VIRGIN BMW | BMW Motorrad C400GT(2020) / すべてカバーできる高性能なコンパクトコミューターをインプレ 試乗インプレ

BMW Motorrad C400GT(2020) / すべてカバーできる高性能なコンパクトコミューターをインプレ

  • 掲載日/2020年03月13日【試乗インプレ】
  • 取材協力/BMW Motorrad  取材・写真・文/小松 男

BMW Motorrad C400GT(2020) / 一台ですべてカバーできる高性能なコンパクトコミューターを試乗インプレの画像

BMW C400GT (2020)
C650GT/スポーツ、Cエボリューションに続いて登場したC400GT/スポーツ。様々なステージでの利便性を追求しつつ、BMW Motorradらしいラグジュアリーな仕上がりとされたコンパクトコミューターだ。

進化と熟成を重ねるCシリーズに
新たな風を吹かせるモデル

今から約20年前のこと、BMW MotorradはC1というモデルを発表した。これは125ccエンジンを搭載したオートマチックコミューターであり、ライダーを包み込むように設計されたシェルフレームや各部にバンパー機能を持たせたおかげで、ヘルメットを着用せずともセーフティーマージンが図られたものであり、クルマにもバイクにも属さない新たなシティコミューターとして誕生した。これがBMW Motorrad製コミューターのスタートラインだと言えるが、チャレンジしすぎたモデルだったこともあり、他と一線を画す立ち位置だったC1は一代限りで姿を消すことになる。

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それから10年以上の月日が経ち、C600スポーツ/C650GTが登場することになる。我々の住む日本ではビッグスクーターブームも落ち着いた後ではあったが、世界の都市部ではまだまだ根強い人気を誇るセグメントであったこともあり、BMW Motorrad的な解釈を元に、ライバルに立ち向かう2台を投入した。C600系はスクーター業界ではもっとも排気量の大きいメガスクーターセグメントで、後発であることを逆手に、あらゆる機能や装備が奢られたこともあり、既存のBMW Motorradオーナー以外にも受け入れられヒットモデルとなる。そして現在はモデルチェンジがなされ熟成が図られている。

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さらに並行して登場したのが、フル電動コミューターのCエボリューションだ。そもそもC600系の開発時にバッテリー搭載も念頭に入れていたこともあるが、業界の先を行く新たな試み、そして実際に乗ってみると性能の高さに、BMW Motorradがコミューターセグメントに対し、本格的に挑んでいることが伺えるものとなっていた。

そして昨年、新たなCシリーズであるC400X/C400GTが追加された。C600系を一回りコンパクトにしたかのようなスタイリングは、コミューターのメインステージとなる市街地において強い武器となることを予感させるものだ。今回は2台ラインアップされるC400のうち、ロングスクリーンやバックレスト付きシートなどを装備するC400GTをテストする。

BMW C400GT (2020-)特徴

アーバンモビリティでありグランツーリズモ
異なるステージをどのように料理するかが肝

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ここまでコミューターという言葉を使用してきているが、BMW Motorradではアーバンモビリティという呼び方をしている。たとえるなら都市部をメインとした移動手段と言ったところか。ただし、そういったセグメントに対してもGTを冠としたモデルを用意するところがなんともBMW Motorradらしいとも思える。そもそもGTはグランツーリズモの頭文字であり、それは地平線のかなたを目指すような長距離を快適に高速移動できることを根底に開発されることが基本だ。長距離移動と込み入った都市部を駆け抜けるアーバンモビリティ。この両極端とも言えるステージを、どのように掛け合わせて料理してきたのかが、そしてすでに熟成している兄弟モデルであるC650GTとの違いを見極めることも、C400GTをテストする上でのポイントになってくる。

そもそもC400X/GTをマーケットに投入することの背景を考えてみたい。長いことボクサーエンジン一本で頑張ってきたBMW Motorradは、環境対策のこともありKシリーズの開発を行う。フラッグシップモデルは1000cc前後、エントリークラスは650~800ccのエンジンが搭載されていた。90年代に入ると650ccシングルエンジンを搭載する後のFシリーズへと続くファンデューロが追加される。これは欧州のライセンスや保険のレギュレーションに沿った排気量で、初心者にも楽しんでもらえるBMW Motorradとして裾野を広げることに成功した。

