欧州勢初のEWCチャンピオンに輝く! 次はいよいよMotoGPか!?
- 掲載日/2026年09月21日【トピックス】
- 取材協力/BMW Motorrad Japan 写真・文/小松 男


欧州メーカー初! 40年以上の壁を破り耐久世界王者に!!
2026年9月20日、南仏ポール・リカール・サーキットで行われたシーズン最終戦、ボルドール24時間耐久のフィニッシュラインを、#37のBMW M 1000 RRがトップで駆け抜けた。ライダーはマイケル・ファン・デル・マーク、マーカス・ライターベルガー、スティーブン・オデンダール。チームマネージャーはヴェルナー・ダーメン。この一戦をもって、BMWモトラッド・ワールドエンデュランスチームは、EWC(FIM世界耐久選手権)のワールドチャンピオンに輝いた。
ここで強調したい。これは「欧州メーカーとして史上初」だ。EWCのタイトルは、長らく日本メーカーの独壇場だった。ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキ。1970年代からこの世界を耕してきたのは日本勢だ。欧州のブランドは、長らく挑戦者でしかなかった。

WSBK(FIMスーパーバイク世界選手権)のタイトルは、欧州メーカーも獲得してきた。ドゥカティやアプリリアも頂点に立っている。だがEWCは違う。長い時間と距離を戦い抜く、つまり信頼性も求められる勝負は、日本メーカーのホームグラウンドだった。そこに欧州のメーカーが初めて名を刻んだ。バイク好きなら、誰だって鳥肌が立つ話だ。
BMWモトラッドが本格的に参戦を開始したのは2019年。まだ「若いブランド」である。その若者が、40年以上かけて積み上げられた壁を、ついに越えたのだ。M 1000 RRは、EWCという極限のステージでその真価を証明したのだ。

昨年はゴール目前で夢が消えた。その借りを、同じ場所で返した。
実は一年前、2025年のボルドール24時間耐久で、BMWモトラッドチームはゴールを目前にマシンが技術的トラブルに見舞われ、手の中にあったタイトルがこぼれ落ちた。あの日の悔しさが、2026年シーズンの全員を前に進めた。昨年は失望の涙、今年は歓喜の涙。同じ土地で、その涙の色が変わった。
今季の戦いは、一本調子ではなかった。開幕のル・マン24時間ではトップを走りながら後退し、ポイントを落とした。だが続くスパ8時間で勝利をもぎ取る。第3戦の鈴鹿8時間では3位。この3位が、のちに効いてくる。最終戦を前に、首位ヤマハ(YART)との差は19ポイント。逆転には、最大得点を拾うしかない。
ボルドール24時間耐久でのBMWモトラッドチームは、完璧だった。ファン・デル・マークが予選最速タイムをたたき出した。そこからポールポジションで5点、8時間と16時間の首位通過で10点、そして勝利で40点。ピットワークもミスなく、マシンは速く、そして燃費が良かった。ライバルより少ないピット回数でまとめ、その差がそのまま勝敗を分けた。結果、タイトル争いは158対154。わずか4点差。昨年の悔しさを、同じ場所で返してみせたのだ。

WSBKでの活躍、そしてEWCと鈴鹿で示した結果。点が、線になってゆく。
今回の快挙は、単発的なサプライズというものではない。BMWモトラッドのロードレースは、ここ数年で確実に階段を上がってきた。
WSBKでは、トプラク・ラズガットリオグルを擁して2024年と2025年に2年連続チャンピオン。圧倒的な速さでタイトルを獲得したトプラクは、2026年にMotoGPへの移籍を果たした。BMWが育てた星が、次のステージへ進んだ。
WSBKで勝ち、鈴鹿8時間耐久で表彰台に上がり、そしてEWCの年間チャンピオンに輝いた。これらの成果が、一本の線につながったのだ。BMWモトラッドは、ロードレース界で「結果を残すブランド」に変わった。そしてその線は、これから先に続くことになる。

BMWモトラッドの現在の経営陣はロードレースが好きだ!
ボルドールの舞台で、もうひとつ触れておきたいチームがある。日本から参戦したオートレース宇部レーシングチームだ。
2026年シーズンでは、彼らは日本初のBMWモトラッド・モータースポーツ公式チームとして、EWCにフル参戦している。マシンはもちろんBMW M 1000 RR。ボルドールでは、なんと予選2位を獲得し、日本のプライベートチームの底力を見せつけた。レースではリタイアという結果になったが、十分に存在感を示し、世界の舞台でBMWモトラッドのポテンシャルを遺憾なく発揮した。
では、その先に何があるのか。
私は先日、白馬で開かれたモトラッドデイズの前夜、BMW本社から来日した副社長らを囲む会食に同席した。そこでBMWモトラッドのスタッフが、こう漏らした。「今の経営陣は、ロードレースが好きなんですよ」。
この言葉は重い。稼ぎ頭のGS、お家芸のツアラーは、これからも当然やる。だが同時に、スーパーバイクに本気で力を入れていくという意思表示だと私は受け取った。実際、S1000RRのセールスも好調だという。ロードレースでの成功が、商品力に直結している。

初代S1000RRが登場した2009年、BMWモトラッド初のスーパーバイクの誕生は業界を震撼させた。それは公道での速さとレースでの可能性を、同時に示した一台だった。当時BMWモトラッド専門誌を手掛けていた私は、このBMWモトラッドがロードレースの頂点に立つ未来を想像していた。あの頃は夢物語だった。だが今、WSBK2連覇、鈴鹿の表彰台、そして耐久の世界一。想像していた未来が、いま目の前で動いている。
現在BMWモトラッドを率いるマルクス・フラッシュCEOは、BMW Mブランドを率いた人物だ。その彼の視線はロードレースに向いており、MotoGP参戦についても、「将来的な選択肢として排除しない」と繰り返してきた。ただし一方で、参戦には莫大なコストがかかるという現実も、認めている。
だが、それでもだ。その流れの先にあるのは、いよいよMotoGP参戦ということに違いない。今回EWCでチャンピオンに輝いた実績や、経営陣が熱意を持ちレースを愛していることなど、すべてが、ひとつの方向を向き始めている。
歴史を振り返れば、BMWモトラッドが抱くロードレースへの情熱は、決して新しいものではない。1920年代からレースに参戦し、1930年代にはスーパーチャージドのボクサーで世界を驚かせた。特に1939年、ドイツのエース、ゲオルグ・マイヤーがBMW 500コンプレッサーでマン島TTのシニアクラスを制覇したことは有名な話で、これは非英国勢として初めての優勝だった。
それから長い年月が経った今、MotoGP参戦の条件は、静かに、しかし確実に揃いつつある。BMWモトラッドのロードレースの物語は、これからが本番なのだ。
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