【BMWモトラッド F450R発表!】 これはストリートで快走できるピュアスポーツであるか!?
- 掲載日/2026年10月09日【トピックス】
- 取材協力/BMW Motorrad Japan 写真・文/小松 男


“R”の名を継ぐ新たな一台、
F450シリーズが早くも駒を進めた
BMWモトラッドにおいて、車名の末尾に付く「R」は、ロードスターを意味する。このロードスターというセグメントの本質は、サーキットやワインディング、高速道路といった特別なシチュエーションでなくとも、ガレージを出た瞬間から、飛び切り気持ちよいスポーツライディングを楽しめる点にあると考えている。
これまでR1300R、S1000R、F900Rなど、排気量やレンジを変えながら展開されてきた系譜が、ブランドの中でも根強い人気を誇るのは、まさにその魅力ゆえだろう。そこに新たに加わったのが、F450Rである。

BMWはこの一台を、F450ファミリーのなかの「独立したネイキッド」と位置づけている。技術的な土台はF450GSのために開発されたエンジンとシャシーのコンセプトだが、公式資料によれば、ジオメトリーや足まわりのセッティング、ポジション、ホイール、タイヤ、パッケージング、そしてデザインに至るまで、公道での走りに最適化するための作り込みが施された。GSの“着せ替え”ではなく、ネイキッドとして再構築された別の一台、ということだ。
先日開催された、F450GSのメディア向け試乗会にて実際に触れて感じたのは、「これまでのBMWモトラッドには無かった感触でありながら、根幹には確かにBMWイズムがある」ということだった。それはライディングフィールだけでなく細部の仕上げにも表れており、新たなGSファミリーの一員を認めると同時に、派生モデルへの期待を膨らませるものだった。実はすでにBMWモトラッドの幹部が、F450GSの派生モデルを次々と投入する考えを語っていたと伝えられており、F450Rは、その期待に応える最初の回答といえるだろう。
デザインも見逃せない。S1000R由来の「テールアップ、ノーズダウン」という考え方に基づき、低く構えたフロントと高く跳ね上げたリアが、軽さと俊敏さを視覚的に訴える。ブラケット状のデイライトを備えたLEDヘッドライト、特徴的なフライライン、そして「R」の文字を図案化したサイドパネル。デザイン責任者のアレクサンダー・ブッカン氏は、S1000Rの意匠DNAを一対一でコピーするのではなく、軽く、親しみやすく、ダイナミックな形へと落とし込んだと語っている。

48馬力は物足りないのか。
数字の裏に潜む緻密な設計
排気量420cc、ボア×ストローク72×51.6mm、最高出力35kW(48PS)/8,750rpm、最大トルク43Nm/6,750rpm。数字だけを眺めれば、大型ネイキッドのような迫力はない。だが公式資料を読み込むと、このエンジンには見逃せない工夫が随所に詰め込まれている。
最大の特徴は、クランクピンを135度ずらした位相クランクだ。BMWは「二輪市場でユニーク」と説明しており、不等間隔爆発による情感豊かなサウンドと、バランサーシャフトの併用による低振動の両立を狙っている。さらにDOHC4バルブ(ロッカーアーム式)、圧縮比13:1、クラッチやミッションカバーへのマグネシウム採用など、このクラスでは異例の素材も投入された。ステンレス製のアンダーフロアマフラーは、重量配分とバンク角の確保、そして独特のサウンドにも寄与する。排出ガス規制はユーロ5+に適合しながら、WMTC燃費は100kmあたり3.8L(約26km/L相当)。14Lのタンクで350km以上の航続距離を見込む。

トルク特性にも注目したい。3,000rpmの時点で最大トルクの80%に達するというから、街中の低回転域でも力強く加速できる設計だ。0-100km/h加速は5.7秒、最高速は169km/hと公表されている。
ただし、冷静に見ておきたい点もある。48PSを装備重量175kgで割ると、パワーウエイトレシオは約0.27PS/kg。BMWはA2クラスで傑出した数値だと謳うが、日本のライセンスレギュレーションに沿った400ccのモデルの中には、パワーウエイトレシオの数値で勝っているモデルもある。それらはエンジン形式が異なるので一概に比べるものではないが、最高出力だけを追えば、日本の法規合わせながらも分があるモデルはあるということだ。そう考えるとF450Rが勝負をかけるのは、ピークパワーではなく、軽さとトルクの出方、そして電子制御の緻密さなのだろう。