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その後、GSやRTのヒット、S1000RRやヘリテイジモデル、そしてスクーターモデルなど拡充する形で、幅広いライダー層に対応してきた中で、次の手となったのがコンパクトモデルの追加だ。それは、大手モーターサイクルブランドを持ち、文化が成熟した日本及び欧米ではなく、ビジネスに勢いがあり、さらにレギュレーションなどの関係からコンパクトバイクに対するニーズが高いアジアをはじめとした成長国のライダーにもBMW Motorradを訴求するためだ。よって、ここ数年ではG310系の登場や、今回のC400系の導入が図られている。

日本の免許制度における普通自動二輪免許区分で乗ることができるため、国内のマーケットにおいても起爆剤となる。大型免許を持っていなくてもプレミアムブランドであるBMW Motorradの世界を味わえるのは大きな魅力であるし、それはビギナーやリターンライダーだけでなく、小さいバイクへと乗り換えを考えるエキスパートにも受け入れられることだろう。そもそもコンパクトモデルというのは、日本の道路事情にも良く合っているのである。

BMW C400GT (2020-)試乗インプレッション

具合の良いサイズ感により
誰が乗っても最上の移動道具となる

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C400GTを目の前にして、まず感じたのはデザインの良さだ。フェイスパネルとサイドパネルの繋がりにメリハリがあり、躍動感を持たせつつ、ラグジュアリーな雰囲気を漂わせる。そこには誰の目にもBMW Motorradだと分かる気品が感じられる。

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跨ると上手くサイズをまとめてきたことが分かる。ビッグスクーターの多くは、フレームワークやユーティリティスペース確保、さらにはバンク角の問題などから、シートが高くなりがちなのだが、走行性能をスポイルすることなく足つき性を求められており、それが高い次元ででバランスを保っている。シート、ハンドル、ステップボードの位置関係も秀逸であり、リラックスしたライディングポジションでありながらスポーティな走りも楽しむことができ、この手のスクーターモデルではナンバーワンだと太鼓判を捺す。走り出すと、そのライディングポジションの良さが一段と光る。道の狭い市街地から高速道路、ワインディングまで、最上級と言わせるほどの扱いやすさと乗り心地をもたらしてくれるのだ。

フロント15インチ、リア14インチのタイヤ径からもたらされるハンドリングも良く、何のストレスなく、フルバンクまで一気に寝かせることができる。ただし低速コーナーで寝かし過ぎるとフロントから切れ込むオーバーステア気味な場面もあったが、あえていじめるような走りをしなければ、コーナーリングを心底楽しむことができるので、ついつい遠回りをしたくなる。

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心臓部には349cc水冷単気筒エンジンを搭載、最高出力は34馬力、最大トルクは35Nmだ。アイドリングは1500回転程で、クラッチミートタイミングは3000回転弱といったところ、全開時は7000回転超をキープし加速してゆく。シングルエンジンならではの振動は若干感じられるものの、ジェントルなクラッチワークであり、排気音もなかなか良い音色が作り出されている。これらの部分からはC600系で培ってきたノウハウが活かされていると思えた。

私自身、80年代のスペイシー250やフュージョンをはじめ、これまで様々なビッグスクーターを乗り継いできた一人として、今回のC400GTをテストした結果、やはりビッグスクーターの使い勝手の良さは、一般的なバイクとは違うところにあるということを再認識させられた。一時は石を投げれば当たるほどまで増加したビッグスクーターだが、現在はその数も減少している。そもそも恰好云々の話をする道具というよりも、利便性の高さが求められるものであり、ビッグスクーターの魅力が蘇ってきた。事実、普段ではテスト及び撮影を終えると、すぐに広報車を返却してしまうのだが、その便利さのあまり毎日乗りまわし、期限いっぱいまで借用させていただいた。

