VIRGIN BMW | #05 高田速人流サーキット走行会 S1000RRの楽しみ方

#05 高田速人流サーキット走行会

  • 掲載日/2011年06月26日【S1000RRの楽しみ方】
  • 文・写真/淺倉 恵介
S1000RRの画像

「興味はあるけれど、ちょっと腰が引けちゃう…」というのがサーキット。高田さんが主催しているサーキット走行会は、そんなアナタにピッタリ。初心者に優しいプログラムが組まれている。今回は “レーシングライダー 高田速人” でなく、“MFJ公認インストラクター” としての高田さんを紹介します。

“誰でも楽しめる” がキーワード
高田速人流サーキット走行会

こんにちは、高田速人です。雨の日が続いて、バイクには厳しい季節ですね。バイクにとって雨は鬼門、ライダーが濡れるのは最悪我慢すればよいことですが、なにより気をつけたいのがタイヤのグリップ力の低下です。どんなにウェットグリップが高いタイヤでも、ドライ路面と同じグリップレベルは期待できません。コーナーリングやブレーキングはもちろん、ストレートでさえ走安性は悪化します。レインコンディションでは、皆さんくれぐれも注意して走ってください。

さて、今回は僕が主催しているサーキット走行会についてお話しさせていただこうと思います。先日、福島県のエビスサーキットにて 『8810Rサーキット走行会』 を開催しました。僕がサーキット走行会を始めたのは、ドリーム店に勤務していた頃のことです。きっかけは、バイクショップのスタッフはそれなりのライディングスキルを持っていなければならないと考えたことでした。公道を走る上で、もっとも大切なのは安全です。そのためにも、バイクを操る技術は高いにこしたことはありません。また、技術に自信が持てれば走行時に余裕が持て、いざ危ない状態に直面しても冷静に対処することができるようになります。バイクショップはバイクを売るだけでなく、お客様により良いバイクライフをご提供するのも仕事だと考えています。スタッフが安全運転を指導できるように、運転技術を磨く場としてサーキット走行を推奨していたのです。

そのうち、せっかくなら…と、お客様も参加していただくようになり、サーキット走行会はドリーム松戸の名物イベントに成長しました。最近のバイクは、全開にすればイリーガルな世界に入ってしまうものがほとんどです。バイクが本来持つポテンシャルを、思う存分味わえるのもサーキットの楽しみ。もちろん、サーキットは絶対安全な場所などとは言えません。ですが、公道で無茶な走りをするより、はるかに小さなリスクでスピードを楽しむことはできます。もし、S1000RR オーナーの方でサーキット未経験の方がいらっしゃいましたら、是非一度サーキットを走ってみて欲しいですね。S1000RR の高いポテンシャルを実感できると思います。きっと、いや絶対に楽しいですよ!

このコラムを読んでくださっている読者の皆さんの中にも、サーキット走行に興味がある方は多いのではないでしょうか? けれど「ちょっと怖い」とか「革ツナギがない」とか…、いろいろな理由で今ひとつ踏み切れない方もいらっしゃるでしょう。そこでそういった方に向けて、8810Rの走行会は初心者へのフォローを重視した内容を心がけています。走行会ではライダーの技量によってクラス別けを行うのが普通です。8810Rでは3クラスに別けていますが、初心者向けのクラスは革ツナギがなくても走れます(革ツナギ着用推奨ですし、レンタル革ツナギも用意しています)。 また、タンデムでのサーキット体験もできますし、とりあえずヒザを擦ってみたいという方にはヒザ擦り講習会も行います。もちろん、ライディングで質問があったら、僕がじっくりアドバイスさせていただいています。走行前のブリーフィングでは、サーキットのルールや走り方の説明も行いますから、初めて走行会に参加されたという方も、みなさん思い思いのペースでサーキットを楽しんでおられるようです。そのくせ、上級者クラスでは国際ライダーがビュンビュン走っていたりもしますので、ちょっと他にない走行会かもしれません。

8810Rの走行会で最も重要視しているのは、“安全性” と “参加し易さ” です。8810Rの走行会でサーキットに慣れたら、他の走行会に参加したり、サーキットライセンスを取ってスポーツ走行したり、レースに挑戦するのも良いでしょう。そうやって、一人でも多くの人にサーキットの楽しさを知ってもらいたいというのが僕の願いです。今回の走行会でも何人かの方がサーキットデビューを果たし、皆さん楽しんでいただけたようです。そうそう、S1000RR のプチ試乗会も行い、試乗された方は皆さん S1000RR の性能に驚かれていました。次の走行会は10月12日(水)エビスサーキットで開催予定です。次回は S1000RR の試乗できる人数を増やせるように考えています。S1000RR のサーキットでの実力を味わってみたいという方は、是非参加してみてください。いっしょにサーキットを楽しみましょう!

