VIRGIN BMW | BMW Motorrad C evolution(2020)試乗インプレ / 近い将来天下を取り得る素質を凝縮 試乗インプレ

BMW Motorrad C evolution(2020)試乗インプレ / 近い将来天下を取り得る素質を凝縮

  • 掲載日/2020年12月23日【試乗インプレ】
  • 取材協力/BMW Motorrad  取材・写真・文/小松 男

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BMW C evolution(2020)
世界中の大手自動車メーカーの中でも先陣を切ってEV(エレクトリック・ヴィークル)開発を推し進めてきたBMW。BMWモトラッド初のEVモデルとなったCエボリューションは一日の長をしっかりと感じられるものだ。

先を読み続けてきたBMWモトラッドらしい
チャレンジングなシティコミューター

この世に内燃機関(ガソリンエンジン)が誕生したのは19世紀終盤のこと。革命的なこの技術は、瞬く間に世界中に広がり、バイク、自動車、飛行機、船舶など、様々な乗り物の原動力として活躍してきた。それから百数十年の時を経た今、我々人類は化石燃料の枯渇や大気汚染などの問題に対応するため、岐路に立たされている。直近20年程はハイブリット車などで対応してきたが、近い将来にはゼロエミッション(廃棄物を排出しない機関)モービルのみ販売を許諾するという規制を打ち出す国も出てきている。

そこで注目されているのが、EV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)の存在であり、EVに関しては、すでに街中でも多く見かけるようになった。ただし、バイク業界を見渡すと、まだまだこれからというのが現状である。そのような中、BMWグループの持つ技術力を惜しみなく用いて作られたEVバイク、Cエボリューションは未来へと続く明るい道筋となるモデルだ。

BMW Cエボリューション(2020-)特徴

未来と過去の間に挟まれた
現在という点をカバーするに十分

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2020年12月8日、東京都は都内における純ガソリン車の新車販売を2030年までにゼロにする方針を東京都議会で打ちだした。先立って日本政府も同様の動きがあると噂されていた矢先の事であった。数年前にEV先進国と言われる北欧の国ノルウェーを皮切りに始まったこのようなムーブメントは、各国が追いかけるように次々と宣言を行い、アメリカのカリフォルニア州が2035年までに州内で販売される新車は、すべてゼロエミッション車にするよう義務付けると発表したことには世界に衝撃が走る出来事だった。それらは自動車がメインとなる話ではあるが、バイク業界ももちろん他人事ではない。

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私自身はEVへの移行を盛り立てる推奨派ではないものの肯定派ではある。EV専門媒体の製作にも携わっているほか、電動スクーターも所有し日々活用している。ガソリンエンジンと電動モーターでは、仕組みも走らせた感触も異なるものだが、私にはどちらが良いとは一概に決めることはできない。それぞれ別の物であり一長一短を感じる。ただし、人間が乗る乗り物というパッケージングとして、二輪や四輪で走ること、そして既存整備されている道路を使用することという点において共通であるがために、比較対象とされているという部分が大きいのである。

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昨今見られるそのような行政的な流れの話とは別のところで、各ブランドのEV開発というのは進められてきた。BMWグループは50年近く前からEVモデルの開発を進めてきた歴史を持っており、2013年には「BMW i」というEVモデルに特化したサブブランドを打ち出し、i3やi8などのEVモデルをデビューさせてきた。さらにそれと並行して、BMWモトラッドでも同社初の市販電動モーターサイクルとなるCエボリューションを登場させ、日本では2017年から販売が開始された。それから3年が経ち、日本の道では以前よりもEVを見かけるようになり、街のあちこちに充電ステーションも作られた。そのような中、今一度Cエボリューションの実力、そして魅力に迫ってみたいと思う。

BMW Cエボリューション(2020-)試乗インプレッション

間違いなく満足できるパッケージだが
唯一チャデモ規格でないことが悔やまれる

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Cエボリューションをはじめ、現時点で大型の部類ともいえるEVバイクは、電動モーターの出力特性がもたらす、初動からの強烈な加速感の話題が挙げられることが多いが、はっきり言ってそのようなことは二の次の話である。ユーザーが気になる部分は、乗り物としての完成度や、何よりも現在あるガソリンエンジンモデルの代替えとして使えるかという点だ。

