【BMW Motorrad F450GS 試乗記】新生“F”。このF450GSから次章のページが捲られる
- 掲載日/2026年09月18日【試乗インプレ】
- 取材協力・写真/BMW Motorrad 取材・文/小松 男 衣装協力/Alpinestars Japan


【F】シリーズの【GS】モデルが示す意味
伝統の水平対向二気筒エンジンを搭載するRシリーズ。その存続が危ぶまれ、新たな時代を切り開くため開発された多気筒エンジンを採用したKシリーズ。そしてBMWモトラッドの魅力をさらに広い人々にアプローチするべく誕生したFシリーズ。1980~90年代にかけてのBMWモトラッドの歴史を振り返ると、このような流れだったことが見えてくる。
初代FシリーズであるF650が登場したのは1993年のことだ。ファンライドとエンデューロを組み合わせた“ファンデューロ”という愛称で親しまれ、新開発のシングルエンジンやBMWモトラッドとしては軽量な車体構成で、ストリートからオフロードまで気持ちよく、かつ快適に走ることが出来るモデルとして、高い人気を博した。

F650は2000年にF650GSへとバトンタッチ的なフルモデルチェンジを果たすこととなる。ここでのポイントは“GS”で登場したということだ。
GSの初代モデルにあたるR80G/Sからパリダカでの活躍などもあり確かにユーザーから支持されていたことは事実だが、爆発的なヒットモデルとなったのはR259系と呼ばれる4バルブボクサーを搭載したR1100/1150GSからと言って間違いはない。従来はBMWモトラッドといえばRSやRTなどの、フェアリングを備えたスポーツツアラーがメインストリームだとされていたところ、GSが中心的存在を担うようになった。そのような背景もあり、F650GSは誕生したのである。
当時エントリーグレード的な扱いもされていたが、実際に走らせるとしっかりとBMWモトラッドのフィロソフィが感じられ、さらにGSならではの冒険心を掻き立てそれに応えるパフォーマンスが備わっていた。

その後、F650GSはパラレルツインエンジンにモデルチェンジ、Fシリーズは新たな道を進み、ここ最近ではFシリーズのエンジンはおおよそ900ccにまで増大している。
そのような中、今回新たに【F】のイニシャルを受けて登場したF450GSは、排気量420ccのパラレルツインという新開発エンジンを搭載している。
これまでのF、これからのF、その橋渡しとなる1台に、多くの人々が興味を示し、期待を持ったことは、すでに現時点で国内販売数に到達せんばかりの状況からも伝わってくるものだ。
BMW Motorrad F450GS(2026) 特徴
中間の中間、そこにあるのは新たな世界
GSの看板を掲げた作り込み
BMWのGSといえば、いまや一つの車種名ではなく、一つの世界観そのものと言っていい。大排気量のR1300GS/GSAを頂点に、F900GS、F800GS、そしてG310GSまで、排気量もキャラクターも異なるモデルが揃う。そのラインアップに、いよいよF450GSが加わった(なおG310GSの生産は終了している)。

先にも書き記したが、F450GSは「F」と「GS」の両方を背負ったモデルだ。だが、その立ち位置が面白い。F800GSやF900GSより明確にコンパクト。一方でシングルエンジンのG310GSよりは一段上の排気量と車格を持つ。つまり、従来のFより小さく、Gより大きい。その「間」を狙ったモデルなのである。
実際、F450GSの排気量は420cc。最高出力は48ps、最大トルクは43Nmで、車重はわずか178kgに収まる。G310GSが312cc・175kg、F800GSが894cc・227kgということを考えれば、そのポジションはかなり明快だ。単純に既存モデルを縮小したのではなく、GSファミリーの中に新しいサイズを設定した、と考えたほうがしっくりくる。

