VIRGIN BMW | 欧州二輪業界の”羅針盤”となる男 BMW Motorradマルクス・フラッシュCEO トピックス

欧州二輪業界の”羅針盤”となる男 BMW Motorradマルクス・フラッシュCEO

  • 掲載日/2026年07月05日【トピックス】
  • 写真/BMW Motorrad 文/小松 男
欧州二輪業界の

BMW Motorrad CEOのマルクス・フラッシュ氏が、欧州二輪工業会(ACEM)の新会長に就任した。メーカー各社が持ち回りで務めるポストとはいえ、今回の人事は単なる役員交代では終わらない意味を持つ。電動化や環境規制、都市交通の変化など、二輪業界を取り巻く環境は今、大きな転換点を迎えているからだ。そんなタイミングで欧州二輪業界の舵取りを託されたのが、BMW Motorradを力強くけん引してきたマルクス・フラッシュ氏だった。その背景をひも解いていくと、BMW Motorradが目指す未来と、欧州全体のモーターサイクル文化が進もうとしている方向性が見えてくる。

欧州二輪業界を代表する立場へ ACEM会長就任が意味するもの

2026年7月1日、BMW Motorrad CEOのマルクス・フラッシュ(Markus Flasch)氏は、欧州二輪工業会(ACEM)の会長へ就任した。任期は2年間。就任はミュンヘンのBMW Weltで開催された総会で決定し、前会長であるピアッジオグループCEOのミケーレ・コラニーノ氏からバトンを受け継いだ。副会長にはドゥカティCEOのクラウディオ・ドメニカーリ氏やヤマハ・モーター・ヨーロッパのクレマン・ヴィレ氏らが名を連ねており、欧州主要メーカーが一体となって業界の方向性を議論する体制となっている。

ACEMは日本ではあまり耳にする機会がない組織だが、その役割は極めて大きい。欧州委員会や各国政府に対し、二輪業界としての意見を取りまとめ、環境規制や安全基準、都市交通政策などについて提言を行う、いわば欧州二輪業界の代表機関である。

今回の発表でも、フラッシュ氏は「二輪車は決してニッチな存在ではなく、欧州が抱えるモビリティ課題を解決する一翼を担う存在だ」と強調している。

その象徴とも言えるのが、「Lカテゴリー車両」という言葉だ。これは欧州で用いられている車両区分で、原付やスクーターをはじめとする二輪車、三輪車、さらには超小型四輪車までを含むカテゴリーを指す。単なる趣味の乗り物ではなく、都市交通を支える移動手段として社会インフラの一部に位置付けようという考え方が、今回の発表の根底にはある。

興味深いのは、ACEMが掲げる重点施策が「脱炭素」だけではないことだ。リリースでは、都市交通へのLカテゴリー車両の統合、産業競争力を維持しながらのカーボンニュートラル化、そしてツーリングやスポーツといったモーターサイクル文化の振興という三本柱が示されている。

つまり、「環境規制に対応する業界団体」ではなく、「二輪車の価値そのものを社会へ発信する団体」として存在感を高めようとしているのである。

BMW Motorradが示す未来像 フラッシュ氏だからこそ期待される役割

では、なぜ今、マルクス・フラッシュ氏なのか。

彼はBMW Mブランドを率いた経験を持ち、その後BMW Motorrad CEOへ就任した経歴を持つ。就任以降は、新型R 1300 GSをはじめとする主力モデルの展開や、新しいコンセプトモデルの積極的な発信など、ブランドの存在感を一段と高めてきた。また、MotoGP参戦の可能性についても「将来的な選択肢として排除しない」という姿勢を示すなど、BMW Motorradをよりスポーティかつ魅力的なブランドへ押し上げようという意思が各所で見て取れる。

その一方で、今回のACEM会長としてのコメントには、環境性能だけを追い求める姿勢は見られない。「持続可能性を実現しながらも、ライディングを身近で、安全で、楽しいものとして維持していく」という考え方を掲げ、さらに規制についても「技術中立」の考え方を支持すると明言している。

この「技術中立」という考え方も重要だ。電動化だけを唯一の正解とするのではなく、内燃機関の高効率化や代替燃料など、多様な技術によってカーボンニュートラルを目指すという現在の欧州産業界におけるスタンスである。

BMW Motorradも近年は電動コミューターを展開する一方で、ボクサーツインや並列ツインといった内燃機関の開発も継続している。さらに水素やe-fuelなど、新たな可能性も含めて研究開発を続けており、フラッシュ氏の発言は、そうしたBMWグループ全体の考え方とも一致している。

もちろん、ACEM会長は特定メーカーの利益を代弁する立場ではない。しかし、業界全体が「走る楽しさ」と「環境対応」の両立を目指すべきだという姿勢は、まさに現在のBMW Motorradが商品戦略で示している方向性とも重なる。

だからこそ今回の就任は、BMW Motorradにとってのニュースにとどまらない。欧州の二輪業界が、環境性能だけではなく、文化や趣味性、そして産業としての競争力まで含めた「モーターサイクルの未来」をどのように描いていくのか。その議論をリードする人物として、マルクス・フラッシュ氏の2年間は大きな注目を集めることになりそうだ。

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