VIRGIN BMW | バイクの桃源郷、マン島:第4回 ヤマシタのマン島雑感記 トピックス

バイクの桃源郷、マン島:第4回 ヤマシタのマン島雑感記

  • 掲載日/2011年07月22日【トピックス】
  • 取材・写真・文/山下剛
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まずご覧いただくのは、マン島TTマウンテンコース開設100周年を祝って行われたエキシビション『MILESTONES OF THE MOUNTAIN COURSE PALADE LAP』のスタート場面です。マウンテンロードがTTコースとして使われるようになってからこれまでのメモリアルマシンが、TTコースをパレード走行したのです。

また行きたい…というより
いっそ住んでしまいたい島

4回に渡ってお届けしてきたマン島見聞録、いよいよこれが最終回です。「マン島TTの記事」としては雑誌やウェブであまり紹介されなかったであろう、おそらくはこれからもネタにされにくいモノやコト、ヒトをテーマにお届けします。言い方をかえると、私、ヤマシタ個人の雑感記です。

このままにしておけばハードディスクの肥やしとなること必至のネタを、この機会にこちらでご覧いただこうというわけです。バージンBMWでの掲載ではありますが、BMWという枠にこだわらずにマン島の魅力、そしてバイクのおもしろさと楽しさを感じてくだされば是幸いに存じます。

では、じっくりとどうぞ。

フォトTOPICS(写真点数/228枚)

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011911年、マウンテンロードがTTコースに組み込まれて初めてのシニアTTを制したのがこのマシン、584インディアン。当時のライダーはオリバー・ゴッドフレイで、5周のレースでタイムは3時間56分10秒フラット、平均速度47.6mph(76.2km/h)のリザルトを残しています。さすがに100年前の記録を見ると隔世の感がグンとわいてきます。この日、このメモリアルマシンを走らせたのはデイブ・ローパーで、彼は1984年のヒストリックTTでマチレスを走らせて優勝しています。
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02こちらは1923年に初のサイドカーTTで優勝したダグラス600。当時のライダーはフレディ・ディクソンで、彼はその後ソロでも活躍、1927年にはシニアTT6位、ジュニアTT優勝をHRDとともに決めています。この日走らせたライダーはグラハム・ニール。
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03ベロセット350にまたがるイワン・ローデスは50~60年代にTTに参戦、活躍したライダーです。当時はスタンレー・ウッズが走らせ、1936~39年のジュニアTTとシニアTTで大活躍しています。39年のシニアTTでの優勝タイムは3時間10分30秒、平均時速は83.19mph(133.1km/h)を記録しています。
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04ジョン・キッドソンは1960~70年代にモトグッチやノートン、NSUなどを走らせ、TTで活躍したライダーです。彼が走らせているAJS500は、1920~30年代にジミー・シンプソンが走らせ、1925年にはジュニアTTで2位入賞を果たしています。
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05マウンテンコースが組み込まれてから初めて平均速度90mphを記録したフレディ・フライスが走らせたノートン500、それをこの日走らせたのは70~80年代に活躍したマルコム・ウィーラー。
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06ノートン500はジェフ・デュークが走らせて1950年代にマン島TTはもちろん世界選手権でも優勝を果たしたマシン。パレードラップで走らせたのは、彼の息子のピーター・デューク。
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07いよいよホンダの登場、マシンはおそらくRC162。走らせているのは1961年にホンダワークスに移籍したルイジ・タベリその人。彼は125TTで1962年に優勝しています。
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08こちらはBMWの500ccフラットツインを搭載したサイドカーで、1960年代に活躍したマシンです。走らせたのはディック・ハーウェズで、彼はなんと1966年から2008年までサイドカーTTに参戦しているツワモノです。
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09世界選手権参戦50周年を迎えたヤマハは、この直前に歴代マシンを勢揃いさせてパレードラップを行いましたが、こちらのパレードラップにも何台かのマシンがエントリーされていました。1965年にはフィル・リードがマン島TTで優勝、ヤマハにとって125ccクラスでの初優勝をもたらしています。
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10そのフィル・リードは水冷V型4気筒250ccのRD05Aを走らせました。このマシンは1966年のライトウェイト250TTで2位を獲得、その年の世界選手権でもランキング2位入賞を果たしています。フィル・リードはマン島TTと世界選手権でそれぞれ8回も勝利した偉大なライダーであり、またとても気さくな人物であります。
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11ローズ・ハンクスは1968年のサイドカーTTで義兄弟のノーマン・ハンクスと組んで参戦して2位入賞、女性として初めて表彰台に立ったパッセンジャーです。そのマシンを走らせるのは彼女の夫のロイ・ハンクスで、彼は1966年から今年まで(!)サイドカーでTTを走り続ける鉄人。ちなみにパッセンジャーは彼らの娘のジュリーというサイドカーファミリーです。
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12MVアグスタを駆るイタリアンライダー、ジャコモ・アゴスチーニは、1965年から72年までにマン島TTを16戦走り、そのうち10回が優勝という偉大な記録を持っています。ジュニアとシニアのいずれでも優勝というダブルタイトルを1968~70年、そして72年の4度も成し遂げている偉人でもあります。
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13マイク・ヘイルウッドはホンダにとって初となるマン島TT250ccクラス優勝をもたらしたライダーでもあり(同年125ccでも優勝してダブルタイトルを獲得)、モーターサイクルレース史を語る上で外せない重要人物。1966年と67年はホンダ500cc(RC181)を走らせてマン島TT2年連続優勝を達成しています。とくに67年はライトウェイト250、ジュニア、シニアの3クラスを制覇という記録も打ち立てました。今回パレードラップさせたのは、彼の息子であるデイビッド・ヘイルウッド。
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14マン島TTで8回の優勝を誇るチャス・モーティマーは、1976年にはヤマハを駆ってジュニアとプロダクションTTでダブルタイトルを勝ちとりました。この日走らせたTZ250は、1978年にマイク・ヘイルウッドが走らせたマシン。ヘイルウッドは翌年ドゥカティで参戦して優勝、世界中を驚かせましたが、実は78年に前哨戦ともいうべきかたちでマン島TTを走っていたのでした。
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15エントリーした4レースのうち3レースで表彰台に立ったガイ・マーティンが駆るのは、ジョン・ウィリアムズが1976年に走らせたスズキRG500。このマシンでウィリアムズはマウンテンコース初となる平均速度110mphを記録したのです。
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16ヤマハ2サイクル500ccエンジンを搭載するサイドカーは、ジョック・タイラーがラップレコードを樹立したマシンで、この記録は9年間破られることがなかった偉大な記録です。走らせたのはスティーブ・ウェブスター/ポール・ウッドヘッド。
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17チャーリー・ウィリアムズは1971年から84年までのマン島TTレース活動期間中、ほとんどヤマハで戦い、数度の優勝を飾ったライダーです。このパレードラップでは、ウィリアムズ自らがライディングしてファンを沸かせていました。
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18ジョイ・ダンロップはマン島TTレース26回優勝の偉大な記録を持つライダーで、その記録はいまだ破られていません。しかしダンロップは2000年にエストニアでの公道レースでクラッシュ、他界してしまいました。その彼を偲ぶ銅像が、TTマウンテンコースのバンガローと呼ばれる場所に佇んでいます。
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19デイブ・モーリニューは14回もマン島サイドカーTTを制したライダーで、1985年から2010年までほぼ毎年参戦し続けてきました。この日はヤマハ2サイクル750ccのマシンを操り、自らパレードラップに臨んでいます。
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20スティーブ・ヒスロップは1989年、ファステストラップで初の120mphオーバーを達成したライダーで、11回もの優勝を経験したトップライダーです。パレードラップでは自らが駆っていたVFR750(RC30)を走らせました。
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21スティーブ・ヒスロップが1992年のシニアTTでカール・フォガティとトップを争い、競り勝ったマシンがこの588ノートン。このときのレースは、多くのマン島TTファンたちが歴史に残る一戦として挙げる名勝負といわれています。
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221988年から99年までの12年間で11勝を記録したフィリップ・マクカレン。96年には4クラスで予選と決勝ともに1位という偉大なリザルトを残し、マン島TTの歴史に名を刻みました。この日のマシンはその時に走らせたホンダVFR(RC45)です。
