VIRGIN BMW | 第7回 ロシアからモンゴルへ ユーラシア大陸横断

第7回 ロシアからモンゴルへ

  • 掲載日/2007年02月09日【ユーラシア大陸横断】
  • コラムニスト/Erik Andreas Jorn

BMWで走る海外ツーリングの画像

初めて経験する空の近さ、大きさ
大自然に囲まれた国モンゴル

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バイカル湖周辺を少し散策し、お昼頃にロシアとモンゴルの国境へと向かいました。バイカル湖から国境へは約3時間ほどで着きます。日本を出発してロシアに入り、次はモンゴルです。少しわくわくしてきました。VISAの関係で、いろんな国を行き来しなければいけないのも悪くないかもしれません。ロシアで出会った人の99%はフレンドリーで素晴らしい人たちでした。ロシアの役人の無愛想さには呆れましたが…。モンゴルではどんなが待っているのでしょうか。

そんな思いを持ちながら国境で出入国手続きをしていると、面白いことが。ロシア人とモンゴル人の気質を表す出来事です。ロシア国境の職員はいつもながら無愛想でしたが(今さら腹は立ちませんが)、モンゴルの職員はやたらと愛嬌がありました。「ようこそわが国へ。いい旅を過ごしてくれよ!」と私を出迎えてくれます。ただ「バイク保険代をもらわないといけないんだ」と支払った22ドルは、そのまま彼のポケットに消えていきました(笑)。ロシアの役人は無愛想ですけれど、あからさまに不正をするのには出会いませんでした。しかし、モンゴルは…。気持ちよく入国できたので、彼のポケットに入った22ドルについては気分が悪くなることはありませんでしたが…。愛嬌はあるけれど風紀は乱れているのでしょうか?

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国境を越えてしばらく走ると、ロシア側と景色が違うことに気づきます。シベリアで飽きるほど眺めた鬱蒼とした針葉樹林の森は目に入ってこず、見渡す限り痩せた草原が広がっています。大地だけでなく空もロシアとは違う印象を受けました。空が大きく、近いのです。ロシアより空が一回り大きくなって、ちっぽけな自分に覆いかぶさってくるように感じます。決して悪い意味ではなく、この空の大きさを心地よく感じました。国境を越え100kmほど走った後にテントを張ることにしました。モンゴルではキャンプサイトを用意するのは簡単です。今走っている道から少し外れれば、そこがキャンプサイトになります(笑)。たまたま湖畔の気持ちよさそうな場所が見つかったので、テントを設営することにしました。美しい夕焼けと月を眺めながらモンゴル初日の夜は更けていきます。野生馬でしょうか、遠くで駆け回っている馬の蹄の音といななきを耳にしながら、いつの間にか眠ってしまいました。

モンゴルの道は悪路多し
轍に取られコケちゃいました

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翌朝はスッキリとした気分で目が覚めます。いつもなら起きてから寝袋を出るまで時間がかかってしまうのですが、この朝の気温は0度を上回っています! 寝袋から出て、さっさと荷物を片付けないと。この日はモンゴルの首都「ウランバートル」に向かう予定でした。しかし、地図を見ているとちょっと寄り道をすればモンゴルの3大寺院の1つに立ち寄れることに気づきました。350kmほど余分に走らなければいけませんが、行ってしまいましょう。モンゴルの道路状況は非常に悪く、あまり飛ばすことはできません。聞いた話によるとモンゴル全土の道の中で舗装路はたった25%ほどしかないそうです。モンゴルの人口250万人の内、約半数がウランバートルに住んでいるため、全土まで舗装路を広げなくてもいいのでしょうか。寺院までの道中は 牛や羊、山羊が道路を横切るのを待ったり、川底に滑りやすい石が転がっている小川を注意しながら渡ったりと少しアドベンチャー気分を楽しめました。やっとたどり着いた寺院ですが、日本のあちこちで見た荘厳な寺院とは少し赴きが違います。妙にサッパリとしているというか…すがすがしい造りですね(笑)。興味深く楽しむことはできました。というのも、ここにはドイツ人のドキュメンタリー製作者や、この国に学校を建設に来た日本のJICA(国際協力機構)の人たちがいらっしゃり、楽しい時間を過ごせましたからヨシとしましょう。

