VIRGIN BMW | BMW R18 Transcontinental(2021)試乗インプレ / 空冷ビッグボクサーの魅力を引き出すパッケージ 試乗インプレ

BMW R18 Transcontinental(2021)試乗インプレ / 空冷ビッグボクサーの魅力を引き出すパッケージ

  • 掲載日/2021年10月26日【試乗インプレ】
  • 取材協力/BMW Motorrad 取材・写真・文/小松 男

BMW Motorrad R18 Transcontinental(2021)試乗インプレ / 空冷ビッグボクサーの魅力を引き出すパッケージ メイン画像

BMW Motorrad R18 Transcontinental(2021)
BMWモトラッドが展開するヘリテイジシリーズの一翼を担うR18。それから派生したニューモデル、R18トランスコンチネンタルがリリースされた。大陸横断プレミアムツアラーであるその実力に迫る。

最新、最大のビッグボクサーを用いて、
ロックンロール風味に料理する

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昨年登場した新しいヘリテイジモデル、R18。BMWモトラッドの歴史を担ってきたボクサーエンジンを昇華させたと言える新開発の排気量1801ccの空冷OHV水平対向エンジンを搭載し、一躍スターダムへと駆け上がった。それを追う形で登場したウインドスクリーンやサドルバッグを装備したR18クラシック、そしてこの度、フルドレッサー仕様のR18トランスコンチネンタルと、バガースタイルのR18Bが同時に追加された。先だってメディア向け発表試乗会が開催され、そこで実際に2台のニューモデルに触れることができたので、今回はR18トランスコンチネンタルのインプレッションをメインとしつつ、両車の特徴や乗り味などについてご紹介していきたいと思う。

R18 トランスコンチネンタル(2021) 特徴

ノスタルジックな雰囲気を取り入れつつ
モダンに纏め上げられた極上ツアラー

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マックス・フリッツとマーチン・ストールが作り上げた最初のボクサーエンジンM2B15ユニットを搭載したBMWの第一号車であるR32が登場したのは1923年のことだ。それから100年近くの年月が経った今でも、BMWはモーターサイクルを作り続けており、しかもボクサーエンジンを採用している。長い時間の間には世界的に見ても情勢が変化して来たわけであり、例えば環境問題から一時はボクサーエンジンの存続が危ぶまれたこともあった。そのような中で心を貫き通すというのは偉業とも言えることである。昨年登場したR18に搭載された新開発の空冷OHVビッグボクサーエンジンは、BMWの技術の粋であり、意地であり、レガシーを具現化したものだ。ドロドロとしたフィーリング、リッチなトルク感、それに合わせた優雅に走ることのできるシャシーの組み合わせは、他ブランドでは成しえないものだと思う。そんなR18から派生したR18トランスコンチネンタル(以下、R18TC)とR18Bのリリースがスタートした。

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R18TCは、大きなフロントフェアリングや大容量のフルケースを備えたフルドレッサーツアラーであり、R18Bはカスタムライクなスタイルで纏め上げたバガーモデルだ。一見すると、先だってマーケット導入されていたR18やR18クラシックと基本構成が同じようにも見えるのだが、実は新設計となるフレームを採用している。なぜならば大きなフェアリングを備えているためにフロントの荷重が増加したために、フロントの操安性及び剛性を高めるという意味合いが強い。その新フレームでさらに注目したいのは、キャスターがR18&クラシックが150mmなのに対してR18TC&Bでは183.5mmに延長されている点だ。つまりステアリングヘッドが立ち気味となっているということになり、フロントタイヤがライダー側に引き寄せられたということになる(ホイールベースは5mm短縮)。以前R18のテストを行った際、ハンドリングの大味具合が気になっていたものなので、好転に期待しながら試乗に挑んだ。

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カスタムライクなスタイルで纏め上げられたBMW流バガーモデル、R18B

R18 トランスコンチネンタル(2021) 試乗インプレッション

バイク秀逸、しかしかけ離れた温度差に
思わず鳥肌が立ってしまう

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心臓部にはR18シリーズ共通となる空冷OHV水平対向2気筒エンジンを採用している。排気量は1801ccを誇り、2000~4000回転で常時150Nmものトルクを発生させるパワフルなセッティングとされている。なおBMWではビッグボクサーと呼ばれている。セルスターターを押すと、ビッグボクサーは過剰とも思えるほどのトルクリアクションを表しながら目を覚ます。大排気量ボクサーエンジンならではと感じさせる演出の一環だと理解しているが、もう少し優しくても良いものではないかとも思う。

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R18TCの車重は440kg、R18Bでも410kgという超重量級モデルなので、車体を起こすだけでも気を使うが、低重心であることとバランスが良いために、少々気を使っていれば取り立てて大きな問題は無い。それに低回転域から多大なトルクを発生するために、想像以上に安楽ライディングを楽しめる。ダイナミッククルーズコントロール及びアダプティブクルーズコントロールが標準装備されているため、速度を一定に、さらに前車がいればそれに合わせるといった極上のクルージングをもたらしてくれる。