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231999年には3クラス制覇を達成、翌年も翌々年も勝利を重ね続けながらも02年、プラクティス中のクラッシュで他界したデイビッド・ジェフリーズ。彼のヤマハ時代のR1を、彼の叔父であるニック・ジェフリーズがパレードラップで走らせました。ニック自身、1975年から2002年まで27年もの間マン島TTを走り、優勝経験もあるライダーです。
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24この後に行われたシニアTTでも優勝し、勝利数を17まで伸ばしたジョン・マクギネス。今のところ、ジョイ・ダンロップの記録にもっとも近いトップライダーです。マクギネスの記録はそれだけにとどまらず、2007年には初の130mph超のファステストラップ叩き出しており、それが現在の最高記録となっています。
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252009年よりはじまったゼロエミッションクラス『TT-ZERO』は、未来のモーターサイクルである電動バイクのレース。2010年に優勝したのは、プライベーターでMotoGP参戦を狙っていたこともある、アメリカの『モトシズ』のマシン。モトシズは今年のTT-ZEROも制して2連覇を達成しました。パレードラップではモトシズ代表でもあるマイケル・シズ自身がマシンを走らせました。ちなみにこのマシンは今年のレースにも参戦しており、2位入賞(1位はモトシズの最新鋭マシン)しています。
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262010年、SS、ST、SB、シニアとすべてのクラスにおいて優勝、サイドカーをのぞく5レースすべてを制する(SSは決勝2レース)という前人未到の記録を作ったイアン・ハッチンソン。この連載の1回目でも紹介したとおり、昨年の英国スーパバイク選手権でクラッシュ。まだ完治していないにもかかわらず、こうしてパレードラップに参加していました。クレッグ・ニー・バーではバーンナウトを披露、ファンサービスもバッチリだったようです。来年までにリハビリをして、トップ争いに戻ってきてもらいたいものです。
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27さて、パレードラップの後は、グランドスタンド周辺を眺めてみましょう。グランドスタンドには公式グッズの売店や、軽食や飲み物を販売するスタンドにくわえて、参戦ライダーたちのパドックやピットがあり、いつも多くの人たちで賑わっています。
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28こちらはジョン・マクギネスとキース・アーマーを擁するチーム『HONDA TT LEGENDS』。すでに伝説を名乗るとはすごい名前ですが、マクギネスはすでにその域に達しつつあるのでなんとも言えません。こうしたトップチームのパドックは大掛かりで、大型トレーラーをベースに、大型テントを組み合わせて作られます。まずはこうしてピット部分にあたる地面を水平に、頑丈にするために木枠で足場を組みます。
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29足場が組みあがったらその上にコンパネを敷いていき、床を作ります。レースウィークはおよそ2週間におよびますから、ピット作りもこのようにしっかりとしたものになるわけですね。
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30というわけで間をだいぶ端折っちゃいましたが、床にチームカラーのマットを敷き、テントを設置したらピット&パドックの完成。テントの横幕はこうしてオープンになるので、ピット作業も見られるし、マシンの様子もじっくりと観察することができるのです。
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31ピット&パドックの設置場所は、TTコースに近い一帯にトップチーム、離れるに従ってプライベーターのエリアになっていきます。ここはトップチームエリアの2本目の路地、つまり中堅チームエリアです。左手が松下ヨシナリが加入していた『BMW PENZ13.com』、右手が『Bournemouth KAWASAKI』のピット&パドックです。
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32そして通路をひとつ隔てたエリアに来るとプライベーターのチームのエリアになります。しかしプライベーターといってもこちらのエントラントたちのトランスポーターは日本のそれとは段違いで、こうした巨大トレーラーも多く見られます。このトレーラーはキャビン全体が上にスライドすることで内部空間を広くするタイプ。
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33こんなふうにキャビンが横にせり出して室内空間を広くするバスも見られます。なんだかやたらとカッコイイです、このギミック。
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34もうひとつ通路を隔てると、こんな具合にキャンピングカーがズラリとならぶエリアになります。ドーム型テントもちらほらと見られるようになってきて親近感が増しますが、それにしたってこの数のキャンピングカーが並ぶさまは日本では見られない光景です。
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35そんなエリアの一角はキャンプ場なので、写真左にあるように電源もありピット作業に困ることはないようです。モトグッチV11のサイドカー、カッコイイですね!
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36なかにはこんな風にバイク用パーツを販売しているテントもあります。中古車両も販売されていたりするので、こういうショップを冷やかしてまわるのもパドック周遊の楽しみのひとつです。
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37ここだけ見ると単なるキャンプ場に見えますが、このあたりもパドック&ピットエリアです。サイドカーや電動バイクなどがこのあたりを使っているようでした。
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38これはプレスルームに貼ってある、マン島TT主催者からのあいさつです。各国のことばで書かれているのですが、よーく見ると日本語だけちょっとニュアンスが違ってます。しかも手書きっぽいし…ナゼ?
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39パドックに停まっていたクルマのフロントガラスに挟まれていたチラシ。「HAIR SHAVING」てことはスキンヘッドにしてあげるサービス? それともそういう名のイベント? さて真相はどっち…?
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40牛乳でもたっぷりと入ってそうなこのタンクは、レース中のピット作業で使う給油タンクです。マン島TTレースでの給油は落下式になっているのですが、レースが終わるとこうしてオフィシャルがすべて回収します。彼らの作業はとても素早く、あっという間にタンクがピットから消え失せます。
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41日本人初のコースマーシャルの山田大介さんによれば、マン島TTのレースのコースマーシャルは約500人。TTコースは12エリアに分けられ、各エリアに多くのマーシャルポイントがあります。ひとつのポイントにはだいたい5~10人ほどのマーシャルが配置され、レースの安全を守っています。ちなみにそのうちのおよそ7~8割が海外からやってくるそうで、やっぱり彼らもバイク好きですからこうしてライダーたちからサインをもらったりして、TTを楽しんでいます。
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42この写真はシニアTT決勝レース中のひとコマ。何を見せたいかって? ほら、よーく見てください、ライダーが写ってるでしょ? え、それがどうしたって? このホームストレートを通過するときの彼らは160~170mph(250~270km/h)ですから、撮るのむずかしいんですよ、これ。しかも連射なしの一発撮りですから、タイミングだけが勝負。プァーーーーンと迫ってくるエンジンの音を聞きつつパシャッと。まあ、もっとも連射して撮っても結果は同じなんですけどね、キモチの問題です。
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43さて、こちらはマウンテンコースに入り、グースネックを抜けた先にある『ガスリーメモリアル』と呼ばれるポイントのマーシャル小屋。ここまで上がってくると直前の町、ラムジーを一望できる展望ポイントでもあります。でもTTライダーだけじゃなく、マウンテンコースを走りに来る一般ライダーたちも「よーし、開けちゃうぞー!」とばかりにスロットル全開にしちゃう場所でもあるので、なかなか景色を楽しむのもむずかしいのです。
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44ここからはマン島で見かけたBMW以外のレアバイクをご覧いただきましょう。こちらはトレーラーを連結したカワサキZX-10R。しかもトレーラーにはマン島国旗まで掲げてあるパーフェクトっぷり。ナンバーを見たところフランスからやってきたライダーのようですが、トレーラーの中にはいったい何が入ってるんでしょうね。
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45ヒツジ…いや悪魔の頭骨をフロントマスクにしたカスタムマシン。頭骨が本物なのかレプリカなのかどっちかわからないほど精工だし、かなりダークでヘビメタなムードを醸してます。さてこのバイク、車種はいったい何でしょうか。正解は次の写真で。
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46というわけで正解はGPZ900R Ninjaでした。アクが強いから評価はわかれるだろうけど、それよりナニよりこの独創性というか我が道をドッカーンと突き進んでる感じがとてもイイ!
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47今も同じかたちのロイヤルエンフィールドですが、この車両はけっこう古い年式…? そのへん詳しくないためこれ以上わからないので、この写真以降、間違いのご指摘や正解を教えてくれる方は、Twitterアカウント:Yamashita_freeまでお寄せください!
