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ストレート6の魅力をさらに引き出す ササキスポーツクラブ K1600GTL用チタンフルエキゾースト
    取材協力/ササキスポーツクラブ  取材・撮影・文/木村 圭吾 構成/VIRGIN BMW.com 編集部
    掲載日:2012年5月16日

弱点を補い長所を伸ばす
フラッグシップに相応しい逸品

BMW バイク各車種用に向けてオリジナルパーツを多数展開しているササキスポーツクラブから、フラッグシップモデルの K1600GTL 用のフルエキゾーストマフラーがリリースされた。同社は三重県鈴鹿市の、通称 “サーキット通り” にある BMW モトラッド正規ディーラー 『Motorrad Suzuka』 の母体でもあり、BMW バイクを取り扱って30年以上のキャリアがある。

 

オリジナルマフラーに関しては、これまでボクサーツインの R1100RS から始まり、現行 R1200 系、縦置きクランクエンジンの K1200 系や現行(横置き) K1200&1300 系、シングル&ツイン各Fシリーズ用などをリリースしており、そのいずれもがユーザーから高い評価を得ている。その大きな理由は、ベースモデルの持っている出力特性の弱点を補いつつ、さらに利点や特色を伸ばす方向に振られていることにある。それはこの K1600GTL 用フルエキゾーストマフラーも同様だ。

 

ノーマルマフラーでは発進時におけるトルクの “谷” や “息つき” が発生し、クラッチミートとアクセル開度のタイミングが難しい。そのため、その操作をミスするとエンストを起こしかけてしまう。そこでトルクの谷を埋めてそのようなことが起こらないようにし、さらにパワー出力は全域でノーマルを上回っている。ただし “ドカン” と来る体感的な速さは持たせていない。その理由は本質的な速さを求めているからだ。

 

体感的な速さはトルクの谷によって引き出されることが多く、その落差によって乗り手が感じやすくなっているのだが、一方で、谷が無く低回転域からスムーズに出力を上昇させると、体に感じる盛り上がりは無いものの、到達スピードは早い。マフラーの性能としてはどちらが上か? は言うまでもないだろう。

 

また、マフラーが奏でる音も重視しており、今回の開発では特に苦労した部分だとか。ノーマルでは高音すぎるため、それをツアラーらしい低音方向にすることは決まったが、問題はその “程度” だ。開発初期はクルマのようなサウンドになってしまい “バイクらしさ” が無くなってしまう。試行錯誤の末ようやく辿り着いたのが、現在の排気音となっている。もちろん騒音規制にも適合し、一定の速度でクルージングする際は “排気音を邪魔に感じない程度” にしているのも特筆すべき点だろう。もしかしたら物足りなさを感じる人もいるかもしれないが、走行中にライダーが聞こえるぐらいの排気音は、実際は相当な “爆音” だ。それが “音疲れ” を誘発してしまうことも、考慮した結果なのだ。

 

カスタムパーツとしてのマフラーに求められる大きな要素のひとつがスタイリングの向上だ。この K1600GTL 用では、サイドビューはノーマルと異なる軽快感が与えられている。それに対してリアビューは迫力のある重量感を見せており、眺めているだけでも時間が過ぎてしまう。エキゾーストパイプは磨き加工(ミラーフィニッシュ)が施されたチタニウム製で、エンジン付近は排気熱で色合いが変わり、それも魅力のひとつとなっている。また、このチタンを用いることでマフラー単体の重量が、ノーマルの 17kg に対して 10.6kg と軽量化にも貢献。それは取り回しの負担軽減をはじめ、さまざまなメリットを生み出している。

 

先にも述べたように、現行 BMW バイクのフラッグシップモデルが K1600GTL だ。だからといって、このマフラーを開発するにあたって、特別に主旨が変わったということは無い。これまで同様、ベースモデルの持っている出力特性の弱点を補いつつ、さらに利点や特色を伸ばしているだけなのだ。“だけ” ではあるが、ノーマルとの差は大きく、交換する意義が極めて高い逸品に仕上がっている。

 

ササキスポーツクラブのオリジナルマフラーは、マフラーメーカーとの共同開発により製品化されている。そのパートナーは 『ワイバン』 ブランドが支持されているアールズ・ギアだ。代表の樋渡 治(ひわたし おさむ)氏は元スズキのワークスライダーの経歴を持ち、車両の開発能力には “人間シャーシダイナモ” の異名をもつほど。そして何より樋渡氏も BWM バイクの愛好者の1人であり、愛車の R1200GS アドベンチャーでの年間走行距離は2万kmを超える。正に鬼に金棒であり、タッグを組んで作り込むには最適なメーカーだ。

両サイドのパニアケースを取り外してみると、サイレンサーの大きさに驚かされる。その迫力ある姿もアリだろうが、逆に見ればサイドのパニアケースを装着した状態でデザイン的なバランスが取れるようになっているのが解る。サイレンサーのシェルもチタンで、内部の消音材には最高級の物が用いられている。

サイレンサーエンド部分はエンドミルの切削痕が見受けられるアルミの削り出しとなっている。排気口は6気筒らしく片側3つで、そのいずれからも排ガスが排出されるようになっている。

左右それぞれ3気筒ずつ、車体の下部で集合してサイレンサーへと繋がっている。左右の排気系は途中で連結させておらず(オイルパンなどがあって不可)、言うなれば3気筒の集合管が2本装着されているようなものだ。