フレームは新設計のスチール・チューブラータイプ。KYB製の倒立フォークやアルミ製スイングアームを組み合わせ、GSらしくオンロードだけでなくオフロードまで視野に入れた足まわりを構築している。19インチのフロントホイールと845mmのシート高も含め、単なるコンパクトツアラーではなく、見せかけだけではなく「GSとして走る」ための構成だ。
そこにRain、Road、EnduroのライディングモードやABS Pro、DTC、MSRといった電子制御を加え、6.5インチTFTディスプレイまで装備。サイズをコンパクトにしたからといって、GSとしての作り込みを妥協した様子はない。

フロントマスクを見れば、X型デイライトをはじめとするGSファミリーの意匠もしっかり受け継いでいる。そして上級グレードにあたるGSトロフィーには、スポーツサスペンションやアルミ製アンダーガード、さらにイージー・ライド・クラッチ(ERC)まで用意された。
F450GSは、F800GSやF900GSを小さくしただけのGSでもなければ、G310GSを大きくしただけのGSでもない。
その中間に、新しい「ちょうどいい」を作った。
しかもそこに与えられたのは、間に合わせのエンブレムではなく、GSというBMW Motorradを代表する看板そのものだ。新開発の並列2気筒エンジン、19インチフロント、180mmのサスペンションストローク、そしてGSらしいスタイリングと電子制御。
このF450GSというモデルは、これまでに存在しなかった、すべての「中間」の場所において、新たなGSワールドを丸ごと生み出した意欲作なのである。

BMW Motorrad F450GS(2026)試乗インプレッション
新しくも安らぎを感じさせる深い懐
それでいながら心に訴えかける洗練された新鮮さ
F450GSの実車には、すでにサイクルショーや技術説明会などで触れたことがあったが、今回の試乗会で改めて跨ってみると、既存のどのGSとも通じる部分があると改めて伝わってきた。まずはコクピットに広がる視界、高いアイポイント、眼下のボリュームあるタンク造形、上位ファミリーと同等のメーターディスプレイやハンドルの操作系統などにより、違和感なくGSであると直感できる。

エンジンを始動すると、パルス感のあるツインエンジンのサウンドが響き渡る。ちなみに今回新開発のパラレルツインエンジンは、135度位相クランクというあまり聞きなれないセッティングがなされているのだが、排気量やキャラクターを加味したスロットルワークに対するフィーリングの最適化を求めただけに収まらず、耳に届く心地よいサウンド面的にも重視した結果だという。
試乗モデルはGSトロフィーグレード、つまりERCモデルとなる。クラッチレバーを備えているものの、基本的にはノータッチでシフト操作することが可能だ。
これはエンジンの駆動とミッションの間に遠心クラッチを組み合わせていることによって実現しており、そのシステムは日本企業のF.C.C.によって開発、製造されている(チューニングはBMWによって行われている)。
クラッチレバーを握らずにシフトチェンジレバーを1速に落とし、スロットルを開けていく。およそ2800回転前後でつながる設定とされており、最初の発進時こそ、気を使ってそろそろとスロットル操作をしたものの、少し走らせてみると、割と大胆に手首をひねった方がスムーズに発進できることが分かった。

なお、このクラッチがつながる回転数の設定についてだが、欧州の厳しい排ガス規制に対応するために、エンジン始動後早くキャタライザーを暖める必要があり、その回転数から導いたことも一つの要因となっている。つまりこれより低い回転でつながる設定にすると、アイドルアップ状態にある冷間始動直後に車体が進んでしまうことが考えられる、というわけだ。
とはいえ、このERCの具合がいい。オフロードコースの試乗も行ったのだが、右手の操作に集中できることは大きい。しかも低回転からしっかりとしたトルクがあるので、一速高いかな、と感じるギアであってもグイグイと未舗装の坂を上っていくのである。具体的にはシフト固定のオートマ状態で楽しめるだけでなくクラッチがつながった3000回転くらいから4000回転あたりでギアを行き来するような変速をしても気持ちよく走れるのである。
車体のバランスや重量感も絶妙であり、タイヤをすくわれそうな路面でも怖くない。これは、より排気量の大きいGSよりもフレンドリーかつ、“オフロードを走りたい”と思う気持ちを後押ししてくれるものだ。
私はオフロードをガンガン飛ばすような走らせ方が得意ではないが、ペースを上げてみようと思わせてくれる。これがF450GSの妙であり、魅力なのだとまず感じた部分だった。