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48グランドスタンド前に停められていたハーレーのVRODカスタムにはけっこう注目が集まってました。とはいえ、こちらではハーレーはかなりの少数派でほとんど見かける機会がなく、ニッポンともっとも対照的なのがハーレーの台数でした。マッドサンデーにはハーレーのオーナーズミーティングも開催されていたのですが、そちらには集まっていたのでしょうか。
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49ベストカスタム賞を差し上げたいのがこちらの自作モペット。ちゃんとナンバー登録もしてあって、マン島の一般公道を走ってました。タンクやスプロケカバーにホンダのウィングマークが貼ってありますが、エンジンはホンダの汎用エンジンだったりするのでしょうか。ちなみにこのモペット、数日後に見かけたときにはトラブルに見舞われたようで、道端でオーナーがあれこれといじり回してました。あの後、直ったのかどうか気になってます。
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50ラムジーの町角で見つけたブラフ・シューペリア。さすがにシリンダーは赤錆だらけですが、70年以上も前のバイクと考えると恐ろしく程度がいいです。こういうクラシックがさりげなく停まっていて、それがさほど違和感ないところがマン島(イギリスもそうかな)のいいところのひとつです。
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51写真を載せたものの、私にはさっぱり車種がわかりません。クラシックに詳しい方、ぜひTwitterアカウント:Yamashita_freeまでお知らせください。
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52このバイクも浅学の私にはさっぱりわからないのですが、フロントブレーキのあたりだとかをはじめとして各部のかたちがステキです。
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53パーラメントスクエアを出発せんとしているヴィンセントHRDのサイドカー。どうもヴィンセントHRDというとコレがアタマにチラついて仕方ありません。
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54ラクシーの町から山奥へと入り込んだ集落で見つけたのですが、すみません、私にはメーカーすらわかりません。どなたかご存じの方、教えてください。
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55さて。こちらはクレッグ・ニー・バーのイン側からの眺めです。マン島に限らずヨーロッパは大気中の湿度が低く、空気が乾いているから青空のヌケ方がニッポンとはまーったく違います。雨雲がないときの空はほんとうにキモチよく、こころまでカラッとしてきます。
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56しかしマン島は天候があまり安定していなくて、朝は雲ひとつない青空が広がっていても、午後になると急に曇りはじめて所によっては雨も降ってくる、翌日はその逆のパターン…なんてことが多い印象でした。これは先ほどの青空から1時間30分後の空です。まったく油断ならない空模様なのです。
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57イギリスは連合国で、もともと独立していた国の集まりなのは皆さんご存知のとおりですが、マン島は英王室属領となっていてイギリス連合の一部ではないそうです。むずかしい話ですね。グランドスタンド前に掲げられていた応援の旗は、左からマン島、スコットランド、ウェールズのものです。
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58マン島の南端にあるポートエリンという町で見つけた旗には6種類の国章が描かれていますが、白と黒で描かれてる国章(左上と中下)は初めて見ました。この旗はどういう連合を表すものなのか、ちょっと調べたのですが判別せず…。イギリスって奥が深い。
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59TT-ZEROでみごと5位入賞を果たした『チームプロッツァ』の宿舎、ダイニングの壁に貼られていた九九の早見表。宿舎といってもバカンスで留守にしている民家を借りているので、ごく普通の(いやちょっと豪華な)一軒家です。この家のこどもたちがこれで九九を覚えるわけですね。おもしろいのは、ニッポンと違って12の段まであること。目からウロコな気分ですが、たしかに9よりも12まで覚えちゃったほうが後々便利。でもどうせなら14段とか、いやいっそ20段、いやもっと覚えて30段くらい…(以下略)。
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60マン島の首都、ダグラスの町を一望する眺め。停泊しているフェリーはTTウィークは増便される上、かなり高速(だいたい3時間程度)ですし、カフェやバーなど船内設備も豪華なので快適な船旅を楽しめます。フェリーの向こうの海沿いには、TTウィーク中のみ設置される移動遊園地も見えます。
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61ダグラスの港にはこんな要塞が残っています。石造りの塔を見慣れないニッポン人は条件反射的にこういう建物に弱くて、思わず「カッコイイ~」なんて口走ってしまうのですが…。
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62夜になるとこんなふうにライトアップされてしまいます。プロムナードの派手なライトアップに合わせてるのかもしれませんが、なんだかラブホテルみたいでゲンナリ…というのはニッポン独特の感覚なんでしょうか。
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63何度か書いてますが、マン島は高緯度にあるためこの季節はとても日が長くなります。この写真を撮ったのは午後9時もすぎたあたりで、こんな感じの夕暮れが午後7時くらいから続きます。夕暮れの斜光がキレイなひとときを日本では「マジックアワー」なんて言ったりしますが、こちらのマジックアワーはとても長く続きます。
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64ただし空気が澄んでいることもあって、日本のような濃い橙色の夕焼けになることはあまりないようです。お天道さんが沈んだら仕事はおしまい、と日本では言いますけど、こっちでそんなふうに日が沈むまで仕事してたら寝る時間がなくなります。「こんばんは」に対応する英語が「Good evening」というのが腑に落ちなかった私ですが、こっちに来て何度か夜を迎えてみて、ようやくその意味がわかりました。
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65といってる間にすっかりと日が沈みました。これは太陽ではなく月が沈むところを撮影したもので、夜空に月があるときは深夜といっても真っ暗になることはありません。北斗七星がずいぶん高い空に輝いているのが、とても新鮮です。
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66ちょっと夜のマン島を歩いてみましょう。幹線道路はほとんどの区間で駐車禁止ですが、裏通りはたいてい路上駐車が認められているので、こんなふうにクルマがびっしりと並びます。
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67プロムナード沿いのパブ。屋内の公共施設は全面禁煙なので、タバコを吸う人たちはグラス片手に表で飲む姿が一般的です。これはマン島に限らずイギリス全土で見られる光景です。
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68ここはフェリーターミナル。前述したようにTTウィーク中はフェリーが増便され、深夜3時に出航する船もあります。ほとんどの商店は夜になると閉店してしまうマン島で、パブとここだけが深夜まで明かりが灯っています。
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69深夜ともなれば出発ロビーで待つ人たちの多くが眠っています。この写真を撮ったのはTTウィークが終わった12日深夜で、出発のピークはすぎていたのですがそれでも100人近いライダーが出発を待っていました。
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70こちらはプロムナード沿いにあるイタリアンレストラン、その名も『パパラッチ』の店内。オーナーがバイク好きのようで、店内の壁にはバイクにまつわる絵が描かれていたり、ポスターが貼ってあったり、バイク好きならニンマリしてしまうレストランです。TTライダーも多く訪れるみたいだから、ここに来ればライダーたちの素顔を見られるかも!?
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71そのパパラッチでおいしかったのが、一風変わったこのピザ。オムレツ状になった生地でトマトソースでからめた肉や野菜がチーズとともに包まれていて…もう一度食べたいなあ。
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72さて、連鎖的にここからは食べ物を紹介しましょう。こちらはイギリスの食事といえばコレといわれるフィッシュアンドチップス。レストランなどで注文すると、その他に煮豆(たいていはトマトソースで煮た大豆)が添えられてきます。これはダグラスにある『TERRACE CHIPPY DINNER』のフィッシュアンドチップスで、マッちゃんのマネージャーでマン島TTに10年以上関わっている淺田さんによれば、マン島でいちばんおいしいとのこと。ちなみに場所はココ
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73こちらはグランドスタンドの売店のフィッシュアンドチップス。テイクアウトの場合だと煮豆ないことが多いです。チップスの味の違いはほとんどありませんが、フィッシュは揚げる油と衣の作り方で、店によって味や舌触り、歯ごたえに違いがあります。うまくないというのが定評のフィッシュアンドチップスですが、大味ではあるもののおいしいファストフードです。
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74こちらもグランドスタンドで売られているホットドッグ。ホットドッグやハンバーガーを頼むと「タマネギは?」と聞かれるのが定番で、「頼むよ!」と答えるとこんなふうに炒めたタマネギを無料で添えてくれます。
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75というわけで、チームピット内でホットドッグとチップスでランチをとる「チームマツシタ」の面々。左から松下ヨシナリ選手、ミカミさん(FRM編集長)、岩間さん(モトラッド鈴鹿マイスター)。フライドポテトのことをチップスというのですが、これにはケチャップやビネガー、またはマヨネーズ(日本のものよりも淡白な味)をかけて食べます。
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76スナックスタンドではハンバーガーも売ってます。これもホットドッグ同様、タマネギを無料で添えてくれます。ホットドッグもそうですが、プレーンなものはバンズとハンバーグ(ソーセージ)だけで、タマネギくらい添えないと野菜はゼロ。いくら軽食といってもシンプルすぎます。
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77これはキャッスルタウンで開催された『POST TT』の会場の売店のチーズバーガー。ハンバーグがしっかりと焼かれていて好印象、食べてみてもやっぱりうまかったです。
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78こちらはローストビーフバップ。このバップというのがバーガーとどう違うのかが最後までわかりませんでした。バンズも同じようだったし…。バンズにローストビーフを挟んでブラウンソースをかけただけ、というこれまたとてもシンプル、かつ想像どおりの味です。ちなみにバンズは日本のバンズよりもやわらかく、さっぱりとした味わいです。これらのファストフードは、おおむね4ポンドくらい。日本円にすると520円くらいですから、やや高めですね。
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79クレッグ・ニー・バーはその名のとおりバーになっていて、こうして窓際の席ならギネス片手にTT観戦できます。このときはスーパーストック決勝レースが終わった後で、磯部カメラマンと一杯やっているところ。どの店もそうですが、日中は店内の照明はついておらず、こうして窓からさしこむ自然の明かりだけ。初めは薄暗いと感じますが、そのうちに慣れてくるとこっちのほうが落ち着いてきます。
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80ギネスで仕事の疲れを軽くいなした後、磯部さんがお気に入りだという場所に連れていってもらいました。先ほど紹介したダグラスを見下ろせる丘がそれで、港を見下ろしているとキジがよちよちと磯部さんに近づいてきました。「お腹空かせてるのかな、いまバナナしかないけど食べるかな」と磯部さん。
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81「バナナでも何でもいいからくれ、食わせてちょうだい、ケンケーン」なんて言うはずはないですが、キジの目つきはハト同様にトボけた感じが憎めない。
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82しかしですね、マン島のどこに行っても遭遇するカモメは目つきがスルドイというかイヤラしいというか、とにかく可愛げがないです。
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83だからこんなふうに、キジがおっとりとバナナをついばんでるとすかさずカモメがやってきてバナナを奪い去っていくのです。かわいくないぞ、カモメ。
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84さて、緯度が高い地域の夏は夜が短いです。午前3時頃からうっすらと空が白みはじめ、午前6時には朝焼けが広がります。夕日が沈む方角と朝日が上る方角がそう違わないのも高緯度地域の特徴です。なので朝日や夕日で方角を見定めるのがむずかしい。どちらもほぼ北と思ったほうが間違いがなさそう?