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ここで付け加えなくてはならないのは、C400GTだったからということだ。以前C650GTのテストを行った時には、より大きいサイズであることやエンジン特性などから、それほど乗り回すことをしなかった。さらに小排気量スクーターを借りた際には、近所を乗り回すことはしたが、毎日都内と郊外を行ったり来たりするような使い方はしなかった。C400GTのサイズ感、そしてライディングポテンシャル、さらにはグリップ&シートヒーターなどの快適装備類は、最高の移動手段となっているのだ。C650GTとC400GTどちらを選ぶかは、使い方によっても変わってくるかもしれないが、毎日乗るならC400GTの方が私は好みだということだ。

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ひとつだけ、シート下のユーティリティスペースの容量が若干小さいことが気になる。駐車時にはシート下の容量を広げられるフレックスケースというギミックも搭載されているが、走行時には使用できない。普段使っているリュックサックを押し込んで使っていたが、さらなる容量の確保及び形状の再設計を願う。最高のビッグスクーターだからこそ、そう期待させるのである。税込み車両価格92万7000円〜。ちょっと無理しても手元に置いておきたいと感じさせてくれる一台だった。

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BMW C400GT (2020-)詳細写真

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ハンドルの下方にあるスイッチを押すことでシートが開く。ライトが備わっているので、夜間でも使い勝手が良かった。ただし、構造や形状の面から、思った以上に容量が少なく感じたので、トップケースの装着もお薦めしたい。

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フレックスケースというギミックが備わっており、駐車中にはオープンレバーをワンタッチするだけでユーティリティスペースを拡張することができる。このためにヘルメットでもすっぽりと収めることができる。

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厚手のシートや握りやすいグラブバーなど、タンデム走行のこともしっかりと考えられている。乗車位置のバランスも良いため、タンデム時であっても、大きくライディングフィールがスポイルされることもない。

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チューブLEDが採用されたテールランプ。BMWのキドニーグリルを連想させるデザインとなっている。高い視認性を確保している上に、クリアパーツを上手く組み合わせることで高級感を持たせている。

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ハンドルの下部には左右にポケットが用意されており、右ポケットにはETC本体が収められている。ワンキーシステムが採用されているので、イグニッションスイッチを長押しすることでハンドル及びポケット類すべてがロックされる。

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フルカラー液晶表示のインストゥルメンタルパネル。通常はスピードメーターを表示し、写真のような車両状態画面や、ナビゲーション(オプション)などはハンドルのジョグダイヤルを使い表示することができる。スマートフォンとの連動も可能だ。

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BMW Motorradキーレスシステムを採用した給油口。エンジン停止時にワイヤレスキー本体を持っていることで開錠することができる。シート前方にセットされているので、乗車したまま給油することもできた。

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349cc単気筒エンジンに、遠心式乾式クラッチとCVTミッションを組み合わせている。ビッグスクーターとしては定石的なものだが、絶妙なセッティングにより、最適なパフォーマンスを発揮する。

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車ライダーズシートは大型バックレストを装備する他、シートヒーターも備わっている。シートの表皮や内部素材も良く、腰を落ち着かせてライディングできるため、非常に快適かつ長時間でも疲れにくい。

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フルLEDヘッドランプは明るく、照射角も広いため、夜道のライディングで心強い。左右非対称ヘッドライトが採用されたC400Xがアクティブなイメージなのに対し、C400GTは落ち着いたラグジュアリーな雰囲気を漂わせる。

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フロントはストローク量110mmのφ35mmテレスコピックフォークに、15インチのタイヤを組み合わせる。リアタイヤは14インチで、サイズ幅ともにバランスが良く、ハンドリングは秀逸。ABS及びASCも標準で装備され、安全面もカバーしている。

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大型のフロントスクリーンを装備する。C650GTが電動で上下するのに対し、固定式とされているが、高い整流及び防風性能を誇り、ライダーへの走行風はほぼカットされる。

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足を投げ出しても、下に揃えておいても落ち着きの良いフットボード。自由度が高いため、好みの位置に足を置くことができる。ロングツーリングでもショートライドでも快適そのもの。

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車体右側にはマフラーがセットされている。ツインショックタイプのリアサスペンションは動きが良く、リアタイヤのトラクション状況をライダーへ的確にインフォメーションしてくれる。

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BMW Motorradのアイデンティティ的装備となったジョグスイッチにより、インストゥルメンタルパネルの表示や機能を操作する。なお右手側にはセルボタンのほかに、グリップ/シートヒータースイッチが備わっている。

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