舗装路ではまさしくGSという名にふさわしい安定感があり、快適かつスポーティな走りをもたらすことが伝わってきた。本格的オフロードモデルと比べれば短めのストローク量のサスペンションでありながら、しっとりとした動きで、十分以上に働いてくれるため、コーナーへの進入時に程よくサスペンションが縮みこみ、立ち上がりではしっかりとトラクションを得られる。
オフロードで低速の粘り強さが感じられたエンジンは、高回転域、特に6000回転以上レブリミットまで力強く吹け上り、なおかつ、どの回転数からも欲しい分だけトルクを得ることが出来る。
BMWモトラッドデイズの開催地としても知られる長野県白馬村の雄大なワインディングロードを走らせるのは至福の時間とも思え、いつまでも走っていたいと本当に感じさせてくれた。
正直なところ、スペックなどからして、もう少し非力さを感じるものだと思い挑んだ試乗だったのだが、想像以上にパンチのあるエンジンであることに驚かされた。
その名の通りイージー・ライドを可能にしたクラッチが大きな目玉であり、選ぶならコレという気持ちもあるが、エンジン停止時にクラッチが離れているつまりニュートラル状態であるため、坂道などでの駐車は気を付けなくてはならない。ただ、それもトータルの完成度を考えたら重箱の隅をつつくような話である。

大変恐縮であるが、ここから個人的な話を交えてまとめを書かせていただきたいと思う。
実を言うと、私のファーストBMWは、2000年に登場したF650GSだった。16歳で免許を取得し峠小僧から入った私にとって、20歳そこそこで手に入れたF650GSは衝撃的だった。
長距離走行も快適にこなすため、北海道をはじめ全国各地へ何泊ものロングツーリングに出かけた。市街地、高速、ワインディング、オフロード、どんなステージであっても、素晴らしいライディングプレジャーをもたらしてくれた。
BMWモトラッドの世界に引きずり込まれどっぷりと浸かった私は、そのままBMW専門誌の編集部の扉をたたき業界入り、現在に至っている。
今も続く、この物語の元となったF650GSは、10年ほど所有した後、増車や環境の変化などもあって手放してしまったが、「手元においておけばよかった」、「いい出物があれば買いなおそう」と今も考えている。それほど思い入れがある一台なのだ。
だがしかし、時は流れ、時代は変化した。

昔付き合っていたパートナーとの素敵な思い出が頭に残っており、また再会したい。そう思うのは良い。当然のことだとも思う。ただ時間は残酷であり現実はそう甘いものではないということは、50歳目前にして十分理解している。
そのような中登場したF450GSに心をときめかせてしまうのは、必然的ともいえることではないだろうか。
技術説明会に参加した際、もしかしたら、このF450GSは“あの時の感情”を再び呼び覚ましてくれるのではないだろうかと思った。そして今回、試乗テストを行って、その気持ちは間違いないことだと確信した。
すでに私の周囲だけでも3名がオーダーをかけた。そのほかにも購入を考えているという話は後を絶たないことからも、成功は約束されていることがわかる。
つまりF450GSは、新たなBMWモトラッドの歴史を切り開き、後世語り継がれるマイルストーンとなることは間違いないことなのだ。
BMW Motorrad F450GS(2026)詳細写真

完全新設計の水冷並列2気筒。420cc、48ps/8750rpm、43Nm。135度位相クランクで、バランサーで振動を殺し、鼓動は残す。クラッチカバーに刻まれた「BMW ERC」が、このモデルの本丸を物語る。下にはアルミ製アンダーガード。小さいGSだから簡素、ではない。