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85朝やけに染まる牧場地帯。この時間は空飛ぶカモメ以外にも、うさぎが牧草地で遊んでいたり、見慣れない小鳥がエサをついばんでいたりと野生動物をあちこちで見られます。
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86今日もいい天気だから、マン島を散策気分でツーリングしてみましょうか。
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87歩行者用にはきちんと木橋が作られていますが、クリーク(小川)が車道を横断してます。途中でバイクを停めて写真を撮ろうとしたのですが、思いのほか苔で滑るのでやめておきました。
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88ずんずんと山へ向かって走っていたらいつの間にか道がダートになってしまった! というのはウソで、こんな未舗装路の前にはゲートがあります。しかし開けたゲートは閉めておけばいいらしく、進入禁止ではないようです。とはいえ、交通量が少ないことと道幅が狭いこと、たいていはガレ場でしかも岩が大きいので、ビッグオフにはまったく向いていません。ああ、軽量なオフ車で来てみたかった。
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89左右から迫る丘の向こうに見えるのが、マン島でもっとも標高が高いスネーフェル山。あそこまで行ければいいのですが。
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90ちょっと左手を眺めるとこんな景色。正面の山を横切っている線はスネーフェル山頂まで走っている電車の線路。そう、こんな山岳鉄道なのに汽車ではなく電車なのです。20世紀初頭、マン島は交通の近代化に注力していたそうで、マン島TT開催のきっかけもそうしたところに要因のひとつがあるとのことです。
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91スネーフェル山を目指したものの、道は険しくなるいっぽう…。道幅はバイクがすれ違うにも気を使うほどで、しかもコブシ大の岩が浮いた状態で転がっています。R1200GSアドベンチャーではこれ以上は困難と判断、えっちらおっちらと何度も切り返して向きを変え、山を下りてきたのでした。
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92マン島観光のひとつ、ラクシーホイール。1854年に建造された巨大水車で、以前このあたりにあった鉱山のために水を汲み上げていたそうです。いまは水車こそ回っていますが送水はしておらず、観光用として回り続けているのだとか。
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93マン島の観光名物のひとつ、軌道馬車。ダグラスのプロムナードを運行しているので、プロムナードをバイクやクルマで走るとこの馬と並走できます。これも交通近代化を図っていたマン島施策のひとつです。
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94こちらがマンクス電気鉄道の電車。車体は木製で、やはりこれも現在は観光用鉄道ではありますが、19世紀末に施設された電気鉄道が当時のままに現存しているという貴重な電鉄です。この電車はダグラスからラクシーを結んでいて、ラクシーからはスネーフェル登山鉄道に乗り換えることができます。マン島には電車だけでなく、機関車トーマスのモデルになったといわれている蒸気機関車が走っています(残念ながら写真を撮るチャンスに恵まれませんでした…)。こと、交通に関してはマン島は島全体が博物館といっても過言ではありません。
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95ダグラスからラクシーまで、マンクス電鉄の線路はこうして道路と並行して走っています。けれどどの区間でも線路と道路を隔てる柵もガードレールもなく、「どこがキケンかを判断できるんだから、そんなものいらないでしょう」というスタンスのようです。もっとも電車もクルマも交通量が少ないから成り立つわけで、ニッポンでこれをやったら事故が頻発することは間違いないでしょうね。
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96TTコースにもなっているサルビーストレートの終わりに近いところにあるベンチ。マン島にはそこかしこにベンチがあり、たいていは亡くなった方々を悼むための祈念碑的な存在です。ベンチを取り囲む石垣はとても立派な作りをしています。
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97マン島の石垣はイギリス本島(という表現は適切ではないとは思いますが)に比べても、その作りがとても丁寧で、美しいものが多いです。このあたりは観光立国であることも大きな理由かもしれません。上部が牙状になっているのは石垣の上に座ったり、歩いたりを防止するためです。
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98ラムジーにあった改装中(?)の小学校の壁。こちらではこんなふうにゴミ箱が壁に設置されていることが多いのですが、そもそもゴミ箱の数がかなり多いです。
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99ラムジーの町にある公衆便所。バス停でもないのに公衆便所にベンチがあるのも日本的感覚からするとちょっとフシギです。
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100「PUBLIC CONVENIENCE」と書かれたこの建物も公衆便所です。空いててよかった!(古ッ!)
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101イギリスでもそうでしたが、マン島でも空き家や売家が目立ちました。淺田さんによれば、イギリスではそもそも福祉政策が失敗して長期的な不景気だったところへ、リーマンショックが加速させたそうです。マン島もその影響は逃れられなかったようで、ダグラスやラムジーといった町々でこうした空き家が見られました。
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102フロントガラスの貼り紙には「FOR SALE」の文字と電話番号が記されてます。つまり路上でクルマの個人売買をしているわけです。路上駐車に時間制限もないからこそ成り立つ商売ですね。
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103ラムジーの裏通り。路肩の黄色の二重線は駐車禁止ですが、何も線が引かれていないところは駐車可能です。バイクの場合は道路に対して垂直方向に停めるのが一般的です。このほうが多くの台数を駐車できるし、発進時もスムーズに出られるというわけです。
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104これは時計や貴金属などのアクセサリーを売っている店のショーウィンドウ。TTグッズを販売しているわけではないのですが、おそらくはTTウィーク中はこんなふうに飾り付けしてライダーたちの目を引いているのでしょう。
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105キャッスルタウンのレースオフィスの屋根にあった風向計は、風見鶏がバイクになっていました。
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106どこか小洒落た雰囲気を持つ石造りの家につい見入ってしまいますが、おもしろかったのは屋根の煙突。これがいろいろなかたちがあって、見ていて飽きないのです。
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107かたちによって性能が違うとも思えないので、おそらくは職人の意匠なのだと思うのですが…それとも「排気効率2倍(当社比)」なんて煙突もあるのかもしれません。
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108肉屋の店頭。ソーセージが極太かつ巨大でやたらとうまそうですが、やきとりも売ってるんですね、これは意外。
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109ロゴマークがかわいらしいフィッシュアンドチップス屋。ぜひとも味わってみたかったのですが、あいにく定休日でした。
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110バイクのゼッケンを番地表示にしている粋な表札。これはマン島ならではですね。
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111ゲートボールに似たルール(だと思う)の競技に興じる爺さまたち。TTレースなんて狂騒的なことをやってるかと思うと、隣町ではこんな穏やかでのんびりした時間が流れています。これがマン島の大きな魅力です。
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112さて、ちょっと町を離れて6000万年以上前に形成されたといわれる大地を味わいに行ってみますか。
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113淡路島ほどの小さな島なのに、町からちょっと離れると「これぞ大地だ!」と叫びたくなるほどの広大な景色に包まれます。山というよりは丘と呼びたくなる低山がなだらかに続くために空も視界も広く、日本で生まれ育った身としてはスケール感をグラグラと揺すぶられます。
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114マン島にはグリーンロードと呼ばれる未舗装路があります。先に紹介した道幅の狭い山岳ダートも、やはりグリーンロードです。看板には「歩行者とヒツジに注意」の標識があり、馬とバイクが走れることを意味するアイコンが描かれてます。さて、入ってみますか。
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115グリーンロード出入口にはゲートが設置されてる場合もあります。その場合、先に記したとおり開けたゲートは閉めておけば問題ありません。また、歩行者用にはゲート脇に簡易扉が取り付けられている場合もあります。動物以外は知恵で越えろ、というわかりやすい仕組み。逆に考えると、このゲートで躊躇して超えられないのなら、動物並みの知恵しかないってことですね。
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116このときはFRM編集長のミカミさんといっしょだったのですが、オフロードの達人だけあって、ガレ場にもかかわらずアドベをブワッと走らせて行っちゃいました…あー、置いてかないで!
