VIRGIN BMW | 第3回 駆動系 F800S・F800ST編

第3回 駆動系

  • 掲載日/2012年05月28日【F800S・F800ST編】
  • 執筆/モトラッド阪神 田中 建次
    このコンテンツは BMW BIKES Vol.37 (発行:2007.01.11)「ディーラーメカニックが解説する F800S / ST テクニカルディテール」掲載の記事を引用しています。

F800S・F800ST分解レポートの画像

BMW 初のパラレルツインエンジン。一見して従来のFシリーズとは異なるキャラクター、サプライズともいえるプライスタグなど、各方面から注目の F800 シリーズが到着。そのメカニズムについて、メンテナンス方法も交えて世界一詳しく紹介しよう。

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クラッチレバー根元のダイヤルはレバー位置と引きしろの調整用。遊びの調整はレリーズ側で行う。
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クラッチの駆動はケーブル式。操作は非常に軽く、好感が持てる。なお、クラッチの設計とレバー比が同じなら、油圧式でもケーブル式でも操作力に違いはない。ケーブル式はケーブルの摩擦抵抗の分だけ(わずかだが)操作が重いのだが、一旦握ったらホールドが軽いというメリットがある。油圧式のメリットはケーブル式のような取り回しの制約が無い (油圧の配管はいかようにも曲げられる) のでスペース効率的に有利。デメリットはコストが高く、重量が重いこと。
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クラッチ側のエンジンカバー。曲線的なふくらみは、補強とともに F800 系全体のデザインテーマでもある。
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F650 系や K1200 系と同じ湿式多板式クラッチ。世間では一般的な構造である。枚数は9枚のペアだから F650 より2枚多い。
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ハウジングごとクラッチを取り出して、各部のクリアランスを測定中。
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ミッションは6速。ギヤレシオは1速から 2.462-1,750-1.381-1,174-1.042-0,960 と、6速がオーバードライブ設定。全体にクロス気味。一次減速比は 1:1.93。
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排気量やエンジンパワーの割に、ミッションギアはかなり厚め。タンデムやフル積載等の高荷重を考慮したものだろう。騒音対策上はもっと薄く作りたいはず。
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駆動系は F650CS から引き継いだベルトドライブである。撮影とチェックのためにカバーを外しているが、ほぼフルカバーされ、異物の噛みこみを防いでいる。
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噛み込みの可能性がほとんど無い (隙間が無い) 最後部だけはカバーされず、ベルトの状態をチェックできるようになっている。
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ドライブプーリーはスチール製で、ガスニトロ浸炭加工で錆を防ぎつつ耐磨耗強度を上げている。歯数は 34。
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ドリブンプーリーはステンレス製。歯数は 80。二次減速比は 1:2.353。ハブ内には4個のゴムダンパーが入っている。
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幅は F650CS の 25ミリに対して 34ミリと広い。ベルトドライブの特徴をあげていこう。飛び散ったオイルなどで汚れない。給油不要で調整・交換インターバルが長いので、メインテナンスコストが低い。システム全体が軽量でショック吸収性が高く、特にツインやシングルエンジンの不要なパルスを吸収できるメリットがある。走行騒音が低い。欠点は (シャフト程ではないが)、チェーンと比べると初期コストが高い。チェーンほど極端に曲げることができないので、プーリーの直径が大きく、ベルト幅もチェーンよりは広い。したがってスペースをとってしまうのだ。現在ベルトドライブを採用しているのが、BMW とハーレーダビッドソンだけなのは興味深いことだ。エンジンのカムシャフト駆動に採用しているのはドゥカティ。四輪エンジンでは主流なのだが二輪では少ないのが不思議。
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このツールは F800 専用 (F650 系とも違う)。ベルトの張りを点検する。
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カバーを外し、ツールを広げてベルトに挟み込み、ツールの数字を読む。初回点検以降は 10,000 キロごとに点検または調整。40,000 キロごとに交換する。
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エキセントリックアジャスターでホイールハブ全体を動かして調整する。かなりシビアなのでアマチュアは手を出さない方がいい。

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