VIRGIN BMW | 第3回 R1200RTインプレ 365日BMW Motorrad.宣言

第3回 R1200RTインプレ

  • 掲載日/2006年04月28日【365日BMW Motorrad.宣言】
  • コラムニスト/K&H 上山 力

365日BMW Motorrad.宣言の画像

え?こんなに小回りがきくの?
恐るべしBMW…。

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さて、今回はいよいよR1200RTの試乗のお話です。

クラフトさんで説明を受けたあと、クラッチが繋がるタイミングを見ながら発進。駐車場から通りに出るときにフロントブレーキを「カツンッ!」とロックさせてしましました。おっと、危ない危ない…。BMWはテレレバーのおかげで「カツンッ!」の後にフロントフォークが沈む動作がなく、足を出すタイミングが遅れてしまいます。滝本さんには「簡単簡単!ふふ~ん。」と、とりあえず平静を装い出発し、一緒に走るK&Hスタッフの青鹿とともにすぐ近くのコンビニへ退避(笑)。R1200STを試乗する青鹿に「いきなり転ばすとこだったよ~。そっちはどう?」「大きさは気にならないねぇ~」そんな会話のあと気を取り直して再出発。

ところが伊豆に向かう予定が、東名高速の入り口を通り過ぎてしまいました。仕方なく右折ラインに並び「Uターンする?」と青鹿に聞くと「出来る? 右折→右折で戻ったほうが良くない?」と初めてのバイク、しかも試乗車ということに弱気な彼。「ゆっくり曲がれば大丈夫でしょう」と借り物なのに強気な私(笑)。右折信号が青になり、かるーくアクセルを開けて前に進み、アクセルオフの瞬間に「えいやっ!」とUターンしてみると「!!!」。「すげー小回りが利く!」青鹿も「おおぉ~」とインカムを通して驚きの声が聞こえます。こんなに大きなオートバイなのに250ccのオートバイの感覚でUターンが出来ます。う~ん、恐るべしBMW。早速そんな発見をしつつ、颯爽と横浜町田から東名高速道路へ入りました。

ただ、まっすぐ走っているだけで
操作している実感があって面白い

まず高速道路を走行中驚いたのが、その防風効果。R1200RTは電動スクリーンで、走行中も手元のスイッチで高さ調整が出来ます。楽しくてついつい何度も試してしまいます(笑)。ただ、ひとつ気になったのが、スクリーンを高くしたときの巻き込み風の強さです。高くし過ぎると体が前に引き込まれるような現象が起こります。ニーグリップし難いシートの形状のせいもあって、巻き込み風で上半身が引き込まれると、体重をハンドルで支える形になってしまいます。これは改善の余地有りですね。

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試乗する前からBMWは直進性がいいという噂を耳にしていましたので、それも検証してみました。試乗する前は、BMWはオートバイ自身が真っ直ぐ走ってくれるのかと思っていました。実はそうではなく、ライダーが直進するための操作をすることによって「シューン」と、どこまでも直進する感じです。まるでモノレールに乗っている様な感覚ですね。「エンジンの中のクランク軸辺りにレールでもあるんじゃなか?」そんな気さえします。「ロールセンターが随分低い? ちょうどクランク軸辺りにあるのかな?」カウルの隙間から覗き込み「Aアームの先端、ちょうどボールジョイントの辺りかな?」なんて走りながら考察します。同じく直進性が良いとされるハーレーと比較すると、まったく違う方向にクランクのジャイロ効果が働いているのがはっきりと分かります。ハーレーの場合、重たい横置きのクランクやホイールが進行方向に回転し、そのジャイロ効果もありオートバイ自体がとにかく真っ直ぐ走ろうとします。R1200RTは、真っ直ぐ走っているところから『カクンッ!』と向きを変えることも可能です。自分の操作次第でいかようにも走ることができますね。真っ直ぐ走らせるだけでも操作しているという実感があって、これは面白いバイクです。

ただ、ノーマルシートではその操作をダイレクトに伝えることができず、オートバイからの情報がなかなか伝わってこない気がします。どちらかと言うと『どっかり』と座らされてしまう感じかな。「座面の高さによる乗車姿勢、ニーグリップし難い形状、スポンジの硬さ等がその要因か?」そんなことをグルグル頭の中で考えていると、あっという間に目的地の沼津に着いてしまいました。2人とも「こんなに沼津って近かったっけ?」とBMWの巡航性能には感心してしまいました。

※クランク軸:エンジン内のクランクの中心(エンジンの回転軸)
※ロールセンター:遠心力が働いたときに車体が傾斜(ロール)する回転中心となる線。
※Aアーム:テレレバー車の、車体(エンジン)とフロントフォーク、ショックユニットを結ぶ構造体、上部から見たときアルフェベットの「A」に見える為そう呼ばれる。

シート位置を変えてみたものの
お尻から情報が伝わってこない…

本当は、伊豆半島を一周したかったのですが時間の都合もあり、ショートカットして下田に向かいます。途中、コーナーの連続する道に入ります。高速道路を走っているときも感じていましたが、R1200RTのノーマルシートはどの位置に乗って操作したらいいのか、よく分かりません。ここまでシートを低い位置にセットして走ってきたので、休憩をかねてシートの高さを変えてみます。シートを取り外す方法は、テールランプ下にある差込口にキーを差し、ロックを解除してリアシートを取り外してからフロントシートを外すようになっています。ただ、この差込口の位置だと、イグニッションキーを外し、車体の真後ろまで回りこんで作業をするので、大きめのトップケースが付いているとちょっと面倒。キーを差し込んで「カチャッ」といった後にトップケースから回り込んでシートを外そうとしたら、シートの自重でロックが掛かってしまうことが何度かありました。個人的にはサイドにキーの差込口があると良いなと思います。「パニアケースのように、押すと開くような構造になっていれば尚良いのに…。施錠も出来るし」。そうすれば出先ですぐに乗車位置の変更がしやすくなると思うのですが…。

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さて、気を取り直してシートを高い位置にセットし、出発しましょう。さっきよりはいくらか膝にゆとりができ、足に荷重をかけられるようになりました。ハンドルを切ったときの肘の軌道も確保され、いくらかリーンも自然にしやすくなります。テレレバーについては、どういう動かし方をすれば一番良いかはまだわかりませんが、テレスコピックからの乗換えでも大きな違和感は感じません。BMWの大きさや操作にも慣れてきて、少しずつ山道も楽しく感じはじめました。ところが、シートの高さを変えてもやはりお尻から伝わってくる情報が乏しく、それ以上の楽しみ方ができません。市街地に入っても、幅の広いシートのせいで足つきが悪く、楽しい気分が損なわれてしまいます。足の付く量の問題だけではなくて、足の付き方に問題があるようです。また、スポンジが柔らか過ぎて、片足立ちのときに内腿やお尻で車体を支え難い。この辺りである決断が頭をよぎり始めます。その決断とは?

それはまた次回に。R1200STのインプレッションと共にお話ししようと思います。

プロフィール
上山 力

32歳。東京都練馬区のシートの名店「K&H」に勤務。シートの開発を主に担当。自らが長い距離を走り抜き、シートを開発するため、彼の年間走行距離は尋常でないものに。

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