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遠回りしてしまったので寺院からはメインロードへ戻る道はショートカットすることに。地元ドライバーに教えてもらった道を進み「ウランバートルまで突っ走るぞ!」と思っていたら…酷い悪路でした。何台もの車が行き来し深く掘られた轍にR1200GSのハンドルが取られ、慎重に進まないと転倒してしまいそうです。と、思っていたら本当にコケてしまいました。スピードはそれほど出ていなかったのでダメージはさほどありませんが、荷物満載のR1200GSを起こすのはなかなかの重労働。外せる荷物は外して車両を引き起こし、そしてまた荷物を積載する。コケたのは実はこれで4回目ですし、少々の転倒くらいではBMWがビクともしないのは知っていたので不安はありませんが…。自分の愛車に小傷が増えていくのは気持ちのいいことではありませんね。「この旅でコケるのはこれが最後だ!」と思ってはみたものの、きっとどこかでコケてしまうんでしょうね…その後しばらく走ってメインロードに戻り、一路ウランバートルへ。

個性的な旅行者が集う街
モンゴルの首都ウランバートル

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そして辿り着いたウランバートルです。特別魅力的な街というわけではありませんが、暖かいシャワーと美味しい食事にありつけるのは有難い(笑)。街中は悪名高いインドと同じくらい車で混雑していて、思わず苦笑いしてしまうほどあちこちでホーンが鳴らされています。見ていて複雑な気分になったのは街で見かけた多くのストリートチルドレン。この街には孤児院のような施設が少ないらしく、行く当てのない子供たちがストリートに溢れています。この街を出るまでにどこかに子供たちのために寄付をしよう、この実情を見てしまうとそう思わざるを得ませんでした。ネガティブなところばかり書いてしまいましたが、ウランバートルはダイナミックな変化が見られる街です。旧ソ連の影響下から脱して急速に近代化が進んでいます。街には民族衣装を着た老人もいれば、カジュアルな格好で携帯電話を耳に当て歩く若者もいて、近代化の速度の速さが窺えます。高級SUV車を街のあちこちで見かけることも多く、私のモンゴルのイメージは大きく変わりました。あ、そうそう。ウランバートルで歩道を歩いていると、蓋がないマンホールを何度か見かけました。警告もなしにいきなり道路に穴がポッカリと開いていますので気をつけてください。この国は男女を問わず、道端に唾を吐く習慣があるらしく、もし道に小銭を落としてしまったら、汚れるか蓋のないマンホールに吸い込まれてしまうかもしれませんよ(笑)。

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ウランバートルには長く滞在します。ロシアへと戻るVISAの発給がまた面倒で、ほとんどの時間はVISAの手続きに費やされることになりそう。ただ、おかげでウランバートルに集まってくる面白い旅人に出会うことができました。私の母国スウェーデンからやってきたアンダースとジョアンナという夫婦。娘を2人連れて、スウェーデンのイエテボリから中国の上海まで車で旅をしています。「家族くるみでの旅?」と思うかもしれませんが、下の娘が生まれたのを機に夫婦で産休を取って旅をしているとか。スウェーデンでは長い産休を取ることは珍しくなく、法律でその権利が守られています。産休の期間に上海まで車で旅をするなんて、国は想像さえしていないでしょうけれど(笑)。乳飲み子を連れ、子育てをしながらの旅なんてクールですね。上の娘は「5歳の誕生日を万里の長城で迎えたい」と言っていたのが面白かったです。

ウランバートルには旅行者が集まるイングリッシュパブがあり、ここでいろいろな旅行者に出会いました。ロンドンからウランバートルまでを車やバイクで走り抜くレース「モンゴルラリー」の参加者たち。モンゴルラリーは、車は1000cc以下、バイクは125cc以下と規定されているレースです。参加者の中にはレースが始まる数日前に免許を取って走ってきた猛者もいて、非常に個性的な面々との会話は時を忘れるものでした。過酷な旅でいうと、この街で出会った中で一番クレイジーな旅行者はモンゴルラリーの彼らではなく、ギアのついていない70年前の自転車で、スイスからここまで走ってきたトミーでしょうか。彼はこれから中国を旅する、と言っていましたが、あんな自転車で大丈夫なのでしょうか。

まるで「世界の変わり者選手権」が開催されているのか、と思うほどウランバートルには個性的な旅行者が集ってきていました。彼らからこの先のルートについて役立つ情報も教えてもらえました。休養もたっぷり取れましたし、VISAが取れれば再びロシアへと戻ることにしましょうか。

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プロフィール
Erik Andreas Jorn

35歳。スウェーデン国籍。15歳のときに渡米し、アメリカで医学を学ぶ。大学卒業後に1年間海外を放浪し、その後来日。8年間を日本で過ごした後にR1200GSでのユーラシア大陸横断を企画し、現在は旅の途中。

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