並列2気筒エンジン編
- 掲載日/2008年06月12日【BMWバイクエンジンガイド】
2006年に投入された
新型並列2気筒エンジン
2004年の新型水平対向2気筒、2005年の新開発並列4気筒という2基の1200ccエンジンに続き、2006年に市場投入されたのがこの798cc水冷4ストローク並列2気筒エンジンだ。
BMWが僅か3年の間に3基というエンジン開発ラッシュを敢行したのは、製品ラインナップの中で他メーカーに対抗できるミドルクラスモデルを早急に拡充する必要があったからだと言われている。それゆえ、開発にあたってはさまざまな要素が検討されたが、シンプルなデザインと効率的生産が可能なレイアウトが特に重視され、並列2気筒という形式が選ばれた。ご存知の通り、このエンジンデザインは古くから存在するもので、英国では1930年代から、日本でも1960年代から積極的に開発したという歴史がある。
しかし、新規で開発する以上ありきたりな形式に終始するはずもなく、このエンジンにはBMWらしい数々の新技術が投入さた。また、現行Gシリーズや旧F650シリーズに搭載された単気筒ユニット同様、開発と生産にはオーストリアのエンジン専門メーカー、ロータックス社が深く関わっている。
並列4気筒の技術を応用
さまざまな新技術を投入
実は新世代のKシリーズ用並列4気筒エンジンが登場した段階で、2気筒エンジンが派生することは予測されていた。しかし、シンプルに最大パフォーマンスを狙った4気筒とは異なり、2気筒では日常使用も可能な多目的ユニットという側面も重視された。
コンパクトなヘッドには4バルブDOHCのメカニズムが効率よく収められ、潤滑はドライサンプ方式を採用。ハイパワーを追求した4気筒の技術を応用・転用しながらも、単気筒モデルのF650CS以来の採用となるベルトドライブによる2次駆動が採用され、ローメンテナンス化と低振動も実現している。
さらに、360度クランクの中央には慣性力をキャンセルするバランサーロッドが連結され、効果的にエンジン振動を抑制。これにより、高回転を許容し、スポーツモデルをはじめとするさまざまなモデルへの搭載が可能な汎用性も獲得しているのである。
早くも勢力を拡大し始めた
BMWの2気筒シリーズ
このパワーソースを最初に搭載したのはF800SとF800STの2機種だった。オンロードでは「スポーティで快適、それでいてどこかボクサーエンジンに似た味わいもある」ということで、デビュー早々高い評価を獲得したのは記憶に新しいところ。当初から想定したであろうエントリーユーザーや女性ユーザーだけではなく、その速さに魅了されたベテランライダーをも巻き込んで、今やこのユニットを搭載した新型Fは人気シリーズの一角になるほど急成長した。
また、最近では新型F650GSやF800GSもデビューし、その勢力はベーシックモデルや本格オフロードモデルにまで拡大しつつある。他メーカーに対抗しうるミドルクラスモデルを拡充するという計画は、このエンジンが核となっており、その意味でこのユニットは極めて重要で戦略的な存在だ。並列2気筒エンジンというと、生産性重視のイメージがつきまとうが、このユニットは相当なコストと最新技術を投入して開発された“本気”の並列2気筒エンジンだと言える。
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