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BMW純正ヘルメット50年 安全思想と進化の軌跡

  • 掲載日/2026年05月11日【トピックス】
  • 写真/BMW Motorrad 文/小松 男
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1975年、BMWモトラッドは初の純正フルフェイスヘルメットを世に送り出した。それから50年――。現在では当たり前となった静粛性やエアロダイナミクス、ベンチレーション、通信機能、さらには衝撃吸収性能に至るまで、BMWは常に“ライダーを守る”という思想を軸にヘルメット開発を続けてきた。特にシステムヘルメットは、多くのBMWファンにとって憧れの存在だったはずだ。この記事を書く私自身、BMWモトラッドに乗り始めた頃、あの独特の機能美と先進感に強く惹かれた記憶がある。今回50周年を迎えたBMW純正ヘルメットの歴史を振り返ると、そこには単なる装備品ではなく、“安全哲学そのもの”が詰め込まれていることが分かる。

「守る」を追求した原点

BMWモトラッドというブランドを語るうえで欠かせないのが、“安全性への執念”とも言える開発思想だ。高性能エンジンや先進電子制御、長距離ツーリング性能などに注目が集まりがちだが、その根底には常に「ライダーをいかに安全に目的地へ届けるか」という考え方が存在している。

その思想を象徴する存在のひとつが、純正ヘルメットである。

1975年に登場した最初のBMW純正フルフェイスヘルメットは、当時としては極めて先進的な製品だった。BMWはドイツのヘルメットメーカー「Römer」と協力し、軽量かつ高い安全性を持つグラスファイバー製ヘルメットを開発。重量は約1400gと軽量で、ダブルロック式の固定機構、高品質なレザー内装、広い視界、曇りや風の巻き込みに配慮した設計など、現在のツーリングヘルメットにつながる要素がすでに盛り込まれていた。

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特に印象的なのは、“視認性”へのこだわりだ。反射素材を採用し、夜間や悪天候での被視認性向上まで考えられていた。単純に「転倒時に頭を守る道具」としてではなく、“事故そのものを防ぐ装備”として設計されていたのである。

この時代、まだバイク用ヘルメットは「被っていればOK」という感覚が強かった。しかしBMWはすでに、快適性や空力性能、ライダー疲労低減まで視野に入れていた。つまりBMW純正ヘルメットの歴史とは、“ライダー保護の総合技術”を追求してきた歴史でもあるのだ。

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システムヘルメットという衝撃

BMW純正ヘルメットを語るうえで、やはり外せないのが1981年に登場した「BMW System Helmet I」だろう。

現在ではフリップアップヘルメットは珍しくない。しかし当時、チンガードが開閉できるシステムヘルメットは極めて革新的な存在だった。

しかもBMWは、単に利便性だけを追求したわけではない。空力性能、静粛性、安全性、快適性を高次元で両立させていた点が凄いのである。

グラスファイバー製シェルによる軽量設計に加え、風洞実験によって磨き上げられたエアロダイナミクスは、高速巡航時の安定感に大きく寄与。風切り音低減にも積極的に取り組んでいた。視界の広さや片手操作可能なシールド機構など、長距離ツーリングを知り尽くしたBMWらしさが随所に感じられる。

そして何より、多くのライダーを魅了したのが、その独特の未来感だった。

筆者がBMWモトラッドに強く惹かれ始めた頃、システムヘルメットはまさに“憧れの装備”だった。GSやRTに乗るライダーが、サービスエリアでチンガードを跳ね上げる姿は本当にスマートだったし、「これが本物のツーリングギアか」と感じたものだ。

1985年登場の「System Helmet II」では、風洞実験によるさらなる改良が施され、エアチャンネルシステムも導入。曇り防止や換気性能が大きく進化した。1989年の「System Helmet III」ではECE規格対応が進み、安全性も強化。1997年の「System Helmet 4」ではカーボンやケブラー素材を積極採用し、軽量化と強度向上を両立していく。

