【BMW Motorrad R1300GS Adventure 試乗記】その巨体におののくことから始まる、深き付き合い
- 掲載日/2026年06月23日【試乗インプレ】
- 取材協力・写真/BMW Motorrad 取材・文/小松 男 衣装協力/Alpinestars Japan


誰も越えられない高き巨塔
GSアドベンチャーだけの世界
まず大前提として、BMWモトラッドには「GS」という大きな看板モデルがある。その歴史は古く、初代となるR80G/Sが登場したのは1980年。今や半世紀近い歴史を誇る存在となった。
一方、「GSアドベンチャー」が誕生したのは2002年のR1150GSアドベンチャーからだ。こうして見ると、GS登場からかなり時間が経ってから派生したモデルのように思える。しかし実際には、1980年代のパリ・ダカールラリーでBMWワークスが活躍した流れを受け、ビッグタンクやアンダーガード、ロングスクリーンなどを装備したR100GS PDが存在しており、これこそ現在のGSアドベンチャーへと続く源流のひとつと考えられている。

一般的にGSアドベンチャーは、GSシリーズの頂点に位置するフラッグシップモデルとして語られることが多い。それは決して間違いではないが、私自身はGSとの間に優劣があるとは考えていない。両車は明確にキャラクターが分けられており、用途や好みに応じて選ばれるべき存在だからだ。
なにしろ、ただでさえ大柄なGSに対し、GSアドベンチャーはさらに大きい。しかし、その圧倒的な存在感とは裏腹に、走り出してしまえば見た目ほど手強いモデルではない。むしろシーンによっては、GS以上の安定感や安心感をもたらしてくれることさえある。
今回はR1300GSアドベンチャーをテスト。その特徴を解説しながら、唯一無二とも言える乗り味に迫ってみたい。

BMW Motorrad R1300GS Adventure(2026) 特徴
タフギア感あるスタイリングに
至れり尽くせりてんこ盛り
R1300GSアドベンチャーのスタイリングは、R1300GSとの差別化が明確に図られた。これまでのGSアドベンチャーはGSの派生モデルという印象が強かったが、現行モデルはより独自性を高めた力強いデザインを採用。30Lもの容量を誇る角張った燃料タンクや肩を張ったような上半身は、タフなギアを思わせる雰囲気を漂わせている。一方で、フロントノーズはあえて短くデザインされており、オフロード走行時に前輪位置を把握しやすくするなど、機能面への配慮も抜かりない。

搭載されるエンジンは、最高出力145ps、最大トルク149Nmを発揮する水冷DOHC水平対向2気筒ユニット。R1300GSから採用された新世代ボクサーエンジンであり、トランスミッションをエンジン下部に配置することで全長を短縮。従来型よりもコンパクトなパッケージングを実現している。もちろんBMW伝統のシャフトドライブも継承されており、長距離ツーリングにおける高い信頼性も魅力だ。
車体面では、BMW独自のEVOテレレバーとEVOパラレバーを採用。加えて電子制御サスペンションDSAが標準装備される。さらに注目したいのがアダプティブ車高制御だ。停車時や極低速走行時には自動的に車高を下げ、高速走行時には本来のサスペンション性能を発揮するというもの。大型アドベンチャーモデルの弱点とも言える足つき性への不安を軽減しつつ、本来の走行性能も犠牲にしない先進技術となっている。

そして、R1300GSアドベンチャー最大のトピックと言えるのが、BMWモトラッドが新たに投入したASA(オートメイテッド・シフト・アシスタント)だろう。これは一般的なスクーターのような無段変速機ではなく、通常の6速ミッションをベースにクラッチ操作とシフト操作を自動化したシステムである。ライダーはDレンジを選択すれば完全自動変速で走ることができる一方、Mレンジでは自らシフトペダルを操作してギアチェンジを楽しむことも可能。しかも、そのシフトペダル自体は機械的にミッションへ接続されているわけではなく、電子制御への入力装置として機能する。まさにBMWらしいハイテク技術と言え、現在ではR1300RTやR1300RSなど、BMWモトラッドの主力モデルへと展開が進められている。

そのほかにも、ACC(アクティブクルーズコントロール)や前車接近警告、車線変更警告機能などを含む先進ライダーアシスト機能も充実。さらにグリップヒーターやシートヒーター、電動スクリーン、パニアケース装着を前提とした高強度リアフレームなど、長距離ツーリングで役立つ装備も充実している。まさに「全部入り」と呼びたくなる内容となっているのだ。