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117「そんなことするわけないじゃん、がっはっは」とミカミさんが戻ってきて、今度は私の番。さっきの山岳路と違ってここは平原だから道幅も広く、石も小さいからノーマルタイヤ(コンチネンタル)のアドベでもけっこう走れます。なんてこと言ってる割にはヘッピリ腰なのはご愛嬌!てことで。
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118イギリスは過去に大規模な伐採をして牧場や畑を作ったために森があまり残っていません。ですが近頃は森を作ろうとしているようで、左手に見えるように針葉樹林の植林地帯もちらほらと見られます。しかし植林のスギ花粉に悩まされている国の住民としては、植えるなら時間はかかるけど広葉樹にしたほうがいいと思うのですがどうなんでしょう。
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119ブログでも紹介しましたが、「カルガモ注意」の標識のとおり、運がよければカルガモの親子の道路横断に遭遇できます。
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120そのカルガモファミリー、親ガモとおぼしき2羽はさっさと茂みへ潜っていったのですが、7羽の子ガモたちは茂みに入らず、道路脇にしゃがみ込んでくつろぎはじめちゃいました。
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121するとすぐに親ガモが戻ってきて、こちらを警戒しはじめました。しかし子ガモたちはそんな親ガモの心配もよそに、相変わらずしゃがみ込んだまま。親の心子知らずとはよく言ったものですね。
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122マン島を走り回ったらさすがの33リッタータンクも空になりそうです。こちらの給油はすべてセルフ式。といっても日本のそれのように給油機に精算機能はなく、給油後に店員に払いに行きます。
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123上から給油総額、給油量、リッターあたりの価格が表示されてます。「お、リッター142円か」とつい反射的にそう思ってしまいますが、これはペンス表示。イギリスは産油国だから日本よりも安いと勝手に思い込んでいましたが、概算でリッター190円ですから日本よりも高いです。このところイギリスのガソリン価格は上昇しつづけているみたいですね。
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124山にも飽きたので海まで下りてきました。何のために作られた石門かわかりませんが、こうした遺跡になりかけてるような石造りの建造物はマン島やグレートブリテン島、アイルランド島に多く点在しています。石門の左側にある看板はフットパス、散歩道の案内看板で、これもマン島の各地に点在しています。時間があったらフットパスをじっくりと歩いてみたかったです。
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125フットパスは石門の先では海岸沿いに続いてましたが、老朽化が進んでいていつ落ちてもフシギじゃないほどキケンでした。さすがにそういうところには立ち入れないように開閉不可のゲートがかかってました。
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126シーサイドツーリング続行です。イギリスの場合、幹線道路を離れるとたいてい行き止まりです。日本なら国道と県道が並行している場合がありますが、イギリスの場合はよほど慢性的な渋滞路線でもないかぎり、幹線道路は1本しかなく、それよりも規格の低い道路は住宅街などの区画へ入るための路地(行き止まり=クローズと呼ばれる)になっているようです。なかには抜けている道(ストリート)もありますが、とくに住宅街は速度規制が厳しいため用事がないのなら利用する意味はあまりありません。と、話がそれましたが、この道は続いてるんですかね…。
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127案の定、道は牧場主の家の門で行き止まりになってました。でもこんなステキな景色を眺められたのでヨシとしましょう。
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128イギリスやマン島の景色でフシギなのは、磯にもこうして草花が自生していることです。高波のときには海水に浸ってしまうはずの場所でも、こんな景色が広がっています。どことなく日本の2000m級の高山の景色にも似ていて、なのに眼前には海原が広がっていて…とてもフシギな景観なのです。
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129この日は満潮で波も高く、冬の日本海のようでした。アイリッシュ海は干満の差が激しく、干潮時のラムジー港では係留中の船がぜんぶ干上がってました。場所によっても違うでしょうけど、その高低差は3~5mくらいありそうです。
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130…なんてこと考えてボーッとしていたら波しぶきを思いっきり浴びました。しょっぺー!
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131気をとりなおしてツーリング再開。開放的な道も楽しいけれど、こういう狭い道の散策も楽しいものです。まあ、アドベはこういう用途にはあまり適してるとは言いがたいのも事実ですけどね。
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132その先はゲートで行き止まり。ゲート周辺を見渡しましたがバイクで入っていいともダメとも示されておらず…示されていたのはここが転回場所であること…やはり行き止まりと解釈するのが人間、かな?
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133まあここにクルマが来ることもなさそうだけど、それでも念のため転回の邪魔にならないようにゲート前にアドベを停めて、牧場のなかへと足を踏み入れました。
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134好き勝手に飛び回るカモメ、草を食みまくっているヒツジたち。鼓膜を響かせ肌を撫でていく乾いた風と、ほのかな潮の匂い。透きとおった空を流れる雲。ことばや思考がだんだんと消えていくのがわかります。
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135聞いたところでは、まだ草を食まず乳だけで育っている仔羊はとてもおいしいのだとか。キミはもう草を食んでるからちょっと安心だね(なんて言ってるそばから肉を食すのですが)。
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136しかし子と親でこれほどギャップがあるのも怖い現実を見せつけてくれるものです。間近で見るヒツジはけっこう怖いです。向かってこられたら迷わず逃げます、ハイ。
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137そう、ここはとてもすばらしい景色なのだけど、これだけヒツジがいて食べたいだけ草を食べてれば、当然出るモノも出まくるワケで。踏まないように歩くのはムリです。覚悟を決めて歩きましょう。そうそう、新鮮なモノを踏むと滑って転びそうになるので注意!(何度か危うい場面もありました)
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138あまりに靴底が臭くなったので、牧場を離れて気の向くままにツーリング。さて、次はどこへ行こう。
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139たどりついたそこには、茅葺き屋根の民家がありました。どうやらこの建物は昔の建築を再現したカフェのようです。茅葺き屋根がヨーロッパにもあったとはまったく知らなかっただけにうれしいハッケンでした。
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140マン島南部のキャッスルタウンは、過去にマン島の首都だった時代もあるそうで、こんな立派な城が残っています。このラッシェン城は13世紀に建設がはじまり16世紀に完成したという壮大な建築物です。しかし18世紀には刑務所として使われていたこともあり、死刑も執行されていたそうです。
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141こちらはポートエリンという町で見かけたのですが、城なのか城チックな建造物なのか。調べてみたら「Falcon's Nest HOTEL」とのことなのですが、そもそもが城だったのかは不明。ちなみに£35からとリーズナブルな料金設定のようです。
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142マン島南部にある小島、カフ・オブ・マン。ここは海流がとても急激で、島の間を波がうねりながら流れています。見てるだけでもちょっと怖い。
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143でも運がよければアザラシに、もっと運がよければクジラに会えるそうです。
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144潮風に当たりすぎたので、また山に来てしまいました。山に登っても、マン島の空はどこまでも広く、大きいのです。
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145強く冷たい風が吹きすさぶ中、仔羊たちがジャレあってました。どうやら兄弟らしいのだけど、一頭が春めいたのか、後背位でまたがろうとするのです。するとまたがられた一頭もフラフラと誘われたのか、残りの一頭にまたがろうとします。最後の一頭はイヤがって逃げるんだけど、三頭の仔羊がその場でグルグルと…虎じゃないからバターにもならないしね。
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146そんな様子を見ていたら親羊らしき二頭が草陰からザザッと現れて、仔羊たちに向かって駆け出していきました。平原を疾走するヒツジもなかなかカッコいいものでした。
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147マン島には馬も放牧されています。頼もしく太い足からしてサラブレッドではなく、ひょっとすると軌道馬車を牽いてる馬なのかもしれません。人懐こくて、柵のそばで眺めていたらてくてくと寄ってきました。
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148スネーフェル山頂までつづいている山岳電車の線路。この線路をTTコースは横断していて、遮断機こそないものの踏切になっています。
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149牧場の出入口にはこんなふうに地面がスノコ状になっています。これはヒツジや牛たちが外に出ないための工夫で、こうしておくと動物たちは怖がってこの上を歩くことができないのだそうです。たしかにあの蹄じゃ踏み損ねて骨折するだろうし、運が悪ければそれが死因になるでしょうね。
