもある。

 

STDとの違いは始動直後から分かる。アイドリングから音質が図太く、重厚なのだ。これには思わずニンマリしてしまう。マフラー交換の意義は、まず音だ。そしてクラッチミートした瞬間から、また違いを体感する。極低速からトルクが豊かで、力強い。市街地を流す程度ならば、STDよりも自然と早めのシフトアップになる。トルクフルといっても決してゴリゴリした荒々しいものではなく、とにかくスムーズ。だからUターンも交差点もすんなり楽々。意地悪く1速スロットル全閉の微速でも問題なくスルスル進んでいく。こうした出力特性を得ることは、公道での実用では最高出力アップよりも重要で、さすが「マフラーのヨシムラ」だけあって「分かっている」チューニングだ。

 

 

郊外の山道へ入り、スロットルを大きく開けると図太くビッグツインらしい、ビートの効いたエキゾーストノートがこだまする。こんなに元気で、良い音でいいのだろうか。しかしそこはヨシムラマジック。ライダーには心地好く、高揚感ある音質・音量に聞こえるのだが(ヘルメットを被った状態で)、近接排気騒音89dB(3,875rpm)、加速走行騒音75dBと、見事にJMCA規制をクリアしていて、傍からはジェントルで重厚な音質・音量なのだ。これなら大人のバイク、BMWに相応しい。

 

そして中~高回転域にかけては、いわゆる“ヌケ”の良さが際立つ。パワーは確かに出ているし、何より回転の上がりが良い。最高出力でプラス1.23psの117.53ps。最大トルクでプラス0.09kg-mの11.49kg-mと、スリップオンなので数値上のパフォーマンスアップは僅かなのだが、手前の実用域での差を実走して体感してみると、ピーク数値の差を遥かに上回っている。なにより体感性能は音質もあって、かなり高くなっている。

 

 

どんなエンジンでも、最高出力を発生する回転数の約半分ぐらいの所に“トルク谷”があって、ここらでスロットルを開閉するとツキが悪かったり、また、全閉からドンツキが出たり、一定回転数で走ろうとすると回転が不安定になったりと問題が出やすい。2014年型R1200GSの最高出力発生回転数が7,750rpmなので、約3,800rpm前後(ちょうど近接騒音測定回転数辺りだ)はどうかというと、ここらもスムーズ。トルク谷の前は空燃比が薄くなって、そこから急激に濃くなったり燃えが悪くなるのだが、これはそんなこともない(ヨシムラの計測でも良好)。トルク谷のその回転域だけ空燃比が外れているのではなく、少し前の回転域から悪さを引きずって、そこで最悪になることがほとんど。要するに連続しての影響だ。トルク谷がないスムーズさが特筆で、このマフラーの優秀さ、エンジンの良さが現れている所だ。また、減速時の不整爆発音もなく、エンジンブレーキもスムーズにかかる。ヌケの良いマフラーだと、モノによっては全閉で“パンパンッ”という音が出やすい(酷いとハンドリングやコーナー進入時のトラクションにも影響する)。

 

若干だが切り返しも軽快になる。ヨシムラマフラーはSTDより軽量なのだ。STDの5kgに対して、実走テストしたメタルマジック+ステンレスエンドでマイナス1.1kg(最軽量のチタンカバーだとマイナス1.3kg)。車体の後部でこれだけ違うと、その差は体感できる。

 

プレミアム感あふれる外観、重厚なサウンド、スムーズな出力特性、そしてヨシムラならではアフターサービス(補修、パーツ交換)など、BMW GSオーナーならば是非装着してみたい逸品だろう。そして異種に思われたヨシムラマフラーは、不思議なほどBMWにマッチしている。

 

INTERVIEW

大型サイレンサーでストレート構造
これが出力特性と音質の良さの秘密

ヨシムラジャパン・マフラー事業部・マフラー開発課 課長の吉田 学さん。「良い音が出てくれてホッとしました」とのコメント。

やはり最初に思うのは、ヨシムラがなぜBMW GS用マフラーをリリースするのかということだ。同社はレースばかりではなく、オンロードモデルの日本製4気筒というイメージがどうしても強い。ただ海外ではモトクロッサー、エンデューロバイク、クワッド(4輪バギー)用マフラーの評価も高く、ファクトリーマシンにも採用されてきた。

 

「まず世界的に人気があるアドベンチャーモデルに向けた製品を作るという、ヨシムラの新たなチャレンジが出発点です。すでにBMW用としてはS1000RR用をラインナップしていますが、今回はアドベンチャーモデルの頂点であるGS用を、という流れですね。このGS用はヨシムラ アドベンチャーシリーズの第1弾になります。海外からの要望は以前からありましたが、企画は日本です」

 

BMW GS用ということで、これまでと違ったアプローチや工夫はあったのだろうか?