KYB製43mm倒立フォーク、19インチフロントタイヤのセット。舗装も未舗装も見据えたGSの顔だ。キャストホイールが標準でスポークホイールはオプション設定となる。ストロークは180mm。冒険心を揺さぶり、それに応える走破性を、ここに表している。

リアは17インチ。アルミ製スイングアームにシングルディスク、チェーン駆動。ショートマフラーは車体に沿わせ、オフでの当たりを嫌った配置だ。サスペンションはKYB製モノショック、ストローク180mm。軽量コンパクトでも、GSらしい足まわりを備えている。

くちばし状のフェンダー、Xシェイプのデイライト、ラリースモークのシールド(GSトロフィーに標準)。ひとめでGSだと訴えかける顔つきだ。BMW自身も「正真正銘のGS」と打ち出す表情で、Fシリーズの新型では終わらせない。GSトロフィーグレード標準装備となるハンドガードも、オフを意識した装備である。

6.5インチTFT。写真はEnduroモード。速度、ギア、回転計、外気温まで一目で掴める。Rain/Road/EnduroにABS Pro、DTC、MSR。USB-C電源もコクピット下に備わる。上位モデルと同等の装備で、プレミアムな使い勝手を実現し、所有欲も満たしてくれる。

スイッチボックスにはBMWのアイデンティティであるマルチコントローラーをレイアウト。直感的に操作できモード切替から各種セッティングまで容易に行える。ゴールドのハンドルバーは、着座位置、ステップ位置などの関係性が、他のGSファミリーと同じように操作できるよう配置されている。

オフを意識したワイドなペグ。シフト操作も明確だ。そしてGSトロフィーのみ、イージー・ライド・クラッチ(ERC)が標準。遠心式で、発進・停止・低速までレバーを切らずに操れる。オフロードの「怖さ」を一段、下げる装備である。

シート高は845mm。フラットで前後左右に荷重移動をしやすい。パッセンジャーシートはセパレートタイプとなっている。今回の試乗時間は合計約2時間と短いものだったが、機会があればロングツーリングに出て、疲労度を確かめたいところである。

スポーツとGSトロフィーが採用するスポーツサスペンションには、フォークトップには減衰アジャスターが備わっている。今回の試乗ではエクスクルーシブグレードに触れることが出来なかったが、サスペンションの違いは、乗れば伝わってくるだろう。

リアサスペンションはKYB製モノショック。サスペンション上部の取り付け位置からステアリングヘッドまでを一直線に結ぶようなレイアウトは、F 800 GSやF 900 GSにも通じる設計思想だ。前後の荷重を素直に受け止め、軽快なハンドリングへつなげる。コンパクトな車体の中にも、FシリーズのDNAが息づいている。

テールセクションは、余計なものを削ぎ落としたシャープな造形。シート後方からリアエンドへ向かって絞り込まれるラインが、車体を実際以上にスリムに見せている。テールランプとターンシグナルもコンパクトにまとめられ、GSらしい機能性を保ちながら、スポーツバイクのような軽快感も漂わせるデザインだ。

燃料タンク容量は14L。カタログ値約26.3km/Lの燃費性能と組み合わせることで、約350km以上の航続距離を確保している。タンクまわりはグレードごとにカラーリングが異なり、コスミック・ブラックがエクスクルーシブ、レーシング・レッドがスポーツ、レーシング・ブルー・メタリックがGSトロフィー。色を見れば、どの仕様かがひと目でわかる。

パッセンジャーシートを外すと、ETC 2.0車載器やOBD診断アダプターなどが収まるスペースが現れる。大容量とはいかないものの、書類や小物を置けるユーティリティスペースも確保。アドベンチャーモデルとしての実用性を、見えない場所でもきちんと押さえている。電子装備の収納も、すっきりと整理された印象だ。
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