VIRGIN BMW | R1200GSアドベンチャー(2008-) 試乗インプレ

R1200GSアドベンチャーの画像
BMW Motorrad R1200GS Adventure

R1200GSアドベンチャー(2008-)

  • 掲載日/2009年09月16日【試乗インプレ】
  • 取材協力/BMW Motorrad Japan  写真・取材・文/バージンBMW編集部

自ら築き上げてきたアドベンチャーの世界
『冒険仕様』はさらなる進化を遂げる

歴代BMWモデルラインナップの中で『アドベンチャー』の名を冠するのは、2002年に登場したR259系ボクサーのR1150GSから派生したR1150GS アドベンチャーと、2004年、新世代ボクサーを搭載してデビューしたR1200GSのバリエーションモデルとしてその2年後(2006年)に登場したR1200GS アドベンチャーの2モデルを数えるのみ。アドベンチャー単体で見ると決して歴史の長いモデルではないものの、これでもかと言うほどの巨大なボディと膨大な荷物積載量、そして過酷な環境での走破性を追及したタフな造りは、世界中のライダーに強烈なインパクトを与えるのに十分なもので、このカテゴリにおいて未だに他メーカーの追随を許さず、王者の座に君臨し続けている。

2008年、R1200GSと共にマイナーチェンジ(メーカーいわくフェイスリフト)を受けてラインナップされたニュー・アドベンチャーは、単なる外観の変更ではなく(実際のところ外観から違いを判断するのは難しい)、R1200GS同様、エンジンや駆動系の全面変更と、専用のサスペンション設定などによって、オフロードで積極的にライディングを愉しむためのスポーツ性能が向上、より『クロスカントリー的』なキャラクターとなっている。

R1200GSアドベンチャーの特徴

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エンジンと駆動系は全面変更
さらに専用設定のサスペンション

R1200GSと共にリニューとなったアドベンチャーだが、先代R1200GSアドベンチャーと比較しても、その外観からは大きな違いは見られない。特徴的なのは外観ではなく中身、エンジンと駆動系(トランスミッション)だ。アドベンチャーは新型1200ボクサーエンジンを搭載するR1200GSをボディベースとしており、設定の変更によって異なるエンジン特性が与えられている。エンジンとトランスミッションの新たな組み合わせにより、最高出力が100psから105psへアップし、ギア比と二次減速比の変更による低中回転域でのトラクションの向上と、高速域での加速力アップを実現している。そのエンジンは、これまでHP2やR1200Sと共通だったものが、R1200RTやR、STなどと同じものをベースとしていることから、改良というよりは全面変更と言ったほうが良いだろう。

また、オフロードでの走行環境を前提として新たな設定が加えられた『エンデューロESA』(エンデューロ用電子調整式サスペンション)と『エンデューロASC』(エンデューロ用オートマチック・スタビリティ・コントロール)が、工場オプションで搭載可能となっている。左手のグリップを握ったまま、シチュエーションに応じて積極的にサスペンション設定を調整することが出来るもので、エンデューロESAには通常のESA(1人乗り、タンデム、積載)に、もう2段階上のプリロード・モード(フラットダート、ハードダート)が加えられた。ノーマル、コンフォート、スポーツという3つのダンピング・モードとの組み合わせによって計15段階(プリロード5段階×ダンピング3段階)のサスペンション設定だ。もうひとつの専用設定であるエンデューロASCは、従来のものにダート専用の設定がアップデートされた進化版で、滑り易いコンディションでラフにスロットルを開けても、センサーがホイールの空転を感知し、スリップダウンしないようエンジンの回転を電子的に抑制する。標準装備のBMW Motorrad インテグラルABSとの合わせ技で、いかなる路面状況においてもマシンがライディングをアシストしてくれる。荒れた大地をひた走ることを考えると、このシステムの恩恵は計り知れないだろう。もちろん、BMW Motorrad インテグラルABSもエンデューロASCも、ライダーの走り方に応じて解除することが出来る。