 

「品質ですね。BMWのユーザーは大人なので、物を見る目が肥えていて、しかも自身の趣味性が強い。ですから、サイレンサーカバーとエンドの組み合わせで8バリエーション用意しました。また、アドベンチャーモデル用なので、力強さも表現したかったのでマフラーバンド(サイレンサー本体に巻かれる取り付け用バンド)も2本に。強度的にも十二分です。そしてフレームへの取り付けステーはアルミ削り出しとしました。もちろんパニアケースを装着できるようにとか、オフロードで走っても問題ない耐久性の確保など、GSならではの条件はクリアしてあります」

 

 

音質がとても良いが、その秘密は?

 

「GSは大きなバイクですよね。マフラーにとっては、逆にそれが有利に働きましたね。このサイレンサーは他のスポーツモデルと比較して大きめなんですが、GSに装着すると、むしろピッタリ。なので、余計な絞りや背圧をかけずに消音できました。サイレンサー内部は完全に同径のストレート構造です。バッフルも無しです。だからこのような乾いた重低音で、ビートの効いた音にできたのだと思います」

 

それにしても極低~高回転域まで全域でトルクが乗っていて、出力特性が素晴らしい。スリップオンで、どうしてここまで性能を引き出せたのか?

 

「この水冷ボクサーエンジンはとてもイイんです。排圧が高い感じで、そのおかげか出力特性も音質も良い方向で出せました。さきほどお話したサイレンサーの大きさも有利でした。基本的に排気量に見合うたっぷりとした容量があって、なおかつ内部(消音器であるパンチングパイプ)なども絞らずストレートに出せれば、音量をクリアしながら音質も加減速の特性も良くなるんです。じつは他モデル用では、開発段階で音量や性能は出せても、音質や特性がイマイチということもあります。これをまとめ上げるには苦労することも多く、JMCA規格はクリアできるのに、あの音がねぇ…ということも。原因はエンジンということもあるので、出力特性と音質を両立させるのは、意外と難しいんですよ」

 

今後もアベンチャーモデルや外車用マフラーの企画はあるのだろうか?

 

「まずスリップオンでスタートした、というところです。本当に性能を求めればフルエキゾーストですけどね。スーパースポーツ用だけでなく、ツアラーやアドベンチャーモデルも視野に入れています。外車用マフラーは今後もいろいろ企画していますし、アドベンチャーモデルは国産車用もリリースしていくでしょう」

 

PICKUP PRODUCTS

ディテールを見ればヨシムラの
GS用へのこだわりが分かる

スリップオンでパフォーマンスアップや軽量化はあまり期待できないのでは、という先入観を見事に一蹴したヨシムラSlip-On HEPTA FORCE サイクロンEXPORT SPEC。じつはGSのSTDエキゾーストシステムは、かなり性能も良く軽く仕上がっているので、これを上回るマフラー製作はかなり難しい。そこは細部にこだわり、その集合体だからこそ高級感と存在感がある。もちろん乗ってみれば、さらにその価値が分かる。ヨシムラの有名なキャッチフレーズ“I’ve Got The Power !”は、無骨にパワーと軽量化を追い求めた時代のものだったが、その精神はこのマフラーにも宿っている。美しいマフラーからは、やはりヨシムラパワーが出ている。この音、この加速感は、ほかにはない。

 

サイレンサー自体は大型なのだが、GSの車格が大きいのでむしろ小ぶりにスタイリッシュに見える。また、EXPORT SPECは海外ユーザーからのリクエストで、溶接跡(ビード)などを後加工せず、そのまま魅せる仕様で、素材はステンレス。そこには職人技で仕上げられた製品を所有する喜びがある。

