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BMW Motorrad R nineT (2020) / 空冷ボクサーツインの旨みを凝縮したRナインティを試乗インプレ

  • 掲載日/2021年03月02日【試乗インプレ】
  • 取材協力/BMW Motorrad 取材・写真・文/小松 男

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BMW Motorrad R nineT(2020)
BMWモトラッドのヘリテイジシリーズ第一弾モデルであり、シリーズの顔とも言えるRナインティ。今春にライディングモードなどが追加された新型が日本上陸を予定しているRナインティも登場から7年が経ち、成熟したと言っても過言ではない。そんなRナインティを、今一度見つめ直してみる。

BMWモトラッドの看板モデルの一つであり、
同社の長い歴史を未来へと繋げる一台

Rナインティが登場してから7年が経った。スタンダードモデルの登場後、カフェレーサータイプやスクランブラータイプ、オールドGSタイプ、名車R50/5をオマージュした限定モデルなど、矢継ぎ早に派生モデルを投入し続けてきた。これにより、Rナインティシリーズは流行りに乗るような一過性の物ではなく、しっかりと根を張りBMWモトラッドの血脈に名を残す一大モデル陣として育ってきたことが示された。

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その一方で、昨年は新型ボクサーエンジンを搭載したブランニューモデルR18が投入された。RナインティとR18は全く異なる性格を持つモデルではあるが、両者ともネオクラシックスタイルをウリとして開発されており、個人的には同じ方向を目指すモデルだと考えている。それは同門の仲間でありながらも、ライバル的なものとしても意識しなければならない存在でもあるということだ。R18はこれまでRナインティがそうであったように、派生モデルを追加してくることだろう。そしてRナインティもライディングモードなどが追加された新型が、今年度に日本上陸を予定している。そのような今、熟しきったRナインティに再び触れることで、今後進むであろう道を探ることにした。

Rナインティ(2020) 特徴

スペックでは表せない潜在的性能と、
トラッドでありながら斬新さも備える魅力

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BMWがモーターサイクルの製造を開始してから90周年を記念するとともに、同社の歴史を支えてきた空冷ボクサーツイン(水平対向2気筒)エンジンを残す意味も踏まえて開発を手掛けた初代Rナインティが発表されたのは2013年のこと。そもそもBMWが数多く輩出してきたモーターサイクルの中でも屈指の名車だとされるR90Sをオマージュしたコンセプトナインティというモデルを世界的に著名なカスタムビルダーであるローランド・サンズが手掛け、それがティザーモデルとして先出しされた格好であった。多くのBMWモトラッドモデルから連想されるような、ツーリングギアに身を包み向き合う、いわゆるライダーの正装的なスタイルとは真逆の、Tシャツとデニムパンツも似合うカジュアルなイメージを持つ、まったく新しいBMWモトラッドに世界中のライダーが熱い視線を向けたものだった。

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そしてBMWモトラッドが発表したRナインティはカスタマイズをも楽しめるバイクライフを連想することができるモデルとされていた。ここまでがRナインティの登場前後の話で、その先はBMW主導の元、世界中のカスタムビルダーの手によって行われたカスタマイズコンテストの開催や、様々な派生モデルの登場となるのだが、それから何年もの時間が経ち、今、Rナインティはどのように我々の目に映っているのだろうか。

Rナインティ(2020) 試乗インプレッション

多くの派生モデルの中にあって、
スタンダードでありフラッグシップ

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Rナインティを目の前にし、その独特なスタイリングは何年経っても色あせることが無いと思った。少し前にRナインティ・ピュアやアーバンG/Sのテストを行ったことを思い出して考えたのだが、燃料タンクサイドに備えられたパネルパーツや、シート表革、倒立タイプのフロントフォークの採用など、やはり質感的な面で語るならば、今回取り上げているスタンダードなRナインティに軍配が挙げられる。これは裏を返すと、Rナインティシリーズのフラッグシップモデルとして考えられているからだということが分かってくる。

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セルボタンを押しエンジンを目覚めさせる。水冷ボクサーエンジンでは払拭されたトルクリアクションは、Rナインティに搭載される空冷ボクサーエンジンでは色濃く感じさせてくれ、思わず「そうそう、これこれ」と頷いてしまう。クラッチを繋ぎ発進する。環境規制に対応するためにECU制御されていることもあり、空冷ボクサーエンジンは極低回転域で、スロットルワークに対しややシビアな反応を見せることがあるが、基本的には1200㏄もの排気量を持つツインエンジンであり、力強いトルク感は大きな魅力となっている。それに何といっても心地よく響くエキゾーストノートが素晴らしい。BMWモトラッドはどのモデルも排気音をしっかりとチューニングして出してくるが、モデルのキャラクターと最も似つかわしいのはRナインティかもしれないと思わせてくれる程に“音”が良いのだ。それにつられてついついスロットルも開け気味となってしまう。これはRナインティマジックだ。

