VIRGIN BMW | R1200S(2006-) 試乗インプレ

R1200Sの画像
BMW Motorrad R1200S

R1200S(2006-)

  • 掲載日/2008年05月13日【試乗インプレ】
  • 取材協力/BMW Motorrad Japan  取材・写真・文/八百山ゆーすけ

最強モデルを示す“S”の符号
それに相応しいスパルタンモデル

今回紹介するR1200Sは、BMW伝統の空冷水平対向2気筒エンジン、通称「ボクサーツイン」搭載モデルの中で、最強のパフォーマンスを誇るモデルだ。これまでBMWのモデルラインアップは、同じエンジンをそのままの仕様でさまざまなモデルに採用することが多かった。しかし、 R1200Sのエンジンは外観こそ他のボクサーと同じながら、各部にチューニングが施され、他モデルより高いパワーが与えられている。

また、一世代前の R1150シリーズより1割以上軽くなったボクサーエンジンを搭載する現行Rシリーズの中でも、さらに1割近い軽量化が図られているのもR1200Sが特別な存在であることの証だ。車名につけられた“S”の符号は“Sport”の略で、それはまさにスポーツモデルを意味する。歴代モデルで言えば“S”を冠したモデルには「R69S」や「R90S」などがあるが、そのいずれもが時代時代でBMWの最高スペックが与えられたモデルとして知られている。R1200Sもこの“S”を冠するにふさわしい性能が与えられているのは言うまでもない。

R1200Sの特徴

R1200Sの画像

12psアップと200kgを切る車重に
スポーツライドを意識したつくり

特別なモデルと書いたが、R1200S のフィロソフィーは他のボクサーツインのモデルと同様だ。公道を安全に楽しく走れるバイクとして、高い信頼性を持つ車体や、テレレバーをはじめとした革新的な足回りなど、他のモデルと共通する仕様は多い。しかしその一方で、“S”を冠したモデルとして、他のボクサーツイン搭載モデルとはいろいろな面で違いが見られる。具体的には、R1200S専用のカムやコンロッドの採用、12.0から12.5にアップしたエンジンの圧縮比、バルブリフト量拡大による燃料供給量の増大などだ。さらに、高回転に備えてバルブスプリングを強化するといったチューニングも施されている。また、車体周りも見直され、トラス構造のフレームには補強が施され、シートレールはアルミ製の別体式とされた。こうした全体におよぶ強化と軽量化によって、本格的なスポーツ走行に対応した車体剛性と、装備重量で213kg、乾燥重量なら 200kgを切るという、国産スポーツバイク並みのスペックを実現している。

車体はBMWの全モデルの中でもひときわコンパクトで、各部がスポーツモデルらしい仕様となっているのもR1200Sの特徴。シート高は830mm とかなり高めで、広くて大きい形状と相まって積極的に体重移動でコーナリングすることを意識させられる。タンデムシートはあるもののグラブバーはなく、明らかに一人で楽しむことが前提。サスペンションも見た目は他のボクサーツインと同じでも、よりハードなブレーキングに対応するセッティングが施され、オプションで前後オーリンズ製のショックユニットを装備した仕様も用意されている。また、ABSを装備するハイライン仕様車では、サーキット走行のために、ABSをカットするボタンを装備。車体構成こそ同じだが、他のモデルとは明確に趣を異にしている。

R1200Sの試乗インプレッション

BMWには珍しい前傾姿勢
ワインディングが楽しい

BMWのラインアップにはいろいろなモデルがあり、それぞれにキャラクターが与えられているが、その根底にあるのものはやはり公道におけるツーリング。それゆえ、伝統的に“BMW=ツーリングバイク”というイメージが強かった。しかし近年、それが当てはまらないモデルが増えつつある。R1200Sもまたがった瞬間、従来モデルとの明らかな違いが感じられた。830mmというシート高は、小柄なライダーならつま先を付けるのが精一杯で、左右の足を踏み変えるためには、車体を揺らさないように細心の注意を払って腰をずらす必要が生じるだろう。そのうえ、ハンドル位置はシートから決して遠くないものの、かなり低い位置にセットされ、グリップに手を伸ばすとタンクに伏せた状態を強いられる。高速道路ではスクリーンを超えた風がモロにヘルメットに当たり、他のモデルのようなウインドプロテクションは無いと言っていい。まるで国産スーパースポーツに跨っているような感じなのである。また、車体の軽さもスポーツモデルそのもので、取り回しではスペック以上の軽さを感じる。

このスパルタンな印象は走りはじめても変わらない。スロットルに対する反応はシャープで大胆。明らかに他のボクサーツインと違う。3000回転以下のトルク感は希薄で、発進時や極低速ではエンストに気を遣わざるを得ない。しかし、ひとたびスピードに乗れば、ライダーの本能を呼び覚ます鋭い加速を見せてくれる。回している限り、ほとんどのシチュエーションで力不足を感じることはなく、他のRシリーズとは一線を画すフィーリングだ。ワインディングではその印象がさらに強くなる。車体自体の軽さもあって、コーナーの進入ではバイクを寝かせようとする意思にとてもシャープに反応。なおかつ、フロントのテレレバーサスペンションがもたらす安心感は絶大だ。ハードブレーキング中に減速帯やギャップに飛び込んだとしてもノーズダイブはなく、タイヤは路面を掴んで離そうとしない。コーナーリングで一番不安なのがブレーキングというライダーも多いが、テレレバーの恩恵はこのときにもっとも感じられるだろう。抜群の安定感とスポーティなキャラクターのおかげで、ワインディングでは自分のライディングが上手くなったように感じるほどだ。