BMW Motorrad R1300GS Adventure(2026)試乗インプレッション
配下に置く快感を得られるが
侮ることも許されない巨体
あれは確か2003年のことだ。当時20代前半で、大型自動二輪免許を取得したばかりの私のところにF650GS(←後にこの車両が私の最初の大型バイクとなる)に乗って訪ねて来た知人と、一緒にいた別の友人が乗ってきたのが、当時登場して間もないR1150GSアドベンチャーだった。
興味津々の私は「半クラあまり使わないでよ」と心配するオーナーをよそに、借りて走らせてみた。すると、巨体からは考えられないほど扱いやすく一瞬で惚れてしまったのだ。その後すぐにBMW専門メディアの編集部に身を置くことになり、現在まで歴代GSアドベンチャーに触れてきた。

R1300GSアドベンチャーは、デザインからの視覚的錯覚があるかもしれないが、旧モデルと比べても大きくなった印象を受ける。しかし、停車時に車高が下がるアダプティブ車高制御を採用しているおかげで、跨ってみると足つき性は想像していたよりもはるかに良く、安心感をもたらしてくれる。先述した初代モデルなどは片足立ちを強いられたのに、R1300GSアドベンチャーは両足が地面に着く。この差、メリットはストップ&ゴーの多い市街地で大きく効いてくる。

エンジンを始動し、まずはシフトモードスイッチを操作しDレンジに入れて走り出す。最近は、各メーカーが様々なオートマチックトランスミッション機構を用いたモデルをマーケットに投入しているが、その中でもASAの感触は良い。特にDレンジであってもシフトアップ/ダウンのタイミングが絶妙で、これは様々なライダーの操作傾向を研究し、反映しているのだろうと感心させられる。
もちろん足元のチェンジレバーを操作してシフトチェンジをすることも可能となっている。ちなみにチェンジレバーはミッションにつながっているわけではなく、あくまでもスイッチとなっており、その電気信号が送られてシフトチェンジを行うものだ。だから、引っ掛かりなどを感じることもない。

高速道路を使い、都市部から山間部へと足を運ぶ。もはや説明不要と思えるほど、高速移動は快適だ。手元のスイッチを使い大型スクリーンを上方にセットすれば、体にあたる風をほぼ防ぐことが出来、風切り音すら気にならないくらいだ。 GSよりも車重が大きいこともあり、しっとりとした乗り心地で包み込んでくれる。
追従式クルーズコントロールとの組み合わせにより、もはやライダーが手を出す部分はなくなったかのように思えてしまうが、もし飽きてきたら、マニュアル的操作を行えば、即座に素晴らしいパフォーマンスを意のままに操れる。それを繰り返していれば、あっという間に目的地まで移動している。R1300GSアドベンチャーは、そのようなモデルなのである。

ワインディングロードや未舗装路などでの運動性能に関しても、伝えておきたいことがある。
まず触れておきたいのが、BMW伝統のテレレバーによるハンドリングだ。テレレバーとは、サスペンションとステアリングの機能を分離した独自機構である。これにより、一般的なフロントフォークを縮めて旋回するということがない。いつでも踏ん張った状態でタイヤは路面を掴んでくれる。
この感覚は未だに私がBMWモトラッドを好む点にもなっており、R1300GSアドベンチャーも、素晴らしいコーナリングを楽しむことが出来る。

ダイナミックモードにセットすれば、車格を忘れさせてくれるほど、快活な走りを楽しめる。ワインディングを攻めるようなスポーツバイクではないにも関わらず、それらを凌駕するほどのポテンシャルがあるのだ。
未舗装路での安定感も素晴らしく、私のように不慣れなライダーであっても、そこいらのフラットダートであれば気持ちよく走ることが出来る。ただ、やはり道幅の狭い未舗装路林道や、ガレ場などでは気を遣う。しかしそれは、多くのビッグアドベンチャーセグメントのモデルで感じる部分でもある。

以前R1300GSアドベンチャーの発表説明会に参加した際、「まだライダーが、足元でシフトチェンジを行いたいと思い、シフトチェンジレバーを用意した」という話を聞いた。確かに、ASAは素晴らしい出来であり、しかもここ2年で熟成が感じられる。その上で、ないものねだりではあるが、クラッチレバーも設けてもらっても良かったかもしれないと思う。