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Rナインティは2017年モデルでマイナーチェンジが施されており、フロントフォークがフルアジャスタブルタイプとされ、ステアリングヘッドアングルやキャスターもリセッティングされている。そのために初期モデルと比べてハンドリングが若干安定方向となっているのだが、十分に軽快であり、一般的スキルのライダーでは甲乙つけるまでもないだろう。それよりも気になるのはリアサスペンションだ。モノショックタイプを直立気味にセットしているために、旋回時に大きな負荷がかかっている。パラレバーの採用によりスイングアーム長を仮想的に伸ばしているため、粘ってくれるのだが、インフォメーションはストレートな反応を見せる。BMWモトラッドのモデルの多くはフロントタイヤへの依存傾向が高めでRナインティもそうなのだが、テレレバーではなくテレスコピックフォークの採用により、リアの動きに気を取られる印象だ。とはいえスポーティなキャラクターを明確にするにはベターなセッティングであろう。

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私はこれまで幾度となくRナインティに触れてきた。付け加えるならばRナインティ/5(限定モデル)以外のRナインティシリーズにはすべて乗った経験を持つ。その上でスタンダードなRナインティは、とてもバランスの良いスポーツバイクに仕上がっているモデルだと考えている。ラインナップにあるR1250Rはボクサーツインモデルのピュアスポーツモデルではあるが、モダンすぎるイメージも否めない、そのような中にあって、クラシックバイク的な様相を持ち、なおかつカスタムベースとしても楽しめるRナインティの存在意義が光るのだ。昔ながらの空冷ボクサーを抱かせつつ高級感を持たせ、ファッションやライフスタイルにも精通する纏め方がなされている。

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90年代初頭にR100RロードスターとR100Rミスティックというモデルがあった。BMWらしいトラディショナルなスタイルで纏めた前者に対し、ストリート的な要素を持つ外装とされた後者が追加されたものだったが、そのどちらの良いところも兼ね備えているのが、現代のRナインティなのではないかと、私はイメージを重ね合わせている。

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これから日本に上陸するであろう新型Rナインティは、基本的なスタイリングこそ大きな変更が施されていないが、シリンダーヘッド、シリンダーヘッドカバー、スロットルバルブなどを新設計としながらユーロ5環境規制に適合させ、レイン/ロードのライディングモード選択が可能とされるほか、コーナーリング中のABS介入なども行うDBC(ダイナミック・ブレーキ・コントロール)付きABSプロや、新設計サスペンションの採用など、多岐に渡り手が加えられたものとなっている。すでに高い完成度を誇るRナインティだが、新型の乗り味も気になるところではある。

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Rナインティ(2020) 詳細写真

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1169ccDOHC水平対向2気筒エンジン。2017年のブラッシュアップでユーロ4に、今期登場する新型ではユーロ5に対応する。新型では最高出力が抑えられているが、発生回転数も下げられたスペックが発表されている。

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細かく張られたワイヤースポークホイールにチューブ入りのタイヤを履かせる。ブレンボ製4ピストンモノブロックキャリパーをダブルでセット。高い制動力を備えている。

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オーソドックスな丸型ケースのヘッドライトを採用。マルチリフレクタータイプでH4バルブが使われている。よく見ると、中央にBMWのプロペラマークが配置されている。

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S1000RR譲りの倒立フロントフォークは、フォークトップのスクリューで減衰力などを調整できるフルアジャスタブルタイプで、ライディングスタイルやステージによって、細かくセッティングを楽しむことができる。

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グリップベルトがあるため、一見ワンピースシートのように見えるが、セパレート式とされたシート。タンデム側はシートカバーと交換することでシングルシート仕様にすることもできる。

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割と後方高めにセットされているステップであるため、下半身のポジションはスポーティな印象。ヒールプレートの大きさと形状が良く、果敢なコーナーリングでも、かかとをしっかりと保持できる。

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MotoGPマシンでも採用されており、欧州最大規模を誇るエキゾーストシステムブランド、アクラポビッチのマフラーをセット。三元触媒コンバータが備わり、既存モデルはユーロ4に対応している。

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左手側のスイッチボックスで、メーターディスプレイ上に表示されるほとんどのインフォメーションを操作することができる。なお、2017年モデルからはグリップヒーターが標準装備となっている。

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シンプルかつ視認性の高いアナログタイプの2連メーターを採用。各メーターの下部に液晶ディスプレイを備えており、各種インフォメーションが表示される。

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ブラックを基調とした燃料タンクサイドにはアルミパネルが配置されており、高級感がある(他のモデルはプレス成型)。容量は18Lと大きく、その内約3Lがリザーブとされている。

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シートレール裏側のトルクスネジを外すことで、容易にタンデムシートを脱着することができる。多少小物が入る程度のスペースが確保されている。ライダー側のシート下にはETC車載器が収まっている。

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モノショック式のリアサスペンションは、リバウンドダンピング及びプリロードの調整が可能。サスペンションストロークは、フロント/リアともに120mmとされている。

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伝統的なメンテナンスフリーのシャフトドライブであり、EVOパラレバーにより、シャフトドライブ特有のスロットル操作に伴うテールリフトが抑えられている。ABS、ASC(トラクションコントロール)は標準装備とされている。

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テールランプ、ウインカーどちらもLEDバルブが採用されている。Rナインティはカスタマイズパーツが多数用意されており、テールセクションも自分好みのスタイルに変更することが可能だ。

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