S1000RRの画像
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高田さんは先導走行、座学の講師にと大活躍。もちろん走行用に持ち込んだのはS1000RR。レーサーとは違って全くのノーマルマシンでの走行でしたが、キレの良い走りに変わりはなく、参加者の注目を集めていました。

“ヒザ擦り” はバイク乗りのロマン?
VIRGIN BMW.com スタッフ ゼンがヒザ擦り講習を体験

ライダーなら誰しもウイリーしたりコーナーでヒザを擦ったりテールスライドさせたいでしょう! と勝手にイメージしているゼンです。そして何ひとつ出来ないので、今回は高田センセイのレクチャーを受けることにしました。

練習車輌はミニバイク。舗装された広い地面の上で、まずは大きく四角形を描きながら走り、角で曲がる際にヒザが接地するよう練習します。高田センセイのお手本では、とくに何もしなくても曲がれば勝手にジョリジョリ擦っているように見えるのですが、実際に自分で曲がってみてもなかなか地面は遠いもの。そもそもバイクに跨って足の裏以外が接地することは “=アクシデント” じゃないですか、感覚的に。なんでヒザを擦る必要があるの? と、あらためてギモンに思いました。

走り始めて5分ほど、徐々にヒザが地面に近づき、教わった動作がすべてピタッと決まったところで “ザッ!” とニースライダーが接地。最初はびっくりしましたが、慣れてくると腕の力も抜け、ヒザを擦ること(地面に当てること)が車体安定性につながり、やがて角を曲がるように走っていたラインが自然と円を描くようになってきました。「そういうことだったのか!」と、ヒザを擦ることの意味を身体で理解し、コツを掴んでからはもう楽しくて楽しくて…。

高田センセイのレクチャーでは、まず “ヒザを擦るため” の身体の動き、いわゆるハウ・ツーを教わり、次にその “意味” を教えてもらいます。聞けば納得、このミニバイクでヒザを擦ることが出来れば、大型スーパースポーツでも安定したコーナリングが望めそうだ!(…多分)。

レクチャーを受ける前の「誰でも30分以内にヒザを擦ることが出来るようになりますよ。早ければ10分ですね」という高田センセイのセリフに、「本当かよ~? オレのビビリっぷりはハンパないっすよ~?」と言っていたものの、確かに10分程度でヒザが接地しました。たかがヒザ擦りとは言え、出来ると出来ないとでは意味が違います。やって出来ないことがなければ、一度は体感して理解するほうが楽しいに決まっています(練習車輌も貸してくれるし)。

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自分の姿を写真で見るとまだまだ “無理ヒザ” 感は否めませんが、高田センセイのレクチャーは非常にわかり易く、上達するにはどうすればよいのか、自分で考えることが出来るで自主トレも可能なわけです。これは受ける価値アリですよ!