これだけ大きくて、強靭なパフォーマンスを持つモデルを配下に置くことが出来る。この快感は、R1300GSアドベンチャーだけが持つ世界観と言っていい。
いまやおいそれと手を出せる価格ではなくなってしまったが、興味を持ったならば、ぜひ触れ、できれば所有してもらいたい。
BMW Motorrad R1300GS Adventure(2026)詳細写真

搭載されるのは、最高出力145ps、最大トルク149Nmを発揮する水冷DOHC水平対向2気筒エンジン。トランスミッションをエンジン下部に配置する新設計により、従来型よりもコンパクトなパッケージングを実現している。低回転域から力強く、高速巡航まで余裕たっぷりだ。

フロントにはBMW独自のEVOテレレバーを採用。サスペンションとステアリングの機能を分離することで、ブレーキング時の過度なノーズダイブを抑制する。長いサスペンションストロークと電子制御サスペンションDSAとの組み合わせにより、快適性と走破性を高いレベルで両立している。

リアには進化型となるEVOパラレバーを採用。シャフトドライブならではの高い信頼性を確保しながら、優れた接地感と安定性を実現する。電子制御サスペンションDSAやアダプティブ車高制御との連携により、積載時やタンデム走行時でも安定した姿勢を維持する。

GSアドベンチャーを象徴するのが、30L容量のアルミニウム製燃料タンクだ。左右に大きく張り出した独特の造形は圧倒的な存在感を放つだけでなく、長距離ツーリングでの航続距離にも貢献。各種バッグ類やアクセサリーの装着を想定したアタッチメントポイントも備えている。

特徴的なX字型デザインを取り入れたLEDヘッドライトを中心に、レーダーセンサーや大型スクリーンを効率よく配置。スクリーンは電動調整式となっており、防風性能も高い。また、短くデザインされたフロントノーズにより、スタンディング時に前輪位置を把握しやすく、オフロードでの安心感向上にもつながっている。

大型リアキャリアは荷台としてだけでなく、純正アルミケースの装着を前提とした構造となっている。車体後部には後方監視用レーダーを装備し、車線変更警告などのライダーアシスト機能にも対応。長距離ツーリングでの実用性と先進性を両立した設計だ。

視認性に優れる大型TFTカラーディスプレイを採用。写真上部にはBMW純正のConnectedRide Navigatorを装着しており、ツーリングでの利便性を高めている。各種車両設定や走行情報は、BMW伝統のマルチコントローラーから直感的に操作できる。

ASA仕様車のためクラッチレバーは備わらない。左側スイッチボックスにはクルーズコントロールや各種電子制御の操作系を集中配置。BMW伝統のマルチコントローラー(ジョグダイヤル)を使うことで、TFTディスプレイの各種機能を直感的に操作できる。

タンク上面には小物収納スペースを設置。スマートフォンやETCカード、財布などを一時的に収納するのに便利な装備だ。かつてのR100GS PDにも見られた実用的なアイデアであり、長距離ツーリングを重視するGSらしい装備と言える。

ライダーシートとタンデムシートは独立した構造を採用。長時間走行を前提とした十分な厚みを確保し、高い快適性を実現している。ライダーシートは高さ調整機能も備えており、体格や用途に合わせたセッティングが可能だ。

BMWを象徴するフロントサスペンション機構であるテレレバー。フロントフォークはステアリング機能を担い、サスペンションは専用アームで作動する独自構造となる。ブレーキング時の姿勢変化を抑えながら、優れた接地感と安定したハンドリングを実現する。

幅広のステップバーはスタンディング走行時の操作性にも配慮した設計。ASA搭載車であっても左側にはシフトチェンジレバーを備え、ライダー自ら変速操作を行うことが可能だ。なお、このレバーは機械的にミッションへ接続されるのではなく、電子制御への入力装置として機能している。

キーレスライドシステムを採用し、キーを取り出すことなくエンジン始動やステアリングロックの操作が可能。ツーリング先で荷物を多く持つ場面でも利便性は高く、プレミアムツアラーらしい快適性を提供する。

タンデムシート下にはETC車載器などを収納できるユーティリティスペースを確保。一方、ライダーシート下にはバッテリーや診断用OBDコネクターなどが配置されている。整備性と実用性を両立したパッケージングもBMWらしい部分だ。
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