VIRGIN BMW | BMW Motorrad S1000XR (2020) / 速さに快適を求めた万能スーパースポーツだ! 試乗インプレ

BMW Motorrad S1000XR (2020) / 速さに快適を求めた万能スーパースポーツだ!

  • 掲載日/2020年03月31日【試乗インプレ】
  • 取材協力/BMW Motorrad  取材・文/佐川 健太郎 写真/BMW Motorrad

BMW Motorrad S1000XR (2020) / 速さに快適を求めた万能スーパースポーツだ!の画像

BMW S1000XR(2020)

S1000RRから派生したクロスオーバーモデル

BMWの新型S1000XRの海外試乗インプレを開催地のスペインからレポートしたい。 S1000XRは2015年に「アドベンチャー・スポーツ」として新たにBMWのラインナップに加わったニューフェイスだ。アドベンチャーといってもGS系とは異なり、直4エンジン搭載のスーパースポーツS1000RRが開発ベース。「XR」のネームが示すとおりオンとオフのクロスオーバー要素を持った独自の位置付けになっている。最新型ではプラットフォームが2019年登場のニューS1000RRに改められたことで、エンジンと車体も全面刷新された。先に発表された並列2気筒のF900XRとはエンジン形式が異なるものの、BMWの中では同じセグメントに属する上級モデルに当たる。

BMW S1000XR(2020) 特徴

実用域を狙ったエンジン特性と10kgの軽量化

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エンジンは新型RRをベースにしながらも、低中速トルクを持ち上げてピーク回転数を手前にもってくるなど実用域にフォーカスしているのが特徴。その上で目標性能を実現できたことやコスト面も考慮に入れ、XRでは複雑な可変バルブ機構を持つ「シフトカム」は省略されている。スペック的には最高出力165psと従来どおりだが、4~6速をハイギアード化して燃費向上を図るなど高速クルーズに対応。エンジン自体もコンパクト化され単体重量で5kgも軽量化されている。

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また、シャーシも大幅に見直され、新型RR譲りの「フレックスフレーム」を採用。エンジンを剛性部材として活用するレイアウトをさらに強化し、フロントからのインフォメーションを向上。前後サスペンションとホイール、エキゾーストも新設計とすることでトータル車重を従来から10kg減の226kgまで軽量化したことも見逃せないポイントだ。ちなみにBMWの開発陣は「10%のパワーアップより10%の軽量化のほうがより重要」と今回のローンチでも語っていた。

BMW S1000XR(2020) 試乗インプレッション

RRを上回る中速トルク、炸裂する直4パワーに酔いしれる

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第一印象としては従来型とあまり変わっていないように見えるが、ディテールを観察すると新型RRと同じく左右対称のLEDヘッドライトとなり、フロントからリアにかけてのサイドビューに一体感が増し、全体的なシルエットもシャープに磨かれている。ウインドシールドが高くなり、サイレンサーがだいぶコンパクト化されるなど、高速巡行性能と運動性能を上げてきたことがシルエットからも伝わってくる。

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取りまわしは見た目の印象よりは軽いが、サイズ感としては従来と同じでリッタークラスの存在感がある。シート高は欧州STDで840mm(国内仕様は790mm)ということだが、直4エンジンでしかも“足長モデル”であることを考えれば足着きも悪くない。 S1000RR譲りの直4エンジンのパワフルさは従来どおりだが、全体的に回転フィールが滑らかになりスロットルを開けやすくなった感じだ。比較的穏やかに加速する6000rpm辺りまでが常用域といった感じで、BMWらしい図太い直4サウンドと逞しいトルクに浸りながら軽く流すだけで、普段の街乗りやツーリングでは十分に速いし楽しい。

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だが、本領はその上にあって、スロットルを開けて回転数が高まるほどに爆発的に加速していく感覚は4気筒ならでは。7000rpm辺りからトルクが盛り上がり1万rpmを超えてピークに達する胸のすくような上昇感はスーパースポーツの血筋。まさに2段ロケットだ。一方で最大トルクはRRより2000rpm近く低い9250rpmで発揮し、しかもRRを僅かながら上回っている点にも注目したい。つまり、ストリートを主体の味付けになっているということだ。

乗り味はスーパースポーツ的でしかも快適

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ハンドリングも軽快さが増して入力に対するレスポンスも機敏になるなど、よりスーパースポーツ的になった感じ。元々17インチホイールにオンロード用タイヤを履いていることもあるが、正直これでダートを走る雰囲気はない。ジャンル的にもアドベンチャーの括りではあるが、実のところは“快適スーパースポーツ”と言ったほうがしっくりくるだろう。