R1200GSアドベンチャーの試乗インプレッション

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どこへでも行ける?
確かにそうかもしれないな…

BMWバイクの購入を考えている人たちにとって、越えなければならないハードルがいくつかある。まず価格、それに保管場所(高級車だからね)、加えて(家庭がある方なら)周囲の理解、そして自分の体格と車輌との「折り合い」だ。量産市販車のなかでは世界最大クラスに属するアドベンチャーのボディは、R1150GSアドベンチャーよりも軽量・コンパクトにまとまっているとは言え、デカいことに変わりはない。単純にホイールベースが「長い」とか、車重が「重い」とか、そういうレベルではない。「高く、広く、重い」…まるで「面」が押し寄せてくるような、圧倒的な存在感に押し潰されそうになるのだ。

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「乗れば極楽」ということはよく分かっているので、注意しなければならないのは走り始め、停車前後、そして取り回しといったところ。それらに神経を払いつつ、試乗に際してはいつも以上に緊張感を伴いながら、とりあえずは無事に走り出す(ちなみに自分の場合、跨った状態でサイドスタンドを払うのは結構冷や汗ものなので、サイドスタンドを払い、エンジンをかけてから車体にぶら下がる印象で跨り、走り出してからポジションを整えている)。やはりアドベンチャーから眺める景色は気持ちが良い。高さを2段階に調整出来るシートはもちろん低いほう(890mm)にセットしているが、それでもだ。

オンロードでキビキビと走るR1200GSに対して、アドベンチャーはとてもおおらかな乗り味だ。サスペンション・ストロークは前後ともに20mm延長され、初期ストロークはとてもソフト。高速走行での小さなギャップもしっかり吸収し、車体は安定したままその感触が伝わってくる。足が長くなることでスイングアームが立つので、ホイールベースは20mm短くなっている。試したわけではないが、オフロードを走った際、その差は大きいと思う。

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現行モデルラインナップを見ると、キャストホイールを標準装備するR1200GSは、これまでよりもオンロード・ツアラーとしてのキャラクターを濃くし、対してアドベンチャーは、よりオフロードに特化したキャラクターを与えられたと言える。エンデューロESA/ASCは、R1200GSよりも足長のアドベンチャーでこそ体感出来るもので、オンロードにおいておおらかな乗り味が、いざグラベルを駆け始めるとどうなるのか? 専用設定のサスペンションがどのように働くのか? 想像しただけでもワクワクする。が、やはりそれには相応のライディング・スキルを要するワケで、「世界一周」を志すライダーのために造られたアドベンチャーは、単なる長距離快走マシンにあらず、それ以上を欲するライダーにも応えてくれる最強マシンなのだ。

こんな方にオススメ

細かいことは気にしない
豪快で要求の高いライダーへ

基本的にBMWオーナーは欲張りだ。長距離走行がラクで、荷物もたくさん積めて、速く、快適に、嫁さんカノジョも乗せたいし、1人でドコでも走りたい…。それらを満たしてくれるマシンがBMW以外にあるだろうか? それがBMWというメーカーのアイデンティティのひとつにもなっているのだから、BMWを選ぶライダーは、やっぱり欲張りなのだ。

それらの欲望に対して、アドベンチャーはほぼ全ての条件を満たしている、しかも平均点以上で。しかしだからと言って、アドベンチャーを平均的な日本人体型のライダーにオススメすることは出来ない。なぜなら230万円以上もの高価なバイクを、キズもつけずに乗りこなせるようになるには、慣れ以上のスキルが必要だし、それを気にしているようでは宝の持ち腐れだからだ。約33Lものガソリンを飲み込む大容量の燃料タンクはお腹一杯の航続距離を実現し、快適性で言えばR1200RTにも匹敵、もしくはそれ以上。とにかく長く(時間、距離)走り続けることが出来ればそれで良い、倒れても自分で起こすことが出来て、多少のキズなんて気にしないという『ロング・ディスタンス・ジャンキー』(造語)がいるとしたら、そんなライダーにこそたまらなく魅力的なマシンと言えるだろう。

R1200GSアドベンチャー プロフェッショナル・コメント

アドベンチャーの魅力のひとつ
「圧倒的な存在感」で人気です

大きく張り出した33L容量の燃料タンクにアドベンチャー専用大型スクリーン、890mmのシート高、車両重量259kgと、おおよそ日本人体型には不向きと思われる車格ですが、売れています!