そもそもEVへの乗り換えの際に、懸念されているのは航続距離の長さだ。そしてその航続距離を大きく左右すのが搭載バッテリー容量である。自動車の場合は、ある程度バッテリーを配置するスペースを作ることができるし、最近ではセル(バッテリー)を敷き詰めるスタイルのシャシーなども開発されている。トラックなどの大型車であれば、より多くバッテリーを搭載できるし、電動モーターの初動で大きなトルクを得られるというのは、多くの荷物を運ぶ大型車の場合はメリットにもなる。そのような背景もあり、バスではすでに常用されている地域や、乗用車ではSUVなど大柄なモデルの開発を進めているという面も見受けられる。

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話が逸れてしまったので元に戻すと、バイクの場合はバッテリー積載スペースが自動車と比べ小さい。ただそのような制約のあるバイクの中ではビッグスクーターのようなスタイルであれば、大きな容量を持つバッテリーを搭載する際に割と融通が利く上、全体的にパネルでカバーされるため外観上も違和感が少なく作れるという利点がある。さらには頻繁にロングツーリングに出かけるという使われ方よりも、シティコミューター的な用途をユーザーが求めていると考えられ、満充電から100キロ程度の航続可能距離能力を持っていればニーズに対応することができる。そのような様々な要因を突き詰めてゆくと、Cエボリューションという答えに辿り着くのだ。

Cエボリューションのスタイリングは、いわゆるビッグスクーターのそれであり、BMWモトラッドのC650系と近しいデザインと言えよう。だから街を走らせても取り立てて目立つようなこともないが、「キュイーン」という走行音を耳にすると、EVということが認識できる。

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ライディングモードは、ダイナミック(パワー最大、回生最大)、エコプロ(パワー半分、回生最大)、ロード(パワー最大、回生半分)、セイル(パワー最大、回生無し)の4種類が用意されている。回生というのは減速力を利用してバッテリーを充電させるもの。より大きいと充電量も増えるが、ガソリン車で言うところのエンジンブレーキが強く効くというイメージだ。Cエボリューションオーナーの中では、頻繁にエコランの話題が持ちあがるらしく、セイルモードで上手く惰性を使った走行をするのが良いとか、エコプロモードでパワーを抑えつつ回生量を増やすのが良いなど、様々な意見が飛び交っているようだが、航続距離云々の話は置いておいて私の場合は、回生の作動を上手く使うことでブレーキをほとんど使わずに走らせることができることが楽しくて、パワーも回生量も最大のダイナミックモードが最も便利かつ快適だった。

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車両重量は275kgもあり、これはC650GTよりも重い数値となっているが、むしろその重量のおかげで全体にしっとりした高級感のある乗り心地であるし、いざスロットルを全開にすれば、重さを感じるどころか目の前の視界を一瞬にして後方へと置いてくるほどのド級の加速力を持っており、市街地や高速道路だけでなくワインディングでもかなりのポテンシャルを発揮できる。付け加えるならリバース機能もあるのでパーキングも楽に行えた。

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これまでもCエボリューションのテストを行う機会があったが、それはメディア向けの試乗会的な場の事であり、日常生活で何日も使うことは初めての経験だった。以前に乗った時にもCエボリューションの楽しさ、そして完成度の高さに太鼓判を捺していたが、今回はさらに実際に日常的に使ってどうなのかという一歩踏み込んだところまで検証することができた。そのような中で、まず航続距離に関しては十分だということが分かった。車両を借りてから返却するまでの間、100キロ強程走り残電量はおよそ25%。つまり満充電から150キロ程度は走行可能だということであり、ガソリン車と変わらない(スペックでは航続距離約160キロとされる)。ただし充電スポットに問題があった。

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先述したが、街のあらゆるところで充電スタンドを見かけるようになり、実際にEVを充電している光景も目にするようになったが、実はそれのほとんどがバイクが入っていけない自動車用駐車スペース内にある。警備員に充電のために中に入れて欲しいと頼みスタンドの前まで行き、いざ充電を始めようとすると、さらなる問題があった。それは充電プラグの規格が現在国内で主流となっているチャデモ(CHAdeMO)ではなく、コンボ(Conbo)を採用しているため、プラグ形状が異なり接続できないのだ。テスト車両には単相200Vから電源を得られるコードが付属していたが身の回りに200V電源を使っているところが見つからず、結局一度も充電することができないで返却することになってしまった。