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ライディングモードはレイン、ロール、ロックと3モードが用意されており、最高パフォーマンスを引き出すロックモードでスロットル操作をラフに行えば、獰猛とも言える一面も見せるが、先だって記述したように、キャスターの変更、リセッティングによりハンドリングは非常にナチュラルなので、その強大なパワーを楽しむことができる。どのように走らせても、車体がしっかりとついてくることには、さすがBMWの作るモーターサイクルだと思わずにはいられなかった。R18TCとR18Bの乗り比べでは、フロント周りの重量やトップケースの有りなしから、多少R18Bの方が軽いハンドリングと思えたが、R18TCのしっとりした手ごたえは高級感があると形容できるものだ。

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空冷OHVツインならではの鼓動感の表れだと言われればそれまでだが、ハンドルやステップから伝わってくる振動は結構気になる物であるし、左右に大きく張り出たシリンダーと、シフトチェンジレバーやリアブレーキの間隔が狭く、つっかかる時があるのはR18でも感じたこと。しかし、それよりも総じて良いバランスで仕上げられており、新たな可能性を垣間見ることができた。

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発表会の中では今回モーターサイクルで初採用となったマーシャルのスピーカー=イギリス、PVのロックバンド=アメリカ、バイク=ドイツという三か国が手を組んだパッケージとなったという話がされたのだが、それを耳にしてしまったがゆえに、実際に乗ってみるとBMWが生み出したロックンロールというものに、チグハグ感が湧いてしまったのだった。BMWモトラッドを愛していた身としては、やはり流れて欲しい曲はワーグナーであり、タンホイザーのような劇的な展開を連想したいのである。せめてジャーマンメタル、ハロウィンやブラインド・ガーディアン的なメロディックパワーメタルに仕上げたと熱弁されていたのならば、なるほどな、と納得できたと思う。これはR18TC、R18B共に感じたことだ。

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もう四半世紀近く前のことになってしまったが、1997年にR1200Cから始まった旧クルーザーシリーズが存在した。それらは走らせると非常に心地よいモーターサイクルであったのにも関わらず、セールスは振るわなかった。今回はそれを打破するという意気込みが込められていると説明されたものだが、節々から感じられる勘違い的な部分に、BMWモトラッドはまたも同じ轍に足を踏み入れているようにも思えてしまった。

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R18 トランスコンチネンタル(2021) 詳細写真

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R18TCのコクピット。上段に残燃料計、速度計、回転計、パワーリザーブ計のアナログメーターを備え、下部に10.25インチカラーディスプレイを備えている。スロットル操作と連動し、現在どの程度の出力を使っているか分かるパワーリザーブ計は面白い。

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排気量1801cc、最高出力91馬力を4750回転で、最大トルク158Nmを3000回転で発生させる空冷OHV水平対向2気筒エンジン。このエンジンの存在感はR18シリーズの大きな魅力となっている。

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R18TCは、大型フロントフェアリングとフォグランプを装備。ヘッドライト上部にはアダプティブクルーズのためのセンサーが備わっている。コーナーライトも標準装備しており、バンク角に合わせてヘッドライト内部が回転し、コーナーの先を照らす。

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フロントフェアリングの下方に可変式のウインドディフレクターを装備している。走行風を防ぐ時には閉じておき、気温の高い夏場など、走行風を引きれたいときには写真のように起こすことができる。

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シフトペダルはシーソータイプとしている。ギアチェンジのタッチは良い。フットレストボードは振動緩和機能付き。右上のメッキレバー操作で、リターンギアに入れることができる。

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ティアドロップスタイルの燃料タンク容量は約24リットル。R18/クラシックが16リットルなので、大幅に拡大されている。フォースとエディションは伝統的な、子持ちハンドストライプが施されている。

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燃料タンク上部にはフューエルリッドとスマートフォンホルダーが隠されている。スマートフォンホルダーには、USBソケットの他、本体が高温になることを防ぐ冷却ファンが備わっている。

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世界中のミュージシャンに愛用されてきたアンプシステムの名門、英国マーシャル社と共同開発したサウンドシステムを標準装備。さらなる高音質を楽しめる工場オプションのサウンドシステムも用意されている。

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BMWモトラッド特有のジョグダイヤル付きスイッチボックス。各種インフォメーションの呼び出しのほか、標準装備となっているDCC、ACCのクルーズコントロールシステムのセッティングも行える。

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たっぷりとした座面を持つシート。パッセンジャー側のバックレストは包み込むような形状とされており、快適なタンデムツーリングをもたらす。パニアケース容量は27リットル、トップケースの容量は47リットルとなっている。

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ロングフェンダーで威風堂々としたボディラインを強調している。左右に振り分けられたテールランプは、ストップランプ及びターンシグナルを兼ねている。

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モチーフとしたR5をインスパイアしたオープン構造のメッキユニバーサルシャフトドライブ。なおカンチレバー式リアサスペンションは、オートプリロード機能を備えており自動でレベル(車高)セッティングを行う。

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