メタルマジックカバーは、ステンレス素材に特殊なエッチング加工で仕上げられ、まるでカーボンのようなルックスになる。光沢も半艶消しでとても上品。不思議な魅力を持つ加工だ。また、派手に思われがちなチタンブルーカバーもGSだと、むしろアクセントになっている。

サイレンサーのエンドはカーボン(写真)とステンレスの2種類。サイレンサー本体の7角形からエンドの異形4角形に移る形状がとても美しい。正に魅せられるリアビューで、一目でヨシムラマフラーと分かる。また、エンドの形状は音質にも大きく関わり、金管楽器でいえば先端部分になるのだ。

7角形ヘプタゴンサイレンサーとボクサーエンジンが見事なスタイリングを見せる。レーシングマフラーのイメージが強いサイレンサーだが、アドベンチャーモデルにも似合う。内側へきちんと追い込まれてスリムなテール周りになっている。1.1(ステンレスカバー)~1.3(チタンカバー)kgの軽量化も実現。

サイレンサー取り付けバンドはダブル。オフロード走行をしても強度・耐久性は十二分で、GSらしい力強さも表現ししている(実はオンロードユースなら1本バンドでも十分なぐらいだという)。取り付けステーはアルミ削り出しでブランドネーム入り。各部の品質やこだわりは、やはりヨシムラだ。

テールパイプとSTDエキパイを接続。スプリングはステンレスで、スプリングカバーのゴムにもヨシムラの文字が。溶接ビードの焼けなどもそのまま残されるのがEXPORT SPEC。こうした個所に価値を見出す海外ファンからの要望で決められた仕様だ。見事な技術を垣間見られることも所有感につながる。

政府認証・車検対応マフラーで、日本で企画、開発、製造。オイル/オイルフィルター交換もそのままでき、センタースタンドもそのまま使える。キャタライザーなどはSTDを使用(STDエキパイ側にある)。また、ヨシムラ独自のマフラーリメイクサービスもあるので、損傷しても修理可能なので安心だ。

サイレンサーエンド内側にもレーザー加工によるヨシムラのロゴマークが。内部のパンチングパイプ(消音器)はストレート構造で、絞りもバッフルも無し。これが重低音とヌケの良さの秘密でもある。減速時の音は静かな連続音で、これもエンジンブレーキのスムーズさにつながっている。

純正パニアケースがそのまま装着可能。ケースとサイレンサーのクリアランスは十分。特別な遮熱板無しで装着できている。写真のマフラーはチタンブルーカバー+カーボンエンド。

 

LINE-UP
  • BMW S1000RR
    (2010~12)

    R-11 レーシングサイクロン 1エンド NEO HYBRID フルエキゾースト(14万5,000~15万5,000円)。レース専用品。USヨシムラ製ヘッダー(ステンレス)とヨシムラジャパン製サイレンサーをコラボ。STDより約50%軽量。

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  • BMW S1000RR
    (2010~12)

    Slip-On R-11サイクロン 2エンド EXPORT SPEC(9万3,000~10万3,000円)。スリップオンでサイレンサーは2エンドのR-11タイプ。メタルマジックやチタンブルーなどが選べる。政府認証・車検対応でEXPORT SPECだ。

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  • BMW R1200GS
    (2014)

    Slip-On HEPTA FORCE サイクロン EXPORT SPEC (7万3,000~9万3,000円)。政府認証・車検対応のスリップオン。コストパフォーマンスにも優れた製品だ。このヘプタフォースのサイレンサーは8種類から選べる。

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※表示は税抜価格(2014年9月現在)

 

BRAND INFORMATION

ヨシムラジャパン

1954年に活動を開始したヨシムラは、日本を代表するレーシングコンストラクターであると同時に、マフラーやカムシャフトといったチューニングパーツを数多く手がけるアフターマーケットメーカー。ホンダやカワサキに力を注いだ時代を経て、1970年代後半からはスズキ車を主軸にレース活動を行うようになったものの、パーツ開発はメーカーを問わずに行われており、4ストミニからメガスポーツまで、幅広いモデルに対応する製品を販売している。

 

住所/〒243-0303 神奈川県愛甲郡愛川町中津6748
電話/046-286-0321