【BMW Motorrad 新型 R1300RT 試乗記】もっと遠くへ、快適に、気持ちよく──その答えがここにある
- 掲載日/2025年08月07日【試乗インプレ】
- 取材協力・写真/BMW Motorrad 取材・文/佐川 健太郎 衣装協力/KUSHITANI
BMW Motorrad R 1300 RT(2025) 特徴
新たなステージに突入した究極の“旅バイク”
BMW伝統の長距離ツアラーが6年ぶりのフルモデルチェンジで大きく進化を遂げた。堂々たるプロポーションに標準装備される大型スクリーンとパニアケース、そして熟成された水平対向2気筒エンジン。「R1300RT」はその正当な血筋を継ぎつつも、中身はもはや別物と呼べる最新技術が注がれている。
新開発のR1300GS系の水冷ボクサーツインを搭載。排気量は1254ccから1300ccへと拡大され、最高出力145ps/7750rpm、最大トルク149Nm/6500rpmの堂々たるスペックを誇る。BMW独自の可変バルブ機構「シフトカム」により、低速域から高速域までシームレスで力強いトルクが湧き上がり、ツーリングだけでなくスポーティなライディングにも応えてくれる懐の広さを持つ。
シャシーも新しくなった。スチール製メインフレームに加え、アルミ製ラティス構造のリアフレームを組み合わせることで、剛性と軽量化のバランスを最適化。加えて、BMW独自のフロント「EVOテレレバー」とリア「EVOパラレバー」が、しなやかさと安定感の両立を実現する。さらに注目すべきは、新機構「ダイナミック・シャシー・アダプテーション(DCA)」だ。走行モードに応じて車高、減衰特性、サスペンションの硬さを自動制御。まるでマシンがライダーの気分を読んでくれるかのように、場面ごとに最適なキャラクターへと変貌する。
インフォテインメントにも抜かりはない。10.25インチの高精細フルカラーTFTメーターはナビやオーディオ操作も直感的。Bluetooth接続による「オーディオプロ・サウンドシステム」は旅のお供にぴったりの機能だ。さらに、電動スクリーン、可変ラゲッジ、グリップ&シートヒーターなど、ツーリング快適装備もフルパッケージ。そして極めつけは、安全装備の充実ぶり。レーダーセンサーによるアクティブ・クルーズ・コントロール(ACC)を筆頭に、前後衝突警告、車線変更警告、コーナリング対応ABSなど、多彩な電子制御が走りを支える。 BMWらしい確実で濃密な走りと“旅の道具”としての機能性に満ちた「R1300RT」は、現代最高峰のロングツアラーとして新たなステージに突入した。
BMW Motorrad R 1300 RT(2025)試乗インプレッション
200km/hクルーズでも変わらぬ安心感
初めて見る実車は想像していたよりコンパクトでスリム。従来モデルのR1250RTの重厚感あるフォルムから一新し、直線的で洗練されたデザインをまとっている。走り出した瞬間、その異次元の快適性に思わず息を呑んだ。BMWの新型ツアラー「R1300RT」は、まさに“移動の質”を根本から塗り替えるバイクだった。
排気量を1300ccに拡大した新世代の水冷ボクサーはパワフルかつ滑らかで、アクセルをわずかに捻っただけで豊かなトルクが湧き上がる。その力強さは決して荒々しくなく、あくまで上質。恐ろしくハイペースな高速道路の合流でも、急峻な峠道の立ち上がりでも、まるで優しい巨人の力で後押しされるように加速していく。速度を出していることを忘れるほどの静粛性と振動の少なさは、フルフェイスの内側で思わず笑みがこぼれるほどだ。
電動スクリーンはスリムだが、最大まで上げると風圧をしっかり遮断しながら驚くほど静かな空間を作り出す。新設された可変式サイドディフレクターも横風を巧みに制御し、高速巡行時の安定感は抜群。幸運なことにドイツ名物のアウトバーンも体験できたが、200km/hを超える速度域でも恐怖感は皆無。まさに「道がクルマを作る」というドイツ的哲学を体現したマシンだ。
コーナーでもその真価は揺るがない。新設計のフレームと電子制御サスペンションは、約280kg(従来型より10kgの軽量化)も効いていてコーナリングも得意。というよりも、車重を感じさせない軽やかな身のこなしを実現していて、ワインディングを駆け抜けるたびに「本当にツアラーなのか?」と疑いたくなるほど。フラットツイン+シャフトドライブの特性を生かした切り返しは実にスムーズかつ安定感があり、フロントにしっかり荷重をかけたまま最適なラインを自在に描いていく。