もちろん目的があってアドベンチャーを手にするオーナーも多いのですが、ほとんどの場合はその男らしいルックスにやられてしまう方が多く、唯一無二の存在は、俳優のユアン・マクレガーがアフリカ大陸を縦断した「LONG WAY DOWN」をイメージしているユーザーも多いのではないでしょうか。

同じようなネーミングやポジションのモーターサイクルはいくつかありますが、「旅」を目的とするなら、現存するモーターサイクルの中で間違いなく最強です。航続距離600km以上の燃料タンク。105psのパワーを出しつつも低重心のフラットツインエンジン。210mm程もあるサスペンショントラベル。長距離乗っても疲れにくいシート。フェアリング効果の優れたスクリーンにナックルガード。冬には大活躍のグリップヒーター。標準で装備されている強靭なガード類。オフロード走行を想定して解除可能なABSとASCなど、全てライダーが安全・快適にツーリングをする為に必要なパーツを、ほぼ標準で装備することが出来ます。「GSアドベンチャーを選ばない理由はなんですか?」と、逆に質問してしまいたいくらい、本当に優れたモーターサイクルです。

ここで購入を考えている方にアドバイス。「R1200GSアドベンチャーの見た目がかっこいい! 絶対欲しい!」と思っている方 → 即購入してください。後悔はないでしょう! R1200GSと迷われている方 → その使用目的によって検討してみることをお勧めします。体格的にR1200GSが合っていて、林道やキャンプツーリングなどをアクティブに愉しまれる方には、30kg軽いR1200GSの方がより使い倒せるのではないでしょうか。「他メーカーの同クラスのバイクに興味があるけど…」という方 → 是非最寄のディーラーで現車を確認、試乗してください。アドベンチャーの試乗車は少ないのでR1200GSでも良いと思います。

上記のことを意識しながら乗っていただくと、より「GS」や「GS ADVENTURE」の存在感や意義を感じることが出来ると思います。

BMWのオフロードイベント『GSチャレンジ』や『メトロどろんこ祭り』などの影響で、R1200GSやアドベンチャーで林道を走られる方が増えてきています(GS専用のブロックタイヤもあるくらい)。200kg超の車重やテレレバーの特性で操ることが難しいと言われているGSですが、その車輌特性に合わせたライディング・トレーニングなども各地で行われていますので、積極的に参加されることもお勧めします。GSの持つ本来のポテンシャルを引き出すことが出来れば、もっともっとGS、アドベンチャーを愉しむことが出来ますから!

「ちなみにM.S.C.HARAでは、そのGSを対象としたオフロードトレーニングも定期的に開催しておりますのでっ!」(M.S.C. Hara 専務取締役 原 豪志さん)

取材協力
住所/埼玉県越谷市越ヶ谷本町11-24
電話/048-962-3411
営業時間/10:00-19:00(日曜・祝日は10:00-18:30)
定休日/水曜日

R1200GSアドベンチャー の詳細写真

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ライダーの疲労を軽減する
大型ウィンドシールド

ライダーにとって、長距離走行の疲労の原因となる風圧を効果的に防ぐ大型のウィンドシールド。左右に配置された小さなフラップの効果も極めて高く、雨天走行時にはその恩恵が顕著に見られる。
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グリップに手を置いたまま
さまざまな調整が可能

左手のスイッチボックスには『エンデューロESA』、『エンデューロASC』、『BMW Motorrad インテグラルABS』といった各スイッチが配置され、シチュエーションに応じて手元で調整・切り替えが可能。
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メーカーオプションの未来装備
サスペンション調整は工具不要

プリロードもダンパーも、従来は素手や工具で操作していた調整を、ユニット付属のサーボモーターで動作させることを可能とした画期的システム。積極的に調整して、その変化を愉しむことも出来る。
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いかにもBMWらしいギミック
足元にはアナログな調整機能

幅広のフットレストは特にスタンディング走行で車体をホールドし易い。シフトペダルは工具ひとつで角度調整、ブレーキペダルは通常のプレートに被さるように、可倒式のフットプレートが一枚装備される。
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