こんな方にオススメ

ツーリング性能は最小限
だからこそ実現したスポーツ性

スポーツモデルとわかっていてもBMWのブランドイメージから、「そうは言ってもツーリングもできるでしょ?」と考えたくなるところ。しかし、 R1200Sにツーリングでの快適さは期待しない方がいい。もちろん、国産スーパースポーツでツーリングするライダーもいるのだから、R1200Sでもツーリングは不可能ではない。しかし、かなりのタフネスさが求められることは間違いない。やはり、R1200Sはスポーツバイクと割り切って向き合うことをオススメする。その代わり、ワインディングやサーキットでの走りを楽しみたいという向きには最高のボクサーエンジン搭載モデルだと自信を持って言える。もちろん、BMWとしての高い信頼性や、安全に配慮した設計思想など、ライダーに優しい部分はしっかりと残されている。これからスポーツライディングを楽しんでみたいというライダーにも最高の一台となることだろう。

R1200S プロフェッショナル・コメント

スポーツ走行に特化
安全で速いR1200S

先代R1100Sの後継として、よりスポーツ走行に適したスパルタンなモデルとなって2006年5月に登場したのがR1200Sです。カウルのデザインもかなりスポーティーなものとなり、外観はまさにスーパースポーツといった佇まいになりましたが、中身はそれ以上に進化しています。R1100Sと比較すると乾燥重量で18kgも軽量化されたほか、エンジンユニットはRシリーズ史上最強の122psを発揮。高出力に対応するためコンロッドやバルブスプリングなども強化され、足周りにもハードなセッティングが施されています。BMWとしては珍しく気合を入れて乗るバイクに仕上げられています。

このように、従来のBMWでは考えられないほどスポーツ走行に特化したR1200Sですから、サーキット走行を楽しむオーナーが多いのは事実ですが、その一方でツーリングを楽しんでいるオーナーがいるのはとても意外です。他のモデルと同様というわけにはいきませんが、オプションでパニアケースの設定もあり、乗り慣れれば1泊程度のツーリングなら問題ないのでしょう。サーキットやワインディングで、より安全に本格的スポーツ走行をたのしみたいと考えている方にオススメのモデルです。(Motorrad SHONAN 滝本 幸一さん)

取材協力
住所/神奈川県大和市下和田953
電話/046-269-1377
営業時間/10:00-19:00
定休日/火曜日(年末年始12月29日~1月5日)

R1200S のカスタム01

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東京都 福永さん

サーキットで抜群の安定性
パワーに不満はありません

ヤマハのSRXから乗り換えたR1100Sが初めてのBMWで、今はR1200Sに乗っています。前々からBMWとレースには興味があり、SRXで出場できるレースも無かったことから乗り換えました。買った当初はツーリングもしていたのですが、今はサーキット走行がほとんど。R1100Sよりもスピードがでるし、ブレーキングもずっと奥まで突っ込める。R1200Sはサーキットでの安定感がとても高いので、ボクサートロフィーで優勝したこともあります。カスタマイズはWP製の前後サスと、Gトライブ製のバックステップぐらい。パワーはもう十分過ぎるぐらいなので、出力を向上させるカスタマイズの予定はありません。

R1200Sの画像
【左】福永さんの一番のお気に入りはエンジン、エキパイ、サス、ホイールなどが全て見える左斜め後ろからの姿だという。 【右】Rシリーズの標準とも言うべきテレレバーサスペンション。R1200Sではハードなサーキット走行にも対応するセッティングが施される。

R1200S のカスタム02

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神奈川県 渡辺さん

BMW流のスポーツマシン
慣れればツーリングもOK

少々もてあまし気味だったドゥカティからR1100S、R1200Sと乗り継ぎました。用途はツーリングとサーキット走行です。R1200Sの魅力は軽くてパワフルなこと。1100と比較するとポジションはきつくなりましたが、その代わりシートが快適になりました。薄くなったと言われている低速トルクは最初から割り切っているので気にならないし、1泊ぐらいのツーリングなら問題ありません。サーキットではシャープにバンクさせることが出来ますし、速さは2割り増しという感じですね。公道での性能を確保しつつ、サーキットでも思い切りスポーツできるのがR1200S最大の特長だと思います。

R1200Sの画像
【左】渡辺さんのお気に入りはシートカウルのデザイン。特にシングルシートカバーを装着した時のオリジナリティある姿が良いという。 【右】トラス製のアンダーカウルもオススメだとか。レースのレギュレーションをクリアしつつサイドスタンドも使える逸品。

R1200S の詳細写真

R1200Sの画像

Rシリーズ最高峰のボクサーエンジン

BMW伝統の空冷水平対向2気筒エンジン。R1200Sのものは圧縮比、バルブリフト量、専用エキパイなどのチューンにより、トルクこそ11.4kg-m/6800rpmと他のボクサーより細いものの、最大出力は122ps/8250rpmと12馬力もアップしている。
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他に類をみないテレレバーサス

独自のフロントサスペンション「テレレバー」。フォークと車体を連結するAアームによってブレーキング時のノーズダイブを抑制。Sではよりハードなセッティングが施され、ハイライン仕様車に至っては前後ショックにオーリンズ製が奢られる。
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スタイリッシュなマフラー

テールカウル内にサイレンサーを収める形式のハイアップマフラーは、先代R1100Sから受け継ぐ。テールライトはLED式で、それ以外の灯火類を簡素化され、サーキット走行時には簡単に取り外すことができる。
R1200Sの画像

スポーツ走行対応シート

スポーツモデルらしくシートは830mmと高めで、体重移動による入力をしやすくするためフラットな形状。そのため足付き性はあまりよくない。テールカウルには一応タンデムシートが付く。
R1200Sの画像
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