VIRGIN BMW | R1100S(1998-) 試乗インプレ

R1100S(1998-)

  • 掲載日/2010年06月26日【試乗インプレ】
  • 取材協力/Motorrad Keiyo  写真/山下 剛  文/小松 男、山下 剛
    この記事はBMW BIKES Vol.51掲載の記事を再編集したものです
R1100Sの画像

BMW Motorrad R1100S

スポーツモデルの新境地を切り開いた
唯一無二の“S”

1973年に登場した R90S から 25 年の月日を経て、再度“S”の称号を与えられたボクサーモデル R1100S 。デビッド・ロブによって手がけられた流麗なボディライン、空油冷ボクサーモデル初となるメインフレームの採用、そして 98 馬力もの高出力。その登場は、多くのビーマーを驚かせるものだった。

BMW は R1100S の発表時、この“S”という符号に関して“スポーツ”ではなく“スポーティ”なボクサーを意味するとアナウンスしている。それは、あくまでロングツーリングなどの使い方も踏まえ、公道でスポーツ走行を気持ちよく楽しむために作り上げたということである。実際、他メーカーが世に送り出す絶対的パフォーマンスを売りにするスーパースポーツモデルなどとは一線を画す。パニアケースの設定や、タンデム時の快適さからもそれは感じられる。

とはいえ、モト GP と併催されていたワンメイクレースの『ボクサーカップ』では、サーキットランでのポテンシャルを証明していた実績もあるうえ、他のボクサーと比べ、高回転まで一気に吹け上がるエンジン特性は、多くのライダーに新しいスポーツバイクのあり方を発見させた。

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後継モデルにあたる R1200S は、さらにスポーツ性能を突き詰めたボクサーとなっており、ツーリング指向が弱められてきた。その後、DNAはピュアスポーツボクサーである HP2 スポーツへと受け継がれていった。そう考えてみると、長距離走行で疲れにくく、なおかつスポーティな面もしっかりと併せ持つという捉え方をするならば、歴代ボクサーの中ではこの R1100S が、実質一番バランスが取れていたといえる。

中古流通は徐々に減ってきているものの、コンスタントに市場に出回っている。現在流通しているものは49万8,000円(1998年、5万1,019km)~160万6,500円(2003年、2000km)と幅が広いので、自分のお財布事情と車両の状態からバランスを取って探すことが出来るようになっている。

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スポーティな見た目とは裏腹に、ハンドルは高くステップが低いため、意外と上体が起きるポジション。しかし他のセグメントに比べれば、前傾している部類に入る。長時間の乗車でも疲れにくい絶妙なセッティングとなっている。ライダーは身長178cm、体重73kg。

R1100Sの詳細

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一見一灯だが、左右非対称のライトを内蔵。その下は、四輪 BMW のキドニーグリルからインスパイアされたと思われるデザイン。
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ウインドシールドは歪みも無く、防風性能も高いため、ハイウェイランも快適にこなすことが出来る。
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シンプルだが高級感漂うメッキリムが目を引く2連アナログメーター。速度計のほうがやや大きい。
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冷間時に始動するときなどに使う、アイドルアップスイッチ。エンジンを的確に始動し、走りながら暖気をする。
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最近のモデルでは減りつつある、左右振り分けウィンカーを採用。BMW らしく、グリップヒーターも装備する。
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フロントフェンダーは、カーボンと樹脂のコンビネーションタイプ。ちなみにリアのインナーフェンダーは装備しない。
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フロントマスクの下を覗くとテレレバーが見える。スポーツパッケージ(オプション)は前後共に長いサスペンションを装備。
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日本に入ってきた R1100S は基本的にはすべてインテグラル ABS が装備されている。ABS レスも工場発注が出来た。
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燃料給油口が中央よりやや右側にオフセットされている。カウルを外すとアルミタンクが顔を出す。
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ステアリングヘッドの後方に、フロントサスペンションの圧側減衰ノブがついている。セッティング出しが楽しい。
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コインひとつで着脱が可能なシングルシートカバー。今見るとややのっぺりした感じがするが、スポーティだ。
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シングルシートカバーをはずしたところ。タンデムグリップが顔を出す。サイレンサーからの熱対策も行ってある。
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シートを外すと、四輪 BMW のようにピースごとに分けられた工具の台座が出てくる。今では考えられない充実ぶり。
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さらに工具収納ベースを外すと、パンク修理キットが出てくる。こういったところはまさしくツーリングバイク。
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後発の F650GS も同様だったように、リアシート下に2本のサイレンサーをセットするのは当時のトレンドのデザインだった。
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あると便利な、オプションのパニアケース(片側4万2,210円)。もともとボディにステーが付いている。
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R1100RS から採用されている R259 型エンジンの中で、最もパワフルな 98 馬力をマークする。後期型はツインスパーク。
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程よいスポーツポジションを実現するステップ。リアブレーキのコントロール性は非常に高い。
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タンデムステップには純正パニアケースの下部を支えるステーが伸びている。タンデムツーリングも難なくこなす。
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伝統のシャフトドライブ。パラレバーはメインフレームに接続。スポーツ走行にも十分耐える。
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リアサスペンションの下部には圧側減衰調整がついている。いろいろと触って走ると違いがわかるので楽しい。
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リアサスペンションのプリロードは、タンデムや荷物の積載などに合わせて簡単に調整が可能。
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四輪 BMW のアルミホイールに似たデザインの5本スポークホイール。リアは 5.50-17 と、オプションで 5.50-17 がある。
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ヘラーソケットも装備され、電源を取ることができる。冬期ツーリングではヒートジャケットなどが使えて重宝する。
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ゴムカバーが外れている部分は、バッテリーが上がったときなどにジャンプするポイント。ミッションは6速。
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メインフレームを持ったことで他のボクサーモデルと比べ、捻り剛性が格段に向上。満タン走行可能状態で 229kg という軽量さで、ワインディングを気持ちよく走れる。
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2003年に欧州ではじまったワンメイクレース『ボクサーカップ』は、毎回白熱したレース展開で見るものを魅了。サスペンション強化などを施したボクサーカップレプリカも発売された。