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もちろんオーナーになれば自宅パーキングスペースに200V電源を引くことであろうし、使っているうちに電源ステーションの場所も見つけられるはずだ。しかしプラグがチャデモであれば、さらに使い勝手は向上するはずである。チャデモなら数多く充電スタンドがあるし急速充電にも対応する。充電プラグ規格に関しては相変わらず各国利権争いを続けており、それはインフラ整備に繋がるという政治的な面も介入していることは理解するのだが、最終的にはユーザーがどれだけストレスなく便利に使えるかというところに辿り着くはずだ。チャデモプラグを備えた日本仕様を作っていただければ、販売台数はさらに伸びると思われるが、それほどの流通数を見込んでないということなのだろうか。そろそろ対応すべき時期に迫ってきていると思うのだが。

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BMW Cエボリューション(2020-)詳細写真

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左右に分割されたパネルを割り出るようにライト周りをレイアウトするスプリットフェイスデザインを採用。センターにLEDデイライトを備えている。C650系に近い雰囲気を持つデザイン構成となっている。

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リアのタイヤサイズは160/60R15。この手のモデルではスタンダードなサイズであり、コントロール性を重視していると言っていい。片持ちタイプのスイングアームを採用しており、交換などのメンテナンスはしやすそうだ。

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フロントはφ40mmの倒立フォークと120/70R15サイズのタイヤを組み合わせる。フロントサスペンションのストローク量は120mmとされており、リアサスペンションの115mmより多いが、初期動作が若干固めの印象。

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リアホイールの回転を監視し、必要に応じて電子制御システムを用いて駆動トルクを抑えている。つまり急発進などによりリアタイヤが空転することや、強い回生の際にロックすることを防いでいるということだ。

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フロントタイヤの後方にはラジエーターが設置されている。これは熱を発する駆動モーターを冷却するシステムの一環であり、Cエボリューションには液冷式モーターが搭載されているのだ。

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メーターはコンパクトながら視認性が高い。「DYNAMIC」というモード表示の上にあるバーは、中央から右にゲージが増えてるとeパワーという加速時を指し、逆に左にゲージが進むとCHARGE状態であり回生が作動し充電されている状況となる。

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他のBMWモトラッドと共通のスイッチボックスを採用しているが、Cエボリューションで注目したいのは『Rボタン』が設けられている点だ。ボタンを押しながらスロットルを操作すると、後退することができる。

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かなりワイドな形状を持つフロントスクリーン。ただし見た目ほど高さが無く、思っていた以上に走行風を受けた。ウインカー内蔵のバックミラーはC650GTと同形状となっている。

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フロントカバーの左側には充電時に使用するコンボ規格のプラグが備わっている。ちなみにチャデモ規格のプラグの方がより大きく、このスペースには収まらないかもしれない。

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フロントカバー右側には、キーロックを備えるポケットスペースが用意されている。ETC車載器が収まる他、かなり容量があるので、便利に使うことができた。

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ステップボードの前後長も長く持たされており、一般的なビッグスクーターと同じようにライディングを楽しめる。車体内部の多くをバッテリーセルが占めており、センターアーチがやや大きいと感じたが、C650系と比較しあまり変わらないことが分かった。

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7段階のプリロード機構付きモノショックを採用。270kgオーバーの車体をしっかりと支え、想像以上に乗り心地は良い。重心が低い位置にあり、低速域でもふらつくことなくコントロールできる。

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テールランプ、ウインカー共にLEDを採用している。撮影時には外したが、テスト車両にはオプションのトップケースが取り付けられており、そのベース部となるキャリアも備わっている。

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シートはライダーとパッセンジャー側でセパレートされている。シート高はスタンダードが765mm、コンフォートシートが785mmとなっている。リアのグラブバーは握りやすい形状であり、タンデムライドも快適にこなすことができる。

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タンデムシートの下にはラゲージスペースが用意されている。ヘルメットも入る容量があり必要にして十分だが、オプションのトップケースも装備すればさらに使い勝手が向上する。

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