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ヒザ擦り講習会には、ホンダのミニバイクNSR50を使用。小さなマシンだから、すぐヒザが擦れるかというとそうでもない。練習前はご覧の通り、ヒザから地面までの距離はかなりある。講習を受け、練習すること10分余り、遂にヒザ擦りに成功! 練習前は重心が不安定で視線がさまよっているが、練習後は安定したフォームになり視線も旋回する方向をしっかり向いているのがわかる。ゼンの笑顔をみれば、講習の成果は説明不要だろう。
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走行会の会場となったのは福島県二本松市のエビスサーキット。施設内に複数のコースを有するモータスポーツのテーマパークだ。今回使用したのは全長2,061mの東コース。標高差67m、最大勾配14%というキツいアップダウンが特徴。
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走行会の朝は受付から始まる。前日入りの気合い万点組、早朝に自宅を出てきて眠い目をこする参加者など様々な参加者がいるが、皆さん一様に良い笑顔をみせていたのが印象的。
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サーキットは速度域が高いため、マシンのコンディション管理は重要。高田さん自ら、参加者のマシンの、タイヤ空気圧をチェック。事前に通常のメンテナンスを行っておくのはもちろんだが、灯火器類のテーピングなど現場での作業も必要だ。
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走行前のブリーフィングは、サーキット経験者、未経験者を問わず全員参加が義務づけられている。その日のコースコンディションや、走行会でのローカルルールなど重要事項が説明される。フラッグの意味合いは全サーキット共通だが、未経験者に向けての講習も行われる。
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ピットレーンで走行開始を待つ参加者。多くが普段街乗りで使用しているマシンを持ち込んでいる。サーキットまで自走で参加する強者の姿もあった。バイクをサーキットまで運搬したくても輸送手段がない場合、8810Rで相談にのってくれる。
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参加車輌は、やはり国産スーパースポーツが多い。日頃、性能を発揮しきれない鬱憤を晴らすかのように、皆伸び伸びと走っていた。実に楽しそうだ。
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速度域が近いということで、初心者クラスはミニバイクも走行可能。ミニバイクというとカートコースなどのショートサーキットを思い浮かべやすいが、フルサイズのサーキットを走っても、なかなか楽しいものなのだ。
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こちらの女性ライダーは、革ツナギではなくライディングウェアで参加。それぞれのスタイルで、それぞれのペースで楽しむことができるのが、8810Rの走行会だ。
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初心者クラスでは、高田さんのライディングによるタンデムでのサーキット体験走行も行われている。これは走行会参加者だけでなく、同行した家族なども体験可能。サーキットを訪れた皆が楽しめるように…という配慮なのだ。
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タンデム走行時は事故防止のため、ライダーとパッセンジャーをベルトで繋ぐ。安全性も確保しつつ、走行ペースも無理のない速度で不安なく楽しめる。
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ヒザ擦り講習会は、コース上ではなく広い舗装スペースで行われる。高田さんによるヒザ擦りの講義は、ヒザの擦り方のみならず、その意味合いまで詳しく解説してくれる。受講生の皆さんの視線も熱い。
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まずは高田先生の模範演技。どんな速度でも右に左に自由自在にヒザを擦りまくっている。上手いライダーは、何に乗せても速くて上手いのだ。
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受講生の走りを見守る高田さん。練習走行中も頻繁にアドバイスの声をかけている。そのタイミングも重要なのだとか。
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マシンを停めての個別指導中。練習走行中のフォームをチェックし、それぞれの乗り方に合わせた指導を行う親切授業。身体全体を使っての熱血講義だ。
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練習の甲斐あって、ヒザが接地する寸前まできている。こちらの受講生は、この後左右とも無事にヒザ擦りに成功していた。ちなみに、この日の受講者のヒザ擦り成功率は100%。「どんな人でも30分あれば、ヒザ擦りまで持っていきます」と高田さん。
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走行の合間に参加者からライディングに関する質問を受ける高田さん。身振り手振りを交えた、熱の入った指導ぶり。自分の走りを見てもらった上で、国際ライダーから生のアドバイスがもらえるのだから、スキルアップにはまたとないチャンスだ。
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参加者がS1000RRをサーキットで試乗。「エンジンはスゴく速いですね、ルックスにインパクトがあるから乗り味にクセがありそうな印象を持っていましたが、意外なくらい乗りやすいので驚きました」とのコメント。
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レース経験もあるというこちらの方は「250のレーサーみたいに軽く走る」と、ハンドリングを高く評価。DTCによるトラクションの制御にも驚いた、とのこと。
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走行会終了後は参加者全員にプレゼント。ジャンケン大会で色々な賞品が順番に配られ、誰もが何かしら手に持って帰ることが出来る。最初から最後まで“楽しさ”を追求した走行会なのだ。
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参加者が集合しての記念写真、皆さんの表情からは楽しい一日だったということがうかがえる。今回の走行会は、東日本大震災の影響で本来の開催予定日から日程をズラして行われた。そのため、通常より参加者が少なめで、コースが広く使えて走りやすかったようだ。
国際ライダー MFJ公認インストラクター
高田 速人
バイクのタイヤとメンテナンスの専門店「8810R」代表。1976年生まれ、東京都出身。中学2年でミニバイクレースを始め、高校卒業後はロードレースにステップアップ。1996年に国際ライダーへと昇格、全日本選手権や鈴鹿8時間耐久レースなど、豊富なレース経験を持つ。2010年は 【Tras & G-TRIBE + 8810R】 チームによる、S1000RR鈴鹿8耐への挑戦にライダーとして参加。2011年は S1000RR を駆り 、【Team Tras】 の第1ライダーとして鈴鹿8耐に参戦。15位獲得に貢献した。
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