編集部インプレッション

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言い切ってしまおう、R1100S はジョギングだ ●山下 剛(BMW BIKES 編集部)

ハンドル位置が高ければ、ステップも低い。シートも幅広だからどっしりと座ってしまう。“やや前傾”なポジションにおさまりクラッチをつないで走り出せば、重さは消えるけれど決して軽くはない。スポーツモデルだからと身構えていると、拍子抜けしてしまう。排気量なりの速さはあるし遅くはないけど、速いオートバイじゃない。

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「そんな言い方しないでくださいな。リラックス、リラックス。そう気張ることなく、愉しくいきましょうよ、楽にね」?そんなことをこのオートバイは語りかけてくるようだ。そうなんだよな、ここは公道だし、誰かと速さを競うわけじゃない。そもそも腕前もないんだから、スパルタンな性能のバイクなんて翻弄されるだけだ。

はたと考える。スポーツって何だ? 人より速く走ること? それはスポーツというよりレースだ。スポーツは代理戦争だという意見もあるから、誰かより優れていることを示したり、打ち負かしたりする行為がスポーツと言うことも出来る。多くのスポーツが複数で愉しむものであることからも、それがわかる。でも、ジョギングがスポーツじゃないって言う人もいないはずだ。ジョギングはすべてのスポーツの基礎、根源的な体力を養う行為だ。強いて言えば、己が敵。堕落したがる自分に活を入れ、研鑽するための行為がジョギングというスポーツだ。

そうだ、コレだ。R1100S はジョギングなんだ。走る場所はあくまで道路。誰かと競うためではなく、自分自身を磨くために走り、愉しむ。オートバイを走らせる難しさと愉しさを、自分のために磨くことが出来る、それが R1100S のキャラクターなのだ。

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「まあ、そんなところかもしれません」

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R1100S はそうつぶやくと、相変わらずデュルルルとうなりながら走るのであった。

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何年経っても、色あせないオリジナリティ ●小松 男(BMW BIKES 編集部)

BMW モトラッド全般に言えることだが、何年経っても古さを感じさせないと思う。と言うか、いつのバイクだかわからないのだ。それは R1100S にも言えることで、バイクを知らない人の前に持っていくと、新しい BMW が出たのかと喜ぶ。いわゆる年齢不詳というものに近い。でも、それはいつもでも活き活きしているように見え、傍らに置いて頼もしい存在でいることが出来るのだと僕は思う。

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走りに関して言えば、BMWモトラッドの中ではスポーツモデルという位置づけができるが、ツアラー色も結構強いので、世界中の二輪車全般で言うとなると悩んでしまう。これはつまり別の新しいジャンルなのであろう。

それまでの RS とこのSとの住み分けが難しくなり、R1200ST というモデルが登場したのかもしれないし、その後の R1200S は R1100S とは比べられないほど、スポーツ性能が高められたものだった。それに比べ、R1100S は落ち着いた大人の乗り物といったタッチである。

この頃のテレレバーとシャフトドライブは、今乗るといい意味で古めのアジを感じ、当時は軽量と言われていたが、今では重い印象を受ける。アクセルワークの反応にしてもダルだ。ただしそれらを踏まえても、BMW のスポーツバイク進化の過程を垣間見れるいいバイクだと思う。そして、だからこそ飽きずに乗っていられるバイクなのだ。前号(BMW BIKES Vol.50参照)でも書いたように、個人的にも思い入れがあり、好きなバイクである。現オーナーはこれからも大切にして欲しいし、これからのオーナーは存分に味わって欲しい。

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