キルギスタンでうどんパーティー
思わぬところで日本食を堪能
ビシケクを離れ、次なる目的地はキルギスタン第二の都市「オシ」です。オシは古くから名馬を産出していたことで知られるフェルガナ盆地にあり、ここに向かうには3500m級の2つの大きな山を越えなければなりません。富士山とほぼ同じ高さの山を2つ越えなければならない、と言えばわかりやすいでしょう。しかし、いざオシに向かう、と心を決めるとなぜか天候が悪くなってきました。少々天候が悪いのには慣れていますが、山越えを控えているので、山頂の天候が心配です。ビシケクにもう数日滞在して、天気がよくなるのを待つことに。
この足止めのおかげで、面白い日本人の旅人に会うことができました。タイチという名の青年です。彼は兵庫県に住んでいて、旅に出るまではシェフをしていました。日本から遠く離れたキルギスタンで彼はその腕を振るってくれ、ゲストハウスのみんなにうどんをご馳走してくれました。こんなところでうどんを食べることができるとは…懐かしい味に心が打たれます。また、彼は私のためにインスタントの味噌汁をいくつかわけてくれました。この味噌汁は大事に飲むことにしましょう。じっくり話を聞くと、タイチは私がこれから向かう山を抜けビシケクにやってきたそう。聞くと、山には雪が積もり氷が張っていたそうです。「車はみんなタイヤにチェーンをつけていますよ」と言われ、少し不安が募ってきました。「どんな道でも走れるR1200GSだから大丈夫!」と強がってみたものの…こればっかりは走ってみないとわかりません。少し天候が回復したので、いざ進むことにしましたが、出発直前にゲストハウスにやってきた人の話では、まだ雪も氷もまだ残っている、とのこと。出発前に不安にさせてくれる情報は耳にしたくありませんね。もう行くっきゃありません!
R1200GSの本領発揮
富士山級の山を2つ越える
山に入ってみると、天候は思ったほど悪くありませんでした。道すがら目に入ってくる景色は美しく、目を奪われてしまいます。しかし、標高が上がるにつれ、どんどん気温が下がってきました。不運なことに雪まで降ってきて、10m先すら見えない状態に。路肩には雪、視界は最悪という状態でしたが、路面がしっかりと舗装されているおかげで、注意深く走ればタイヤが滑ることはありませんでした。慎重に山頂を目指すことに。山頂では絶望的なほど視界が悪くなり危険を感じましたが、山頂を過ぎてからは次第に天候がよくなってきました。空は晴れ、視界は良好で一安心です。2つ目の山は1つ目より標高が数百m低く、天候もよかったためスムーズに峠越えをすることができました。そこから数時間も走ればさらに標高は低くなり、気温も上がってきます。そこから日が暮れるまで快適なツーリングを楽しみました。道中でキャンプに適した場所を見つけ、無事に山を越えられたことに感謝しながら眠りにつくことに。
翌朝は物凄い雨音で目が覚めました。テントを打つ雨音はまるで雷雨のようで、この状況で走り出す気にはなれません。しばらく待っていると雨は上がり、陽が差してきたのですが、キャンプサイトから道に戻るまでの地面が泥でぬかるんでしまっています。荷物満載のR1200GSを恐る恐る走らせ道に戻るのに思いのほか時間がかかりました。しかも愛車は泥まみれに(笑)。まぁ、道に戻りさえすれば舗装路を走れることを幸せに思いましょう。モンゴルの延々と続く未舗装路を思い出せば、こんなことはたいしたことではありません。また、ここからオシに向かう途中で面白いフランス人カップルに出会いました。彼らは2人とも教師をしているらしく、2人乗りができる風変わりな自転車で旅を続けています。こんな自転車を見たのははじめて! カフェで休憩しながら、彼らの旅や私の旅について楽しく会話をしました。これまで出会った中でも非常に印象的な旅人です。よき旅を!
歴史ある街“オシ”に到着
旅の仲間とここで待ち合わせ
ついにオシに到着しました。この街はいくつかの理由で非常に興味深い街でした。1つ目は古くからシルクロードの重要な街として栄え、その歴史は2500年も遡ることができるらしいということ。2つ目は、中央アジアで一番大きなマーケットがあること。個人的な話で申し訳ありませんが、ここ数ヶ月メールのやり取りをしていたイギリス人ライダーのトムとピーターにここで会える予定だったことです。彼らは私と同じくR1200GSとR1150GSアドベンチャーに乗るBMW乗り。イギリスからオーストラリアまで1年をかけて走り抜こうとしている物好きな人たちです(笑)。彼らが予定通りこの街に到着したのか、どこの宿に泊まっているのかを確認するためにインターネットカフェを探してメールチェック。この街のインターネット環境も他の国と同じく非常に悪いです。接続速度は遅く、メールチェックもままなりません。過去には届いているはずのメールが消えてしまったり、送ったはずのメールが送れていなかったり、ということはザラにありました。これから旅をする人は、海外のインターネット環境は日本と同じだとは思わない方がいいでしょう。こちらがメールを送った、と思っても相手には届いていないこともあるのですから。ここまで旅をする間に「こないだのメールは届いているか?」と確認する癖がついてしまいました。
さて、トムとピーターですが、私と同じ日にオシに到着していました。ディナーを一緒に取る約束をして、それまでは街を散策することに。歴史あるオシの街はソビエト時代に、その風情を幾分失ってしまったそうですが、それでも私を楽しませてくれる街並みが広がっていました。異国の地に来ると、何気ない散歩ですら心を躍らせてくれるものです。これも旅の醍醐味ですね。夜には、無事トムとピーターと会うことができました。同じGSモデルに乗る仲間としてこれまでの旅の情報交換を行い、くだらない話で腹を抱えて笑い、遅くまでこの素晴らしい出会いを楽しみました。翌日は彼らとセントラルマーケットを探検することに。まるで何百年も前のマーケットのように見えるこの場所では、お土産品から家具、家電や大きく切り分けた肉、あらゆる種類の野菜やフルーツまで、何でも売られていました。かつてのソ連軍の装備まで売られていて、ここで手に入らないものはないんじゃないか、と思えます。マーケットの探検をじっくり楽しんだ後、この日は飲まずにまっすぐ帰ります。この日は早目に寝ることにしましょう。私も彼らも昨晩は飲みすぎてやや疲れ気味です。私は翌日にタジキスタンに向かいますし、彼らはカラコルム山脈を抜けパキスタンへ向かう予定です。明日からまた始まるお互いの旅の安全を約束し、彼らとは別れました。