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そして、高速道路では圧倒的なパワーとシャーシの安定感、上体を伏せずとも快適なウインドプロテクション性能とリラックスできるライディングポジションによって、場所さえ許せば200km/hオーバーでの快適クルーズも可能にしてくれる。たっぷりとストロークのある“長い足”と視線の高さも疲労低減にだいぶ効果的であることも乗ってみて実感した。

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BMWらしく最新電子制御もテンコ盛りで、4種類のライディングモードに連動した電子制御サスペンション(ダイナミックESA)に、進化したコーナリングABS&トラクションコントロール、スリッパークラッチとアップ&ダウン対応のクイックシフターに加え、新型では急激なスロットルオフやシフトダウン時における後輪スリップを抑えて車体安定を保つMSRが新たに導入されるなど、安全・快適な高速移動に必要と思われるアシスト機構がすべて組み込まれている。

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試乗会では滑りやすくアップ&ダウンも多い急峻なワインディングや、高速道路並みの速度レンジで流れるカントリーロードをほぼ丸一日走り詰めだったが、気分爽快に楽しむことができた。もしこれがS1000RRだったら首や腰にけっこうきたかも(笑)。速さに快適さも求める人、メインステージが「サーキット以外」という人にはきっとS1000XRが向いていると思う。オールマイティの意味を最高レベルで実現したマシンだ。

BMW S1000XR(2020) 詳細写真

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エンジンは新型S 1000 RRベースの水冷4気筒DOHC4バルブ999ccから最高出力165PS(121kW)/11,000rpm、最大トルク114Nm/9,250 rpmを発生。カムプロファイルを新設計とし、数値的には従来モデルと同じだが低中速を厚くよりフラットな特性に。内部パーツの改良によりエンジン単体で5kg軽量化されている。

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フレームやスイングアームの形状も変更され、シャーシ全体で2.1kg(スイングアームだけで1.6kg)、ホイールも1.8kg軽量化された。クイックシフター(アップ&ダウン対応)が標準装備でシフトリンケージに組み込まれる。

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左右非対称デザインが特徴だったヘッドライトは、新型RR同様シンメトリーのフルLEDタイプとなった。アイブロウタイプのDRLとバンク角に応じてコーナーの先を照らすアダプティブ・コーナリング・ライトを装備。2段階調整式のスクリーンは50mm高くし防風性をアップ。ハンドル幅は30mm狭くなりレスポンスはクイックに、ラバーマウント化により振動吸収性も向上した。

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フロントは倒立フォークにφ320mmダブルディスクと4Pキャリパーの組み合わせ。リーンアングルセンサーを備えたコーナリング対応の「ABSプロ」を標準装備する。ホイールは前後17インチで新デザインの軽量キャストタイプを採用。

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リアブレーキはφ265mmシングルディスクと1Pフローティングキャリパーの組み合わせ。アンチホッピングクラッチとMSR(エンジンドラッグトルクコントロール)、EBC(エンジンブレーキコントロール)などの安全装置を搭載。意図せぬ後輪スリップなどのリスクを制御してくれる。サイレンサーも小型化されスタイリッシュなデザインに。

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リザーバータンク付きのリアショックは電子制御サスペンション「ダイナミックESA」を装備。各種センサーからの情報を基にダンピングを自動調整しサスペンションの設定を最適化。ライディングモードと連携したデフォルト設定の他、タンデムや荷物搭載時などの荷重に合わせて個別にプリロード調整も可能だ。

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ひと目で大きく変わったのがフロントフェイスだ。センターダクトが新設され先端部もクワガタの顎のようなデザインとなり、左右ヘッドライトもコンパクトなLEDタイプに変更された。3段になった最上部にコーナリングライトが仕込まれている。

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ウインカー類もLED化。スモークレンズに個性的な発光パターンがスタイリッシュだ。

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シート形状もバックレストを大きくとったことによりスホーティなデザインに刷新され、リアシートもストッパー付きに変更。グラブバーもリアキャリアを兼ねたフラットな大型タイプになった。オプションのパニア装着用ステーも装備。

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6.5インチTFTフルカラーディスプレイを標準装備。表示パターンは左手元のマルチコントローラーで簡単に切り換えられる。ライディングモードやDTC(ダイナミックトラクションコントロール)の介入度、ブレーキングでの減速度、リーンアングルなどの情報をリアルタイムで確認できる。

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BMW最新モデルには4輪ではお馴染みのジョグダイヤル式のマルチコントローラーが装備される。ダイナミックESAやクルーズコントロールなども含め、ほとんどの設定は走行中でも左手元で簡単に操作可能だ。

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キーレスシステムによりメインスイッチの起動はボタンをワンプッシュするだけ。給油口の開閉もキーレスだ。スマートキー本体やカード類の収納に便利なフラップ付きの小物入れが付く。

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