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150マン島にはいくつかトーチカ(要塞)があります。とくに説明書きがあるわけでもなく、立ち入りを規制するでもなく、こうして直近までバイクで行けるほど、ただあるがままにそこに佇んでます。
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151このトーチカ、あとでマンクス(マン島住民)に教えてもらったところによると、これは第二次世界大戦中に作られたものだそうです。
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152せっかくなのでトーチカの内部に潜入してみました。ぐるりと外周から内側へと螺旋を描くように通路がつづいています。
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153トーチカから外の様子を見るとこんな感じ。外がかなりの強風でも中までは風が入ってこないので、野宿もできそうな雰囲気でした。実際、ビールやコーラの空き缶がけっこう転がっていたので、ここに来てあんなことしたりそんなことしたりする人たちもそれ相応にいるようでした。
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154トーチカのすぐ近くにはイギリス特有の遺跡、ストーンサークルもあります。やはりこれも立ち入りを禁ずるわけでもなくただあるがままにそこにあります。こういう自由さは、とても気分がいいものです。
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155ただしこちらには説明書きのプレートがありまして、それによると新石器時代から青銅器時代(紀元前7000年~紀元前2000年)に作られたものと推定されているそうですが、用途や目的はいっさい不明だそうです。考えちゃダメだ、感じるんだ!と思い、しばらくストーンサークルの中央に立ちすくんだり座り込んでみたりしましたが、やっぱり答えはわかりませんでした。それでわかっちゃったら考古学者たちは廃業ですね。
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156ストーンサークルの遙か向こう、ブラック・ジャックが住んでいそうな岬に、なにやら曰くありげな石塔が建っているのが見えます。これは興味をそそられますね、ぜひ行ってみようじゃありませんか、あの塔に。
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157塔を目指して北上していくと、おそらく岬の塔へ続いてるだろう道はゲートで閉鎖されていました。バイクを停めて、ゲート脇から入り込んで徒歩で塔を目指します。その途中、塔を眺めつつもポートエリンの町と湾を一望できる場所にベンチがありました。とてもすばらしい眺めです。ベンチに腰かけてタバコに火をつけ、しばらく景色に見とれました。
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158このベンチもやはり故人を偲ぶために置かれたもので、プレートには「ジョン爺さんとドロシー婆さんが愛した景色、そして彼らはまだここにいるだろう」と書かれていました。爺さんと婆さんはともに1926年生まれの同い年、ひょっとすると幼なじみだったのかもしれません。多感なローティーンの頃を第二次世界大戦とともに過ごした二人は、どんな人生を重ねてきたのか。二人並んでここに腰かけて、どんな話をしたのだろう。もちろん会ったことのない異国の老夫婦、しかもすでに死んでしまった二人に思いを馳せることができる…故人をベンチとともに思い出にするって、とても素敵な風習ですね。
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159ジョン爺さんとドロシー婆さんのベンチを後にして塔に向かうと、あたり一帯は草原となり、うさぎがぴょんぴょこと飛び跳ねてます。
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160とはいってもやはり野生のうさぎたちですから、人間の気配を察すればとっとと巣穴に逃げ潜ります。しかし巣穴はかなりあからさまに無防備な状態。これでもうさぎたちがここで生きてるということは、地元の人たちもとりたててうさぎを追っかけたり捕まえたりしていないということです。すばらしい。
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161さて、だいぶ塔に近づいてきました。ワクワクしてきます。
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162この石塔は「ミルナーズタワー」といい、1871年に建てられたそうです。マン島へ引っ越してきたミルナーという人物が、貧困に苦しむ漁民を支援するために慈善団体を設立、多くの人々を救ったそうです。その感謝を表すために住民たちがミルナーに内緒で塔を建立していたそうですが、それを知ったミルナーは建設費を寄付したとのこと。ミルナーは石塔だけでなく聖キャサリン教会建立にあたっても寄付をし(しかも彼の死後に)、町の発展に貢献したそうです。それにしてもこんなに目立つ塔を秘密で作るってことができると思ってたのか、ちょっと怪しいものです。
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163ミルナーズタワーの中も自由に入ることができます。螺旋状の階段はすれ違うのもやっとの狭さ。
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164階段は塔のテラスにつながります。テラスから上は登れないようです。
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165ミルナーズタワーからの眺め。マン島南端にあるカフ・オブ・マンが見えます。
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166テラスからアイリッシュ海を望みます。夕暮れの黄色が空と海に混ざりかけるこの色合いが、この島では長い時間つづくのです。
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167塔が建っているブラダ岬は広大な草原になっていて、どこにも柵などはありません。いくつかの踏み分け道はありますが、散歩するにも走り回って遊ぶにも、どこを歩いても走ってもかまわないのです。もちろん、岬の先にも柵はなく、崖から海に落ちるのも自由なわけです。
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168近隣の住民たちが犬を散歩させるにもリードなんて必要ありません。犬も好きなように岬を歩き、うさぎの匂いを嗅ぎ回れるのです。こういう自由はとてもうらやましい限りで、日本もこうなってほしいと願うばかりです。しかしこうした自由が成り立っている背景にはもちろん人々の意識の持ちようもありますが、それよりも人口密度の低さが可能にしている部分も大きいはずです。ナイモノネダリとわかっていても、やっぱりうらやましい…。
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169そんなブラダ岬ですが、散歩している犬のフンを放置してはいけないようで、住宅街との出入口にはフンを捨てるカゴが設置されています。なんだか辻褄が合ってないような気がしますが、あの自由さの前には些細なことに思えてきます。もっとも私が住民だったとしたら、このカゴを使ってるかどうかあやしいところでもありますが。
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170いくら堅牢な石造りの家といっても、時が経てば屋根もすっかりと歪んでしまうものとは知りませんでした。たしかに道々で見つけた廃屋のほぼすべて屋根が崩れ落ちてました。昔ながらの茅葺きならこういうことはないはずですが、このあたりも近代化の弊害といえるのかもしれません。
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171マン島は古い時代に森林を広範囲に渡って伐採し、牧場や畑にしています。だから森や林はああり多くないのですが、残されている木々は樹齢の高いものが多く、威風堂々とした樹木が強い風とまぶしい日差しを浴びています。
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172さて、ここからはマン島に咲く花々をご覧に…といいたいのですが、不肖ヤマシタ、不惑を迎えたこの年まで草花を愛でる機会をもたなかったため、花の名前がまったくわかりません! なので、「マン島にはこんな花が咲いてるのか、きれいだな~」などと思いつつ、つらつらと眺めてくださればこれ幸いナリ。
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173バラフブリッジ前にある家の花壇に咲いていました。まだつぼみも多く、満開になるのはもう少し先のようでした。
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174小学生の頃、学校の行き帰りに花弁をとって、蜜を吸ってみたり落下傘を作ったりした花に似てるんですが、同じ花なのかどうか…。
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175キャッスルタウンの港のそばに咲いていました。マン島に咲いてる花は赤または紫色が多い気がします。
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176花のつきかたは紫陽花に似てますが、仲間だったりするんでしょうか…そんなわけないですね、ハイ。
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177牧草地の片隅の草むらに咲いていました。かわいげのないスズランみたいですが、食虫植物にも見えてくるのは私だけ…ですね、きっと。
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178どこかの路傍に咲いていたのか、はたまた花壇に植えられていたのか、それすら記憶にありません。が、こうして写真を撮ったということはそのとき何かを訴えてきたわけで。ま、キレイならいいんです。
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179無知の開き直りがだいぶ激しくなってきたところで、花と小父さんを演じてみたりしちゃったりなんかして。
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180キャッスルタウンの路地裏で見つけた花。派手めの原色の花が多く見られるのは、そもそもここの土地が肥沃ではなく、乾いた土地が多いからかもしれません。この島も隣の島もそうですが、目に映る大地のほぼすべてが芝でおおわれて青々としていますが、むきだしの土を見かけることはあまりありません。たまに見かける土は乾いていて埃っぽく、小石がまざった砂利のような土です。
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181街路灯や案内標識、家の壁などに、こうして花かごをぶら下げるのが英国流のようです。
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182こうした花かごの世話は誰がしているのでしょう。近所の人たち? それとも自治体? 今度調べておくことにします。
