【BMW Motorrad 新型 R1300R 海外試乗記】軽くて速い!“最速ボクサー”0-100km/h 3.25秒の衝撃
- 掲載日/2025年07月14日【試乗インプレ】
- 取材協力・写真/BMW Motorrad 取材・文/佐川 健太郎 衣装協力/KUSHITANI
BMW Motorrad R 1300 R(2025) 特徴
全部盛りで“走り”を研ぎ澄ましたロードスター
試乗会の冒頭、BMW開発責任者は語った──「ツーリング性能や快適性といったBMWのコアバリューはそのままに、ダイナミクスに徹底的にフォーカスした」。つまり、運動性能をとことん突き詰めたというわけだ。“走り”に対する並々ならぬこだわりが感じられる。
注目のパワーユニットは、R1300GS譲りの最高出力145psを誇るハイパワー仕様。心臓部からしてスポーツ志向全開だ。車体まわりも刷新されており、完全新設計のスチール製メインフレームとアルミ製サブフレームを組み合わせ、剛性バランスを最適化。さらに足まわりには、新開発の倒立フォークと進化型EVOパラレバーを採用し、コーナリング性能を大きく引き上げている。
サスペンションも注目の的だ。オプション設定されるのは、世界初となるスプリングレート可変機構付き「DSA(ダイナミック・サスペンション・アジャストメント)」。これは荷重や路面状況に応じて、減衰力とバネの硬さを自動で調整してくれるという優れモノで、ツーリングからスポーツライドまで幅広く対応するという。さらにライディングモードは標準で3種類。オプションの「ライディングモード・プロ」を選べば、「ダイナミック」や「ダイナミックPRO」といったよりアグレッシブな設定も選択できる。また、エンジンブレーキ制御を担うMSRも全車標準装備と頼もしい限りだ。
R1300GSAでも話題となったクラッチ操作が不要な「オートマチック・シフト・アシスタント(ASA)」もオプションで設定。マニュアルとオートの切り替えが可能で、シーンに応じたスマートなギアチェンジが楽しめる。そのほか、LEDヘッドライトや前後連動コーナリングABS は標準装備。オプションでアダプティブ・コーナリングライト、ACC(アクティブ・クルーズ・コントロール)、前方衝突警告など最新の安全装備も抜かりない。さらに、新設計のラゲッジシステムやシートヒーターなど快適装備も盛り込み、スポーツモデルでありながらツアラーとしての使い勝手にも本気で取り組んだ意欲作となっている。
BMW Motorrad R 1300 R(2025)試乗インプレッション
回転を上げる間もなく一気に加速していく
スタイリングは従来の丸みを帯びたフォルムから一新。シャープで引き締まったアスリート体型へと生まれ変わった。実車を前にすると、そのスパルタンな雰囲気に惹き込まれる。跨がればシートはかなり低めで、従来型よりなんと30㎜ダウン(790㎜)だとか。ハンドルは従来よりも少し低く前寄りにセットされ、自然と軽い前傾ポジションに。見た目だけでなく、ライディングフォームもだいぶ“走り”にシフトしてきた。
今回試乗したのは4タイプあるバリエーションの中でも、最も攻めた仕様となる「パフォーマンス」。スポーツサスペンションに軽量ホイール、スポーツタイヤという本気の足まわりを標準装備し、乗る前からヤル気が伝わってくる。
搭載されるのは、R1300RTやR1300GSと共通の水冷ボクサーツイン。走り出しは軽く流しながら、低重心かつコロッと横に転がるようにリーンする、ボクサー+シャフト駆動の独特なフィールに体を慣らしていく。そしてライディングモードを「ダイナミックPRO」に切り替えた瞬間──まるでロケットに火を入れたかのような猛烈な加速を見せる。
Rシリーズ最軽量のコンパクトボディに怒涛の中速トルクが炸裂。回転を上げる間もなく、一気に速度が伸びていく。ちなみに0-100km/h加速は、わずか3.25秒とスーパーカー並みの俊足である。排気音は控えめながらスピードメーターを見て驚く。体感速度よりはるかに速いのだ。
ワインディングでも俊敏さが光る。コーナーへの進入からバンキング、そして立ち上がりまで軽快そのもの。車体を前後に貫くクランクとドライブシャフトを中心に、スッとリーンするボクサー特有の挙動は健在で、両脇に張り出したシリンダーの存在を忘れるほど軽やかにアスファルトを舞う。
電制サスが解き放つ新次元のコーナリング
とりわけ注目すべきは、世界初の「可変スプリングレートサスペンション」だ。これはオプションのDSA(ダイナミック・サスペンション・アジャストメント)に含まれる最新技術で、疑似的にバネレートを変化させられるという驚きの技!