BMWは単にモデルチェンジを繰り返したのではない。ライダーの疲労軽減や集中力維持まで含め、“安全に走り続けるための進化”を積み重ねてきたのである。

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快適性と電子化の進化

2000年代に入ると、BMW純正ヘルメットはさらに大きな進化を遂げる。

2001年登場の「System Helmet 4 EVO」では、新ECE22-05規格へ対応。チンバー部分まで含めた安全試験が行われるようになり、システムヘルメットの安全性は新たなステージへ進んだ。

ベンチレーション性能も大幅向上し、“街中でも曇らない”“長距離でも疲れにくい”というBMWらしい実用性がさらに磨き込まれていく。

さらに同年登場した「System Helmet 4 Elite」では、カーボンファイバーやケブラーを採用した超軽量モデルを展開。重量を約180g軽減しながら、高い安全性を実現した。温度変化に応じて熱を吸収・放出する「Schoeller ComfortTemp素材」を採用するなど、快適性への追求も実にBMWらしい。

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そして2005年の「System Helmet 5」は、時代を一歩先取りした存在だった。

Bluetooth通信システム「WCS1」を搭載し、150km/h超でもライダー同士の通信を可能としたのである。今でこそインカムは一般化しているが、当時としては極めて先進的だった。

さらに静粛性は100km/h時で86dB(A)という高水準を実現。高速道路を長距離巡航するBMWツアラーとの相性は抜群だった。

2009年登場の「System Helmet 6」では、内蔵サンバイザーを無段階調整式へ進化。さらに2013年の「System Helmet 6 EVO」では、静粛性・空力性能・快適性がさらに磨き上げられ、“完成形”とも言える領域へ到達していく。

BMW純正ヘルメットの面白いところは、派手なスペック競争をしているわけではない点だ。数字だけではなく、“実際に長時間走ったときどう感じるか”を徹底的に煮詰めている。

そこには、長距離ツーリング文化を熟知したBMWモトラッドならではの哲学が存在している。

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50年の先に見える未来

そして現在、BMW純正ヘルメットは第8世代へ到達した。

2026年モデルとして登場した「System Helmet 8」と「System Helmet 8 Carbon」は、ECE22-06規格に対応。カーボン・アラミド・グラスファイバー複合素材を採用し、高い安全性と軽量性を両立している。

さらに注目したいのが、「MIPS Integra TX」の採用だ。

これは転倒時に発生する回転衝撃を低減し、脳へのダメージリスク軽減を狙った先進安全技術であり、近年の高性能ヘルメットにおいて重要視されているシステムだ。BMWは単に“規格適合”を目指すのではなく、その先の安全性まで追求している。

もちろん快適性も抜かりない。

Pinlock 200対応シールド、高効率ベンチレーション、改良されたエアロダイナミクス、開閉時でもコンパクトなマルチジョイント構造、通信システム「ConnectedRide COM P1」対応など、まさに現代ツアラーに求められる機能をフル投入している。

興味深いのは、50年経った今もBMWが“ヘルメット単体”で考えていないことだ。

車両側電子制御、安全支援システム、通信機能、ライディングウェアとの連携など、すべてをトータルで捉えている。つまりBMWモトラッドにとってヘルメットとは、“総合安全思想の一部”なのである。

だからこそ、BMW純正ヘルメットには独特の説得力がある。

それは単なるブランドアイテムではない。BMWモトラッドが50年間積み重ねてきた安全哲学そのものなのだ。

おそらく今後、車両側のADAS進化やコネクテッド技術発展に合わせ、ヘルメットもさらに大きく変化していくだろう。しかしその中心にあるのは、これまでと変わらず「ライダーを守る」という思想のはずだ。

BMW純正ヘルメット50周年。その歴史を振り返ると、未来のモーターサイクルライフまでもが少し楽しみに思えてくる。

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