シリンダーヘッドからズラリと生える6本のエキパイ…は前方にラジエターなどが存在しているため、残念ながらあまり見えない。装着時はチタンの地色だが、走っているうちに排ガスの熱でブルーのグラデーションとなる。

エキパイ集合部やサイレンサーとの接合部など、各パーツの溶接痕の美しさも、つい見入ってしまうポイントのひとつだ。

IMPRESSION

K1600GTL用フルエキゾーストマフラーのサンプル動画。エンジン始動から走り出しまでのエキゾーストノートをご確認ください。
※この動画は実際の音を忠実に再現するものではありません。あくまでも参考です。撮影時の音に近い状態を聴くには、ヘッドホンの使用をオススメします。

 

赤い曲線がノーマル、青い曲線がササキスポーツクラブのフルエキゾーストマフラーを表している。トルク曲線(1,000rpmあたりから急上昇している方)を見てみると、ノーマルでは2,400rpm付近で若干の“谷”があり、それが発進時にギクシャクする原因だ。青いラインではそれが無くなっているのがわかる。

 

ササキスポーツクラブの K1600GTL 用パーツ各種

主張は控えめだがしっかり伝わる
まさに日本仕様のエキゾースト

ご存知の通り、K1600GTL は並列6気筒エンジンを搭載している(現行量産市販車としては唯一無二)。タイヤが2つしかないのにシリンダーは6つで排気量は 1,648cc もある。BMW の旗艦モデルとしては十分な存在感だが、はたしてそのスペックは必要か? と問われると、また違ったベクトルの価値観の話になる。実際に日本の公道を走ることを前提に考えると、必要以上の出力が邪魔をして億劫に思う場面が多々ある。たとえば発進と停止を繰り返す交通環境では、クラッチミートや足を地面に下ろす際にたいへん気を遣う。およそ 355kg の巨体を動かしたり停めたりするには大きなエネルギーが必要なことは言うまでもなく、それを捻出するのに6気筒エンジンはオーバースペックだ。BMW もそんなことは百も承知で、相当パワーを抑えた特性となっている。なんとも面倒くさいバイクなのだ。

 

さて、そんな前置きはいいとして、ササキスポーツクラブが新たに製作したフルエキゾーストマフラー装着車両に試乗した印象はというと、推進力ゼロ状態から低速走行時までの安心感が大幅に向上されている。開発コンセプトの “トルクの谷を消す” ことで乗りやすく、扱いやすくするというのは本当だと実感した。本来これほどの大排気量バイクは、アクセルを開けることなくクラッチをじんわりつなぐだけでグイグイ前進するもの。ところがその間に一瞬でも回転数が下がってしまうと、あわててアクセルを開け、車体が飛び出しそうになり、それが怖くてブレーキを握り、バランスを崩して立ちゴケ…というケースが多い。しかしそういったストレスが綺麗に解消されているのだ。大柄な車体は市街地での機動性を求めるものでもなく、渋滞では忍耐が必要。そういった際のストレスも、低速時の安心感が向上していることでだいぶ低減されている。

 

サウンドに関しては「アレ?」と思うほど自然。ノーマルに近いわけではなく “リプレイスした違和感” がまったく感じられないのだ。音量は控えめでジェントル、むしろこっちの方が車体にマッチしていると感じたくらい。走行時にアクセルをワイドオープンしたり高回転域まで引っ張ってみても、耳障りなノイズや割れた音は一切無く、どこまでいってもジェントルだ。それでいてモリモリと湧き上がる大きなトルクを耳で感じることができる。

 

車体のキャラクターにマッチしたビジュアルはササキスポーツクラブならでは。サイレンサーはエンド部分に向かってテーパー状に広がり、アルミ削り出しのマフラーエンドキャップは高級感を演出するための、同社の定番とも言えるアイキャッチだ。6気筒を表す排気口は装飾ではなく、すべてを機能させている点も見逃せない。

 

ササキスポーツクラブの K1600GTL 用フルエキゾーストマフラーは、市街地でクルマの流れに乗る際の扱いやすさを向上させ、かつクルージングの際は車体そのもののキャラクターを邪魔しない。実際の使用環境を捉えた製品開発が忠実に行われている。装着した際のルックスも含め、およそ300万円もする高級なバイクに装着するカスタムパーツとして、非常にマッチしたエキゾーストマフラーだと思う。/バージンBMW 編集部 田中ゼンスケ

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ササキスポーツクラブ

 

ササキスポーツクラブの佐々木正嗣代表。サーキットのある街、鈴鹿でBMWに携わってきて30年以上のキャリアを持つ。オリジナルパーツの開発では毎回何らかの苦労が生じているそうだが、その分カタチになったときの喜びは大きく、それを多くのライダーと共に分かち合いたいと考えているのだ。

ササキスポーツクラブ

住所/三重県鈴鹿市稲生西3-9-35

電話/059-386-5600

営業時間/10:00~19:00

定休日/毎週月曜日(祝日の場合は翌日)

 

マフラーをはじめとしてBMWバイクに向けての機能性やルックスの向上を果たすオリジナルパーツを多数リリースしており「地の利」を活かして、アルミ削り出しやカーボンパーツもラインナップ。BMWモトラッド正規ディーラー「モトラッド鈴鹿」の母体でもある。