通常走行では従来のダイナミックESAとの差は少ないものの、モードを「ダイナミックPRO」に切り替えると乗り味が一変。前後サスが連動してシャキッと踏ん張り、車高もわずかにアップ。これにより、今までプリロード調整ではカバーしきれなかったバンプ通過時の底付きや、高速コーナーでの安定性が大きく向上する。複雑なシステムなので、言葉ではなかなか説明しきれないが、とにかく凄いことだけは乗っていて分かった。
さらに、強力無比な前後連動ブレーキやコーナリング対応のABS&トラコンなどの電子デバイスが縁の下でしっかりと走りをサポートしてくれるお陰で、安心してスポーツライディングを楽しむことができた。結果、リラックスできるので疲労も少ない。
もちろん、標準モードに戻せば一瞬でキャラクターは平和主義者に。しなやかなサスペンションと穏やかな出力特性で、街中をゆったりと流しても実に快適だ。「走り」を追求しながらも日常での使いやすさと快適性を犠牲にしない──そんなBMWらしい美学がこの新型R1300Rにも確かに息づいていることを知り、あらためて嬉しく思ったのだった。
BMW Motorrad R 1300 R(2025)詳細写真
R1300GSやR1300Rと共通スペックとなる最高出力145ps/7750rpm、最大トルク149N・m/6500rpmを発揮する、水冷4ストローク水平対向2気筒DOHC 4バルブ排気量1300cc、通称「水冷ボクサー」エンジンを搭載。車体フォルムは「ノーズダウン&テールアップ」を基本にエアフローを視覚化したデザインとなっている。
駆動系はRシリーズ定番のシャフトドライブにEVOテレレバーの組み合わせ。長くなった片持ち式スイングアームにより路面追従性もアップ。車体の挙動変化も穏やかに、扱いやすくなっている。
ダイナミックな八角形デザインのDRL付きフルLEDヘッドライトを標準装備。オプションの「ヘッドライトPRO」では速度と車体の傾きに応じてライトを照射する角度と距離を調整する機能が付く。上部にはアシスタンスシステムの要となるレーダーセンサーを装備。
「パフォーマンス」仕様は質感の高いバーエンドミラーを採用。ベーシックモデルは一般的なハンドルバーマウントのミラーを装備する。
燃料タンク容量は17L。WMTCモードで約350km走れる計算だ。センター部分は硬質スポンジのような独特の触覚の素材で、タンクからシート、テールまでが連続したような視覚的デザイン効果を生み出している。
「パフォーマンス」仕様はスポーツシートを装着。シート高は標準で790㎜と従来のR1250Rより30㎜も低くなった。写真はブランドロゴ入りのレッドラインがお洒落なスポーツパッセンジャーシート。オプションでシートヒーターも用意される。
フロントブレーキにはφ320mmディスクとラジアルマウント4Pキャリパーをダブルで装備。コーナリング対応のフルインテグラルABS付きで安全面も万全だ。タイヤサイズは前後それぞれ120/70-17、190/55ZR 17。
従来比で1.4kg以上軽量化された中空スポークデザインの新型アルミホイールにより制動力とハンドリングのレスポンスを向上。タイヤは公道からサーキットまでカバーするダンロップのSPORTSMART(スポーツスマート)を標準装着。
「パフォーマンス」仕様には高品質なビレットタイプのステップキットが装着される。バーとペグの位置もそれぞれ可変式。カッチリした操作感やステップワークのしやすさがスポーツライドでは大きな魅力だ。
R1300GSでもお馴染みの6.5インチのフルカラーTFTディスプレイを標準装備。左手元のスイッチとマルチコントローラーにより、ライドモード切り替えやDSAその他セッティング、車両情報やコネクティビティに簡単にアクセスできる。
左手元のスイッチボックスは新型Rシリーズ共通デザインなので、慣れてしまえばRTでもGSでもすぐに順応できるはず。ASA仕様の場合はさらにMT/AT切り替えスイッチが付く。
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