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183まぶしいほどに真っ赤。これだけ目立つとついシャッターを切らされてしまうのです。
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184石垣の目地から茎をのばして花を咲かせる姿は、まるでたんぽぽのようにしたたか。
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185海岸の岩場に咲く花。海水を浴びてもおかしくない場所なのに、この草花も芝生も元気に密生しています。
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186今回見つけたなかでいちばん気になったのがこの花。ツイッターのフォロワーさんから教わった知識をそのまま受け売りしますと、「フクシアですね。貴婦人のイヤリング(レディー・イヤードロップス)とも呼ばれていてイギリスでは人気がある花らしいですよ」とのことです。でも私には違うものに見えて仕方ありません…。
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187ここで紹介したのはマン島のほんの一部で、今回の取材旅行で訪れることができなかった場所はたくさんあります。それが心残りで後ろ髪を引かれまくるのですが、こればかりは仕方ありません。次の機会のお楽しみということで、暮れなずむマン島からアイリッシュ海を眺めるのであります。
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188グランドスタンド前もすっかりと日が落ちた午後10時。どうも日が長い土地にまだなじめず、つい夜になるまで遊んだりサボったり、たまに仕事したりしてしまうのであります。
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189ところ変わってこちらはマン島へ向かうフェリーがヘイシャム港を出航する場面。アイリッシュ海は干満の差が激しいと書きましたが、護岸の苔を見ればそれがわかると思います。
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190ヘイシャム港には原子力発電所があり、轟々と音を立てて水温の高い排水が海に流れ出ていました。天変地異が少ない土地とはいえ、何があるかわからないものです。そんな日が来ないことを祈りつつ、フェリーはマン島へと向かったのでした。
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191ちょうどグレートブリテン島とマン島の中間あたりでしょうか、海面にズラリと並ぶ風力発電の風車が見えました。強い風が吹きつけるこの一帯にはうってつけのエネルギー源なのでしょうが、自然相手ゆえに安定しないのも事実。人類がもっと効率よく、なおかつ安心できる発電方法は見つけられるのでしょうか。
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192さて、ここからはマン島を離れてグレートブリテン島とアイルランド島の雑感記をお届けしましょう。こちらはグレートブリテン島の高速道路でモーターウェイと呼ばれ、道路案内標識では「M1」「M2」などと表記されます。日本の高速道路とほぼ同じで、ランナバウトを含む交差点や信号はありません。法的に異なる点は無料であること(一部有料区間あり)、最高速度が70mph(112km/h)であることくらいですが、右車線がきっちりと追越車線として機能していること、速度違反取締りカメラが異常なほど多数設置されていることも注目したい点です。
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193これがスピードカメラで、大都市周辺になるほどに数が増え、マンチェスター周辺では500m間隔で設置されている区間もあります。しかも撮影は後方から行うため、バイクもしっかりとナンバープレートを撮影されます。とはいえ、すべての警告表示ポイントにカメラが設置されているわけではなく、警告看板のみのところも多々あります。また、カメラには数種類あり、これは可変式と呼ばれるタイプ。その時々の制限速度の変化にあわせて、カメラが作動する違反速度も変化するのです。これは日本にないタイプのカメラですね。
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194もうひとつは区間平均カメラとでもいうべきもので、特定区間の始点と終点の2カ所(ひょっとするともっと多いかも)のカメラで速度を割り出し、平均速度を計測して速度違反を取り締まるというものです。つまりカメラの前だけ速度を落として、あとは制限速度を超えて走るというやり方が通用しません。こうしてあの手この手で速度違反を取り締まっているせいか、最高速度70mphを遵守しているクルマが多く、ちょっと速いクルマでも80~85mph程度でした。もちろん、なかには100mph以上ですっ飛んでいくクルマもいますが、割合としてはかなり低い印象です。
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195モーターウェイには10~20km毎に(ときに30km以上のことも)サービスエリアがあります。ここにはガソリンスタンド、スナックスタンド(ファストフード)、コンビニなどがあります。日本と違うのは必ずホテルも併設されている点で、その便利さから私は大いに利用しました。スナックスタンド周辺では無料WiFiを利用できる点も便利。ファストフードはマクドナルドやケンタッキー、スターバックスなど日本でもお馴染みの大手チェーン店が入っていますから、モーターウェイを走っているかぎりは英語を話せなくても食事と寝場所に困ることはありません。これもモーターウェイと一般道の大きな違いで、とくに夜間などは一般道を走っていると店一軒営業していませんから、利用する価値は大きいです。ただし日本のように屋根のあるバイク専用駐車場はないので、雨天時はちょっと苦労します。
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196サービスエリアに併設されているホテル(モーテル)は、こちらの「デイズイン」または「トラベロッジ」という大手チェーンホテルのいずれかのようでした。宿泊料金は£40くらいからですが、都市部を離れるにつれて安くなり、£20で宿泊できるところもありました。こちらも無料WiFiを利用でき(ただし部屋の場所によっては電波状態が悪い)、パブも備わっているのでとても便利でした。
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197イギリスの幹線道路にはA級道路とB級道路があり、Aが日本でいうところの国道(または有料高規格道路)、Bが県道(または市道)に相当します。A級道路はこの写真のような道幅の狭い対向2車線から片側3車線まで様々ですが、多くの区間で制限速度は60mphとなっています。
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198こちらもA級道路です。郊外であればこのように道幅も広く、路肩もしっかりと設置されています。制限速度が60mphではありますが、ほとんどモーターウェイと同様の速度域で走行できます。ただし油断してはならないのが、ここは一般道路のため交差点(ほとんどがランナバウトだが信号の交差点もある)や右折レーンがあり、前走車が急ブレーキをかける準備をしておかなければならないことです。ちなみにイギリスではモーターウェイの案内看板が青色、一般道路が緑色となっており、日本とは逆です。
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199これもA級道路です。市街地を通過する際は、その町の入口付近で制限速度が20~40mphまで下げられます。その場所にはスピードカメラや警告板が設置されていることが多く、市街地での速度違反はより厳しく取り締まっているようです。もっともどのクルマも郊外はきっちりと速度を上げて走り、歩行者が多いところはゆっくりと走るというメリハリがあり、どこが安全でどこが危険であるかの判断はドライバーに任せる、という基本姿勢があるように感じました。
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200これが市街地に設置されているスピードカメラを示す標識です。ただしカメラがよほど巧妙な位置に設置されているのか、走りながらでは私はカメラ本体を見つけることはできませんでした。いずれにしても、イギリス国民はかなり監視されつづけていることは事実のようです。
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201A級道路には日本でいうところの非常駐車帯のようなパーキングエリアが数キロごとに設置されています。施設らしいものはゴミ箱だけですが、単調になりがちな長距離走行では重要な休息ポイントです。
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202これはB級道路。左にある注意標識は馬に注意という意味です。
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203これもB級道路ですがセンターラインはなく、四国や九州、紀伊半島の三桁国道のように酷道と呼びたくなる道路も多々あります。
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204ガソリンスタンドはすべてセルフ式です。しかし日本と違って給油機に精算機能がないので、有人のレジカウンターへ出向き、自分が使った給油機の番号を申請して精算するシステムになっています。
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205そのためガソリンスタンドには飲み物や食料品、雑誌に雑貨、そしてクルマ・バイク用品まで揃うちょっとしたスーパーマーケット(コンビニ)になっているところが多いです。2stオイルの横にペットフードが並んでる光景もなかなかオツなものです。
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206これはマン島(TTコースの一部)にあるランナバウト(ロータリー)です。進入時に一時停止義務はありませんが、ランナバウト内部が優先、つまり右側から来る車両が優先で、時計回りの一方通行です。中心にある円は小さなものは1メートル程度ですが、大きなランナバウトになると数十メートル規模、ランナバウト内も複数車線になりますので(構造的には阪神高速と同じ)、自分が進む方向をしっかり把握してないと道を間違えてしまいます。
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207これがランナバウトを示す標識で、直前には必ず設置されており、道路番号と行き先が示されています。
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208イギリスの信号では、赤から青になる際に赤と黄が同時に点灯(0.5秒ほど)します。これは赤から青に変わるタイミングを知らせるためで、このときにギアをニュートラルから1速へ入れるドライバーが多く、青になった途端にスタートするのが一般的です。
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209さて、かたい話はここまでにしておいて、ここからはマン島雑感記の番外編です。今回、マン島で一緒に取材していたFRM編集長のミカミさんから「北アイルランドのベルファストって町には野良馬がいるらしいよ。見てみたいよね!」なんておもしろそうな話を聞き、マン島からアイルランド島に渡り、行ってきましたベルファスト。さあ、野良馬でてこい!