175kgという軽量な車体に凝縮された、
本気のシャシーと最先端の電子制御
シャシーは、溶接された鋼管スペースフレームに鍛造部品を組み合わせ、エンジンを強度メンバーとして使う構造だ。ホイールベースは1,405mm、キャスター角は23.4度、トレールは110mm。軽快な切り返しと高い安定性を狙ったジオメトリーであることが、数字からも読み取れる。
サスペンションはKYB製で、フロントは43mm径の倒立フォーク(ストローク140mm)、リアはリンクを介さずスイングアームに直付けされたセンターショック(同140mm)。上級仕様の「スポーツサスペンション」では、フロントの伸び側・圧側の減衰力調整が可能となる。
足もとは前後17インチ(110/70-17、150/60-17)の軽量キャストホイール。フロントブレーキはブレンボ製4ピストンモノブロックキャリパーとφ310mmフローティングディスク、リアはバイブレ製1ピストンキャリパーとφ240mmディスクを組み合わせ、バンク中も作動するコーナリングABS「ABSPro」が標準で備わる。シフトペダルやブレーキペダル、サイドスタンドは鍛造アルミ製で、パッセンジャー用ステップのブラケットをリアフレームに直接ボルト留めする手法も、このクラスでは異例とされる。

電子制御は、レイン、ロード、ダイナミックの3つのライディングモードに加え、ABSPro、DBC(ダイナミック・ブレーキ・コントロール)、DTC、MSRが標準だ。Mスポーツ系にはライディングモード・プロが与えられ、スロットル特性やDTC、ABSを個別に設定できる「ダイナミック・プロ」も選べる。6.5インチのTFTディスプレイは、Mスポーツ系ならDTCやブレーキ圧、バンク角の情報を表示するスポーツ画面やラップタイマーまで備える。一方でグリップヒーターが標準というあたりに、日常使いへの配慮も感じられる。さらにシフトパターンを簡単に逆転できる機構まで用意され、BMWは、サーキット走行にも最適だと説明している。
そしてもう一つの目玉が、オプションのイージーライドクラッチ(ERC)だ。回転数に応じてクラッチがつながる遠心式で、オーバーラン時には接続状態を保つためエンジンブレーキが効き、停止直前のアイドル回転でのみ自動的に切れてエンストを防ぐ。シフトアシスタント・プロと組み合わせれば、クラッチ操作なしで発進から変速までこなせ、クラッチレバーも残るため、任意の操作もできる。ERCはMスポーツ+イノベーションパッケージで選択でき、他のグレードにもアクセサリーとして後付け可能。装備重量は176kgとなる。
なお、グレードはベース、エクスクルーシブ、Mスポーツ、Mスポーツ+イノベーションパッケージの4タイプ。エクスクルーシブ以上にはシフトアシスタント・プロとスポーツサスペンションが標準で与えられ、シフトアシスタント・プロはベースにも後付けできる。(※日本導入グレードは未発表)
ストリートで快走できるのか。
答えは日本上陸の先に……
現時点で、日本仕様の価格や発売時期は未定である。欧州ではドイツで6,490ユーロから、英国で6,395ポンドからと報じられており、市場への導入は2027年シーズンの開始に合わせたものと見られている。
日本ならではの注意点もある。欧州のA2区分(48PSクラス)は日本にはなく、普通二輪免許で乗れるのは400ccまで。420ccのF450Rを選ぶには、大型二輪免許が必要になる。BMWはターゲットとして、A2ライセンスの所有者だけでなく、リターンライダーや、日常使いや峠道に向く小さくて軽い一台を求める経験豊富なライダーも挙げている。シート高790mm(F450GSトロフィーは845mm)という抑えた数値も、その懐の深さを物語る。
昨今の大型モデルは、サイズ感や過剰なまでのパフォーマンスゆえに、熟練ライダーのなかにはやや距離を置き始めたファンも見受けられる。そうしたライダーと、F450Rは相性が良いのではないか。ビギナーだけでなく、ベテラン勢をもうならせる内容に仕上がっていることを願っている。
では、冒頭の問いに戻ろう。ガレージを出た瞬間から気持ちよい。それがロードスターの価値だとすれば、F450Rはストリートで快走できるピュアスポーツなのか。175kgの軽さ、前後17インチ、ブレンボとKYB、コーナリングABS、そしてラップタイマーまで。発表されたリリースでみる資質は十分だ。だが答えは、ハンドルを握ってはじめて出る。日本に上陸した際には、改めてインプレッション記事で、その感触をお伝えしたい。
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