快適ツアラーとスポーツパイク、2つの顔
さらに初搭載の「ダイナミック・シャシー・アダプション(DCA)」は、走行モードに応じてサスペンションの硬さだけでなく車高や姿勢まで変化させる驚異の制御システム。コンフォート重視のモードでは車体がフラットに保たれ、まるで空飛ぶ絨毯のような優雅な乗り心地を堪能できる。
一方、ダイナミックモードでは車高が上がり足元はガッチリ、前傾姿勢のディメンションとなり、一瞬にしてコーナリングマシンへと変貌。まるで2台の異なるキャラクターが共存しているかのようで楽しい。
ちなみに試乗車にはクラッチ操作を不要にする「オートマチック・シフト・アシスト(ASA)」が搭載されており、アクセル操作だけでスムーズな発進・停止・変速が可能。渋滞の市街地から開けた郊外まで、ライディングのストレスを格段に減らし、長時間の走行も快適そのものだ。
加えて、最新の電動スクリーンやアダプティブ・クルーズ・コントロール、ブラインドスポット警告など、4輪車さながらの安全・快適装備がライダーを包み込む。その安心感が走りにさらなる余裕と解放感をもたらすのだ。「どこまでも走っていたい」──そう思わせるバイクは少なくないが、R1300RTは「もっと遠くへ、もっと快適に、もっと気持ちよく」と、ツーリングの次元を引き上げてくれる一台。それはまるで、風と対話しながら走るラグジュアリーサルーンのような体験だった。
BMW Motorrad R 1300 RT(2025)詳細写真
「水冷ボクサー」と呼ばれる水冷4ストローク水平対向2気筒DOHC 4バルブ1300ccエンジン。排気量を広げてビッグボア×ショートストローク化も進み、R1300GSやR1300Rと同じ最高出力145ps/7750rpm、最大トルク149N・m/6500rpmを発揮。
フロントカウルの真ん中には、アシストの要となるレーダーセンサーを装備。その下にあるのがフルLEDヘッドライト。オプションの「ヘッドライトPRO」はスピードや車体の傾きに合わせてライトの照らす角度や距離を自動調整してくれる。
新しく採用された手動式の可変サイドディフレクター。羽根の後ろのタブをつまんで簡単に上下でき、下げれば適度な風をコックピットに送り、上げれば風や雨をしっかりガード。
φ310mmダブルディスクにラジアルマウント4Pキャリパーでしっかり制動。リーンアングル対応型のフルインテグラルABSでコーナリング中でも安心してかけられる。前後120/70-17、190/55-17のミシュラン「ロード6」を標準装備。ホイールも1.4kg軽量化。
上位グレードの「オプション719カマルグ」には、専用カラー(ブルー・リッジ・マウンテン)と高品質なビレットパーツが随所に使われている。
パッセンジャーシートは幅広くフラットでライダーとの一体感が持てるデザイン。ヒーター付き。トップケースの取り付けマウントは、左右の揺れによるハンドリングへの影響を低減するフローティング式を採用。
グラブバーの裏側にもタンデム用グリップヒーターのスイッチを装備。さすがは長距離ツーリングを知り尽くしたBMWならではの気配りだ。
パニアケースはオプションの可変ラゲッジシステムで27Lから33Lに容量が調整可能(ケース前面のノブで操作)。電子センターロック式で、室内灯やUSB-C充電ポートも装備する。
10.25インチの横長フルカラーTFTディスプレイを搭載。画面の「タイル」からマイバイク情報やラジオ、ナビ、メディア、電話、設定にアクセス可能。オプションの「オーディオPRO」は左右に高性能スピーカーを装備。
ACCやASAのスイッチが並ぶ左グリップ。試乗車はASA仕様でクラッチレバー無しの自動変速が基本だが、指先のスイッチで簡単にマニュアル操作にもできる。外側には素早い設定変更を可能にするマルチコントローラーが付く。
容量54L(小型ケースは39L)のトップケースはオプション装備。タンデムやラゲッジシステムに対応するため、リアフレームはアルミチューブと鍛造パーツで強度を高めている。
こちらはスタイリッシュな白バイ仕様。ドイツ警察の正式採用モデルとして現場で活躍中。大型ガードに赤灯ではなく青LEDを装備。
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