VIRGIN BMW | 第4回 R1200STインプレ 365日BMW Motorrad.宣言

第4回 R1200STインプレ

  • 掲載日/2006年06月03日【365日BMW Motorrad.宣言】
  • コラムニスト/K&H 上山 力

365日BMW Motorrad.宣言の画像

快適に飛ばせる伊豆スカイラインで
STのポテンシャルを試してみました

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試乗の話は今回で既に3回目ですが(笑)、今回はとうとう「試乗レポの」最終回です。伊東から、伊豆スカイラインに登っていく亀石峠付近で、それまで乗っていたR1200RTからR1200STへと交代します。R1200STに乗り、最初に感じたのは「思っていたよりも前傾姿勢がきつくない!」そして「R1200RT同様スポンジが柔らかい」これに関しては走り出すと一層強く感じました。亀石峠・伊豆スカイラインは適度なコーナーが続き、交通力も少ないのでR1200STを知るにはぴったりの道です。中回転から高回転へのフラットな加速を存分に味わえ、後ろのR1200RTに乗る青鹿がすぐにミラーに写らなくなりました(笑)。

さて、R1200STはどういう乗り方をすると楽しめるのか、いろいろと試してみましょう。まずは基本的なリーンウィズ。コーナー手前でフロントタイヤに荷重をかけ、ブレーキを離した一瞬にアクセルON! フロントタイヤに掛かった荷重が、一瞬抜けたと同時に内足の荷重を抜き、上体の重みがシートに掛かった瞬間蛇角が付く。『俺…ちょっとうまいかも?』みたいな錯角をしてしまうほど綺麗なリーンウィズができてしまいました(笑)。この一連の動作が簡単にできてしまう車両なのが驚きです。「バンクさせながら、左右のヘッドカバーが路面に対してどの辺りにあるのか」を確認できるほどゆとりがあります(危ないですから真似しないで下さいね)。

ツアラー寄りの「RT」とスポーツ寄りの「ST」
キャラクターの差を体で理解する

今度はブレーキを遅らせ、腰をずらしてコーナーに入っていくと、更にフロントタイヤの接地感が増し安定してコーナリングしていきます。ただ、この曲がり方だと速くは走れますが、フロントブレーキを効かせながらなので、自然な蛇角が付いていない気がして個人的には楽しめませんでした。サーキットなどのクローズドコースでなら良さそうですが、一般道ではコーナー手前で減速を終わらせる走り方の方が、蛇角のつき方も自然で、安全に楽しめる気がします。R1200RTでも同じ走り方をしましたが、ブレーキをリリースした後のアクセルの空け方に神経を使います。フロント剛性の高いR1200STではRTほど神経質にならなくても走れますが、そんな走り方もできるというだけで、個人的には「一般道で神経をすり減らすような走りをしてどうする!」といった感じがしました。

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R1200RTのフォークが細いのは、そういった刹那的な走りをするよりも「基本に沿った走らせ方で楽しんでほしい!」そういうメーカーの意図があるような気がします。しかし、ただのツアラー的な走りだけではありません。乗り手によっては、R1200STに追いつけ追い越せなんてこともできそうですし、コーナーが続く道がすこぶる面白い。R1200STはサーキット走行も楽しめる方向性に振っているようですから、その辺りのキャラクターの差が車体周りの差になっているのでしょう。

BMWに操られているような感覚…
ポジションを変えればきっと乗りこなせるはず

「物は試し」ということでいろいろな走り方もしましたが、両車とも基本に沿ってきっちり減速して、「すっと曲げる」がすごくおもしろい。但し、R1200RTもR1200STもシートのせいで面白さがスポイルされていると感じました。オートバイ自体の素性はものすごく良いのですが、どこかちぐはぐ。まず、何を狙ってこのスポンジの柔らかさなのか分かりません。これではまるで応接間のソファーです。それとR1200RT、R1200STどちらのシートもシート自体の剛性感がいまひとつ。これは取り付け方法とシートベースの剛性によるものだと思います。ここからが一番重要なところなのですが、R1200RTに関してはニーグリップがしづらい。下半身の踏ん張りが効かないので、どうしても腕で上半身を支えてしまいます。ハンドルに無駄な力を掛けてしまい、自然なセルフステアを阻害してしまうということです。もう1つは、乗車位置が悪い! 乗車位置が悪いため、ハンドルやステップとの位置関係も悪い。日本仕様のローシートの弊害なのでしょうか? 歯車の様に、効率を追求して設計された車体の動きに対して、ライダーがその歯車の一部になれない。そんな疎外感を感じます。馬鹿にされているような気さえして、ついBMWに憤慨しそうになります(笑)。「アナタハソコニスワッテイナサイ、アトハワタシガカッテニヤリマス」と冷たくオートバイにあしらわれてような気がしました。自分がオートバイを意のままに操って主役になるはずが、いつの間にかオートバイに乗らされている…。

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そして決心が付きました。「このオートバイをちゃんと乗りこなしたい!」と。皆さんはオートバイのシートって座るためにあるとお思いではありませんか? 僕は、オートバイのシートとはオートバイの操縦席だと考えています。座るためだけではなく「しっかりとオートバイを操作できる場所にいるためのシート」なんだと。操縦席が応接間のソファーでは、しっかりと操縦するなんてできるはずがありません。幸い僕は、オートバイの操縦席を作るのを生業としています(笑)。まず、どちらの操縦席を作るかを考えましたが、R1200RTからチャレンジすることに決めました。R1200STは「ツーリングも出来るスポーツバイク」で、逆にR1200RTは「スポーツも出来るツーリングバイク」だと今回の試乗で感じました。R1200RTは、荷物もたくさん積め「後ろに嫁さんを乗っけての旅行」も得意そうです。「僕の好きなツーリングが得意なのだから、楽しくスポーツできる部分をもう少し伸ばしてあげよう!」そう素直に思ったのです。

プロフィール
上山 力

32歳。東京都練馬区のシートの名店「K&H」に勤務。シートの開発を主に担当。自らが長い距離を走り抜き、シートを開発するため、彼の年間走行距離は尋常でないものに。

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