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210町の中心部にあるベルファスト市議会。イギリスらしく荘厳なたたずまいの建造物です。いくらなんでもこんなところに野良馬はいるまい。でもまずは聞き取り調査だ!
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211市議会の前は広場になっていて、老いも若きも日向ぼっこを楽しんでます。「すみません、このへんに野良馬いませんか?」「What?」「あ、いや、なんでもないっす、サンキューサンキュー」
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212中心にほど近い場所でも雑居ビルには「貸します」の文字が並んでます。景気が悪いと野良馬の一頭も出るよね、そりゃ。「すみません、このへんに野良馬…」「ああん?」「いないよね、そりゃ。サンキュー」
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213「ポンドワールド」、つまり100円ショップですね。ドバイで人気を集めてるという話をテレビニュースで見たことがあったけど、イギリスにもあるとは知らなかった。といよりも100円ショップも輸入された商売? その近くに観光案内所を発見、ただちに聞き込みに行くも「の、野良馬?さあ知らないわ」と嘲笑されました…。
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214まだこんなに明るいのに、午後5時を回っているせいかシャッターを下ろす店がチラホラ。「あー、あの野良馬…」「これから食事行くから忙しいの、またね」ほんとうにいるのか、野良馬!
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215これはひょっとしてミカミさんにいっぱい食わされた…という疑惑がわきはじめたそのとき、道路の端にバフンらしき物体を発見! こ、こんな町中にほんとうに野良馬が歩きまわってるのか、ひひーんと嘶いたり通行人を蹴っ飛ばしたりしてるんだろうか。期待が高まる!
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216バフン発見地点のすぐそばであやしげな楽器を弾いてるパフォーマーを発見、さっそく聞き込み。「おじさん、それおもしろいね、なんて楽器?」「ヴィオラトランペット」「まんまやんけ!」「おー、アナタのことばわからなーい」「ところで野良馬を見たことある?」「馬? 見たことないね。違う町のことなんじゃないか?」とアルメニアから来たというヨハンは言う。うーむ、これはますます疑惑が濃厚に…。ところでこの楽器、奏でる音はトランペットそのもので、演奏法がヴィオラというシロモノ。ヨハンが手作りしたそうです。
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217屋内は禁煙ですが、屋外についてはとくにルールはなく、町中の至るところに設置されているゴミ箱のアタマ(ふた)がこんなふうに吸殻や噛み終わったガム入れになっている場合も多いです。
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218大きな都市部では公衆トイレは有料になっています。ベルファストでは1回20ペンス。硬貨を入れると合成音声の案内があり、ドアが自動で開きます。
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219この塔、何か様子がおかしいと思いませんか? そう、ピサの斜塔のように傾いているのです。初めから斜塔だったのか、それとも何らかの理由で傾いてしまったのか、ちょっと気になりますね。野良馬といい斜塔といい、謎多き町です…。
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220斜塔のすぐそばにあるパブでタバコを吸いながらビールを飲んでいたオジサンたちに聞き込みです。「ああ、あの塔がどうして傾いているかだって? そりゃあコイツが馬鹿力で押したんだよ!」と、イギリス版植木等みたいなオッサン(右から2人目)が、左端のオジサンをさして言うものだからみんなで大笑い。右端のオジサンが言うには、過去に近くの川が氾濫したときに傾いたか、またはそもそもここが川を埋め立てた土地だからか、そんなことを話してくれました。
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221お、この駐車場に野良馬は…いないですね。路上駐車が原則のイギリスですが、この町ではこのように路外の有料駐車場を設置していて、渋滞防止などを目的に路上駐車を減らす施策をとっているようなことが看板に書かれていました。
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222ところ変わってここはグレートブリテン島、スコットランドにあるインバネスという町の駅です。鉄道のプラットフォームは自転車が自由に出入りできるのも、日本と大きく違うところです。列車によっては車内に自転車置場が設けられていて、シームレスで自転車を利用することができます。
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223「これはディーゼル機関車?」と尋ねたら、待ってましたとばかりに「そうさ、力もあるし快適に走れるんだぜ」といろいろ話してくれた運転手さん。鉄道の運転手が勤務中、しかもこれから発車するところにことばもロクに話せない外国人がやってきても、楽しそうに話相手になってくれました。
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224結局、ベルファストで野良馬を見つけることはできず、帰国した際にミカミさんに話すと「あっ、ベルファストじゃなくてダブリンだってさ、わっはっは」とのことだったのですが、じゃああのバフンはなんだったんだろう。というわけで、野良馬の代わりにネス湖にて「ネッシー」を見つけたのでご報告しますね!え、カヌー漕いでる人間に見えるって? それはあなたの想像力が足りないのです。目をほそめてしばらく見つめていると…ホラ、ネッシーでしょ?
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225というわけで、長々とお届けしたマン島雑感記もそろそろおしまいです。マン島TTでの松下ヨシナリ選手の活躍は、現在発売中の『FRM 35号(フリーライドマガジン)』や『MOTO NAVI 53号』に掲載されていますので、そちらもぜひご覧ください。『BMW BIKES 56号』(9月15日発売予定)では私の記事が掲載予定です。
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226々と続いてきたマン島雑感記もそろそろおしまいです。最後にヤマシタを世話してくれた、マン島にやってきたニッポンのみなさんを紹介しましょう。こちらは電動バイククラス「TT-ZERO」に日本人チームとして初参戦、みごと完走を果たしたチームプロッツァ。まるでホンダが初めてマン島TTに挑戦したときのように、ゼロからマシンを作り上げての成功はすばらしいの一語に尽きます。完走、そして入賞おめでとうございました! マン島入りしてからの数日間、東京から仕事も抱えてきちゃった私とミカミ編集長は、ネット環境を借りるために彼らの宿舎に居候して、楽しい日々を過ごさせてもらいました。ありがとうございました!
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227こちらは松下ヨシナリ選手が加入していた、『PENZ13.com BMW Racing』のチームスタッフ一同です。オーナー兼ライダーのリコ・ペンツコファーさん(右から2人目)をはじめ、明るく気さくなメカニックたちに囲まれ、マッちゃんも心置きなくレースに集中することができたようです。マッちゃんが3クラスで完走することができたのも、やはりこのチームだったからこそでしょう。マッちゃん、おめでとう。そしてチームのみなさん、ありがとうございました!
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228そうそう、忘れちゃいけません。マン島取材での移動手段として、またマン島を隅々まで味わうための相棒として、バイクで走ることの楽しさを再認識させてくれ、大活躍してくれたBMW R1200GS ADVENTURE。心置きなく荷物を積めるし、一日中走っても疲労の少ないバイクだからこそ、取材も無事に終えて帰国することができました。そうそう、純正オプション装備のナビゲーションシステムも、不慣れな海外のツーリングをサポートしてくれ、大いに助けられました。これまでもこのバイクの素晴らしさを知っていたつもりでしたが、今回の旅で底力というか真価を実感させられました。キャッチコピーのとおり、そのままで世界を旅できるバイクですよ、アドベは!といったところで、ここまでご覧くださったみなさんにも「ありがとう」と感謝のことばを残して、ヤマシタのマン島雑感記をしめることにします。では、またお会いしましょう! Good see you!
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